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Delighting World  作者: ゼル
第三章 サマスコール編~情報屋と狙われた一行たち~
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Delighting World ⅩⅡ

Delighting World ⅩⅡ









(ビライト…)

夢を見ている。

声が聞こえるが、何処から聞こえるか分からなく、真っ暗闇の中何処か幼い声が聞こえてくる。


「…誰だ?」


(ビライト…ボクを…………み……………)


「君は…」


(……………)

声はもう聞こえない。

そしてその風景に光が射し込む。朝が来ようとしている…




---------------------------------------------------------



朝が来た。


太陽の光が木漏れ日として降り注ぐ。

昨日降っていた雨のしずくはキラキラと輝き、地面へと伝い落ちる。


「…ん…朝か…」

「おはようお兄ちゃん。」

「あぁ…おはようキッカ。」


ゆっくり起き上がるとビライトは頭をポリポリと掻き、ゆっくりと立ち上がる。


「オッサンとレジェリーは…まだ眠っているな。」

「おはようビライト。良い朝だぞ。」

「あ、フリードさん。おはようございます。」

「うむ、今日はとても穏やかな天気になりそうだ。怪我ももう飛べるまでには回復しているだろう。」

フリードは大きな身体を動かし、ビライトに傷跡を見せる。確かに昨日よりも確実に良くなっている。


「今日はサマスコールに向かって進めそうだね…良かったぁ…フリードさんが良くなってホッとしたよぉ…」

「そうだな!でも、サマスコールか。どんな町なんだろうな。」


「サマスコールは非常に猛暑な気候にある町でな。暑さだけは覚悟しておいた方がいいぞ。」

「そ、そっか。」


サマスコールはかなり熱帯な地域にある。

「だがドラゴニア領だからな。ドラゴニアの人々が移住して出来上がった町だ。竜人が多く、とても温かみのある良い町だぞ。」

「へぇ~!ドラゴニアと同じ感じなんだね!きっと素敵な町だよ!」

キッカは目を輝かせて言う。


「では、レジェリーとヴァゴウが起きたら食事をして出発だな。」

「そうだな。ところで…クライドは?」


「クライドはあそこだ。」

クライドは少し離れた岩陰に居た。


座って何かをしている。

「クライド、おはよう。」

「…あぁ。」

ビライトは自分からクライドに歩み寄り、挨拶を言う。

「何してるんだ?」

「…剣を磨いている。」

クライドが所持している短剣だ。

オートマタと戦闘している時には見当たらなかったが、クライドは2本の短剣を所持している。

「これ…コルバレーでオッサンから買ったやつだよな。」

「そうだ。見たところふざけたような立ち振る舞いをしているが…アイツは誰よりも侮れんな…」

クライドはチラッと大いびきをかいて気持ちよくまだ眠っているヴァゴウを見る。


「侮るって…俺たちはもう仲間だ。そんな言い方はしなくていいんじゃないか?」

ビライトはクライドにもっと仲間として受け入れてほしい。そう願ってクライドに接近している。


「勘違いするな。俺は仲良しごっこをしたいわけではない。そして、仲間ではない。俺にとってお前たちは取引関係にすぎない。」

クライドは短剣を磨き続ける。

「…そっか…でも俺たちは仲間だ。俺はそう思ってる。」

「フン、好きにしろ。だが俺は依頼の為にここに居る。それだけは変わらん…もういいだろう。さっさと出発の支度をしろ。」

「…」


クライドはそれ以上の話をしてはこなかった。


「まだ心を開いてはくれないか。」

「一緒に冒険してれば段々打ち解けてくれるよ、お兄ちゃん。」

「そうだな。」


(若い者たちの会話は見てて飽きないなぁ。昔、一緒に旅をしていたあいつらを思い出す!)

