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Delighting World  作者: ゼル
Break 第七章 追憶の残滓編 ~Episode ビライト・シューゲン ボクのトモダチ~
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Delighting World Break ⅩⅩⅩⅠ


クロさえいればよかった。


クロさえ傍に居れば他には何もいらなかった。

だから、本当は家に帰るのも嫌だった。


でも自分は子供だ。何も出来ない。1人で生きることも難しい。

町の人が悪い人なんじゃない。だって、皆とても優しいから。

でも、そんなことより、クロが大事だった。


そうだ、クロさえいれば…もう、何もいらないんだ。




そう、思っていたっけ。



―――イビルライズの残滓に干渉されて眠り続けるビライトはずっと夢を見ている。


それはより鮮明に描かれる自分とクロ・イビルライズとの記憶の欠片。


これは、イビルライズが見せているものなのか。それとも、自分の記憶が夢として現れているだけなのか。

それは分からない。


------------------------------------





「―――でも、俺は知る必要がある。この先の俺の知らないことも、記憶から抜け落ちていることも。クロのことも。」


記憶が戻っているとはいえ、幼い頃の記憶だ。

曖昧な部分、すっぽり抜け落ちている記憶もある。特にクロが居なくなった前日付近のことはほとんど覚えていないんだ。




…でも、全てを知ったとしても、俺はクロと分かり合えるとは思わない。俺はクロを許すことは出来ない。

だからこそ、俺がこれからクロと戦う意味をより深く定めなければならない。



これはきっと、そんな夢だけど、起こった現実なんだ。






------------------------------------




実家に戻り、旅立ちの準備をするビライト。

まだ幼いビライトには無謀なことだ。だけど、恐怖も何も持ち合わせてはいない。


「クロがいるから平気だもん」


この言葉がビライトの全てだった。



そうだ、僕は悪くない。優しくしてなんて頼んでない。

妹が欲しいなんて言ってない。


そうだよ、みんなが勝手にやってるだけだ。


だったら僕も勝手にするんだ。僕は…クロとずっと一緒にいるために、ここを出るんだ。




もはやそれは現実逃避のようなものだった。

だが、クロしか見えていないビライトにはもう誰の声も耳には入らない。




「…よし、こんなもんかな。」

ありったけの物を詰め込んでビライトは笑う。


「クロと一緒…ふふふ…楽しみだなぁ。」

ビライトの目は酷く汚れている。明るい光を持っていたその瞳はすっかり消え失せ、ただ暗く、闇深く…



------------------------------------






(…ビライト、キミは本当によくやってくれたヨ。)


クロはイビルライズ。

ビライトの中に核を隠し、自分は影としてビライトと会い、共に過ごしてきた。


そしてクロの目的は、ビライトの絶望だ。



ビライトと接触して5年。ビライトはすっかりクロに依存し、他には何も見えなくなり、何の声にも耳を向けなくなった。



これは全てクロの作戦通りだった。


(…ボクがこの世界を支配したら…キミだけは助けてあげるヨ。だって、トモダチだからネ。フフ。そして…イッショニ…)


クロはコルバレーの外れの森林から、核を経由してビライトの様子を見て微笑んだ。





(…ボクは、キミを裏切って…強くなル。誰よりも最強になっテ…この世界に…復讐してヤル…!ソしテ…この世界をオワラセル…)







