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Delighting World  作者: ゼル
Brave 第一章(前編) ~三大国家防衛戦~
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Delighting World Brave 一章 六幕 ~ワービルト防衛戦 復讐の狼煙~

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Delighting World Brave 一章 六幕 ~ワービルト防衛戦 復讐の狼煙~


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「…!」


ワービルトの入り口から見上げたワービルトは、あちこちに火の手と黒い煙が上がっており、黒いオーラを纏った死者たちが蔓延っていた。

気配察知を行うがワービルト下層には生物の気配は無く、感じるのは死者たちと、転がっている死体だった。


「どうなっている…ヴォロッドはどうした…!」

クライドは中層より上にも気配察知を試みる。


「…中層と上層には気配を感じる…ほとんどは上層のようだ。」

「避難をしているのだろう。見たところ襲来は突然のことであり咄嗟の対処が出来なかったと見る。故にこの地域は壊滅してしまい、死人も多く出てしまった…といったところだろう。」

ガディアルは冷静に分析するが…

「…ッ…」

クライドの心には少しの乱れが発生していた。


「クライド。」

「…分かっている。」

クライドはそう吐き捨て、中層へと向かう。


ガディアルはそれを静かに追う。ガディアルはあくまで見守ることに徹するようだが、いざとなれば動くことも考えているようだ。



―――


中層に着いたクライドたち。

中層でも黒い煙とあちこちで火災が起こっており、死者たちが蔓延っていた。

「…あれは…」

クライドは死者たちの姿を見ている。


それはクライドと同じ狼型の獣人だった。そして、クライドは拳をグッと握りしめた。


「…心当たりがあるようだな。」

「…あぁ…あれは…“ヴォールの仲間”だ。」


クライドの目の前にはヴォールの仲間たちが建物を破壊している光景が広がっている。

「わ、あああ!!」

逃げ遅れたワービルト国民の獣人が追われている。

「!」

クライドは死者であるヴォールの獣人の目の前に向かい、振りかざした爪を右手に握っていた短剣でふせぐ。

「…ッ…俺が、分かるか…?」

クライドはそう、問いかけるが…

「グルアアッ!!!」

獣人の目はクライドの知っているヴォールの仲間だった頃の目をしていなかった。

狂い、真っ赤に染まったその目にはもはや心などは存在していないようだった。


「…そうか…すまん。」

クライドはそう呟き、空いていた左手から短剣を抜き、死者の獣人の喉元を切り裂く。

血しぶきが飛び、倒れる。

そして、黒い塵となって消えていった…


「…あ、わわ…」

「避難場所は何処だ。」

「じょ、上層…!」

「一人で行けるか?」

「…ッ…」

襲われていた獣人は腰が抜けてしまったようで動けずにいる。クライドの声掛けにも首を横に振り、涙を流している。


「…ガディアル、コイツを連れて上層へ行く。」

「あぁ。構わない。」

ガディアルは了承し、腰が抜けてしまった獣人を担ぎ、上層に向かった。


―――


上層では死者の獣人や魔物が大勢おり、ワービルト兵士たちがそれと戦っている。ドラゴン隊やラプターたちも戦いに参加しており、戦況はめちゃくちゃな状態になっている。

しかし、城周辺には結界が張られており、しっかりと守られているようだった。


「…!」

手負いや怪我をしている兵士たちを助けるためにクライドは飛び出す。


残されたガディアルは担いでいる獣人を見るが、獣人は目をつい逸らしてしまう。


「…避難者は何処に?」

「あっ、多分城内…と、思い、ます…」

ガディアルは担いでいる獣人に尋ね、獣人はそれに少し怯えたように答える。


ガディアルは他の生物たちと比べてかなり体格が大きい。