フリードは3人のやりとりを静かに優しく見守った。


「出発の準備をしておこう。オッサンが起きたら飯の準備が始まるからな。」

「そうだね。」



ビライトたちは自身の準備を始めた。

荷物を整理し、食事が取れる準備を始める。

それから程なく、レジェリーが起き、髪の毛を整える。

寝る前にほどいた髪をまとめ、ポニーテールにする。

「うーん…野宿だけどなんだかよく眠れた気がする!昨日動き回ったからかしらね~」

「かもな。俺も結構よく眠れたんだ。」

レジェリーとビライト、キッカの3人は会話を弾ませながら支度をする。


「んがー…んが。ふが…ふぁ~!」

そして変な声と共にガバッと起き上がるヴァゴウ。

「んあー…」

眠そうに身体を起こし…

「ん…んーーーっ!!よっし!!」

大きく背伸び、そして気合の一声。

ようやっとヴァゴウの起床である。


「おっそいぞオッサン。」

「おはようヴァゴウさん。」

「相変わらず唐突に起きるわね~…」


「んあ、あぁ~おうッ!おはようッ!飯にすっか!」

ぼーっとする頭をくるっと回して肩をゴキゴキ言わせながら大きな声で挨拶をするヴァゴウ。


魔蔵庫からドラゴニアで買ったブレッドが飛び出す。

「ホレ、調味料もあるぞ~」

まるで台所の引き出しや冷蔵の扉の中にでも繋がっているのかの如く、食材や調味料がポンポン出てくる。

「えいっ!」

レジェリーの炎魔法で火を起こし、食材たちに火を通していく。

良いにおいが森に充満し、小動物たちが集まってくる。

「おお、お前らも食えッ」

ヴァゴウは寄ってきた小動物たちにも餌を与え始める。

小鳥や小さな獣たちが集まり、ヴァゴウやフリードの肩や頭にどしどしと乗り、美味しそうに食べている。


小動物たちに囲まれ、森の小さなパーティのような雰囲気に包まれる。


「なんだか、本当に旅してるとは思えないわ…何度も思うけど…」

レジェリーは毎度毎度この旅してるとは思えないぐらいの食事に慣れない。


「飯食わねぇと元気出ねぇからなッ!ワシの魔蔵庫にはまーだまだ入ってるから心配するなッ」


ガハハと笑い飛ばすヴァゴウ。

ビライトは出てきた朝ごはんを持ち、フリードとクライドの元へ。

「フリードさん。」

「おお、すまんな。」

「俺たちの飯じゃ物足りないかもだけど。」

フリードの大きさはビライトたちの30倍ぐらい。

明らかに少ないだろう。それでもフリードは「構わんよ、ありがとう」と言い、かみしめるように朝食を頂いた。

「うん、美味い。」


満足そうに喉を鳴らすフリード。


そして…

「ホラ、食おうぜ。」

ビライトはクライドにも朝食を持って行った。


「結構だ。飯は自分で調達する、お前たちの食材なら大切にしろ。」

「はぁ…ったく。良いから食えって!」

ビライトは半ば押し付ける形でクライドに朝食を渡す。

「…!」

「俺たちは恩を売ってるつもりでも、下心があるわけでもない!だから遠慮するなって!な?」

「クライドさん、一緒に食べようよ!私は食事は出来ないけど…でもみんなが美味しそうに食べてると、私も美味しい気持ちになるし、絶対元に戻ったらヴァゴウさんの料理おなか一杯食べたい!ってなるもん!」

