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Delighting World  作者: ゼル
Break 第七章 追憶の残滓編 ~Episode ビライト・シューゲン ボクのトモダチ~
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Delighting World Break ⅩⅩⅩⅢ.Ⅸ ~ボルドー・バーンと老竜ガデン~

カナタのこれからの未来を決める為、カナタがシンセライズに共に行くかを考えていた時、イビルライズはカナタに囁いた。


「カナタ、君は…騙されている。」

「――――え?」


「カナタ、もしボルドー・バーンが味方でいてくれたとしてもだ。向こうの世界で味方になってくれるのが彼だけだったらどうする?」




「それにボルドー・バーンには家族が居る。今のように君だけのことを考えてはくれなくなる。だって、君は…彼にとっての1番ではないのだから。」

「…私は…」




カナタがずっと昔、世話になったというこの惑星の元管理人の老竜ガデンの姿で偽り、カナタをこの惑星から出さないように誘導させたんだ。


イビルライズが何故そんなことをするのかは分からねぇ。

だが、カナタはカナタの意志で、真剣に向き合おうとしていたんだ。これからのカナタの未来をな。


俺様は例えカナタがどういう道を選ぼうが尊重する。

けど、イビルライズはカナタのしっかり自分で考えようとする気持ちを砕き、再び心に蓋をさせちまったんだ。

こんなこと、許せるわけがねぇ…!


八神の一人、ナチュラルと共に惑星の大木の中で眠る本物のガデンと出会った俺様はこれからカナタの心をまた開き、そして今度こそカナタがカナタの意志でこれからの未来を決められるように動く。


誰もが納得し、笑える道を俺がカナタに創ってやってよ…全てが終わったらシンセライズに帰るんだ。


待ってろ、カナタ。

待ってろ、シンセライズの皆。


----------------------




「イビルライズ…だとォ…?なんでソイツが出てくるんだ…?奴はシンセライズを脅かす存在のはずだ。そんなやつが何故カナタに干渉してきやがったんだ。」


イビルライズのことは俺様も詳しくは分からねぇ。

だが、カナタからその存在と、ビライトたちの因果関係も聞いていた。

故に、今イビルライズが何故カナタに干渉しているのかが謎で仕方がなかった。


カナタは確かにこの惑星の管理人であり、立場的には神様のような存在だ。しかし、今シンセライズを管理している8人の神様とは外れたいわば隠された存在のようなもんだ。


けどカナタには何の力も残っていない。


かつて死竜と呼ばれ、竜と人間の身体が混ざった存在と呼ばれ、強い力も持っていたカナタは…もう存在しねぇはずだ。

それをどうして…?



「カナタは強き力を持ってはいないと言っても、この惑星を管理する存在…いわば小さな世界の小さな神様。神様もの持つ力“神力”(じんりき)をわずかながら所有しているのじゃよ。」

ガデンはカナタの現状を伝える。


「神力…そいつをイビルライズは狙っているのか?」

俺様はガデンに尋ねる。

「いや、イビルライズが狙っている神力は主神エテルネルの力じゃ。」

「じゃぁ何で…」


「えっとねぇ…神力の力はねぇ、力として行使してもイビルライズには効かないんだけどぉ…君たち生物には良い影響を与えるものなんだよねぇ~それはぁ、癒しにもなるしぃ、あらゆる病も治癒しちゃうぐらいなんだよぉ~」

「カナタもその力を持ってんのか。」

「わずかだけどねぇ。でもぉ、そのわずかな力でもけっこー強力なんだよぉ。」


ナチュラルは神力について説明してくれた。

だが…


「だとしてもだ。神力はイビルライズには効かねぇんだろ。それはそれほどに脅威となるものなのか。小さな力を持つカナタでさえも狙われちまうほどに…そんな小さな力ならほっとけばいいじゃねぇか…いや、待て…もしや…?」


そう、イビルライズに効かない力なら放置しておけばいいはずだ。

だが、生物には良い影響を与えるものだ。


カナタには生物にとってはとてもありがたい力を持っている。


そして…今ここにいる生物と呼べる存在は…


「…まさか、“俺”…?」


ガデンは頷いた。

ナチュラルも「多分ねぇ」と、頷きながら言う。


「ボルドー・バーン。君はシンセライズの大国、ドラゴニアの国王となる男だ。つまり君の存在はシンセライズの中でも相当な脅威となる。イビルライズもそれを自覚している。更に、カナタの力と君の力が合わさることを恐れているんだよ。」