クライドと比較しても2倍程度の差がある。助けてもらっている身とは言え、やはり怖がるのは無理もないのかもしれない。


「送り届けるまでは見捨てはしない。」

ガディアルはそう言い、城の前まで移動する。


「…」


移動するまでの間、死者の魔物たちがひときわ大きな身体をしているガディアルを狙っているようだった。

「邪魔だ。」

ガディアルは歩きながら周囲に電撃を発生させる。

「ギグ…!」

「ギャッ…!」

ガディアルは襲い来る死者たちに全く見向きもせず、気配だけで自分に迫る者たちだけを感電させていた。

「あ、あんた…何者なんだ……」


「ただの竜人だ。」

ガディアルはそれだけ言い、城内へと入る。


「ムッ、ガディアル殿…!」

「アルーラか。ちょうどいい。コイツを任せたい。中層で襲われているところを俺とクライドで助け出した。」

城内のエントランスにはアルーラがおり、逃げてきた国民たちの治療などのサポートを行いつつ、城周辺に防御壁を張っていた。


ガディアルは獣人をアルーラの傍に置き、すぐに外に出ようとする。

「ガディアル殿、クライドは…大丈夫でしょうか。」


「大丈夫ではないだろうな。だが、クライドにとっては必要なことかもしれぬ。」

ガディアルはそれだけ言い、城の外へと出て行った。


「…クライド…ガディアル殿…」

アルーラは出ていくガディアルを見送ることしか出来なかった。


「アルーラ、誰かいたのか。」

ヴォロッドが奥から現れアルーラに声をかける。

「ハッ、王よ…知り合いが見えておりました。それと…クライドが来ているようです。」

「何…?よりにもよってか…」

「いかがなさいますか…?」


「しばらく様子を見よう。アルーラ、そなたの知り合いとは強いのか?」

「…えぇ、私の知る限りでは誰よりも強いでしょう。」


「そうか。それは是非手合わせ願いたいところだが…今はそれどころはないな。ではその者にクライドは任せよう。我々はここで兵たちの士気と国民の保護を優先とする。」

「畏まりました。」


「…全く、不甲斐ない。我々の国が上層まで侵入を許してしまうとはな。」

ヴォロッドはこの国の最後の砦だ。故に今は城の中で待機するしかなかった。


「しかし、ここだけは守り通して見せる。」

「ヴォロッド様、前線の増員を。」


「ウム、ではバルーサ隊を出せ。」

「バルーサ隊を…ですか。」

「そうだ。」


ヴォロッドが言うバルーサ隊とは、少し前にドラゴニアで物流の妨害をしていた団体だ。

ヒューシュタットの科学力とドラゴニアの協力もありヴォロッドたちの手によって囚われ、ワービルトで働かせると言って持ち帰った獣人たちだが、どうやらヴォロッドが団体をワービルトの隊として流用したようだ。


つまりバルーサたちはワービルトの兵士となっていたのだ。


「聞こえたな、バルーサ。出撃だ。」

(あぁ、聞こえてる。野郎ども!行くぞッ!!)

((おおーー!!))


ヴォロッドが持っているのはヒューシュタットから預かった“無線機”と呼ばれるものだ。

これを使えば距離の制限はあるものの、近くの者に連絡を取ることが出来るのだ。

バルーサ隊は城内の裏手に待機していたため、ヴォロッドはその場で出撃命令を出したのだ。

「変わりましたね、バルーサ。」

「ウム、奴はドラゴニアの時もそうであるが、自国愛が強い。故に守りたいものに対する情熱は強い。強力な戦力となりうるだろう。ドラゴニア暮らしが長いが元々奴はワービルト生まれだからな。」


ヴォロッドはバルーサ隊を追加で送り、そして外で戦うドラゴン隊や様々な獣人兵士たちに指示を送る。

「この無線機という機械は本当に素晴らしい。ホウから支給してもらって良かった。」

ヴォロッドはニヤリと笑い呟いた。


「アルーラ、そなたも外に出てクライドたちの援護をしろ。ここは私が引き受ける。」


「畏まりました。まずは知り合いと合流します。」

「ウム。」


アルーラは城の外へと走り、外へと出て行った。


「これ以上黒い奴らに好き勝手はさせん。例え相手がヴォールの死者とて容赦はせん…が、クライド。お前はどう出る。この死者たちを束ねる者は…お前が“最も愛した男”だぞ…」