「…うるさい連中だ。」

クライドはそれだけ言い、渋々、食卓へと足を運んだ。


「フウ、やれやれ。戻ろうキッカ。」

「あっ、うん…」


そのあとも食事が続く。

ヴァゴウやレジェリーのおしゃべりにビライトとキッカは楽しそうに会話をする。

クライドは静かに食事を取った後、すぐに岩陰に戻ってしまったが、食事の間はヴァゴウに絡まれまくり、とても嫌な顔とため息をつきながらも不機嫌そうに食事を取っていた。

だがその程度で引くヴァゴウではなく、クライドが侮れないと言っていたのはこういうことも含まれているのかもしれないと、ビライトとキッカは思ったのであった。


---------------------------------------------

「よし、では行くぞ。」

「「「お願いしまーす!」」」

ビライト、キッカ、レジェリーの声と同時に再びフリードは空を飛んだ。

昨日見ていた空の景色が再び戻ってきた。


今度はクライドも一緒にフリードに乗り、一行はサマスコールに向けて進み始めた。


「昼時過ぎぐらいには着くだろう。それまでゆっくりしておくといい。」


フリードはそう言い、のんびりと飛行した。


「しかし、大分遅くなってしまったな。ベルガやクルトにまた寄り道をしたのかと怒られてしまうな。」

「そっか、すぐ帰れるはずだったもんなァ。すまんなフリード。」

「なぁにヴァゴウ。慣れているから大丈夫さ、気にするな。」


それから先、オートマタの襲撃はなく、森のエリアを抜け、再び平原へ。

しかし、今まで平原と異なり、草の背が高く、芝生というより、雑草地のような平原だ。

「今の時期、ドラゴニアは温帯だがこの一帯は雨期だ。草が生い茂りすぎて道が見えなくなっているのだ。」

フリードは今飛行している場所についての知識を披露してくれる。

キッカとビライトはそういう話が大好物なので、ワイワイと話を聞いている。


「暑くなってきたなぁ。」

気温が上がっている。

日差しも少しづつ強くなってきていて、雑草地の平原も終わりを迎え奥に見えてきたのは…


「おお!あれは!」

「うわぁ!本でしか知らなかったけど…これが!海!!」

キッカが指をさす。

その先に広がっていたのは広大な海だ。


日差しでキラキラと輝く、青く、広大で…見たこともない大きな生き物が泳いでいるのが見える。

「あたしも初めて見たけど…本当に果てしないのね!」

空から見る広大な海。

海の向こうも地平線まで海。


そして、その向こうに何があるのか。実はあまり知られていない。

ドラゴンであっても海の向こうにはたどり着けないようだ。


空を飛ぶには魔力を要する。魔力が底を尽きれば飛行は出来なくなる。

そして海はあまりにも広大で、なおかつ海以外何も無いため、方向感覚も分からなくなる。

海の向こうに何があるかも分からないまま魔力切れを引き起こし、墜落。そのまま海に沈み、命を落とす…


海というものは美しいが、その中で呼吸をすることは出来ない。

一度その中で溺れてしまうともはや助かることは出来ないだろう。


「この向こうには何があるんだろうな。」

「誰も知らないものがこの向こうにあるかもしれないんだよね。凄いなぁ!」

ビライトとキッカは海の向こうに憧れのまなざしを向ける。


「見えてきたぞ。サマスコールだ。」

フリードの声を聴き、ビライトたちはその方角を向く。

確かに大きな町が見える。

ドラゴニアのような都会ではないが、しっかりとした建物がずらりと並んでいる。

高い建物は存在しないし、道もヒューシュタットのように固められているわけでもないが、ボロボロというわけではない。

しっかりとした普通の町だ。コルバレーと似たような雰囲気も感じる。


「あれがサマスコールか。コルバレーとちょっと似てるかも。」

「うん、確かに!」