「ンなの…カナタじゃなくても良いじゃねぇか。ナチュラルだって神力が使えるんだろ。」

「そうだねぇ、僕も確かに使えるけどぉ…そうだねぇ…ボルドー、ブレイブハーツのことは聞いてるよねぇ。」


「あぁ。イビルライズに対抗出来る力だろ。カナタがシンセライズを見てくれた時に聞いた。」

ビライトたちが所有した勇者の力と呼ばれているものだ。


「ブレイブハーツは心の力。心を強く持てば持つほどその力は大きく向上するのじゃ。そして…神力もそれと同等の力を持っているのじゃよ。例え微弱な力であっても、心の強さでどこまでもその力は強くなれる。それは与える者と発動者の心の力の強さが大きく関係するじゃろう。」


「…つまり、イビルライズは俺とカナタが力を合わせることでその力が強大となることを恐れている…そして、俺の存在は…」

戸惑う俺様だが、ガデンは呟く。


「君の存在、君の言葉は世界の希望だ。王としてそこに立ち言葉を添えるだけで世界の人々は希望を持つだろう。それは…正の力となる。つまり、イビルライズの力を弱める要因となるのだよ。」


「…俺は…そんな大した男じゃねぇ。大事な者も守れず、大事な妻や息子を置いて先に逝っちまった馬鹿な男だ。」

「君の中ではそうだとしても、世間はそうじゃない。分かるね?」

「…」


そうだ、俺様は王になる男だ。自分がいくら駄目だと感じていても、周りはそうじゃねぇんだ。



「それがイビルライズの思うカナタの脅威。そして君はその存在で世界に希望を与える王だ。それは国の人々から正の力を生み出す。それが君の脅威だ。」

ガデンはまとめた内容を俺様に伝える。


俺様もカナタもイビルライズにとっては厄介な存在ってことか…


「だからカナタを潰しておき、俺がシンセライズに戻る時間も遅らせようとしてやがるのか。」

「そうだねぇ。」

ナチュラルは頷く。


「だがよ、カナタはこの惑星から出ると神であることをはく奪されるんじゃなかったのかよ。だったらシンセライズにカナタが行こうが関係ねぇはずだ。」

俺様はナチュラルが言っていたことを思い出した。


カナタはこの惑星を離れるとき、神の力はなくなり、ただの混血の少女として生きることになるはずだ。


「確かにねぇ、シンセライズに行ったらカナタはもう神じゃないけどぉ…でもわずかな神力は残るよぉ。身体に沁みついちゃったものは剥がすことができないからねぇ。」

「シンセライズに行ってもカナタは狙われるってことか…」



俺様は拳を握る。

「えっとねぇ……カナタが目を付けられなくなる手段が一つ…あるけどぉ…」

ナチュラルは言いにくそうにする。


「ボルドーが一人でシンセライズに帰る…だったらぁ…」

「…!」

確かにそうだ。

カナタが狙われる理由、それは俺様が居るからだ。

カナタが俺様と離れて一生ここに居ればカナタはイビルライズからすれば脅威ではなくなる。



カナタが脅威だと思われているのは、俺様に力を与えられる可能性があるからだ。

つまり、俺様とカナタが離れれば、カナタは狙われねぇ。


結局俺様はここに居てもシンセライズに居ても狙われる可能性があるが、カナタは俺様と離れれば狙われない。


この忘却の惑星にカナタ以外の誰かが訪れる可能性は限りなく低い。



「でもぉ、ボルドーはそれを望まないよねぇ…」

「…カナタが正直な気持ちで残るって言うならそれで構わねぇ。けど、まだアイツの本当の気持ちを聞いてねぇ…後でカナタだけ連れてくることは出来ねぇのかよ。」


「う~ん…今のカナタじゃ無理だよぉ…本人が望まないと思う~…」


策を提案するが、やはり難しい。



「…だったらよ。」


俺様にはまだ1つ、案があった。これは無謀なことなのかもしれねぇ。けど、言わずにはいられなかったんだ。





「俺がイビルライズをぶっ飛ばす。」


「…フム…」

「ええ~!無茶だよぉ!」

ナチュラルは難色を示していた。そりゃそうだろうな。相手は世界を壊そうとしてるほどのバカでかい世界の脅威。

そして、神の力を以てしても倒せないバケモンだ。

いくら古代魔法が使える俺様でも到底太刀打ちは出来そうにねぇ。ブレイブハーツなんて大層なモンも使えねぇ。


けど…


「けど、それなら全部解決だろ。」


