05.ジュリエッタの協力
ジュリエッタと今後について話し合っている。
話題は私のステータスについて、
「メルフィス姫の能力があればいつ襲われても大丈夫だが今のゆきち様の能力は多少弱くなっているので襲われると・・・・命に係わるの・・・・と」
とジュリエッタ。
確かに・・・・とうなずく私。(多少では無いけれど・・・)
「そこでご相談なのですが・・・・しばらくの間、ゆきち様にはメルフィス姫として過ごしていただく事は可能でしょうか?ゆきち様が経験を積み、強くなったら改めて勇者として名乗っていただく・・・・当然私もお手伝いいたします。」
「でも、私のステータスが低くても大丈夫なの?」
「メルフィス姫はレベルMAX、この世界では最強の戦士である名声があり、挑んでくる命知らずはいません。挑んできたとしても聖なる武器や防具、その他多数の品物を持っています。それを装着すれば、”多少”弱くても大丈夫です。」
「聖なる武器に防具?」
「はい、周りに集まっている聖なる力の強さによって数値が代わります。ゆきち様の周りにはまぶしいほどの力が集まっていますので、剣の力は一刀両断、防具に於いては近づく事さえできないでしょう!」
確かに・・・・能力値はだれでも見る事ができないし、メルフィス姫のレベル99の世界最強の力との名声に聖なる武器に防具があればだれも挑んでこない・・・・。
戦わずして勝!私、安全じゃない!
「ただ、今のままでは転生したばかりでレベルも下がっているでしょう。それについては私がご協力させて頂きます。」
「痛いのは苦手ですが・・・・」
と私。
「大丈夫です。痛みが無く、短時間でレベルを上げる事ができます!」
「本当に!?」
「はい、メルフィス姫様で実証済み!」
実際に使用した人の感想であり、効果については差があるかも・・・・
「分かりました。ジュリエッタの提案にのりましょう!」
と言うとジュリエッタは一言つぶやき私に手を差し出す。
私も手を差し出し握手する。
その時、私の手が光り、手首に白い線が入った。
「ゆきち様、今の握手で契約が結ばれました。」
と明るい声のジュリエッタ。
「あ~あ」
とメルフィス姫の声が脳内に響く。
私、騙された!?
「さあゆきち様、早速、訓練をしましょう!まずは姫として恥ずかしくない姿勢矯正から、挨拶作法、ダンスや音楽などの芸術など、社会情勢に歴史も必要かしら~」
「ただ、時間がありませんので、詰込みで行きましょう♪大丈夫です。魔法の主従契約で縛ってありますのでゆきち様は拒否できませんのでご安心ください。」
と上機嫌ジュリエッタ。
「なにそれ!私は簡単に短時間でレベルが上がる方法を知りたいのだけれど・・・・その前に主従契約?どちらが主?契約内容はとうなっているの?」
と私。
ジュリエッタは微笑みながら・・・・
「ゆきち様は勇者なのですから些細な事は気になさらずに・・・・そうそう、前に申し上げた通り。私はスパルタで体に教え込むような野暮な真似はしません、外傷の痛みは時間が経つと忘れますから!・・・だけれど安心してください!私のやり方であれば忘れなれないように魂に刻み込みますので大丈夫です。!」
「え・・・魂?なにが安心でなにが大丈夫なの?」
「大丈夫です!泥船に乗った気分で安心してください!」
とジュリエッタは赤い瞳で私を威嚇する。
私はその赤い瞳でこれから始まるであろう未知なる恐怖で力なくベットに倒れる。早速、特殊能力である体調不良が発動と思ったが・・・・。
「ゆきち様、安心してください。特殊能力も眠気も食欲も全て契約で縛りましたので発動しません。ゆきち様の希望通り、短時間で仕上げます。」
とジュリエッタは、口角だけを上げて微笑んでいる。
「新しい玩具を手に入れた時の顔だ・・・・」
とメルフィス姫の声がした。
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早速ジュリエッタとの特訓が始まった。
まずは姿勢矯正から・・・となったが特にスパルタはなく、優しく姿勢について指導してくれる。
床に線を引き(指先を動かすと床に線が浮かび上がった・・・魔法って便利!)頭の上に本を載せてあるく・・・・
モデルさんが練習するやつだ・・・。
「ねえ、メルフィス姫、ジュリエッタって良い子じゃない」
と脳内で問いかけると・・・
「え?」
とメルフィス姫の裏返った声。
「ゆきち様、ジュリエッタは優れた魔術師で、世界最恐です。」
「最恐?最強ではなく?」
「はい、魔術は確かに最強です。一人で魔王軍を1/3迄減らした程です。・・・外見の見栄えとは違い性格は最恐です。外見は幼く見えますが私より年上で何歳かは分かりません。」
かわいい外見をしているのに・・・
「そもそも外見も本物か分かりません。魔術で偽装・・・・」
突然、メルフィス姫の声が止まった。
不機嫌そうな顔をしたジュリエッタが私を見ている。
椅子に座り、アリスに準備してもらったカップで何か飲んでいる。
「メルフィス姫はお喋りが過ぎるようですね・・・・ゆきち様が集中できないのでしばらく眠っていてもらいましょうか?」
ジュリエッタが右手を胸に当てると
「う・・・・ぐ・・・・」
と苦しそうなメルフィス姫の声
ジュリエッタが無表情のまま胸に当てた右手を横にずらすと・・・・
「ぎゃ~~~~~~~~」
メルフィス姫の悲鳴が脳内に響き渡る、断末魔のような悲鳴が・・・・。
「さあ、ゆきち様、メルフィス姫には”お休み頂いた”ので続きの鍛錬をしましょう!」
何事もなかったように笑顔のジュリエッタ。
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「ねえジュリエッタ、ずいぶんと時間がたったのですが・・・・休憩しませんか?」
床に引かれたラインの上を何百回歩いただろうか?
