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Delighting World  作者: ゼル
第四章 竜の鍾乳洞編~イビルライズと聖なる源泉~
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Delighting World ⅩⅧ.Ⅴ

Delighting World ⅩⅧ.Ⅴ





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(キッカが読んだ本をまとめた)解説・おはなしコーナー3



・ジィル大草原について


どこまでも続く大草原であり、大型の大人しい魔物が多く生息しており、気候も比較的温暖で年中暖かい。


広さは端から端までで約4000km以上あると言われており、徒歩だと実に4か月以上の時間を要するほどの広大。

この草原の大半はワービルトの領地であるが故、大草原にはワービルトが管轄する野営地があちこちに点在しており、冒険者や旅行者などの助けとなっている。

そこで落としていく資金が野営地の運営の資金となっている。


野営地にはワービルト、ヒューシュタット、西部にある町々に向かう乗り物が存在している。

野営地によっては無い場所もあれば、行ける場所が少ない場合もある。ヒトがよく来る場所は数が多く、少ない場所は数が少ない、もしくは無い。


竜の鍾乳洞からだとワービルトまで徒歩1週間程度かかる。

ヒューシュタットからだと徒歩5~6日近くかかる。ドラゴニアからの道中にある竜の鍾乳洞は危険な魔物も生息している為、ヒューシュタットから行く方が安全。


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・ジィル大草原の乗り物…ラプター便


大草原に生息しているリザードラプターと呼ばれる大型二足歩行のトカゲ型の魔物がヒトや荷物が乗った荷台を引っ張ってくれる移動用乗り物(馬車のようなもの)

ここで扱われているリザードラプターは所謂家畜のような存在であるため、飼い主には忠実。

ドラゴン便よりは安価で乗れるが、もちろんドラゴン便よりも速度は落ちる上に、荷台の上に載って移動するためよく揺れる。

そしてこのラプター便が使われているのはワービルト地方のみであり、他の地方では扱われていない。


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・ジィル大草原の湖と小川と魔物たち


ジィル大草原にはあちこちに大型の湖や小川が点在している。

湖によっては全長100kmを優に超えるものも存在し、そう言った場所には50mを超える程の超大型の魔物が水を飲みに来たりしている。

ここにいる大型、超大型の魔物は基本的には大人しく、襲われることはまずありえないが、稀にその移動に巻き込まれて命を落としてしまう者が居る為、決して近づいてはいけないと注意喚起が出されている。

大型の魔物にとってわずか2mにも満たないヒトは蚊のような存在なので、魔物はそれに気にしないし、気が付かない。

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・ジィル大草原にある町や都市


細かく小さな村や町があちこちにあるが、大型の町や都市はほとんどなく、あるとすればワービルトぐらいである。

また、大草原の西部には40年ほど前まで300年間ほど、悪しきドラゴンが支配していた地域が存在し、その地域の町や村は全て滅ぼされて廃村、廃街になっている。

現在はその悪しきドラゴンはドラゴニアで倒されたと言われており、今はただ廃村、廃街が残るのみであり、呪われた地と呼ばれ誰も近づかず、強い魔物の巣窟になっているという噂がある。


ビライト「ジィル大草原…本当に果てしないんだな。」


クライド「本当に広いだけだ。つまらん場所だ。」


ビライト「でも気候は良いかな。気持ちが良い!」

キッカ「いいなぁ。私も早くその風を感じれるようになりたいなぁ。」


クライド「…まぁ…気候だけは悪くはない。だがそれだけだ。」


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ショートスキット1


フリードの長い旅路2



おお、続きが聞きたくなったか?