そうだ、難しく考える必要なんてねぇ。


「カナタの心を再び閉ざしちまったアイツは許せねぇ。それだけじゃねぇぞ。アイツはビライトを利用し成長し、キッカを奪った。挙句に世界を壊そうとしているんだからな。」

戦う理由はある。


「で、でもぉ…ここできみがやられちゃったら…本当に死んじゃうよぉ。そうなったら…君の為に頑張ったビライトたちの頑張りが無駄になっちゃうしぃ…それに、君の大事な家族とも二度と会えなくなるんだよぉ…?」


ナチュラルが言うことはもっともだ。

また俺様は無茶なことをしようとしているんだろう。それは分かるさ。

だけど、やっぱ…どうにも俺様はここで引き下がれるほど弱気にはなれないらしい。


「ナチュラル、イビルライズの気配はするか?」

俺様はナチュラルに話を進める。


「か、感じるけどぉ、でもちょっと待ってぇ。君は本当にそれでいいの?」

「…」

ナチュラルは慌てて俺様を心配して静止しようとしてくるが…


「あぁ。構わねぇ。最も、俺は死ぬつもりはねぇがな。俺は絶対にカナタを救ってみせる。そして全てを終わらせて俺は家族の元に帰るんだ。」

「う~ん…ボルドーがそこまで言うならぁ…仕方ないなぁ~…」

ナチュラルは腑に落ちなさそうだが、なんとか理解してくれた。


「フフ、実に君らしい。そういった熱い心は昔会った時と変わらんな。」

ガデンは小さく微笑む。また昔の話をしているが、俺様には分からないし、今はどうでもいい。


「良いじゃろう。一時的なものじゃが、君に力を貸そう。」

ガデンが提案する。


「ガデンの力…?」

「あぁ、儂は元々この惑星の管理人、いわばナチュラル様やカナタと同じく神力を持っている。カナタに分けてもらうよりは弱い力であり、儂も既に死んだ身。残滓のようなものじゃ。力こそ弱いが、イビルライズにはなんとか抵抗出来るかもしれぬ。」

「そうなのか?」

「カナタは君を信じている。強い絆を育んだ君たちが力を合わせ、神力を強いものにしたならば、イビルライズにとっては都合が悪い。」


「えっとね、ここに居るイビルライズは残滓なんだよねぇ。」

「残滓?」

ナチュラルは補足を入れる。


「残りカスみたいな~?でぇ、その残滓を操って自分の意志で動かしたり喋ったりできるって、他の神様が教えてくれたんだぁ~そしてぇ、それは神力で弱らせることが出来るらしいんだよねぇ。」


ナチュラル曰く、神力はイビルライズ本体には通用しないが、残滓には効果があるらしい。そしてここに潜んでいるイビルライズは残滓。

つまり神力の力でなんとかなるかもしれないということだ。


これがあるからこそ、神力はイビルライズ本体には効かないにしてもイビルライズにとって都合が悪いってことか。

そして、カナタと俺様が力を合わせればそれはより強いものとなる。

それをイビルライズは警戒してるってことだな…


「なるほどな…」

「だったら、僕も神力を分けられるよぉ。身体に負担はかかるから少しだけだけど…僕は戦いは全然だからねぇ~…ボルドーに任せるよぉ。」


「うし、じゃぁ戦いになったら頼む。ナチュラル、イビルライズの気配を辿ってくれ。この大木の中に居るのか?」


「う~んと……そうだねぇ…もう少し奥に道があるよねぇ、このずっと奥かなぁ…?」

ナチュラルはガデンの更に先に通路があると指さした。


「あっちだな。ガデンはそこから動けるのか?」

「残念だが…儂はここから動けぬ。だがこの大木の中であれば君に力を分け与えることは出来る。」

「そうか、分かったぜ。」

俺様はナチュラルと更に奥に向かうことにした。


「ボルドー。」

「あ?」

通路に入る前、ガデンが声をかける。


「カナタのことを、よろしく頼む。」

まるで、もうお別れかのように、寂しそうに伝うその言葉に違和感を持った。

「…おう。任せろ。」

「ありがとう。」


ガデンがどういう意味でこの言葉を言ったのか、それを理解したのはもう少し後の事だった。






----------------------





(ボルドー・バーン。君は30年前、ここに来ているんだよ。その時も…生きたいという気持ちを熱く語ってくれたのだよ。フフ…君は…きっと、

良い王になる。儂は…そう信じているよ。)