慣れない姿勢で背中も足もパンパン、座りたい・・・・。
私が提案すると・・・・ジュリエッタは何も言わすに右手の指先を波のように動かす
すると私の体が光りに包まれる・・・・。
「ヒットポイントは回復させました、歩行の練習を続けてください。」
とジュリエッタ。
「お腹がすいたのだけれど・・・・」
と私。
「必要ありません。」
「お腹が空いた感覚が・・・・」
「大丈夫です。」
「大丈夫ではなく!お腹が空いた!足も痛いし!疲れたし休憩しましょう!」
と私。
ジュリエッタは大きなため息をつくと・・・
「ゆきち様が、短時間でレベルを上げたいとおっしゃったので”私は自分の時間を犠牲にして付きっ切りで忙しい中協力させて頂いております”これ以上何がお望みですか?」
といい、カップに口をつけて飲み物を飲んでいる。目はそらさずに赤い瞳は私を見つめている。
「嫌なら早く覚えてください」
というと隣にあるケーキに口をつけて・・・
「おいしい♪」
そんなジュリエッタを私は睨む。
ジュリエッタはため息をつくと・・・・
「動きが止まっていますよ!」
あれから何十時間いや何百時間・・・何日経っただろうか・・・・
ありえないほどの空腹にのどの渇き、睡魔、疲労感などにおそわれながら練習をする私。
今は挨拶の練習・・・・。頭の上に本を置きスカートを持ち上げて会釈・・・・
1000を超えたあたりから数えるのをあきらめる程回数を重ねて同じ動作をしているが・・・・ジュリエッタの合格はもらえていない。
ヒットポイントがなくなり私が倒れる寸前になるとジュリエッタは面倒くさそうに指先を動かし私の体力を回復させてくれる。
ジュリエッタも寝ていないはずだが・・・・今は本を読んで飲み物を飲みくつろいでいる・・・。
「ゆきち様、そんなペースではいつまで経っても特訓は終わりませんよ!」
とジュリエッタは久しぶりに顔を上げると赤い瞳で私を見ながらけしかける。
「ジュリエッタ様、私は限界です・・・・食事を・・・睡眠を・・・・休憩を・・・・」
と私がのどの渇きもあり力なく言葉を発するが・・・・
「ゆきち様は我々の希望で憧れである勇者様です。その勇者様ともあろうお方がなんという情けないことを・・・・まだ姿勢もマスターしていません。」
といい、やめる気配は無い。
ジュリエッタも食べてはいるが私に見せつけるように食べているデザートと飲み物のみ、食事はちゃんととっていないし、寝ていないし・・・どうなっているのだろう。
「ジュリエッタ様もお疲れでしょう。休憩を・・・・」
と言いかけた所でジュリエッタは私の声を遮るように
「私は”付きっ切りで忙しい中協力させて頂いております”」
と言い赤い瞳で私を睨む・・・。
もう何十回も同じことを繰り返している。
助けを求めてメルフィス姫を呼ぶが・・・・断末魔の悲鳴を聞いた後から返事はない・・・・。
これが後どのくらい続くのだろうか?
ジュリエッタ!ツンデレのツンはそれぐらいで・・・・デレをください!
このままだとMに目覚めてしまいます・・・。
ぴろりーん
勇者ゆきちのレベルが2になった。
ヒットポイントが上がった。
姿勢が良くなった。
飢餓感を覚えた。
絶対服従(私<ジュリエッタ)を覚え、ジュリエッタ様と呼ぶようになった。