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バルーサはワービルトに連れていかれた後、ヴォロッドと対話をした。


「…で、アンタは俺たちを軍に入れたいと?」


「そうだ。」

バルーサは反抗的な目でヴォロッドを見ながら唸って威嚇して見せる。

「お前の実力は先日確認済み。十分に私の元で働けると見たのでな。」

「…ふざけるなよ。今更俺に自国の為に働けと?」

「不満か?」

「あぁ不満だとも。俺はワービルト生まれだが育ちはドラゴニアだ。俺にとっての自国はワービルトじゃねぇんだよ。」


バルーサはグリーディ襲来で家族を失った。

今もまだ心のよりどころを失ったままで、何も出来ないなりに足掻き、前向きに歩き続けるドラゴニアに苛立ちを覚えていたが故に、ドラゴニアを邪魔するような行動を行っていた。

だが、今のバルーサは違う。ドラゴニアにはまだ思うところはあるが、ベルガたちやホウ、そしてヴォロッドの言葉に心を揺さぶられたバルーサは今、もう一度ドラゴニアを信じてみようとしているのだ。


だが、自分が働く場所はワービルトだと言われている。バルーサは憤りを感じているのだ。

「不満で結構。私に訴えは通用せぬぞ。」

「フン、アンタは他の2人の王と違って随分と横暴だな。」

「横暴上等。私はベルガやホウのように優しくはないぞ。王は頂点に立つ者、決して舐められてはならぬのでな。時には力で屈服させることも必要なのだ。」

ヴォロッドはバルーサを睨み返す。

お互いに睨み合う2人。


「ボ、ボス…相手はヴォロッドですよ?」

「それがどうした。こっちだって舐められるわけにはいかないんだよ。」

部下の言うことを聞かず、バルーサはヴォロッドにひるまずに振るまって見せる。


「フフ、そういうところが気に入っているのだぞ私は。」

ヴォロッドは微笑み、バルーサに入隊用紙をバルーサと部下の人数分地面に置く。




「お前は我が友好国であるドラゴニアの国交を妨害し、ドラゴニア兵に怪我を負わせ、そして我が国の印象を悪くした責任と罪がある。今は私の命令に従ってもらうぞ。特に今は何かと物騒だからな。」


「…それを言われちゃ何も言えねぇ。」

バルーサは自分のしたことに対して罪の意識があるようで、何も言えなくなってしまった。


「くっ、ボスの弱みを握るなんて!」

「この野郎…!」

部下たちもヴォロッドに敵対心を見せる。


「まぁ待て。私もそこまで鬼ではない。提案をしよう。」

「…提案…?」


「私がお前たちを軍として扱うのは期間限定だ。私が定める期間のみ有無を言わさず働いてもらう。私が定める期間が終わった後は好きにすると良い。無論、終わった後のフォローもしてやる。」


「……理由を聞こう。俺たちは犯罪者だ。そんな俺たちを雇ってまでアンタは何をしようとしている。」

バルーサはヴォロッドに理由を尋ねた。


「…これは決まったことではない。予感だ。」

ヴォロッドは、今この世界に起ころうとしていることを話す。


それは今、遠い地で戦っているビライトたちのことだ。名前こそ言わないが今この世界に起ころうとしていることをヴォロッドは語る。


「と、いうことだ。」

「フン、妙な話だ。世界の危機だと?」

「そうだ、遠くない未来きっとこの世界に混乱が訪れるであろう。その時には戦力が必要なのだ。お前とて自分の生まれた国や、育った国が消えてしまうかもしれぬと聞けば…どうだ?」