ビライトとキッカはコルバレーのことを思い出す。

「儂は大きいが故に町には入れん。だから近くで降ろすからお前たちだけでサマスコールへ行ってくれ。」

フリードはサマスコールより少し離れた場所に着地、ビライトたちはフリードの翼を歩き、地面に降りた。


「よし、出発しよう。」

ビライトの声に皆が頷き、サマスコールへと足を進める。


入り口も開いており、特に門番が居るわけでもない。

ビライトたちはサマスコールの町へと入って行った。

「それにしても…暑いわねぇ…」

日差しが強い。

身体がほってりとのぼせてしまいそうな程に暑い。

「ホントだな…汗が出てきた。」

「クライドさん、そんな服装で全部覆ってたら暑いんじゃ…?」

キッカはクライドの容姿を見て言う。

クライドは全身コートで身を隠している。

頭もフードをかぶっており、見えているのは目ぐらいだ。

「問題ない。」

クライドはそれだけ言い、歩き続ける。


「何か事情があるのかな。」

「いいじゃんほっときましょ。」

レジェリーは辛辣なコメントをさらっと零す。


「町長の家はあそこだぜッ。」

ヴァゴウが指さす。

その先には大きな家がある。この町で一番大きな建物だ。

古い風情のある建物だが、豪邸だというのは見て分かる。


「あと気になるんだけど…」

ビライトが周囲を見る。

「あたしも同じこと考えてる。人の数が少ないような気がする。」

「そうなんだよな…」

ビライトとレジェリーが気になったのは、このサマスコールの町を歩く人が異常に少ないこと。

今は昼時だ。

かなり人が多い時間帯のはずなのだが、数がまばらだ。

大通りでさえも、10人も居ない。


「…あれ?クライドは?」

クライドが居ない。

辺りを見ると、クライドは日陰で誰かと会話していた。


「…この町はいつもこのぐらい人が少ないのか?」

クライドは町の人を捕まえて情報を聞いていた。


「…ほう、なるほど分かった。礼を言う。」


クライドは一通り話を終えてビライトたちの元へと戻ってきた。


「ちょっとあんた!勝手にウロウロしないでよね!」

「やかましい。仲良しごっこをしているのではない。何をしようが俺の勝手だ。」

「ムキーー!腹立つーッ!!!」

じたんだを踏むレジェリーをスルーしビライト、キッカ、ヴァゴウに情報を提供するクライド。


「良くない話だ。」

クライドはその日のニュースが記載されている紙を見せた。



「これは…新聞だな。」

「新聞?」

「その日のニュースとかをまとめて書いてあったりとかする情報紙だ。大きな町や都会には結構あってだな。」

「へぇ~…で、これが今日の新聞…つまりニュースが記載されているのか。」

「そういうこった。」

ヴァゴウは新聞を広げ、記事を見る。

するとそこにはつい先日見た“あの姿”が映っている写真が貼ってあった。


「こ、これ!」


「あぁ。この町は…ヒューシュタットに制圧されている。」


「!!」


記事の内容を要約すると、先日、謎の機械人間、つまりオートマタとヒューシュタットの人間が町に来て、圧をかけているようだ。

武力的な脅しを受け町の人々は怯えて外に出たがらないようだ。


「ヒューシュタット…一体何を目的としているんだ?」

「…今ここに来ているヒューシュタットの者たちの姿は見えない。大勢で来ているわけではなさそうだが…ともかく町長の所に行く前に情報を集めた方がよさそうだ。」

クライドは提案する。

「えーせっかくここまで来たのに!?ハァ~…こんな暑い町を歩き回るのは骨が折れるわぁ…」

レジェリーはがっかりしてため息をつく。

「オートマタは俺たちの情報を共有している可能性が高い。そしてその情報はヒューシュタットの関係者にも伝わっているはずだ。俺たちは素性を知られているかもしれんのだ。慎重に行動するべきだ。」

