2話:嵐の前の静けさ
【武蔵野庭園学園 本部棟『生徒会室』 日時:開戦前日 16:30】
「――撫子会長。埼玉第3小学園から、『同盟脱退』の打診が来ています」
西日が差し込む穏やかな生徒会室。 しかし、そこで交わされる報告は、室内の暖かな空気を凍りつかせるものだった。 生徒会長・清川撫子は、第二副会長からの報告を聞き、こめかみを強く押さえた。 彼女は「理想」を信じる清廉潔白な少女だが、その整った顔立ちには、隠しきれない疲労の色が滲んでいる。
「……また? これで今週3件目よ」
「仕方ありません。同盟結成からもうすぐ3ヶ月……。『学園合併戦争法』に基づく『裏切り期間』に入りますから」
第二副会長が、悔しそうに唇を噛む。
「今、同盟を抜けて大学園に媚びを売れば、報復を免れられる……。自分たちだけ助かろうとする学園が出るのは、悲しいですが分かっていたことです」
撫子は重い溜息をつき、窓の外へと視線を逃した。 そこには、名前の通り美しい庭園が広がっている。 放課後のチャイムが鳴り、生徒たちが花壇の手入れをしたり、ベンチで談笑したりしている。 ここには、東京帝国学園のような殺伐とした空気も、血なまぐさい階級制度もない。 だが、撫子は知っている。それが薄氷の上に成り立つ、あまりにも脆く儚い平和であることを。
「皆さんには伝えて。『あと少し耐えれば、私たちの結束は本物になる。東京帝国学園だって、31校が完全に団結した相手には手を出せないはずだ』と」
撫子は、自分自身に言い聞かせるように呟いた。
「私たちは守るの。この学園も、同盟のみんなも。……あの『隷属化』なんて非人道的なこと、絶対にさせない」
その瞳には、確かな正義の光が宿っていた。だが、彼女は知らない。相手が「結束し切る直前」このタイミングこそ逆に好機と捉え、すでに喉元までナイフを突きつけていることを。
そして、彼女の足元――学園のライフラインが通る地下通路の奥深くでは、すでに致死量の「毒」が回り始めていたことを。
2.夜の訪問者
開戦前日 深夜 23:00
武蔵野庭園学園の地下、「第一蘇生ホール」。 厳重に警備されているこの聖域に、小柄な影が3つ、音もなく侵入していた。
彼女たちは、少し大きめの武蔵野学園の制服を着ているが、その中には黒いボディスーツとMP40短機関銃を隠している。 情報長・如月 零の手引きにより、「交換留学生」として堂々と入り込んでいたメーテル突撃隊の精鋭達だ。
「ねえねえ、ここが心臓部?」 「そうだよぉ。ここさえ壊せば、この学校のお姉さんたちは『生き返る場所』を失ってパニックになるの」
リーダー格の少女が、飴玉を舐めるような軽さで言いながら、手際良く蘇生装置の動力パイプにプラスチック爆弾を貼り付けていく。
「かわいそうだねぇ。死んでも生き返れないなんて」 「ううん、違うよ。零お姉様が言ってたもん。『生き返れない恐怖を与えることで、スムーズに降伏させる慈悲』なんだって」 「そっかぁ! さすが情報長! 優しいね!」
キャッキャと笑いながら、彼女たちは手際よく破壊工作を進める。 警備員が見回りに来たが、彼女たちは隠れもしない。 「あ、見つかっちゃった」 「じゃあ、おやすみなさい」
シュッ。 サプレッサー付きの銃声すらなく、飛び出した少女が警備員の喉をナイフで掻き切った。 警備員の生徒が泡を吹いて倒れる。彼女が蘇生されるのは、このホールが爆破された後――つまり、永遠に目覚めないか、あるいは帝国学園の捕虜として目覚めるかのどちらかだ。
「よし、セット完了。……明日の朝、ドカンといこうね!」
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次回、3話 サクラチル です!
いよいよ武蔵野に攻め込んでいきます!!また見にきてね!
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