Delighting World Brave 二章 二幕~ ドラゴニア防衛戦 最悪との再会~
「もうすぐ森を抜けるぞ。」
森を抜けてドラゴニアが見える丘に間もなく辿り着くビライト、レジェリー、カタストロフ。
3人が森を抜けた先に見えたドラゴニアは一見大きな変化はないように見えた…が、その周囲が明らかに異常であることを目撃した。
「見て!黒い何かがドラゴニアに向かってる!」
「あれは…死者のようだ。ドラゴニアに向かって侵攻しているのか…?」
しかし、死者たちの動きはとても遅く牛歩である。
だが数は非常に多く、しかもドラゴニアの周囲を囲むようにいるため実質ドラゴニアの国民たちの逃げ場はない状態だ。
更に死者ほど多くなないがカタストロフとデーガが指揮を出している魔物たちと会敵している姿もいくつか見受けられた。
「…ムゥ…」
カタストロフが見ているのは城下町だった。そして、唸るような声を出す。
「どうしたの?カタストロフ。」
「…嫌な気配を感じる…死者ではなく、城下町の方からだ。」
「それって!」
「あぁ…奴が…奴が居る。」
カタストロフと最悪の勇者ウルスト。
因縁の相手同士である2人はお互いに感じ取れるものがあるのだろうか。ウルストがカタストロフの気配を感じているかどうかは分からないが、勇者と魔王は長い歴史の中で何度も戦ってきた。ウルストもカタストロフの接近を感じていても不思議ではない。
「…レジェリー。」
カタストロフは2人を見る。
「どうしたの?」
「…レジェリー、もしもウルストと会敵したら、すぐに逃げるのだ。我が時間を稼ぐ。」
「えっ、そんなの駄目よ!あたしも戦う!」
レジェリーはそう言うが、カタストロフは首を横に振る。
「奴の強さは抑止力でも太刀打ちできるか分からぬほどに強大だ。そして…奴は“女には目が無い”。」
「…!」
「我は見たくないのだ。」
深くは言わなかった。
だが、レジェリーも女性だ。カタストロフが何が言いたいのかは分かった。
「…でも、それでもあたしは…!」
「レジェリー、俺たちには俺たちのできることをやるべきだ。」
「ビライト…」
ビライトもなんとなく察したようで、レジェリーを説得する。
しかし、それはカタストロフを信じているからの言葉だ。
「カタストロフ、1人で戦うつもりなのか?」
「…我は決着を付けねばならぬ。」
カタストロフは自分という存在が生み出した勇者という存在の中で、最悪と呼ばれるウルストが生まれてしまったこと、それは自分にも責任があると思っている。だからこそカタストロフは自分の手でウルストを倒さねばならないと思っているようだ。
「俺たちはボルドーさんたちに会いに行こう。きっと今頃国全体が対策に乗り出していると思う。」
「…ウム、それで良い。」
カタストロフはそう言うが、ビライトは言葉を続け、カタストロフの腕に手を置き、顔を見つめる。
「でも、俺たちもカタストロフを見捨てないから。絶対。カタストロフが嫌と言っても俺は危険だと思ったらカタストロフに加勢する。それでいいか?」
「ビライト…!」
「ビライト…」
「俺たちだけじゃない。ドラゴニアには頼りになる人たちがいっぱい居るんだ。みんなで力を合わせればきっとウルストだってなんとかなる。だからカタストロフ。俺たちには俺たちの出来ることであんたを助けるよ。」
ビライトはカタストロフを見捨てることはしないし、1人で戦わせるつもりはなかった。
だが、カタストロフがあれほど恐れる存在だ。自分たちだけではとても倒せない相手かもしれない。だが、ドラゴニアは大勢の頼りになる者たちがいることを良く知っているビライトは協力をお願いしようと提案したのだ。
「…あぁ、ありがとう。心強い。」
カタストロフはそう言い、ビライトの手を握り返した。
「あたしも力になるからね!絶対あなたを失いたくないもん。」
「ウム、我もレジェリーと共に生きたいと思っている。故に死ぬわけにはいかぬ。」
3人はドラゴニアに着いてからの動きをまとめ、再び3人はもうあと一息のドラゴニアに向かって空間移動を始めた。
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Delighting World Brave 二章 二幕(~ドラゴニア防衛戦 最悪との再会~)
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丘を下り、平原の先に大きな城下町。
前回と同様、南に位置する大広場、英雄バーン像があるところから3人はドラゴニアに入ろうとする。
「…復興が進んでいない。」