では旅で見たものを話してやろう。



アバロンと合流した国、“日本”と呼ばれる国は島国でな。

とても小さな列島なのだが、非常に高度な文明を所有しておった。


そうだな、この世界で言う…ヒューシュタットに似ているような。そんな場所だったがな。

それだけでは無く、都市から離れると自然豊かな場所もあってな。

少し変わった“和風”と呼ばれる文化もあってな。とても風情が良い代物だった。

アバロンが着ていた服は“浴衣”と呼ばれるものでな。

風通しが良くて気持ちのいい服だった。

アバロンを世話してくれた人間たちにお礼をし、別れを言い儂らは再び世界を巡った。


どこまでも高い氷山を登ったり、深い海を潜ったこともあった。

長い長い道を歩き続けたこともある。

小さな島でつかの間の休息を取ったこともある。


大地が全て氷に覆われた場所では誰も知らないお宝を発見したこともあった。


儂らは世界中を余すことなく冒険した。

そして、儂らはついに目の前に“それ”と対面したのだ。


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そう、世界と世界を繋ぐ空間だ。

何処に繋がっているかは分からない。違う世界の何処か。

そんな空間は突然目の前に現れ周囲のものを吸い込もうとブラックホールのように襲い掛かってくる。

儂らは手を繋いでそこから抜け出そうと試みた。


だが、そんな健闘も虚しく、セラスが空間に飲み込まれてしまったんだ。


儂とアバロンは必死になってその空間に入った。



その時だ。儂の身体に変化が起こったのは…



空間は非常に不安定で不思議な力が暴走しているかのように暴れ狂っていた。

その力に儂は包まれ、巻き込まれた。



あの時の感覚は今でも覚えている。

自分が自分を保てないほどにゆがんだ視界と、全身のあらゆるものが暴れているかのような感覚。

痛みは無かったが、痛みとはまた違う、身体のあらゆる細胞が暴れているかのような…


意識はもうそこにあらずだったな。気を失うとはこういうったことを言うのだろう。

その空間を抜けた先は大空だった“ようだ”。


空を飛べないセラスとアバロンは真っ逆さまに地上めがけて落下していく。

「セラス様ーーーッ!!」

セラスを捕まえて抱きかかえ、守ろうとするアバロンだったが…


「アバロン…!」

「くっ…この高さでは…助からん…!もうダメか…!セラス様、すみません…」


諦めかけていたアバロンの眼前に“儂は居た”


「ド、ドラ…お前…フリードなのか!?」

「ど、どうしてそんな姿に!?どうなっていますの!?」


そう、儂はドラゴンになっていた。

不思議な力は儂の細胞や遺伝子を書き換え、違う種族に書き換えてしまったんだ。

こんなことあり得ないと思うだろう。正直儂も今でもあり得ないだろうと思っているとも。

だが、現実だった。

気を失っていた儂の30mを超えた身体をクッションにし、アバロンとセラスは助かった。


そして彼らと儂がたどり着いた世界。

それは“ナチュラル”と呼ばれる世界で、現在のドラゴニアだった。

アバロンとセラスは元の世界に帰ってこれたのだ。


昔からドラゴニアは優しい国でな。

儂はアバロンとセラスを助けた恩人…ん?恩ドラゴン?としてな、歓迎されてしまったのだよ。ハハハ。不思議なもんだ。

このナチュラルには伝説上でしかドラゴンは存在しない。

儂は世界でただ1匹のドラゴンになったのだ。


そして感じていた。

空間の不思議な力で儂の寿命は大きく伸びた。

大きく…などという物差しでは測れん程にな。

結果儂はもう1000万年を生きた。ようやく老いを感じてきたところだ。


儂はセラスとアバロンが大好きだった。一緒に旅をし、一緒に同じものを食べ、生きてきた。

だが、彼女らは普通の竜人。

儂にとってはあっという間の時間で先立たれてしまった。


それからも何代、何十代…何万代と多くのドラゴニアの王族たちをこのドラゴニアで見届けてきた。


途方もない時間を儂はこのドラゴニアで生き続けている。

そんな時間の中で、ついさっき変化があった。

それがビライトたちの存在だった。

ベルガをはじめ、多くの王たちのドラゴン便になることはあったが、王でもない誰かをたくさん乗せて空を飛ぶなど、ずっと無かったからだ。

そして、このシンセライズで生きる皆の姿に儂は心を動かした。


わずかな時間だった。

それでもそれは忘れられないものになったのだ。


セラス、アバロン。

久しぶりに手土産が出来た。

儂がお前たちの魂の元へ行き、再会出来た時にはぜひこの小さな冒険の話を聞いてくれないか?


