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オトシゲ:乙女は資源になりました。~男性絶滅後のディストピアで、学園経営しちゃいます~  作者: 428の968
第一章:関東圏統一戦争

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18話:結果発表

「かんぱーい!!」


 祝杯の音が、生徒会室に高らかに響く。  テーブルには、備蓄していた高級な合成ジュースや保存食が所狭しと並べられていた。埼玉第四学園の生徒会長・高崎美里と役員たちは、勝利の余韻に浸っていた。


「いやぁ、昨日の夜はヒヤヒヤしたけど、あの『60万ポイント』は効いたわね!」 「ええ! 陸路(学園間接続道路)が封鎖されている以上、他の学校は大規模な移動ができないはず。これだけ稼げば安全圏よ」


 この世界において、学園は孤立した都市国家のようなものだ。  各学園は「学園プラントライン」と呼ばれる居住区画に存在し、外界とは数本の「公道」でしか繋がっていない。そして、友好的な協定を結んだ学園同士でなければ「ワープポイント」も繋がらない。  つまり、他校を攻めるにはリスクの高い陸路を行くしかないのだ。


 ピンポンパンポーン♪


 正午のチャイムと共に、全てのモニターが強制起動する。  画面には、いつもの極彩色のステージと、夢咲ららが現れた。


『はーい! 愚かな家畜のみんなー! 運命の最終結果発表だよぉ〜!!』


 美里たちは固唾を飲んで画面を見つめる。


『今回は大混戦! みんな生き残るために必死すぎて、引くぐらい残酷だったね☆ それじゃあ、上位5校を発表しまーす!』


 1位:神奈川海洋学園(1,200,000 pt)


「……は?」美里の笑顔が凍りつく。桁が違う。


『1位の神奈川さんは凄かったね〜! なんと近くにあった中立公共施設の「第3資材管理プラント」を急襲! そこに研修に来ていた中小学園の生徒たちを、施設ごと制圧して根こそぎゲット! 公的施設を襲うなんて、狂犬すぎて最高!!』


 ……5位:栃木中央学園(650,000 pt)


「ま、待って……ボーダーが……65万……?」


『栃木さんも粘ったね〜!卒業年度生達を全員売り飛ばし、各学年から生贄を200人ずつ選抜したうえ、ラスト10分で、学園の地下に隠れ住んでいた脱走者達の隠れ家を帝国学園に通報!これはすごい!!』


「あ……あ、あ……」


『そして、惜しくも脱落! 第6位は……』


 6位:埼玉第四学園(635,000 pt)


『ざんね〜ん!! あと1万5千点! 下級生達全員売ったのにねぇ〜? まさに「骨折り損のくたびれ儲け」!』


 ガシャンッ!! グラスが落ちる音と同時に、空気が震えた。


【 WARNING : SPACE DISTORTION DETECTED 】 【 警告:学園上空に高エネルギー反応。大規模転移プロセス、検知 】


「て、転移反応!? 馬鹿な、ウチの座標コードは非公開のはずよ!?」 「ま、まさか……『大規模転移装置』!? あんな莫大なコストがかかる兵器を、たかが小学園の制圧に!?」


 美里が窓に駆け寄る。  学園都市を覆う半透明の防御バリア――物理攻撃や陸路からの侵入を防ぐための鉄壁の守り。  その「内側」の上空、本来なら何もないはずの空間が、バリバリと紫色に亀裂を走らせていた。


 帝国学園が誇る、距離を無視して軍団を送り込む戦略兵器。その月間維持費だけで中小学園の年間予算が吹き飛ぶ代物だ。


『ふふふ。埼玉第四さんには、研究局とっておきの新作プレゼントをあげるね♡』


 空の亀裂から、巨大な「黒い円筒」が吐き出された。  それはまるで墓標のような不気味な金属塊だった。  パラシュートが開き、校庭の真ん中へ向かってゆっくりと降下してくる。


「ば、爆弾……?」


 違う。爆発しない。  その代わり、円筒の側面にある無数のスリットが開き、圧縮された紫色の気体が、凄まじい勢いで噴き出した。


 シュゴォォォォォォォォォ!!!