「…カナタ、どうか前を向いておくれ。君の為に頑張ってくれる人たちの気持ちを…無下にしてはいけないよ。」


ガデンは外に居るカナタに伝わるようにその気持ちを送った。



----------------------




「…今、声が…」


外に居るカナタに、その声は届いていた。

「さっき会ったガデンとは違う…感じ。なんだろう、とてもあったかい。」

カナタは顔を上げ、大木に触れた。


「…私の為に…頑張ってくれる人たち……そんな人…ッ…」

カナタは下を向き、唇をかみしめる。


「…ボルドー……ッ…」

カナタの目には涙が流れた。


「私、どうしたら、どうしたらいいの…?」


カナタはそう呟き、大木に背を向ける。すると次の瞬間…


「!?」


カナタの身体を黒い腕ががっちりと抱いた。


「な、何…!?」


「ダメだよカナタ…君はここに居るべきなんだよ?」


「…!」

カナタが後ろを見ると、そこには恐ろしく歪んだ笑みを浮かべたガデンの顔が移っていた。

「ち、違う…!あなた、ガデンじゃない!!」

正気を取り戻したカナタは振り払おうとするが、その腕の力にカナタは敵うはずもない。

「おいで、カナタ。」

「嫌っ!離して!」

しかし、その抗いも虚しく、カナタの身体は大木の中へと引きずり込まれていく。



「…―――ボル、ドー…」


身体に何かが入ってくる感覚。何かが侵されていく感覚。

カナタの意識が歪み、それはねじれた空間のように視界を歪めていく。


そして、カナタは大木の中へと完全に連れていかれてしまった…




一方、大木の中では…



----------------------




「この奥から嫌な気配を感じるよぉ…」


ナチュラルは指さす。


「この奥だな…?」


ゴクリと息を呑む。この先、何が待っているか見当もつかねぇ。だけどやらなきゃならねぇ。


「…えっ、待って待ってぇ。カナタの気配も感じるよぉ…?」


「何だと…!」

ナチュラルは慌てている。

カナタもこの奥に居るだと?

カナタは大木の外に居るはずだ。もしかしてイビルライズに連れてこられた…?


「ボルドー、気を付けてねぇ…?」

「あぁ。行くぜ。」


俺様とその後ろについてくるナチュラルで、曲がり角を曲がる。

するとその先には大きな空間が待ち受けており…


「カナタ!」



カナタがうつ伏せになって倒れていた。

「ま、待ってボルドー!おかしいよぉ!罠かも!」

駆け出す俺様だが、ナチュラルが肩を掴み静止させる。


「ッ…!けど、カナタが…!」

「ここは僕に任せてぇ。」

ナチュラルは手を高く上げた。

「ごめんねぇ。ちょっと手伝ってねぇ。」

ナチュラルはふわふわと身体を浮かせ、指を色々な方向に動かしている。

すると大木の根が動き出し、カナタを囲うように覆う。


「こいつは…!」

するとカナタに触れようとした根は腐り果ててボロボロになって消えていく。

「やっぱり罠だね…なんとかしないとぉ…」


危なかった。触れていたら俺様もああなっていたかもしれねぇ。

「…サンキュー、ナチュラル。」

「うん、いいよぉ…でも、今は…」

ナチュラルは辺りを見渡す。そして…


「ねぇ、イビルライズ、居るんだよねぇ。もうこんなことやめようよぉ。僕たちも君の為に何か出来ることあると思うからぁ…これ以上、世界を傷つけたりしないでぇ。」

ナチュラルはイビルライズに呼びかける。


すると、カナタの後方から黒い影が現れる。

黒い靄のようなものが現れてそこから不気味な稲妻のような赤い目が大中小と3つ連なって現れる。


「お前如きにどうにか出来るもんか。」

そう呟くイビルライズ。


「てめぇがイビルライズか…!」

「だったらどうする?ボルドー・バーン。」

子供のような幼い声のようにも聞こえるが、その声はまるでノイズがかかったように聞こえ、威圧感すらも感じる低い声になっていた。


「カナタを解放しろ。てめぇの狙いは俺だろうが。」


「確かに君も厄介な存在だ。でもねぇ…カナタ・ガデンも同じだからねぇ。どっちかがくたばってしまえばボクとしては万歳だしね…君をなんとかするよりカナタ・ガデンを貶めた方が速いからね。」