ヴォロッドはバルーサの自国愛を理解した上での問いかけをするが…


「…にわかには信じられん。だが…それが本当だとしたら、この国もドラゴニアも危ないと言うことか。」

「そうだ、お前はまだ国を捨てられぬはずだ。だからこそベルガやホウの言葉を聞き、そして信じたのだろう。」

「……フン…」

バルーサはヴォロッドに背を向け自身が保護されている部屋へと戻ろうとする。


「待て、話はまだ終わっていないぞ。」

帰ろうとするアルーラが言うが、バルーサは小さくため息をついた。


「…その時が来なかったら俺たちを解放しろ。その時が来たら協力してやる。」

「ボス…!」

「ボス、俺たちは…」

部下たちが一斉にざわつき始める。

「慌てんじゃねぇ。お前らも俺についてこい。」

「は、はい!」


バルーサは思うところはあるようだが、国を信じることを辞めることは出来なかった。バルーサにとってはドラゴニアもワービルトも生まれの地であり、育った地でもある。ヴォロッドにはワービルトに協力することを嫌がっているように伝えたが、本心は…そうではないようだった。


(…まだ俺に出来ることがあるってんなら…やってやるよ…いじけてても家族は喜ばねぇからな…)

バルーサは亡くした家族のことを想いながら、新たな戦の場所に向かう準備に向かうのだった。




「バルーサは変わる。奴の目はまだ死んではいない。」



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ヴォロッドの命令により外へと飛び出したバルーサ隊。外は火の手が上がり、あちこちには逃げ遅れた者たちが倒れている。そのほとんどは既に亡くなっているようだ。


「城で待機しろと言われていたが…ひでぇ有様だな…」

ワービルトは既に上層まで死者が侵入しておりワービルト兵たちが死者たちを必死に食い止めている。


「…てか、なんだアイツ…敵か…?」

バルーサの前にはガディアルがおり、死者たちを周囲に纏った電撃で蹂躙していっており、バルーサたちは息を呑む。


「ボス、でもアイツ…黒い奴らを倒してますよ?」

「…味方、で良いんだよな。って、俺たちも負けてられねぇぞ!この辺りはアイツに任せておけば良さそうだ。俺たちは反対側と奥に行くぞ。」

「「へい!」」

バルーサとその部下たちはガディアルと反対側に向かい、そして奥の修練所に分散した。




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クライドはガディアルから少し離れた場所、奥の修練所に通じる道の手前辺りで負傷した獣人たちを治癒したり、城に送り届けていた。

そしてその道中で何人かのヴォールのメンバーの死者に遭遇しており、やむを得ずに倒していた。


(…クッ…イビルライズめ……悪趣味な…ッ…)

クライドはヴォール…いや、ネムレスの掟から解き放たれ、過去のギールの言葉を理解してそして今の仲間たちと共にここまで来た。

過去のことは全て過去として清算した。

だが、イビルライズは確実にクライドがここに居ることを見計らっているかのようにヴォールの仲間たちを死者として蘇らせ、ワービルトを襲わせている。

クライドの中で清算されていたものが再び崩れようとしているのだ。そして、ヴォールのメンバーが蘇っていることが明らかになった以上、何処かにいるはずだ。


(…ミア、ナグ…お前たちも何処かに居るのか…?そしてサベージ…ギール…あんたたちも…)

クライドはかつての大切なチームを組んでいた仲間たち、そして行き過ぎた愛によりヴォールを壊滅させたサベージ、そして―――クライドの生きる希望であり、これからの生き様を示してくれた大切な人、ギール。

彼らもこのワービルトに潜伏しているのであれば…いずれ会敵するかもしれない。


――考えたくはなかった。これまで遭遇したヴォールの獣人たちは皆心など無く言葉も通じないただ目の前の生者に襲い掛かっていた。

ミアやナグも同じような状態であるならば―――話し合いの余地もなく戦わなければならない。

クライドはここまでの間に覚悟してきたはずだ。だが、実際に目の前に大切な仲間が操られて自分に襲い掛かってくるとしたら、それはとても辛いことだと感じている。


(俺に、耐えられるのか…そんなことが。)