「ううん、多分イビルライズの衝撃波でまた壊れちゃったんだと思う。」
ドラゴニアの建物は依然倒壊したものが多いが、中には修繕を行った形跡が残っているが再び倒壊したものと思われる建物が多く見受けられた。
そして人影はほとんどない。
「…あちらと城、そしてこっち…3つの場所に多くの気配を感じる…」
カタストロフが指さすのは避難所と仮設住宅がある西部。そして病院がある北東部。
そして中央に位置する城だ。
「ウルストの気配は?」
ビライトは尋ねる。
「…今はぼんやりとしか感じぬ…だが…あちらの方から血の匂いがする。」
「…!」
カタストロフが感じていたのは避難所の方だった。
「あっちって魔法学園の方角よね…」
「多くの種族の気配だ。」
「もしかして家がない人たちやヒューシュタットやワービルトから来てくれた人たちが居るのかも。」
「それって一般人ってことじゃん!そんなところにウルストが紛れ込んでたら大変なことになっちゃうわよ…!」
「ウム…だが、一足遅かったようだ…」
カタストロフは拳を握り、悔しそうな顔を見せる。先ほど感じた血の匂いのことだろう。
すでに犠牲者が出ているようだ。
「…奴め、楽しんでいる。勇者ウルストの力を持ってすればこの国を滅ぼすことも、力無きものを一掃することなど造作もないはずだ。だがこの国はまだ生きている。」
カタストロフはしれっと恐ろしいことを言ってしまうが、ウルストの力というのはそれほどに強いもののようだ。
「我は上空から気配を探す。このナリでは目立つのでな…」
カタストロフは他の種族からすればかなり特異な身なりをしている。そして見た目だけで言うなら誰よりも悪者に見えてしまいかねない。
これは自覚は無かったことだが、デーガから散々見た目が怖いだの、恐ろしい姿しておいてだの言われていたからこそ自覚しているのだ。
「よし、俺たちはドラゴニア城に向かおう。ボルドーさんたちもきっとそこに居るはずだ。」
「うん!カタストロフ、気を付けてね。何かあったらあたしたちにもテレパス魔法で伝えてね!」
「あぁ、分かった。」
ビライトとレジェリーは城へ。そしてカタストロフは上空でウルストの気配を探ることにした。
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「ビライト、ボルドー様ちゃんと戻ってるんだよね。」
「あぁ、そう聞いているけど…」
「なんだろ、今はこんなこと思ってる場合じゃないんだけど…本当なら凄く嬉しい。」
「そうだな。俺も嬉しいよ。でも…こんな形で再会はしたくなったよな…」
「うん…でもボルドー様に急いでウルストのことを伝えなきゃ!」
レジェリーとビライトは勾配のあるボロボロの道を走り、城を目指す。見える建物はボロボロで、倒壊している建物を見て心を痛めながらも2人は城を目指す。
そしてついに城の前に辿り着いた2人は城の前に居た兵士たちを見つける。
「あの!」
「ん?…お、おお!ビライト殿とレジェリー殿!?」
ビライトたちはドラゴニアでは有名人だ。
2人の顔を見て竜人兵士たちは笑顔を見せた。
「ボルドーさんは…!?」
「ええ、いらっしゃいます。エントランスに居ますのでこの扉を開けてすぐです。」
兵士たちは扉を開けようとする。しかし、次の瞬間―――
「!」
城下町全体が地震が起こったように揺れる。
「きゃっ!」
「わっ…!?」
尻餅をつくレジェリーと、バランスを崩すビライト。
「な、何が起こったんだ!」
「ちょっとアレ見て!」
レジェリーは魔法学園の方角を指さす。
黒い煙と、紫の雷と白い雷が見える。
「もしかして…!」
「うん、カタストロフが…!」
ビライトは走り出す。
「ちょっ、ビライト!?」
「レジェリー!ここは任せる!俺は煙の場所へ行ってみる!」
ビライトはそう言い、煙の場所へと足を進めた。1人残されたレジェリーも追いかけようとするが、誰かがウルストのことをボルドーに伝えなければならない。
レジェリーは急ぎ向かいたい気持ちを抑えてボルドーの元にウルストのことを伝えに行くのだった。
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少しだけ時は巻き戻り、カタストロフはビライトたちと分かれ、上空からウルストの気配を察知するべく意識を集中させる。
(…気配が漠然とし過ぎている。だが…必ずいる。奴は必ず。)
カタストロフは主に魔法学園側である西側を集中して探すが、その手間は省かれた。
「よう。」
「!」
カタストロフのすぐ傍にあった高い時計塔。その屋根の上に立つ人間の男。
(気配を読めなかった…!)