「てめぇ…!」

俺様は一歩前に出る。



「てめぇは…カナタの大事な者…家族の姿を偽ってカナタを誘惑した。それだけじゃねぇ。何もかもを諦めていたカナタがやっと前に進もうとしていたのに…てめぇはそれを邪魔した。カナタの心を再び閉ざしちまった…そして何よりも許せねぇのはなぁ…」


俺様はカナタを見る。目が赤く、涙を流した痕がある。


「カナタが泣いていることだ。」


俺様はエクスリストレイを発動した。魔力をほとんど使えない俺様が使える古代魔法で、あらゆる魔法を魔力消費をほとんどせずに行える古代魔法だ。


「ボクに勝てると思ってるの?ブレイブハーツも使えない君ごときが。」

イビルライズは余裕を見せるが…俺様には…神様がついてるんだ。


「ナチュラル、神力を分けてくれ。」

「…ボルドー、それはいいけどぉ…改めて言うけどね、神力は強力な力だよぉ、君の身体にも少なくとも大きな負担がかかっちゃう、それでも、良いの?」

ナチュラルは再度、俺様に確認を取るがもう覚悟は決まっている。


「ナチュラル。俺は王だ。王が大切なモン守れねぇなんてあり得ねぇ。けど…俺は守れなかった。だから今度こそ守る。それにたとえ分が悪くても…絶対に引いちゃならねぇ時ってのが…あるんだよ。それが今なんだ。」


俺様は肉体強化魔法、キングエンハンスを発動させた。


「神力を取り込む気か?無謀だね、ボルドー・バーン。」

イビルライズはニヤリと微笑む。

「無謀かもな。だが無謀でも良い。何もせずに大事なモン失うよりは良い。」



「…君は、すごいねぇ。」

「ただの馬鹿野郎さ。」


ナチュラルは決意したようにこぶしを握り、宙に舞う。



「君の気持ちに応えたくなったよぉ。」

「…!」

ナチュラルは手を大きく広げる。そして神力と呼ばれる力が一気に解き放たれた。



「“神力解放”」


そう呟くと、ナチュラルの糸目がカッと見開き、左右についていた身体のパーツがググッと横に広がる。

「こいつが…神力…!おお…なんだこりゃ…!」


俺様の身体にも変化が。

キングエンハンスの赤い光に混ざるように薄い緑色のオーラのようなものが包み込む。

「こいつが…神力。すげぇ力だが…こいつは…少しでも油断したら身体ぶっ壊れちまいそうだぜ。」



「ボルドー・バーン、君の身体が神力ニ耐えられる時間はオヨソ10分。カナタ・ガデンの罠は当機が解除スル。」

まるで機械のような言葉で話すナチュラル。


どうやら神力の力を使うと人格が変わっちまうようだな。


「分かった。カナタを任せた!」

「ココロエタ。」


「イビルライズ!てめぇの相手はこの俺だ。」

「面白い。」

イビルライズの身体から黒い腕が実体として現れた。非常に禍々しく大きく鋭い爪を持つ腕が2本現れる。


「カナタ、待ってろよ…必ず救ってやるからな…!」


俺様は帰るんだ。

ここで俺様がやるべきことを終えて、そして…愛する妻と息子の元に。

愛する我が国へ。


そしてカナタ。お前がどんな選択をしようと、俺様は受け入れてやる。

だから必ず助けてやる。

イビルライズの好きにはさせねぇ!


「さぁ、来いよボルドー・バーン。ここでお前を潰してカナタ・ガデンも、この惑星も全部ぶっ壊してあげるよ。」


「させねぇよ…!」


足をしっかり地面に踏みしめて、そして、力をグッと入れ、一気に走り出す。



カナタを救うための戦いが幕を開けた。



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