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悪役令嬢、物申す!  作者: Nihonmusume
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第一章:前世の記憶と攻略対象者の一人 (はじまりと二つの記憶)

突然、シンクロする風景は私の記憶を呼び覚ました。そして、別の記憶が交差する。私は誰?何者?

第一章:前世の記憶と攻略対象者の一人。


始まりは


それは、王宮での人生初のお茶会だった。第一王子の五歳のお誕生日会に同じ年齢の子供達

(高位貴族のみ、つまり、伯爵以上)が初御呼ばれしたお茶会での出来事。そのお茶会は、5

歳以上10歳未満の子供達(将来の側近候補、婚約者候補など)と王子との初顔合わせが目的

のものだった。私は五歳になった公爵令嬢で、十歳の兄と一緒にお茶会に参加していた。私に

は初めてだったので、兄は同じ年頃の子どもたちがいるところまで私を連れって行ってくれ、

私がその子達のテーブルに座って楽しそうにしているのを見届けると、兄は友人達の所に行っ

た。

私も初めは、おとなしく一つのテーブルに座って、同じ年頃の女の子達とお喋り、社交して

いたけど、退屈になったので、少し散策してみることにした。色んな所に、侍女、側仕えや護

衛が配置されていたので、結構自由に出来た。噴水を見た帰りに、少し外れたところに赤く光

るものが見えたので、それに引かれて行ってみると、上記の出来事に出くわすことになった。

その光景にダブってみえたのが、前世の妹、いちか。いちかが五歳の時に同じようなことが

起きた。近くの公園で、いちかは、4-5人の男の子に囲まれ、虐められていた。私は、妹を

とても可愛がっていたので、頭にきて、その場に駆け込み、妹を背に庇い、虐めっ子たちに立

ち向かった。一番体が大きくて、リーダー格の男の子が私を突き飛ばした。その光景が、王宮

での出来事にシンクロして見えたことにより、私は私でありながら私でない記憶を思い出し

た。


2つの記憶


一先ず、記憶の整理をしてみよう。私は椅子に座り、机の上で情報を書き出して見た。勿論、

日本語で。コリーナには見られたら恥ずかしい、と言って机から離れた所に座ってもらった。

そこで、彼女は刺繍を始めた。


今の私の名前は、キャサリン・ヴァン・ローゼンベルグ。現在、五歳二ヶ月。先王の弟が、

私のお祖父様なので、とても王族に近い血筋。父は、ライアン・ヴァン・ローゼンベルグ公爵

で、現在、30歳、宰相をしている。母はマリーザ、27歳、辺境伯の娘で、夜会で父に一目

惚れされて、父の猛アプローチの末嫁いできた。母は、銀髪でアメジスト色の目をして子供の

目にもとても綺麗だったので、父が一目惚れしたのには頷けた。勿論、父も王族系統の金髪碧

眼でとても見目麗しい。二人が並び立っていると、雛壇若様とお姫様のように美しかった。二

人は、とても愛し合う仲の良い夫婦なので、家庭はとても温かく居心地の良い場所である。兄

は五歳上の現在十歳で、名前はラルフリード。彼もこの両親の子供であるのは明らかな超絶美

形。母似の銀髪に、父似の碧眼。しかも、優しくて賢い、自慢の兄様である。私も両親の子供

なので、十分綺麗な容姿をしている。ちなみに、父似の金髪で母似のアメジスト、でも母より

はもう少し深い色。夫婦仲、家族仲はとても良好で、使用人たちもそれに倣うように優しくて

温かい。みんなで私を甘やかしてくれる。五歳の子供の記憶としては、まあ、妥当...い

や、普通の五歳児の情報量ではない。今の私も変だな、しかも別の人格が合わさった今はもっ

と変。


私が見た映像、白昼夢、走馬灯は、思い出というか、いや、前世の記憶だった。転生したと

言うことは、私は死んでしまった、ということ。私......どうして......死んだ

んだろう?


前世の名前は桂木さやか、十八歳、高校三年生だった。大学は心理学に強いある国立大学を

受験することに決めていた。塾には行ってなかったけど、自分できちんと勉強して十分合格圏

内だった。高校最後の夏休み、三歳下の妹、いちかにせがまれて久しぶりに出かけていた。そ

のいちかは乙女ゲームに嵌っていた (少しでも時間があると手を出す、既に中毒症状)。映

画の帰りに喫茶店に行こう、と信号待ちをしていた。そのちょっとの時間にも、いちかはプレ

イしだす。


その乙女ゲームの名前は、‘誰もが恋する愛しの乙女、今日も誰かが恋の犠牲に!’熱中してい

る妹はいつも嬉々としてゲームの進行状況を詳しく説明してくる。もう耳だこの状態。覚えた

くないのに、覚えさせられてしまうほど。


信号が青になった時、人々が一斉に動き出し、妹は押されて転んだ拍子にケータイを落とし

てしまう。セーブ出来てない状態だったから、妹は焦って、それを拾おうとしたが、誰かに蹴

られて、人並みから弾き出された。信号は点滅し始め、赤になる寸前、突然一台の車が猛ス

ピードで、突っ込んできた。そこには妹が丁度ケータイを拾い上げ、立ちあがろうとしてい

た。私の体は反射的に妹の下へ全力で走り、妹を突き飛ばした。それと同時に凄い衝撃を受

け、そしてそのまま意識が途切れた。それからの記憶はない。そこで、私は死んだんだろう。


妹は大丈夫だったのかな?私は妹を守れたのかな?せめて妹には助かってほしい。生きて元

気で暮らしていてほしい。いちか、お父さん、お母さんと呟いた途端、急に悲しくなった。感

情が爆発、暴走した。私の突然の号泣に、部屋で控えていた専属侍女のコリーナは、驚いて、

“お嬢様、突然どうしたのですか?”と駆け寄ってきた。私は答えることが出来ず、ただ机に

突っ伏して号泣。 そのせいで、紙にインクのシミが広がって、読めない状態に(意図せず、

証拠隠滅、日本語で書いていたので、見られたらやばかった)。


異変を聞きつけた別の侍女が急いで部屋を出て行った。号泣する私を母は後ろから優しく抱

きしめてくれた。人肌のお陰で、心が少し温かくなり、しばらくして泣き止むことができた。

母の方を向くと、母は、あらあら~っと言いながら、侍女に手渡された濡れタオルで、私の顔

と腕をきれいに拭いてくれた。タオルはインクのシミで真っ黒だった。そして、もう一度私を

抱きしめてくれた。前の母と同じように今生の母もとても暖かかった。


その日は、私は母にべったり甘えさせてもらった。それを見た父は、私と母の両方に嫉妬し

て、仲間に交ざろうと頑張って割り込んできた。父は時どき、大人気ない。たまに、おにい

の方が大人に見える。それを見た、兄も私をぎゅっと抱きしめてくれた。こんなに家族仲の良

いところに、生まれて来られてとても感謝の気持ちしかない。前世では、若くして死んでし

まって、親孝行できなかったので、今生では、絶対長生きして、絶対親孝行、兄孝行しよう、

とその時、心に誓った。


新たな決意を胸に、思い出すのはゲームの内容と登場人物たち。でもい又聞きで、実際にはプレイしていない。だから、鮮明ではない、ただの情報の羅列。分からないことが多すぎる。私は既に攻略対象者たちに既に遭遇していた。

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