審神者のプラチナステータス #1
惑星オルド唯一の共通通貨、ドジルを保有する巨大国家ラジリア。
この国の建国話には、七人の王と四人の神、そして審神者が登場する。
審神者は東西南北に存在するそれぞれのバベルの塔に、四人の神を配置した者だ。「伝承の語り手」や「神の伝承者」などと呼ばれてもいる。
これからはその者の、審神者としての力を手に入れるまでの話をしよう。
「ここどこ!?」
辺りを見渡すが、何もない。真っ青な水たまりが足元にあるだけだ。
上を見上げると、キラキラしているひし形が目に入る。
「ナニコレ宝石?ぶら下がってる、いや、浮かんでる?」
ジャンプでもすれば届きそうだ。
「よっ……わあっ!?」
ジャンプが高すぎたのか、宝石を取り損ねる。
「もう一度……っと」
果物をもぎ取るように、両手に収まらない宝石を手に入れた。
パサリと音がして、上を見上げようとしたところで落下物にぶつかる。
「いたっ」
額をさすってから持ち上げてみると、先に小ぶりの宝石がついた棒だった。
見上げてみるが、木が茂っているばかりで特に見えるものはない。
ひし形を見つめなおし、地面に杖でひし形を描く。
すると、リンゴが複数個ゴロゴロっと姿を現した。
「魔法だ!……食べられるかな……?」
そっと拾って、ゆっくりと口に運ぶ。
「おいしい……」
そこへ、蛇が現れる。
「素敵なものをお持ちですね。一つ私に下さいませんか?」
「ええ。あげるわ。一緒に食べましょう」
私は蛇にリンゴを渡し、腰かけた。
リンゴを口にした蛇は言う。
「ところで、ここの辺りの出身じゃないようですが……」
何を問われたのか気づいた私は後を継いで言う。
「ええ。旅をしているの。でも、行く当ても分からないし、ここがどこなのかも知らないわ」
じゃあ、と蛇は語り始めた。
「この世界には、神話のようなおとぎ話がある。
せっかくだから、説明しましょう」
「星の全ての力が衝突し、世界を何も残っていない焼野原へと変えた。
ただ二人残された、男と女が彷徨った末に出会い、子供をつくった。
子孫への気持ちから、恵みと平和を祈って木を植えた。
子孫もまた、恵みを求め、彷徨い、出会う。
しかし、永遠の平和はかなわなかった。
失われた世界で少数の恵みの為に争う。
憂いた神は、人に知性と技術を与え、世界の隅に隔離した。」
その際、人間は殺し合い、世界は真実滅びを迎えてしまった。
そういって蛇は私の目を覗く。
「ここには何もないのね……」
そう私がこぼすと、蛇は首を横に振る。
「たくさんあるよ。特に目立っていないだけなのさ」
リンゴの芯まで丸のみにしてから、蛇は去る。
「じゃあ、良い旅を」
あてもなくさまよい、森を出て、川に沿って歩き続けた。
見えるのは人気≪ひとけ≫のない建物ばかり。
破損の少ない建物に入っては、ペンや紙を手に入れ、動物の姿を書き留める。書物もあさった。
大きな町も小さな村もあったが、人は見えなかった。
ある日、子供泣き声を耳にする。
確信したのは、甲高い声だったからだ。