「ガスだ!! 防衛システム起動! バリア出力を最大に……」 「だめです会長!!」


 役員が絶叫する。


「バリアを張っているせいで、ガスが外に逃げません!! 学園内が巨大な密室になっています!!」


「あ……」


 それは、最悪の皮肉だった。  自分たちを守るはずのドーム状バリアが、今はガスを閉じ込め、濃度を高める「ガス室」の壁として機能していた。  紫色の霧は、逃げ場のないドーム内で対流し、あらゆる隙間から校舎内へと侵入してくる。


「ガスマスク!! 早く!!」


 美里たちは必死でマスクを装着する。  しかし、モニターの中の夢咲ららがクスクスと笑った。


『無駄だよぉ。それは「経皮浸透性ナノ・ミスト」。吸わなくても、肌に触れるだけで神経を焼き切るの。……全身防護服も持ってない貧乏学園には、防げませ〜ん!』


「ぎゃああああッ!! 痛い、肌が、熱いぃぃッ!!」


 廊下から悲鳴が上がる。  制服を貫通したガスが、生徒たちの皮膚を赤く爛れさせ、神経毒を流し込む。  美里も、マスクをしていない首筋や手首に、焼き火箸を押し当てられたような激痛を感じて崩れ落ちた。


「う、あ……ぐ……っ」


 動けない。意識はあるのに、体が鉛のように重い。  薄れゆく視界の中で、空から次々と「人影」が降下してくるのが見えた。


 シュッ、シュッ、シュッ。


 それは、完全密閉された宇宙服のような強化外骨格と、無機質なフルフェイス・ガスマスクを装着した異形の兵士たち。帝国学園・遠征軍特殊制圧部隊『ヴォイド・ウォーカー』。彼女たちは紫色の霧の中を、まるで散歩でもするかのように悠々と歩いてくる。


【制圧完了・資産収奪フェーズ開始】


 校舎の扉や窓が蹴破られる。入ってきた部隊は、床に転がって痙攣する美里たちを一瞥もせず、事務的に作業を開始した。


「第1班、データセンターおよびサーバー室へ。教育データ、技術マニュアル、生徒個人情報の全データを接収せよ」 「第2班、備蓄倉庫へ。レアメタル、食料、エネルギーセルを回収」 「第3班、美術品および校章旗の確保。……この絨毯も剥がせ。帝国学園士官室で使える」


 バリバリバリッ!  壁に飾られた名画が額縁ごと引き剥がされ、金庫がバーナーで焼き切られる。  高価な実験器具、楽器、さらには校舎の建材の一部に至るまで。  「価値あるもの」は徹底的にタグ付けされ、コンテナと放り込まれていく。


 遠い昔、第二次大戦でナチスが占領地で行ったような、徹底的かつ冷徹な「略奪」。  埼玉第四学園が120年かけて積み上げてきた歴史と富が、わずか数十分で帝国学園の底なしの胃袋へと消えていく。


「おや、ここに『指導部』が転がっていますね」


 冷たい機械音声のような声。防護服の兵士が、美里の髪を掴んで引きずり起こした。ガスマスクの奥から、冷酷な瞳が覗く。


「あ……あぅ……(降伏……します……)」


 美里は動かない唇で必死に訴える。  しかし、兵士は端末を確認し、首を横に振った。


「降伏は受け入れられません。貴官らは『リサイクル対象』です」


 兵士の合図で、後ろから『隷属チョーカー』の入った箱を持った技術班の兵士が入ってくる。


「まず、中等部(4〜6年生)。自我レベル低。……『隷属チョーカー』を装着」


 倒れている4年生たちが無理やり引き起こされ、首に冷たい金属の輪を嵌められる。  カシャン。赤い光が灯る。  その瞬間、苦悶の表情を浮かべていた彼女たちの顔から感情が消え、虚ろな「人形」へと変貌した。


「これらは最前線の『盾』として有用です。……連行せよ」


 そして、兵士は美里たち高等部を見下ろした。


高等部生(7〜9年生)。自我レベル高、および反逆の可能性大。……さらに、保身のために自校の下級生を売り渡した裏切り行為を確認。信頼度、ゼロ」


 兵士は、ゴミを見るような視線を投げかけた。


「仲間を平気で売るような屑は、帝国学園生徒としても奴隷としても不適格。……よって、『燃料』としての即時処分を宣告する」


「――ッ!?」


 美里の目から、絶望の涙が溢れ出す。  あの決断は、生き残るためだった。帝国の論理に従ったつもりだった。 なのに、それが「不適格」の烙印になるとは。


「連れて行け。……『資源回収トラック』はもうすぐ到着する」


「あ、が……あぁぁぁ……ッ!!」


 美里は、防護服の兵士に足を引きずられ、校舎の外へと連れ出される。 そこには、かつて自分が6,000人の後輩を送り出した校庭があった。 今は、略奪された物資の山と、首輪をつけられて整列させられた中等部生たちがいるだけ。


 美里の視界が、涙とガスで滲む。 最後に見たのは、帝国学園の学園旗が、自分の学園のポールに掲げられる瞬間だった。


 埼玉第四学園、陥落。  その名は地図から消え、残されたのは空っぽの廃墟と、帝国学園の倉庫に積み上げられた「戦利品」の山だけであった。

またまたまた見に来てくれてありがとう!!

次回、19話:最後の一兵まで です!

次回投稿予定時刻は2/7 10時です。

感想、ブクマ、評価などいただけると、更新のエネルギー(生贄コスト)になります! よろしくお願いします!

またね!

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