「…見つけたぞ。イビルライズ。」


「!」


威圧感を感じる野太い声が響き渡る。


「…ヘェ…よく分かったネ。」


「貴様の力がより高まったおかげでようやく足取りをつかむことができた。気配を消す術を覚えていたようだがそれもここまでだ。」

クロの後ろから現れたのは3mを超える巨大な竜人。


深い赤の髪と薄い赤色の髭を蓄えている。

黄色い鱗を纏い、背には大きなマントを靡かせる。

その赤く鋭い目つきは睨まれただけで委縮してしまいそうなほどに恐ろしいものであった。


「ボクを倒しにきたんだネ。」

「当然だ。この世界の脅威は排除せねばならぬ。」

竜人の身体から電気が流れる。

バチバチを音を立て、周囲の森が大きく揺れる。大地が揺れ、亀裂が走る。その亀裂からは雷が飛び出していく。


「今ここに居るボクは抜け殻のようなモノ。ボクを殺してもボクは死ななイ。」

「…貴様…エテルネルから人間を宿主にしたと聞いてはいたが…人間に核を残しているのか。」

「フフ、そうサ。キミがボクを本気で殺したいなら…キミは人間を殺さなくてはならなイ。もっとも、キミにそれは出来ないだろウ?抑止力だもんネ。」


「…」


これまでビライトたちが出会ったことない者。

この竜人は抑止力だ。そして9人の抑止力で神ではない存在はデーガのみ。

つまり、彼は八神の1人なのだ。


抑止力は特例が無い限り誰かを殺めることはできない。

しかし、クロ・イビルライズはその特例に当たる。

抑止力が手を下すことができるのだ。しかし、クロは核をビライトの中に隠している。

ビライトを殺さない限りクロを消滅させることができない。


だが、ビライトは特例の中には含まれていない。


しかし…



「…お前は俺を見くびり過ぎだ。」

「なんだっテ?」


竜人はより力を高める。

辺りに雷が走り、クロの身体を拘束する。

「…抑止力のルールを破るのかイ?」


「フン、知ったことではない。個より全を取る。それだけだ。」

「ふぅン…」



竜人はクロに雷を纏った拳を振るう。地面に叩きつけられた拳は大きく衝撃波を巻き起こし、砂が舞い散る。



しかし、クロは霧のように消えてしまう。


「…」


「フフ、ならば精々殺してみるといイ。ボクのビライトはそう簡単に殺させなイ。」

クロの声が響き渡る。


「…逃げたか?」

竜人は目を閉じ、気配を辿る。

すると後方から気配を感じ、目を開き、雷がそこに向かって地面を伝う。


「チッ。」


「逃がさぬ。」


クロは逃げ続ける。

それを竜人は少しずつ追い詰めていく…


------------------------------------



翌朝、ビライトはコッソリとヴァゴウの家を抜け出し、実家から荷物を持ってコルバレーの町を走り抜ける。


今日はクロと一緒にこの町を出る。ビライトは何の後悔も無く笑顔であった。



しかしクロはこの日、ビライトに会うつもりはなく、裏切り姿をくらますことでビライトを絶望させようと試みていた。


しかし、クロにも予想外のことが起きていた。

クロを狙う者にクロは襲われている。


「クロ!来たよ!…って、アレ?クロ?」

ビライトは周囲を見渡すがクロは居ない。


「まだ来ていないのかなぁ。」

クロを待つビライトだが…その時、大きな雷の音が鳴り響く。

「わっ…何…!?」


ビライトは恐る恐る音がした方へと足を運ぶ。すると…


「クロ…!」



見たことのない巨大な竜人がクロを狙っている。


「いつまで逃げているつもりだ。貴様の存在を倒し続けることで核の力が弱まることは知っている。戦わねばいずれ力を失うぞ。」

「…ハッ、今のボクではキミを倒すことは出来なイ。分かってるくせニ。」


「ならば大人しく滅びるがいい。」

竜人は右手を前に出す。

右手から白い光輝く雷が纏われ、今まさにその雷が放たれようとしている。


「ま、待てッ!」


ビライトはその威圧感に負けそうになっていたが勇気を振り絞って大きな声を出す。


「…」

「…ビライト…」


竜人はビライトを睨む。


「…器か。」


「ク、クロに何をするんだ…!クロから、離れろ!」

ビライトは膝を震わせながらクロの前に立ち、自分よりも3倍以上もある大きな竜人を見る。



「…そこをどけ。」

「ど、どかないっ…!」

ビライトの強いまなざしを竜人は見る。


「…似ている…俺はその目を知ってる。…フン、腐っていてもその瞳は本物のようだな…」


その目には強い意志を確かに感じたようだ。

それは竜人の知る、誰かの瞳によく似ているようだ。


それに懐かしさを感じるように竜人は目を閉じ、手を引く。


そして一呼吸おいて目をゆっくり開け、口を開く。

「だが…その選択は世界を滅ぼすぞ。」


言っている意味は分からない。だがビライトはどかない。


「…なるほど。」


クロはビライトの見ていない所で小さくニヤリと笑った。


(上手く洗脳したものだ。)

