いつも通りの日常
朝っぱらからテンションだだ下がりの俺に比べて憎たらしいぐらいの晴天だ。俺はうなだれながら通学路を歩いていた。
「よ~」
聞きなれた間の抜けたような声が背後から聞こえた。
「おう、流助か。おはよう」
「おはよ~、なんか暗いねぇ。いったいどうした?」
このぼんやりした雰囲気の少し痩せ気味な男は麓流助、俺の同級生で親友だ。いつも眠そうな顔をしており、少し抜けている所があるが気のいい奴で、憎めない性格をしている。
「いや、昨日変な夢をみちまってよ...」
「ん?どんな夢?ちなみに僕は布団で寝てる夢を見たぜ」
「夢の中でまた寝てんじゃねえよ!?まあいいや、なんか戦場みたいなところでいきなり起こされてよ」
「起こされた?誰に?」
「ん~、メッチャ筋肉ムキムキの爺さんだったな」
「アハハ!な、なんだよそれ!」
「いや、お前な…他人から見れば笑い事かもしれないけどな?」
「フフフフッそれで?」
「それで俺を起こすなりその爺さんがいきなり『危機感が足りぬ!』とか説教しはじめたから『そもそもあんた誰だ?』って聞いたんだよ、そしたら『喝をいれる!』とか言って思いっきりビンタされてな。それで目が覚めたんだ」
出来れば思い出したく無かったが自分の口で説明したら鮮明に昨日の夢の光景が頭に浮かんできた。
「ハハハハ!それは理不尽だねぇ、フフッむ、無理矢理起こされた挙句...ハハッ今度はビンタで無理矢理寝かされて...ハハハハッ」
あのくそ爺、次会ったら...いや、あのバスケのゴールぐらいの身長で超筋肉質のガタイの男に喧嘩を売るような真似はやめておこう、まあ二度と顔を見ることもないだろうがな。それとこいつ笑いすぎだろ...
「いつまでも笑ってんじゃねぇっ!!」
「ごめん、ツボに入っちゃって...クフフフ」
「いいから早くいくぜ?遅刻したら教師どもが鬱陶しいからよ」
「りょうかーい...フフッ」
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学校に到着し、流助とはクラスが違うので途中で別れ、自分の教室に入る。ふと目を向けると俺の席に女子が座って漫画を読んでいる。
「まーたお前か、自分の席に戻れや」
「えーあんたがあたしの席に座れば良いじゃん」
「そうかい、じゃあ遠慮なくお前の机を漁らせてもらうからな」
「待った待った!?分かったわよ、しょうがないわね~」
この女の名は水端凛、『からかいがいがある』とかいう訳の分からない理由でやたらと俺に絡んでくる奴だ。俺も最初は結構本気でキレていたが最近はもう慣れた。小柄で貧乳、おまけに童顔な見た目も相まって子供の悪戯のように捉えている。よくよく考えて見ればそこまで悪質な真似はされていないし、俺もこいつのウザ絡みを楽しんでいる所がある。
「あ、そうそう力丸~今日はホームルーム無しで1時限目は自習らしいわよ?なんか職員室で会議があるみたい」
去り際に凛がそう言った
「おっマジか。じゃあ俺は抜ける。もし先生が教室に来たらいつも通り携帯で知らせてくれ」
「まぁたあんたは隙あらばサボるんだから。分かったわよ」
「恩に着るぜ」
俺は教室を後にした
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俺の通うこの隆銘館中学の風紀は、世間的に見れば悪くは無いらしい、しかし、不良と呼ばれる生徒も一定数はいる。今体育倉庫の窓から中に侵入している俺もその中の一人だ。
俺よりも先に数人、既に他の不良が溜まっていた。
「よう力丸、やっぱりお前も来たか」
「おう、お前らはえーな」
「おい蓮堂、なに授業サボってんだ?」
「お疲れ様です先輩、授業サボってるのは先輩も一緒じゃないですか」
各自持参したジュースや菓子などを飲み食いしながら先輩や同級生達と他愛のない話をする、俺は喫わないが煙草を喫っている者もいる。ある程度時間が経ったら眠気がきた。「あ~ねみぃ、しばらく寝るぜ」背後にあった体育用マットレスに倒れ込むようにして寝転がった。
あの夢のせいで疲れが取れて無いこともあってか意識を手放すのに時間はかからなかった。