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オトシゲ:乙女は資源になりました。~男性絶滅後のディストピアで、学園経営しちゃいます~  作者: 428の968
第一章:関東圏統一戦争

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16話:緊急避難訓練

【午後 埼玉第四学園・体育館】


6,000人もの少女たちが集まった体育館は、不安の声で満ちていた。  1年生から3年生までの下級生たち。彼女たちは、まだ何も知らない。


「先輩、これ何の時間ですか?」 「『緊急避難訓練』だって。なんか、帝国学園が攻めてくるかもしれないから、素早く地下シェルターへ移動する練習だって」


 3年生の少女が、不安がる1年生の手を引いている。  そんな健気な光景を、ステージ袖から美里は冷徹に見下ろしていた。彼女の手には、空調設備の集中制御タブレットが握られている。


「……ごめんね。でも、あなたたちは運が良かったのよ。『負け犬』として無惨に殺されるより、帝国の『資源』として有効活用されるんだもの」


 美里は、震える指で【MAX出力】のアイコンをタップした。


 シュゴォォォォォ……ッ!!


 講堂の四方八方にある通気口から、白濁したガスが一気に噴き出した。


「えっ? なにこれ、煙……?」 「きゃっ! なんか変な匂い……!」


 異変は瞬く間に広がった。  暴動鎮圧用ガス『スリープ・ミスト』。吸い込めば数秒で中枢神経を麻痺させ、強制的な昏睡状態に陥らせる兵器だ。


「げほっ、う、あ……」 「視界が……回る……」


 バタバタバタッ!!  先ほどまで手を繋いでいた姉妹のような生徒たちが、糸切れた人形のように崩れ落ちていく。  悲鳴を上げる間もなかった。  6,000人の集団が、波打つように倒れ伏し、わずか数分で講堂は「死体置き場」のような静寂に包まれた。


「……作業開始!! 早くトラックを回せ!!」


 ガスマスクをつけた4年生以上の生徒たちが、台車と「拘束用金属フレーム」を持ってなだれ込んでくる。  ここからは、時間との勝負だった。


 ガシャン、ギュウッ。  カチャリ、キリキリキリ……。


 広大な講堂が、巨大な「出荷工場」へと変貌する。上級生たちは、眠る後輩たちの体を機械的に処理していった。冷たい金属フレームの上に少女を仰向けに寝かせ、手足を広げさせ、四隅の拘束具に手首と足首を通す。  革ベルトを限界まで締め上げ、関節が外れんばかりに大の字に固定する。 そして仕上げに口にゴム製の猿轡をねじ込む。


「んぅ……」


 時折、浅い呼吸と共に呻く少女がいても、構わず作業は進む。  制服のスカートがめくれ上がり、無防備な太ももや下着が露わになろうとも、誰も直してはやらない。彼女たちはもう「後輩」ではない。「60万ポイント分の貨物」なのだから。


 体育館の外には、要請を受けた帝国学園の大型輸送トレーラーが、長蛇の列をなして待機していた。


【夕暮れ 輸送トレーラー荷台】


 ガタンッ、ゴトン。


 微かな振動と、閉塞感。  2年生の ミナ は、深い闇の中で意識を取り戻した。  頭が割れるように痛い。そして、息苦しい。


(……え? ここ、どこ……?)


 目を開ける。しかし、薄暗い赤色の非常灯がついているだけで、周りはよく見えない。  体を起こそうとした。  だが、動かない。


「――っ!?」


 手足が、何かに強く固定されている。  背中には冷たく硬い金属の感触。  叫ぼうとしたが、口の中に異物――ゴムの塊が詰まっていて、声にならない。


「んんっ!? んぐぅっ!!(なに!? なんで動けないの!?)」


 パニックになり、必死に暴れる。  ガチャガチャと金属音が響く。その音で、目が慣れてきた。  そして、ミナは見てしまった。


 自分の左右、そして目の前の棚に、同じように金属枠に張り付けにされ、猿轡を噛まされて眠っているクラスメイトたちの姿を。  まるで、本棚のように、整然と、隙間なく。


(嘘……みんな……? 避難訓練じゃなかったの……?)