竜人はそれに気が付き睨みつけるが、クロは顔を歪め、挑発している。


「お前はその者がどのような存在か分かっているのか。」

「し、知るもんか…!でも、トモダチだ!トモダチが傷ついてるのを見ているだけなんて出来ない…!」


「友達…か。なるほど、お前の光はまだ絶えてはいないようだ。」


竜人はビライトの中に在る強い意志を見た。そして…


「酷く汚れているな。」

竜人はビライトに触れようとする。

「ヤメロ!ナニヲ!」

クロはそれを防ごうとするが、竜人はクロに雷を浴びせ動けなくする。


「グッ…!」

「や、やめろ!クロに酷い事するな!」


「殺しはせん。お前に少しきっかけをくれてやる。」

ビライトの頭に乗る大きな手。そこから白い光が現れ、ビライトを包み込む。


「…!」

ビライトは不思議な感覚に囚われていた。

何故か心が穏やかになり、自分の見ている視線が大きく広がったような気がしていた。


「今はお前に託しておいてやろう。精々飲み込まれぬようにすることだ。」

そう言い、去ろうとする竜人。


そして最後に一言。


「お前の心の光を信じよう。お前の帰るべき場所へ帰るがいい。お前の居る場所はその者の元ではない。」

竜人はコルバレーの方を指差し、翼を羽ばたかせて飛び去っていった。


「…」


クロは怪我もなく無事であった。


「…大丈夫?クロ。」


「ビライト…ウン。平気。アリガトウ。」


クロに怪我らしきものは無いように見えた。

ビライトはホッとし、座り込んだ。

「こ、怖かった…なんなの…アレ…」


「…ボクを殺そうといていたんダ。」

「どうして…!」

「…ネェ、ビライト。」

クロは呟いた。


「ボクが世界の敵だって言ったら、キミはどうすル?」

クロの声にビライトは首を横に振る。


「クロが世界の敵なわけがないじゃないか!それに、クロがどんな奴でも僕はクロの友達だ。」

ビライトはクロに訴える。その言葉にホッとしたクロは微笑んだ。


「…ありがとウ。もう、迷いは晴れたヨ。」

「迷い?」

「ウン。」


(急がなければバ、もう時間がなイ。このままだと力を取り戻す前に抑止力に対策を取られル。)


クロはビライトを見るが…クロは先ほどと決定的に違うビライトを見ていた。

その目に宿っていたのは確かな正の力。すなわち、光であった。


(ビライト…クソッ、抑止力…余計なことヲ…!)