クライドはそう思いながらも救助を続けた。


そして、クライドの考えたくない気持ちをあざ笑うように…


「…あれは…!」


建物の屋根の上を飛ぶ1人の獣人が見えた。

そしてそれはクライドと目が合い、一気に距離を詰めて来たのだ。



「…フッ…ハハハ…本当に趣味が悪いな、イビルライズ…」


「ヒッ!」

クライドと同行していた住民は驚き顔を伏せる。

「チッ…!」


住民の前に出て、その爪を短剣で受け止める。


「…俺が、分かるか…?」

「グルル…!」

「…やはり、分からないか―――ミア。」


クライドに襲い掛かったのはミアだった。

ヴォールの紅一点として、クライドやナグたちと共に行動していた相棒だ。素早く軽い身のこなしは死者になっても変わらないようだ。

そして、ミアにはクライドのことが分からないようで、ただ目を赤く光らせ、黒いオーラを纏いながらクライドに爪を振るう。


「ガアアッ!!」

ミアの爪を使った連撃にクライドはなんとか冷静に短剣で食い止めていく。

「…俺が…分からないか…ミア!お前は…こんなこと望んではいないだろう…!ヴォールの者は…不要な殺生はしない…ッ…!」

クライドはミアに声をかけ続けるが、ミアの連撃は止まらない。止まる気配もない。


「…クソッ…!」

クライドは反撃できず、ただ防戦一方だった。そしてついに…


「!」

「ガアッ!!」

クライドは隙をついて、住民を抱えて逃亡した。

「ウガアアアッ!!!」

ミアは足と手を地面につき、4足歩行で獣のようにクライドを追いかける。口からは涎が流れ落ち、そしてとてつもなく鋭い形相でクライド目掛けて突っ込んできているのだ。


「クッ…ガディアル!コイツを頼む!」

クライドは近くにいたガディアルに住民を放り投げ、ミアを誘導していく。


「…」

ガディアルはクライドが投げた住民を腕で受け止めながら、周囲の死者を倒していく。


「…へっ、あれ…?ヒッ、でかっ…!?」

「俺は敵ではない。城まで送ろう。」

ガディアルはそう言い、住民を城まで送り届け、再び戦場へと戻る。


(…クライド、逃げてばかりでは何も変わらぬ。イビルライズの思惑に負けるでないぞ。)

ガディアルはクライドに干渉することをしなかった。

これは、クライドが越えなければならない試練だ。


ガディアルがワービルトにクライドを連れてこずともいずれはイビルライズの思惑通りヴォールのメンバーとは会敵することになることは間違いない。


(イビルライズはその気になればすぐにこの世界を壊すだけの力があるはずだ。だが奴は今、死者を各地に呼び世界をじわじわと追い詰めている…この状況を楽しんでいるのだろう…そして、そのためにはビライトたちの弱みを利用してくる。シンセライズの力が宿ったイビルライズには全てが見えているはず…クライドを始めとするビライトたちの弱みすらも手の内だろう…)


「だからこそ、越えねばならぬのだ。」


ガディアルはクライドの動向を見守りながらも、被害の鎮静化を行うのだった。


――




「…感じる。感じるよ。アイツの気配だ。」

ニヤリと笑う黒いオーラを纏った薄緑の毛皮を持つ犬獣人は歪んだ顔で微笑む。


「…フフフ、僕からギールを奪ったお前を許さない…ねぇ、ギール。今度こそ僕は僕だけを見てくれるように頑張るからね。」

小柄な獣人は手に無色透明の液体の入った瓶を振りながら小声で呟いた。


「…今はそれでいい。だが、お前にクライドを跪かせることが出来るか?」

「やってみせるさ。君の為に。」

その獣人の奥で座るまたもう1人の白い毛を持つ狼獣人。


そこにいるのは、かつてのクライドの居場所を壊した者と、その居場所で長をしていた、クライドにとっての大きな憧れであった。



クライドの行く手にはいつかの目標と、全てを壊した元凶が待ち構えているのだった―



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