 プシュウゥゥ……。  トラックの側面が開いた。夕日が差し込み、ミナは眩しさに目を細める。  そこに立っていたのは、見知らぬ帝国学園の制服を着た兵士と、そして――ミナが慕っていたバスケ部の先輩だった。


「んーっ! んんーっ!!(先輩! 助けて! 私です、ミナです!!)」


 ミナは必死に体をよじり、涙を流して訴えかけた。  フレームがガタガタと揺れる。  先輩なら気づいてくれる。助けてくれるはずだ。


 先輩と目が合った。  しかし、先輩はミナを見ても、眉一つ動かさなかった。その目は、死んだ魚のように濁っている。


「……あ、この子、麻酔が切れかかってる。暴れると積み込みにくいな」


 先輩の口から出たのは、心配の言葉ではなかった。


「ん……?(え……?)」


「ごめんね、ミナちゃん。……でも、じっとしてて。君たちが行ってくれないと、私たちが困るの」


 先輩は、まるで壊れた機械のような虚ろな目で、ミナのフレームを掴んだ。  そして、トラックの荷台レールへ向かって、力任せに押し込んだ。


 ガシャンッ!!


「んぐぅぅぅぅーーっ!!!(嫌だ! 行きたくない! 先輩、なんで!?)」


 ミナの絶叫は、猿轡に阻まれて誰にも届かない。  レールに固定され、身動き一つ取れなくなったミナの視界に、次々と「梱包」された友人たちが積み込まれてくるのが見える。  1年生の小さな体も、3年生の先輩も、みんな等しく「モノ」として扱われている。


「積み込み完了。閉めるぞ」


 帝国の兵士がレバーを引く。  油圧式の扉が、ゆっくりと降りてくる。  閉まりゆく隙間から、夕焼け空と、手を合わせて拝んでいる先輩の姿が見えた。


「ありがとね。……元気でね(さようなら)


 バンッ!!


 完全な闇。  トラックのエンジンが唸りを上げ、動き出す。


「んんーッ! んぐ、ぅぅぅ……ッ!!」


 暗闇の中で、ミナは泣き叫び続けた。  信頼、友情、未来。すべてがこの揺れるコンテナの中で粉々に砕け散った。  彼女たちはもう、埼玉第四学園の生徒ではない。  東京帝国学園へと運ばれる、ただの「新鮮な生体資源」だった。


【夜:埼玉第四学園・校門前】


 ズラリと並んだ大型トレーラーの隊列が、テールランプを連ねて走り去っていく。  その数は50台以上。  6,000人の「資源」を積み込んだ車列は、まるで葬列のように厳かで、美しかった。


「……行ったわ」


 高崎美里は、校門の前でその光景を見送っていた。  手元のタブレットには、帝国学園から送られてきた『受領書』が表示されている。


 【受領:生体ユニット × 6,000体】  【確定ポイント:600,000 pt】 【総ポイント:631,500 pt】


「あは……あはははは! 見た!? 63万ポイントよ!!」


 美里は夜空に向かって狂ったように笑った。


「これで勝った! 神奈川海洋なんて目じゃないわ! 私たちは生き残れる! 誰も奴らの奴隷にならなくて済むのよ!!」


 彼女の後ろには、4年生以上の生徒たちが立ち尽くしていた。  彼女たちの表情は、安堵で泣いている者、虚ろに笑っている者、吐き気をこらえている者と様々だ。  だが、共通しているのは一つ。  彼女たちは売ったのだ。  自分たちが生き延びるために、自分たちを慕ってくれた6,000人の後輩を、あの鉄の箱に詰め込んで売り飛ばしたのだ。


「さあ、みんな! 今日は祝勝会よ! 今日は枕を高くして眠れるわ!」


 美里の声が、誰もいなくなったガランどうの下級生校舎に虚しく木霊する。  埼玉第四学園は大量のポイントを手に入れた。  だが、その代償として、学園としての「明日」を失ったのだ。

またまたまた見に来てくれてありがとう!!

次回、17話:帝国の胃袋 です!

次回投稿予定時刻は2/6 23時です。

感想、ブクマ、評価などいただけると、更新のエネルギー(生贄コスト)になります! よろしくお願いします!

またね!

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