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失恋
馬を飛ばせば半日の距離を、数日かけて兄と子犬は町へと帰った。二人で馬に揺られたり並んで歩いたりしながら、兄は言葉とこれからの事、自分の弟として一緒に暮らす事を子犬に教えた。
子犬はずっと兄の側から離れなかった。兄の隣を居場所と決めたようだった。
目指す町は小さな国の中心で、谷と城壁に囲まれ、その周囲にも放牧地が広がっていた。城壁近くで羊の群れの世話をする老人がいた。兄はそれに気付くと、子犬を連れて挨拶に行った。子犬はその老人に弟だと紹介され、善良である事を誓い、この国に住む許可を得た。
町に着いてから、子犬は兄の親しい人達を紹介してもらった。その内の一人の女の人が子犬は気になった。足が悪いようなのにぎこちなく屈んで、子犬と目線を合わせて笑い掛けてくれた。立ち上がるのに兄が手を貸していた。
子犬はその人に兄と似た匂いを感じて、この優しそうな人が姉になるのだろうかと淡い期待を抱いた。と同時に、自分の想いは実らないのだと悟る。
その時初めて、子犬は自分が兄に対して恋心を抱いていたと知った。