ビライトはクロを心配すると同時に、竜人の言う言葉を気にしていた。


―――心の光、そして帰るべき場所。クロの元ではない場所にビライトの帰るべき場所がある。


ビライトはフラリと歩き出し、町へと歩き出す。

「ビライト、何処へ行くノ?」


「…なんでだろう。行かなきゃ…行けない気がするんだ。ごめんクロ!明日にしよう!今日は帰るね!」

ビライトはコルバレーへと走る。


「……マズイ傾向ダ……」


ビライトに何か変化があったことに気が付いたクロ。

そしてクロの核にも何か影響があったようで、クロの身体は砂となって消えようとしていた。


「…ボクの分身が…維持できなくなっていル…ビライト……」






キミだけは、何があってモ…ボクの味方だと思っていタ。

ダケド…ヤッパリキミハ………………




マァ、イイ…ドちみち…明日、ボクハ姿を消すつもりだっタンダ。



キミは、これから生きていく中デ、正モ負モ抱えていくダロウ。


キミの負ガ高まっタそのトキ、ボクはまた蘇ル。



キミがその時、大事にしているモノハ…ボクガ、ウバッテ…ア、ゲ………ル………―――――――





ソシテ…キミトイッショニ…ボクたちだけの世界ヲ、ツクロウ。


------------------------------------




「た、ただいま。」


「ん?お、おうビライト。今日は随分早いな。」


荷物を実家に置き、ヴァゴウの店に戻る。


喧嘩した後だ。少し気まずいビライトだが…


「あの、えっと…」

「?」

ビライトは何かを言いかけたが…


「な、なんでも、ない。」

ビライトはそう呟き、部屋へと戻って行く。


「…」(やっぱ言い過ぎたか…ハァ…全く…ワシもだらしがねぇな…)