そう言いたいのだよ。



ウム、こんな話をしたのは初めてだ。

さぁもうおやすみ。また明日な。






フリードの長い旅路~END~


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ショートスキット2



大草原の丘の上で





「うーん!気持ち~!」

レジェリーは風を感じていた。


そしてそれと同じくして、ヴァゴウもまた浮かない顔で大草原の奥をボーッと見ていた。


「ヴァゴウさん。」

「ん?おお、どうした?」

レジェリーに声をかけられて、ハッとしたようにレジェリーを見る。


「浮かない顔、してるわね。」


「あー…そう、だな。」

「竜の鍾乳洞で良くないものを見たのはお互い様よね。しかもクライドに全部知られてるってのもなんか癪だわ~…ほんと嫌んなるわよねー!」

笑いを挟みながら気を遣うように会話するレジェリー。

「ガハハ、そうだな。すまねぇな。気を遣わせた。」

ヴァゴウはレジェリーの頭をワシワシと撫でる。


「…ねぇヴァゴウさん。あたし、みんなに相談した方がいいのかな。」

「鍾乳洞で見たことをか?」

「うん、あたしはビライトたちに隠してることたくさんある。ヴァゴウさんにだって。あたしたちはもう大事な仲間だし…あっ!クライドは別よ!?」

しっかりクライドを度外視していくレジェリーにハハッと笑うヴァゴウ。


「ワシも同じさ。」

ヴァゴウは言う。

「ワシだってビライトやキッカちゃんに話してないことはたくさんあるさ。ワシの知らない、記憶にないこともある。」

ヴァゴウは奥の方でキッカと楽しそうに話をするビライトを見る。


「けどな、言いたくなかったら言わなくてもいいさ。仲間だからってすべてを言わなくちゃならねぇなんてこたぁないさ。」

「…そう、かしら。」

「言いたくなったら言えばいい。けどな。」

ヴァゴウはもう一度レジェリーの頭を触る。しかし、今度は優しくだ。ゆっくりと手を置く。

「辛い時や吐き出したいときは遠慮すんな。そういう時には全部吐き出せ。それでいいじゃねぇの。」

ヴァゴウは笑う。


「うん、そうだね。あはは!変な感じ!あたしが慰めに来たのに逆に慰められちゃった!」

「ガハハ、まぁワシにも言えることさ。心配すんな!ワシは元気だぞ!!」

ヴァゴウはだから心配するなと高く笑って見せた。


「ありがと。ヴァゴウさん。」

「おうっ。」




(はぐらかされちゃった。ホント、隠すの下手なんだから。)


レジェリーは分かっていた。

ヴァゴウが無理をしているということを。

自分もそうだということを。


だからこそ、ちゃんと見ておかないといけないと思った。





「おっと、クライドのやつ、どんどん先に進んでやがる。ホレ、行こうぜ。」

「アッほんと!あいつってばホントにー!」

レジェリーは走り出す。


「…ワシに言えたクチじゃねぇがな…」


ヴァゴウはぼそっとその言葉を吐き、歩き出す。



いつか知るときが来るかもしれない。

その時、自分の周りには誰かが居てくれるだろうか。

ヴァゴウも、レジェリーも同じことを考えていた。


旅はまだまだ長い。不安も抱えて2人は歩き出す…




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ショートスキット3


クライドの憂鬱




「…」



このジィル大草原には嫌な思い出がある。


まだ自分が幼かったころ。

俺はこの大草原でとある出来事に出くわし、命を落としかけた…らしい。


最も、俺にその記憶はない。後で遠回しに聞いた記憶だ。

俺が最後に覚えている最も古い記憶は・・・


古く、ボロボロの町の路地裏でボロボロの汚れて臭い布を被って雨を凌いでいるところだ。

とても寒くてブルブルと震えていた。

お腹が鳴り、意識がもうろうとした。


だから俺は自分で食べ物を探すためにゴミ箱を漁り、残飯を食らった。

あとでとてつもなく腹が痛くなったが、その腹痛さえも、俺にとっては生きているあかしだった。




それから俺は町で一番の短剣の使い手である大泥棒・・・いや、殺し屋に頼み込み、技術を習得した。

物を盗む技術、人を殺す技術。そして情報を集める技術。

あらゆる策を盗み、習得し、武術を独学で学んだ。殺し屋として生きていくために。


やがて俺は殺し屋を辞め、独立し、町を出た。

それからは世界中で情報屋として世界を回っていた。

そんな道中で会ったのがアトメントだった。

普通の獣人とは少し異なる強い力を秘めていることを悟ったが、アトメントには依頼を頼まれた。


「シンセライズ東部の町、コルバレーにとある兄妹が居る。そいつらは特別な存在でな。奴らの情報を集めてきてくれ。」

そう頼まれた俺はコルバレーに向かった。

イビルライズという空間に引きずり込まれ、身体を失い精神体のみとなった少女キッカと、その兄であるビライト。

彼らの情報を町の人々から金や物と引き換えに得ていった。


しかし、中には少しばかり違和感や矛盾が発生することがあり、正確性があまりなかった。


つい、俺は奴らと接触する際にイビルライズの名を口にしたが、それからというものの、ビライトの行動力に油断をした。

まさかそのまま旅に出てしまうとは。


アトメントからは追跡し、必要ならば力を貸してやれと言われた。


追跡している間にも仲間が増え、気が付けば俺はこいつらと一緒に行動することになっていた。

これは依頼だ。

アトメントからの依頼。報酬を頂いているのならばそれは必ず成し遂げなければならない。

アトメントから出された報酬は過去1番の量だった。俺にとっては最大の依頼。必ず成し遂げて見せる。


俺はこれでしか生きることが出来ない。

他には何も持っていないのだから・・・



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次回のDelighting World!!


あたしレジェリー!

竜の鍾乳洞を無事に抜けたあたしたちは、ジィル大草原に出たの。

ここからワービルトまでは乗り物を使って行くみたい。

その期間はなんと4日間…!


行く先々にあるワービルト運営の野営地を経由しながら進むみたい。


その行く先々には多くの冒険者や旅行者が居て…ってあーーーっ!!あなたは!!




次回!第五章!

ジィル大草原編 ~望まれなかった命と王となる男~



これこそまさに運命の出会い…って感じね!


でも、なんだか不穏なサブタイね…誰の事なのかしら…?



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