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オトシゲ:乙女は資源になりました。~男性絶滅後のディストピアで、学園経営しちゃいます~  作者: 428の968
第二章:内政編

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第22話:処刑台なき迷走

関東一円、44校を併合した「東京帝国学園」の朝は、いつになく騒がしかった。 勝利の凱歌ではない。怒号と悲鳴、そして行き場を失った書類の山が崩れる音である。


かつて、学園の秩序を一手に担っていた司法局本部棟――通称『断罪の塔』。 そのあるじの席は、いまや空席となっていた。


九条院 紗夜。 『微笑む処刑台』と恐れられた彼女は、関東圏統一戦争の末、占領した学園の生徒を密かに逃がそうとした「背信行為」により、神楽坂 玲緒奈の逆鱗に触れた。 彼女は、自らが愛した法の裁きを受け、処刑されたのだ。


「ざまぁみろ! あいつ、いっつも『法が』とか『手続きが』ってうるさかったんだよ!」 「高潔ぶってたくせに、最後は裏切り者かよ。まじ 傑作!」


カフェテリアでは、前線から戻った兵士たちが祝杯をあげていた。彼女たちにとって、厳格すぎる紗夜は目の上のたんこぶだったのだ。 だが、その嘲笑はすぐに苛立ちへと変わることになる。


「おい、いつになったら私の『略奪品(給料)』の所有権が認められるんだ?」 「申請してから3日も経ってるぞ! 早くあの子を私のペット(専属奴隷)にして!」


窓口に殺到する兵士たちに対し、顔面蒼白の事務員が叫び返す。 「無理です! 判決文の決裁印がないんです! 誰がこの捕虜を『生贄』にするか『労働』にするか『家畜』にするかを判断するんですか!?」


九条院 紗夜は、帝国学園の中で唯一、「法」という名の秩序を守っていた防波堤だった。 彼女という超人的な処理能力を失った今、膨大な戦後処理は完全にストップし、帝国学園は機能不全に陥っていたのである。


「……椿ちゃん、もう限界だよぉ」


本部棟の大会議室。労働長・五十嵐結衣が、端末を放り投げて嘆いた。


捕虜収容所(ケージ)が満杯。紗夜が死んでから、誰も『選別』をしないんだもん。このままだと、貴重な『資源』たちが飢え死にしちゃうよ。……死んじゃったら養分にすらできないよ」


第一副会長・西園寺椿は、こめかみを揉みながら冷徹に現状を分析していた。 彼女の目の前には、未処理の書類タワーが三つ、いや四つ並んでいる。


「……紗夜は、優秀すぎたのよ。彼女は一日24時間、不眠不休で『公正な裁判』を行っていた。皮肉なことに、彼女の個人的な正義感が、この組織の物流を支えていたのね」


「で、どうするの? 私が適当に全員『生贄』にしちゃっていい?」 「却下よ。資源の無駄遣いは許さない」


椿は立ち上がり、部屋の隅、影の中に佇む人物に声をかけた。 「……零。準備はできているわね?」


情報長・如月零が、音もなく一歩前に出る。 「ええ。S.I.D.(戦略情報部)が収集した全生徒の行動ログ、思想傾向、交友関係……すべてのデータはリンク済みです」


「結構。……人間が裁く時代は終わったわ。情緒も、慈悲も、裏切りもない。ただ効率だけを追求する『新しい裁判官』を迎え入れましょう」


翌日。 司法局のメインサーバーに、新たなプログラムがインストールされた。 西園寺椿が開発を主導し、S.I.D.(戦略情報部)のビッグデータを流し込んだ『自動司法AI・テミス』である。


「起動」


椿がエンターキーを叩いた瞬間。 モニターに映し出された数万件の「未決囚リスト」が、凄まじい勢いでスクロールし始めた。


【ID: 4092 - 処理中…】


戦闘能力: D


反逆リスク: A(過去にSNSで帝国批判歴あり)


判決: 即時処分(養分化)


【ID: 4093 - 処理中…】


容姿: S


従順性: B


判決: 奴隷(ペット)(将校への報酬)


「は、速い……!」 文官たちが息を呑む。 人間が書類をめくり、情状酌量を考慮し、悩みながら下していた判決が、わずか0.01秒で処理されていく。 そこには「被告人の弁明」を聞く時間は存在しない。 過去のデータと、現在の利用価値。 たったそれだけの数字で、少女たちの運命がベルトコンベアのように振り分けられていく。


「きゃあああああ!! いやだ、離して!!」 「なんで!? 私、何もしてないのに!!」


収容所では、AIによって「不要」と判断された生徒たちが、輸送ドローンによって処理ラインへ次々と投入されていく。 泣き叫ぶ彼女たちの声は、もはや誰にも届かない。紗夜がいた頃ならあったかもしれない「慈悲ある懲役刑」は消滅し、あるのは「(隷属)」か「(養分)」の二択のみ。



数時間後。 滞っていた物流は嘘のように解消された。 兵士たちには約束されていた「報酬」が配られ、発電所には新鮮な「燃料」が届き、労働施設には新たな「歯車」が組み込まれた。


「すっげえ! 申請して1秒で許可が降りたぞ!」 「やっぱAI様々だな! 紗夜の説教臭い裁判よりずっといいぜ!」


兵士たちは歓喜し、再び帝国への忠誠を新たにする。 その光景を、椿は執務室の窓から冷ややかに見下ろしていた。


「さようなら 紗夜。貴女が命をかけて守ろうとした『法』は、貴女がいなくなったことで、より完璧で、より冷酷な『システム』へと進化したわ」

またもや見に来てくれてありがとう!!

次回、23話:戦場のデート計画 です!

次回投稿予定時刻は2/12 12時です。 いよいよ2章の始まり始まり!

感想、ブクマ、評価などいただけると、更新のエネルギー(生贄コスト)になります! よろしくお願いします!

またね!

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