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妖狩り  作者: 前波蓮作
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第一話『思いがけない展開』

※表現力がほぼ皆無です。皆様の想像力に頼りっぱなしですが、よろしくお願いします。

 



――――物事とは、常に急展開である……。






「……『(あやかし)』だ」

 男はそう言った。

 化け物を前に、男はさも怯えた様子もなく淡々と言う。

「最近の世の人々はこいつらを『妖怪』だの、化け物だの言うが、正確には少し違う。こいつは、『妖』だ」

「『妖』……?」

 呆然として彼の言葉を繰り返すと、彼はこちらを振り返る。首から提げた銀色のロザリオがくるりと翻る。太陽の光を反射し、十字架がきらりと眩しく光った。

「そうだ。妖怪は自然に生まれる、ただの生物。化け物も似たようなものだ。だが『妖』は……。ヒトから生まれるモノだ。ヒトの苦しみ、絶望、そういった負の感情や心から生まれる。そして、人の心を餌として生きている」

 男はそこまで話すと、再び『妖』に向き直る。

 その肩には、いつの間にか彼の背丈の倍以上はある大剣が背負われていた。

 先ほどまで静かに止まっていた妖が、突然動き始めた。明らかに挙動がこちらを狙っている。

「どうやら、お前には『妖』が見えるらしい。正直この『妖』、俺一人で倒せるとは思えん。不本意だが、力を貸してはくれないか? 少年、名は何と言う?」

「……純夏。石宮純夏(いわみやすみか)だ」

「そうか……」

 男は一つ頷き、懐から別のロザリオを取り出す。

「ではスミカ、願え! そのロザリオにお前の心全てを願え。心、人の信念は『妖』を倒す最も有効な力となる。……さあ、願え、思いを込めろ! あの『妖』を倒せる程、大きな心の力を!!」

 言われて、少年は立ち上がる。

 震えはもう、ない。

 ただその心にあるのは、『妖』のことだけだ。

 『妖』を倒したい、この恐怖から逃れたい。奴を倒さなければ、こちらが死ぬ。何としても、勝たなければならない!!

 そんな強い心に、ロザリオは応える。

 強い信念は力となり、絶望の闇を切り裂く、光となる。

 ロザリオは眩しく、太陽に負けぬほどに強く輝いた――――…………






 ………って話をしても、誰も信じてくれないだろうけど。

 でも、全部本当のことなんだ。

 君が信じるかどうかは別問題だけど、俺は嘘をついていない。

 神に誓ったっていいさ。

 

 さて、これから話すのは世にも奇妙な物語だ。

 君がもしこの物語について行けるのなら――――是非とも、続きを聞いてくれ。


 では、始めようか。

 君達の知らない世界で起きている、不思議なお話を――――。




  《妖狩り》

  

 第一話『思いがけない展開』





 

 名前:石宮純夏(いわみやすみか)

 年齢:十六

 所属:志乃ヶ芽(しのがめ)高等学校 第一学年


 これが、少年の簡単なプロフィールだ。

 何の変哲もないただの学生。

 しかし、今彼が体験していることは人事を遥かに超越している。

 学校帰りに命を脅かされる状況になるなど、誰が想像できただろう。あまりに理不尽なことだ。

 だが、現実なのだ。受け入れないわけにはいかない。

 そう思った瞬間、彼の体は勝手に動いていた。

 今、彼を操るのは理性ではなく、本能。

 動物本来の本能だった。

 理性など、今の彼には一欠けらもない。

 ただただ一分の恐怖と、それを圧倒的に上回る生存への貪欲な願望。

 それだけだった。


 ロザリオは光をまき散らしながら、その姿を変えていく。

 長く、美しい曲線を描いた、一振りの刀に。

 その刀を手にした瞬間、彼の本能は悟る。

 これならばいける、と。

 刀を手に、彼はダッと駆けだす。

 不思議と、重さは感じない。まるで自身の腕のように馴染む。

「お、おい⁉ そんなに前に出たら――――」

 盾役だった男の横をすり抜け、スミカは走る。男が注意するが、スミカの耳にそのような小さな抵抗など聞こえるはずがなかった。

 『妖』がスミカの刀を恐れ、やたらと攻撃を繰り出す。

 そのカマキリのような風貌の『妖』は必死に鎌を動かすが、スミカはその俊敏さでサッとかわしながら前進する。

 そして、一閃。

 あまりの速さに、『妖』は間抜けな顔で静止する。

 そして数秒後、ようやく斬られたことに気づいた、と言わんばかりに『妖』が真っ二つに割れ、そして光と共に消え去った。

 刀を振り切った姿勢でしばらく止まっていたスミカだが、『妖』が消えると同じタイミングでその場に倒れる。そして、『妖』と同じように刀も光と共にロザリオへと戻る。

 男はこの状況について行けず、しばらく思考停止していたが、ようやく元に戻る。そして彼もまた、手にしていた大剣をロザリオに戻す。

 スミカに近づき、息があることを確認すると貸したロザリオを回収する。

 そしてしばらく思考し、スミカを担ぎ上げる。

「全く……とんでもないバケモンを見つけてしまったな……」

 苦笑いすると、彼はスミカと共にどこかへ去ってしまった。


 あとに残ったのは、ただただ耳朶に残るような静寂のみだった……。

〈次回予告〉


 石宮です。

 はー、『妖』とか怖すぎだろ……。

 いきなり戦えとか言われても、フツービビるよなぁ……。

 よく戦ったと思うよ、俺! 頑張った!

 それにしても、『妖』ってのは何でこう凶暴なんだろうな……? 

 あんなのに襲われたら即ゴートゥーヘルだぜ。勘弁してくれよ。

 ま、とにかく次回も俺の活躍に期待しててくれよ!

 

 第二話

 『避けられない使命』


 お楽しみに!


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