クライドは慎重に行動するように促す。


「はいはい分かりましたよ~っと。」

「…うるさい女だ。」


いつまでも険悪なレジェリーとクライド。

まぁまぁとなだめるビライトとキッカ。


「まずは宿の確保だ。行くぞ。」

「宿って…1日かけるのか?」

ビライトが尋ねる。


「そうだ。徹底的に情報を集め、100%の情報で対策を立てる。」

「随分と慎重だな。」

ヴァゴウが言う。

「ヒューシュタットは俺たちの予想を遥かに超えた技術を持っている。100%でも足りないぐらいだ。」

「まァ…ヒューシュタットは確かにワシらには到底分からんような技術を持っている。」

「そうだよな。分かったよクライド。俺たちにも情報集めを手伝わせてくれよ。」

ビライトはクライドの意見に賛成。

「私も手伝う!」

「うっし、いっちょやるかッ」

キッカもヴァゴウもそれに賛同。

「レジェリーはどうする?」

「むー…ここであたしだけ何もしなかったら悪いじゃん!だからあたしも協力したげるわよ!」

レジェリーも不本意ながら了承した。


「ならばまずは全員この町の構造、道を把握しろ。俺が指示を出す。」

クライドはそれぞれに集めるべき情報を提示することにした。


いったん宿の予約を取り、クライドは地図を取ってくると数分外し、戻ってきた。

クライドは町の地図を人数分かき集めた。

それを全員に配布してクライドは指示を出す。


「まず俺は隠密行動をしながらこの宿から町長の家までの最適なルート、そして逃げ道や抜け道。そしてヒューシュタットの行動を探る。」

クライドは隠密行動が得意のようだ。動きも素早く、情報集めも得意な情報屋なので適役だ。


「ビライトとキッカは町の人々から情報を集めろ。ヒューシュタットの奴らが来たあとの町の変化を町の奴らに聞き出してこい。」

「分かった。」

「うん。」


「ヴァゴウは武器の買い出しだ。」

「ん?武器ならいっぱいあるぞ?」

ヴァゴウは魔蔵庫から武器を2つほど取り出す。まだ中にはたくさんの武器があるようだが。


「どうせ近接武器ばかりだろう。ここで求められるのは遠距離武器だ。」

「おーう、お前すげぇな。ワシが遠距離武器持ってないの知ってたのかァ?」


ヴァゴウは遠距離武器は持っていなかった。持っていこうとはしたようだが、近接武器が大好きなヴァゴウはついつい近接武器ばかりを選んでしまったようだ。


「やはりな。お前の性格からしてそうだろうと思った。」

洞察力にも優れているクライドはヴァゴウの性格を見抜いた上で指示を出したようだ。


「必要なのは弓や投げナイフ、そして銃だ。」

「銃?銃はヒューシュタット産の武器だ。ここには無いんじゃないか?」

「行けば分かる。」

クライドはそれだけ言うとヴァゴウの指示はそこで終わった。


「そしてレジェリー。お前は……フム…」

クライドは少し間を開けて考える。

「な、なによ!あたしのときだけ悩まないでよッ!」


「お前には2つ頼むとしよう。忙しくしておいた方がそのうるさい口も静かになるだろう。」

「ホントいちいちムカつくわねあんた…」

クライドはレジェリーの言うことは完全にスルーして指示を出す。


「まずはフリードを目立たない場所に隠せ。あいつは伝説の古代人だ。それでいてでかすぎて目立つ。ヒューシュタットにも顔が割れている。あのような開けた場所に待たせるのは良くない。今からでも手遅れかもしれんが一応だ。」

「わ、分かったわよ。」

「ついでに1泊することも伝えておけ。そして2つ目だが…やかましいお前にピッタリの仕事を与えてやるから感謝しろ。」

「だからそのムカつく言い方やめなさいよね!」

「お前には“嘘の情報”を広めてもらう。それを新聞記事に載るぐらいにまでだ。」

「う、嘘の情報!?」

驚くレジェリー。


「そうだ。妙な冒険者たちがヒューシュタットの邪魔をしようとしていること。翌日の夜、サマスコールの酒場で作戦を決行する準備をすることを広めろ。」

「…理由は分かんないけど…分かったわよ…」

腑に落ちない感じではあるが、レジェリーは深く考えずに渋々了承した。


-----------------------------------------------------


「…というわけなの、フリードさん。」

「なるほど…そういうことならば納得だ。」

解散し、レジェリーはフリードの元へと行き、状況を説明した。

「それにしてもほんと頭きちゃうわクライドの奴!」

フリードを近くの森へ隠すため、フリードに乗り同行するレジェリーはぶつくさと文句を言う。


「ハハハ、すっかり仲良しじゃないか。」

「仲良しなもんですか!全く!!」

レジェリーはわりと思い付きで行動するタイプだ。

対してクライドは確実性が無いと行動に移さない。

レジェリーとは真逆なのだ。

「だが、クライドがレジェリーに出した頼みは的を得ていると思うぞ。他の皆にもな。」

フリードは言う。


「ビライトは結構社交的だ。それにキッカが見える者に対してだと話題を集めることが出来る。つまり会話が弾みやすくなり情報を聞き出しやすいだろう。」


「ヴァゴウはいざ、戦闘になったとき、最も信用出来ると思ったのだろう。武器の知識に長けているヴァゴウに戦闘の対策をさせるのも理にかなっている。」


「そしてレジェリーは誰よりも活発で元気じゃないか。よく目立つという利点を生かした指示…というわけだろう。」

「そう聞けば聞こえはいいかもだけど…いや!よくないわよ!悪目立ちがすぎるって言いたいのかしら!せめて癇に障る言い方やめてくれたらいいのに!ムカつくわ~!!」

レジェリーは思い出すだけで腹が立ってきた。頭をぐしゃぐしゃと掻きむしり、頬を膨らませる。


「まぁまぁレジェリー。もしクライドが本当にお前に期待していなかったら何も頼まんだろう?」

「むー…」

「一応信頼してるのかもしれんぞ。色々と謎が多いが、ここは1つ、信じてみてはどうだ?」

クライドの言葉も一理ある。

レジェリーは完全に納得したわけではないが…

「分かった。悔しいけどあいつの強さや情報屋としての実力は本物みたいだしね…ムカつくけど今は乗ってやるとするわ。」

「そうそう、そうやって付き合っていけば、おのずと分かり合えるものさ。」


レジェリーはひとまず、自分のやるべきことをやるべく、行動をすることにした。

フリードを森の奥へと待機させ、レジェリーはサマスコールの町へと戻って行った。

「ハハハ、若いなぁ。儂にもあんな初々しい時代があったもんよ。思い出す…なぁ、アバロン。セラス。そう思わないか?」


フリードは空を見てつぶやいた。

遠い遠い、古き世界の友たちに…





サマスコールへやってきたビライトたちの情報集めが始まった。

ヒューシュタットの目的は一体なんなのか。


そしてビライトたちは無事にドラゴニアから託された書類をサマスコールの町長に渡すことが出来るのか。



サマスコールでの暑い日差しの元、クライドの指示のもと、ビライトたちは動き出す…


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