ビライトは居間に入り込む。そして小さくため息をつく。

そして、そこでは1人で遊んでいるキッカの姿があった。まだ5歳の幼い少女は外で遊ばずに孤独でおもちゃで遊んでいたのだ。


「…」


「…?」

じっと見つめ合う二人。


「えっと、おにい、ちゃん?」


「…!」

呼びづらそうに、まるで他人の顔を伺うように話しかけるキッカ。ビライトはその姿に動揺する。


キッカは妹だ。だが、キッカのビライトを見る目は兄を見るような目ではない。

自分の目の前にいるのは誰だ。


自分の、家族ではないか。ビライトは拳を握りしめ、外へ飛び出す。


「あっ…!その…」


「っと!ビ、ビライト!?」

ビライトは走った。飛び込んだのは自分の実家だ。



「ハァ…ハァ…ハァ…」

激しい動機を見せるビライト。


自分は何をしていたのか。この5年間、あるのはクロ、クロ。クロ。

そう、クロとの思い出だけだ。それ以外のことが何もない。


そんな自分の頭の中に違うものが流れ込んでくる。それがたまらなく怖い、恐ろしい。

「う、ああ…ああああーーーー!!」

頭を抱えて叫ぶビライト。



「僕は…何をしているんだ…?僕は…」

ビライトの帰るべき場所…それは…


------------------------------------



その夜もビライトは自分の部屋に閉じこもってしまった。

ヴァゴウやキッカに心配されようが、ビライトは聞く耳を持たなかった。



翌朝、頭がボーッとし、何も考えられなくなり結局ビライトはクロのことでいっぱいになってしまった。




クロの元に行くビライトだが…


「クロ、クロ。」


虚ろな目でクロを探すビライト。

だが、いつまで経ってもクロは現さなかった。


ビライトにはクロを見ることができるほどの負の力が無かったのだ。

それに、クロは元々この日から姿を現す気は無かった。

形は違えど、今日起こってしまうことは同じだったのだ。


ビライトはもう気が付いてしまったのだ。


大事なものはそこにはなくて、あるのは…コルバレーに居るヴァゴウやキッカのことなのだと。



どんなに呼んでも、どんなに探してもクロは居ない。


クロは、ビライトの前から姿を消したのだ。


「うああ…ああ…僕は…君が…いないと…ああああーーーー……」

涙を流し、泣き続けるビライト。


5年間自分を支えてくれたトモダチはもういない。

クロは、この日を境に完全にビライトの中に核を残し眠り続けたのだ。


―――




これからのことはよく覚えている。








泣き疲れ、気を失っていたビライトは数時間後に目を覚まし、家に帰る。


それでも涙は止まらないビライトはヴァゴウの呼びかけにも応えず閉じこもる。


そして、ヴァゴウはビライトと向き合い、話を聞きだす。

クロが居なくなったことに絶望するビライトだが、ヴァゴウは新たな道を示した。


そう、キッカだ。



「お前には…大事な妹がいるだろ?」


「…そっか…僕は、一人じゃないんだ…」



「ワシはお前の両親じゃねぇけどよ…お前の親代わり…が出来ればと思ってるんだ。もっと頼ってくれよ。ワシも。」


「うん。ありがとう…」






クロの計画は失敗に終わった。


クロは自分の意志で姿を見せることも出来ず、そしてビライトを操ることも出来なくなってしまう。


作戦は失敗した。


ビライトを孤独にして、負の力を高め…覚醒を早める作戦だった。


ビライトと仲良くなり、ビライトにクロを依存させる。そして、成熟したらクロはビライトの潜在意識の中に消え、ビライトを更に絶望させる。


そんな作戦だった。




ビライトは孤独にならなかった。



キッカは幼く、シンセライズが憑依しているとは言え、その真価を全く発揮できずにいる。

だが、キッカが成長してしまうとシンセライズが順応してしまう。そうなればクロの脅威になる。


ビライトがキッカに目を付けたことで、キッカのシンセライズの力がクロにも干渉してしまう。



その結果、クロはビライトの前に出てくることが出来なくなってしまった。


更に、ビライトの中からクロとの記憶は封じ込められ、ビライトはただ何の変哲もないただの人間としての時間を取り戻したのだ。


ビライトの正の心の力、そしてキッカを意識したことによるシンセライズの力の流れ。

きっかけを与えた抑止力の竜人が与えた光の力。


その作用はビライトとクロの出会いすらも無に帰すほどに明るいもの。

だからこそ、クロはまた再び力を蓄えるために、ビライトの中で眠るのだった。

また一からやり直せばいい。ビライトのクロとの記憶は消える…


しかし、人は生きていく際に必ず負の力を生み出すもの。

それをわずかでも良い、糧として成長する。



(時が来れば…シンセライズすらも飲み込みその力を奪ってやル)



その時、それがあの日…全ての始まりとなったキッカの肉体が奪われたあの夜なのだった。







------------------------------------




―――


…深い闇の底。

眠り続けるビライトの意識は過去の夢から戻ってきた。


目を開けるとそこは深い紫色に染められた空間。



(…今までのは…俺の記憶の夢…か。)


「…」


(俺、抑止力に会ってたんだな…あのあたりの記憶はおぼろげだった…まだ俺の会ったことのない抑止力…デーガより、カタストロフよりもより強い威圧感だった…)


しかし、今はそんなことを考えている余裕は無い。目の前に、居る。


「…イビルライズ…いや、クロ…」


そこに立っていたのはイビルライズ。当時のクロの姿であった。



「やぁ。ビライト。」


何度聞いてもあの時とは喋り方も流暢だし、何度見てもあの時とは姿も異なる。


だが、不思議と違和感を感じない。やはり一心同体の時間が長かったからなのだろうか、忘れていようが、そこには何の違和感も抱くことはないのだ。


「…あんたの本体はここにはいない。カタストロフの中にあんたが居た時もそうだった。」

ビライトはここに居るクロは残滓であることを見抜いた。


クロは残滓に意志を持たせることができる。そして自分の手足のように動かすことも喋らせることもできる。全てを共有しているのだ。


「ボクは世界の敵だ。でも君は言ったよね。」


「あぁ、俺は…世界の敵だったとしてもクロの味方だって。」

「思い出してくれたんだね。でも、キミは…ボクの味方にはなってくれないんだろう?」

ビライトは首を横に振る。


「俺は、あんたの力にはなれない。」

「分かってた。」

「でも、俺はあんたのことを何も知らない。あんたに少しでも良心があるなら…俺に聞かせろよ。あんたは…一体なんなんだ。どうして世界を滅ぼそうとする?」

ビライトはクロとの対話を望んだ。


今やかつての友とはいえ今は敵対関係だ。それでも、ビライトはクロのことを知ろうとする。


「それで君の気持ちが変わるかもしれないよ。」


「…そうかもな。でも、俺は変わらない。あんたがキッカを奪い続ける限り、あんたがこの世界を滅ぼそうとしている限り、俺は絶対に変わらない。」


「フン、まぁ良いさ。見せてあげるよ。」

「…話が分かるやつで助かるよ。」


ビライトはクロの黒い靄に包まれる。


ビライトの意識はクロの生まれたはるか遠い昔。

世界統合戦争が終わり、それから数百万年が経過したころまでさかのぼるのだった…





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