カタストロフはすぐさま距離を取り警戒する。
「なんだよ久しぶりなのにつれないじゃないか。」
「…ウルスト・ハーツ……最悪の勇者…!」
カタストロフの額から汗が流れ出す。
「それがお前の真の姿ってやつ?へぇ~魔族の王って感じするなぁ。」
ウルストはヘラヘラと笑いながらカタストロフに図々しく話しかける。
手に持っている細筋の剣はカタストロフにとってはトラウマの業物だ。あの時と全く同じ…
ウルストがかつてカタストロフと戦った時、カタストロフはデーガの父であるラドウの一世代前の魔族を器としていた。そのため、カタストロフの元の姿と出会うのはウルストも初めてだ。
「貴様、ここで何をした…?既にこの国にはまだ新しい血の匂いがする。それは貴様の仕業か…」
「え?あぁ~そういやうるさい兵士がいたから殺ったかも。」
「…」
ウルストは誰かを殺めることに罪悪感は持ち合わせていない。
軽い気持ちで簡単に命を殺めることができる。
それが最悪の勇者、ウルスト・ハーツなのだ。
「…ふ~ん、イビルライズから聞いてたけどホントにお前、善人になっちまってるんだ?」
「もう昔の我ではない。我はこの世界を守る抑止力としてここに在る。」
「ふっ、ははは!」
ウルストは笑う。
「お前が世界を守る抑止力ねぇ。イビルライズからも聞いてはいたけどホント笑える話だな!お前はあれだけ散々多くの人を殺してきた魔王なのに。」
「否定はせぬ…だが、我は、我を大事に想ってくれた者たちから許された。我の罪は消えぬが、その罪も背負いながらもこれからを生きると決めたのだ…それに…」
カタストロフはウルストを睨む。
「罪の重さで言うならば、貴様も大概だ…!」
「俺はいいの。勇者だから。」
カタストロフの威嚇もウルストには通用しない。
そしてウルストは勇者であることを盾にして罪の意識を無かったことにしている。
「勇者というのは勇気ある者のことを言う。誰かのために優しく、強くあること。そしてそれはやがて世界の希望となるのだ。貴様の行ってきたことは勇者の行いではない。」
「それは世間の認識。俺の認識とは違う。」
「貴様を中心に世界は回ってはおらぬ。」
「俺が世界の中心であることは当たり前。」
話が通じない。
ウルストの考えは普通ではない。カタストロフの言葉も虚しく響くだけだ。
「…貴様には何を言っても無駄のようだな。」
「通じると思ってたわけ?」
カタストロフは少しでもウルストに良心があるならば、長い時を経て再会した今ならば、もしかしたら絶対悪であった自分が救われたように、ウルストにも何か救える可能性があるかもしれないと、ほんの少しだけ思っていた。
だがそんな希望は何処にも無い。ウルストは生まれた時からこうだ。
それは何千万年経っても変わらない。ウルスト・ハーツに善意は無い。彼に在るのはただ自由奔放に勇者の名を掲げて悪行とも思っていない悪行を続ける純粋なる悪なのだ。
「…貴様はこの国をどうするつもりだ。」
「さぁ?何も。ただせっかく蘇ったわけだし好きにさせてもらおっかなぁって。」
ウルストはそう言いながらカタストロフを見る。
「…そうだなぁ…せっかくだしこの国を乗っ取るってのはどうだ?」
「…!」
「へへ、良い顔するじゃんカタストロフ。」
ウルストの歪んだ笑顔にカタストロフは怒りの形相を浮かべる。
「いやぁ、俺前から欲しかったんだよね。俺だけの国。この国の奴ら全員服従させて俺がこの国の王になってやろうかなぁ。そして国中の男を奴隷にして女は全部俺の奴隷兼性処理役に抜擢だ。この国の姫は俺の妻にしてやろうかな。」
言っていることが滅茶苦茶なウルストだが、彼にとっては滅茶苦茶でも何でもない。思っている純粋な言葉をそのまま言っているだけなのだ。
「…本気でそう思っているのか。」
「さぁ。気が向いたらやるかな。」
「少しでも可能性があるのなら、我は貴様を止めなければならぬ。」
「お?やる?勝てると思ってる?」
その瞬間、カタストロフはウルストの身体に拳を浴びせていた。
ウルストの顔面に拳が命中して勢いよく避難所の方角へと吹き飛ばされ、大きな音を鳴らした。
それと同時に近くに居た市民たちの悲鳴が巻き起こる。
この衝撃に巻き込まれた者たちはいない。カタストロフが人の居ない場所を狙ってウルストを吹き飛ばしたのだ。
煙の中、黄色い雷がバチバチと集まっていく。
「あっ、この!反応遅れた。っと。」
剣に雷を凝集していたウルストだがカタストロフの方が早かったようだ。
ウルストはまるで何処にも痛みを感じていないのか、ピンピンしている。
カタストロフは起き上がるウルストに追撃を与える。
「例え不利な戦いであっても我は退くわけにはいかぬ…!この国は…我を認めてくれた者たちの愛する国だ…!」
カタストロフは更にウルストを遠くに吹き飛ばし、国の外へと追いやった。
「ふーん、国の外に俺を出して被害を減らそうとしてるってこと?気遣いってやつ?」
「これ以上の侵攻は許さぬッ!」
「へぇ。じゃ遊んでやるか。しっかり守れよ、三下。」
ウルストは剣に力を集め、強い雷が纏わり始める。
「…!」
その力の強さはカタストロフにも強いトラウマがある。そしてその威力が今までのものとは比較にならないものであることもよく知っている。
「ホラ、守らないと死ぬぞ。その辺の虫共が。」
ウルストは雷を纏った剣をカタストロフの方ではなく、避難所側へと振る。
すると雷の衝撃波が地面を抉りながら避難所に放たれる。
「!」
カタストロフは咄嗟に空間移動で衝撃波の前に立ち、自身の闇魔法と相殺させようと受け止める。
「グッ…オオ…!」
「ホレホレホレホレ!」
ウルストは笑いながら同じような衝撃波を何度もカタストロフ目掛けて打ち込む。
「グッ…クッ…」
カタストロフはそれを受け止めるので精一杯で反撃の隙すらもなかった。
それに遊びで放っている一撃だが、その一撃は非常に強力でありカタストロフでさえも受け止めるのが限界だ。
「どうした?お前が受けきれなかったら後ろの有象無象が全員死ぬぜ?」
ウルストはヘラヘラと笑いながらカタストロフを煽る。
そしてカタストロフの後ろには逃げ遅れた者たちや腰を抜かして動けない者たちがカタストロフを見て更に怯えていた。
「な、なんだ…!アイツは!」
「魔物!?」
「うわああーーーん!!」
カタストロフは他の種族とはかけ離れた容姿をしている。
構図だけ見るとどう見てもカタストロフは怯えている者たちを守ろうとしているのだが、驚きパニックになった市民たちはその状況を正常に認識できずにいるのだ。
「…ッ…」
カタストロフはこうなることが分かってはいたとはいえ、少し胸を傷めた。
「ハハ!お前そんなナリだもんな!味方だって思われて無いんじゃないの?」
「…それでも…構わぬ…!」
「ハァ?」
「我は魔王だ…魔王カタストロフ!恐れられることには慣れている…!」
強がりを見せるカタストロフは力をより強く込めた。
「ウオオオーーーッ!!」
カタストロフはウルストの雷を空中へと飛ばし、その雷は空中ではじけ飛んだ。
「ハァ…ハァ…」
「俺ぜーんぜん本気出してないけどもうへばったわけ?」
「…まだ、やれる。」
「そうこなくっちゃ!」
カタストロフは後ろの様子を確認する。
数人の大人…それもヒューシュタットやワービルトの出身であろう人間と獣人だ。
それと子供が1人。ドラゴニアの竜人だ。
怯えている大人たちと、涙を流してわんわん泣いている子供。
「だがお前は優しすぎる。雑魚共を庇いながら俺とやりあうか?」
「…逃げろッ!」
ウルストはカタストロフではなく、子供目掛けて先程の雷の衝撃波を打ち込んだ。
「ひ、ぁ…!」
「同じ手は…二度通じんッ!」
カタストロフは雷を吸収すべく土の壁を作り、電撃を吸収させた。
「あ、わ…」
「早く…逃げろ…!」
カタストロフは子供に言うが、子供の足に怪我が見えた。どうやら動けないようだ。
「…ッ、誰か、この子供を逃がしてやれ…!」
「こ、怖い…!」
「お、俺たちを騙して食べる気なんだ…!」
カタストロフは周囲に居た数人の大人に伝える。
ヒューシュタットの人間や、ワービルトの獣人の大人たちはカタストロフを警戒している。
ここにドラゴニア国民の大人が居ればまた話は変わってきたかもしれない。ドラゴニア国民は愛国家だ。国民の子供が危なければすぐに手を貸すだろう。
しかし、ここにそれはいない。逃げ遅れてしまった子供は誰の手も掴むことができない状態となってしまっているのだ。
「…ッ…」
「アッハハハハ!ウケる!お前のこと誰も信じちゃくれねぇじゃん!」
「…クッ…」
カタストロフは自分が思った以上に受け入れられない現実と戦うが、それでも…
「それでも…我は…我は守らねばならぬのだッ!!!」
カタストロフは子供を庇いながら衝撃波を受け止め続ける。土の壁も間もなく崩壊する。するとカタストロフは再び生身でそれを受けなければならない。
「…おじ、さん。」
「…!」
カタストロフの足元から声が聞こえる。
それは子供の声だった。
自分を守ってくれたカタストロフに向かって子供は震える身体を必死に抑えながら口を開いた。
「た、助けて…ッ…!」
子供は涙声で訴えた。
カタストロフが味方であることを信じてくれたのだ。
カタストロフはその声を聴き、目を閉じた。
「あぁ、必ず守る。」
そう言い、目を大きく見開いた。そしてカタストロフは咆哮と共に全身から赤い光を発し、土の壁ごと衝撃波を全身で受け止め、手を上空に突き上げて空へと飛ばした。
「おっ!?」
カタストロフはウルストの一瞬の隙をついて一気に接近して再び拳をウルストの腹部に命中させ、城下町の壁に吹き飛ばし叩きつけた。
「へぇ、ブレイブハーツか。それ元々俺の力なんだけど。」
カタストロフはブレイブハーツを発動させた。それも今までのものとは少し異なっている。その輝きは淡いものであったが、今のカタストロフには強く激しい赤い光が全身を照らしている。
「我は…負けぬッ…!」
「よく言うぜ。膝震えてるじゃん。」
カタストロフはウルストの猛攻によるダメージ。そして目の前に立ちはだかる存在がトラウマであるウルストがいて、膝がブルッと震えている。だが、カタストロフに守りたいという一筋の勇気がより大きく強く宿ったことで、ブレイブハーツを強く発動させているのだ。
「もう怯えぬ。我は守るのだ。愛する者たちが笑顔で過ごせる未来を。」
「やってみろよ、三下が。」
カタストロフとウルストの戦いは続く。
仲間を、世界を、国を守るために。
そして急ぎ戦いの場に向かうビライト、そしてボルドーの元へと向かうレジェリー。
まだまだドラゴニアでの大きな戦いは始まったばかりだ。