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Eid-アイト-  作者: つよちー
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第一章「拒絶」

受験シーズンですね。僕は高校一年生なのでまだ受験とは無縁ですが、去年の受験のことを思い出しますね。塾で必死に勉強して、友達と同じ高校に合格できるか、という不安はなかったですね。むしろ友達が合格するか不安でした(笑)それでは第三話、どうぞ。

朝、いつも通り学校に登校すると奈美の席に彼女が座っていた。亮太はすぐさま挨拶をしに、近付く香に気付かず彼女の元へ向かった。香はその場に立ち止まり挙げた手を寂しく下げた。

「加藤さん、おはよう」

元気の良い挨拶に対して彼女は素っ気ない会釈を返した。

「一応挨拶は返すんだね」

「当たり前でしょ。私がそんな失礼な人に思える?」

「誰とも関わりたくないって言ってたからさ」

「私は見るだけで足は踏み入れないの」

理解できない言葉に彼は首を傾げた。そんな彼にお構いなく彼女は鞄から本を取り出し読書を始めた。

「読書なんてしないでお話しようぜ」

陽気に話しかける彼に奈美は冷たい目で睨みつけた。

「邪魔しないで、読書してるの」

その目に圧倒され彼は仕方なく自分の席に戻った。するとすぐ後に香が彼の元へ来た。

「おはよう、亮太」

「あー、おはよう」

「あんなはっきり自分が思ってる事を言えるってすごいよね」

「俺は諦めねえ。絶対仲良くなってやる」

そう言って彼は奈美のことを睨みつけた。

「そんな怖い目したら仲良くなれないよ」

と香は言った。それを聞いた亮太は小さく笑った。その笑顔を見て香はそっと頰が緩んだ。


それから亮太は奈美に会う度に彼女に話しかけた。彼女もなかなか気を許さず、ずっと彼に冷たく接していた。それを繰り返し続けやがて週末になる。いつもと変わらず亮太は奈美にアプローチしていたが相変わらず彼女も冷たく接する。昼休みに昼飯を一緒に食べようと彼は彼女を誘った。

「ねえ加藤さん、お昼御飯一緒に食べようよ」

彼女は彼は強く睨んだ。読書をしていた本を閉じて面と向かって彼と向き合う。

「いい加減諦めてよ。私は誰とも関わりたくないって言ってるでしょ。今まで何も言わずに待っていたけどもう限界」

教室が静まり返る。そのすぐ後に周りから小声が聞こえてきた。亮太はその場にただ呆然と立ち尽くしていた。奈美は辺りを見渡し教室の空気に気付く。

「そういう事だから今後一切話しかけないで」

そう冷たく言い放って彼女は教室を出て行った。呆然と立ち尽くす亮太に香は戸惑いがちにそっと近付く。

「だ、大丈夫....?」

彼の手を取ろうとそっと手を伸ばしたが、寸前で彼は香の方を向いた。彼は笑みを浮かべていたがそれが本当の笑顔ではないというのは誰が見ても分かる事だった。

「怒られちゃったよ。女心って複雑だなぁ」

香は悲しそうに彼を見つめる。

「外行こうよ」

彼女がそう言うと彼は辺りは見渡して頷き苦笑いをした。


誰もいない屋上で二人は弁当を食べていた。

「加藤さん、亮太のことすごく嫌がってたね」

香がそう呟くと亮太は食事の手を止めた。

「あれは本心だったのかな....?」

「どういうこと?」

「俺には分かる気がするんだ。俺も誰とも関わりたくないときがあったけど、心はずっと寂しかったんだ。だから加藤さんも俺と同じだと思う」

根拠のない言葉に香は首を傾げた。

「また今度話しかけてみるよ。根はいい子だと信じてるからさ。折れるまでやめないぜ」

自信満々の笑みで胸を張る彼に香は笑った。そして心はどんどん寂しさで満たされていく。私の方が近くにいるのにどうして私を見てくれないのだろうと、彼女は悔しく思った。二人は弁当を食べ終え教室に戻る。席に着いた途端にチャイムが鳴り響き昼休みは終わった。


終礼をし、さっさと家に帰ろうと鞄を持ち上げ席を立った瞬間、先生に声をかけられた。

「おい佐々木」

「なんすか」

「これさ、二階の資料室に持って行ってくれないか。俺ちょっと会議で行けないんだ」

「後じゃ駄目なんですか?」

「駄目なんだよな....頼めるか?」

「まあ一応....」

「ありがとう」

ほぼ一方的なお願いを受け彼は重たい資料を抱えた。五階から二階まで行くのは面倒だなと思いながらも資料室に資料を届けた。時間を確認しようと携帯を取り出すと香からメールが来ていた。

『一緒に帰ろ。昇降口で待ってる』

内容を確認し彼は了承の返信をした。資料室を出て昇降口に行こうと廊下を歩くと先に見覚えのある後ろ姿があった。奈美だ。彼は声を掛けようとしたが昼に彼女に言われたことを思い出し踏み留まった。内心少し悔しい気持ちに包まれながらも彼は彼女の後ろ姿を眺めていた。すると突然苦しそうに蹲り出した。彼は咄嗟に彼女の元へ駆け付けた。

「加藤さん、大丈夫!?」

彼に気付いた瞬間、彼女は彼から離れようと立ち上がろうとした。

「無理するなよ、保健室行こう」

彼は彼女に肩を貸そうとしたが歩ける状態ではないとすぐに察した。彼女の前で屈み

「おんぶするから」

と言ったが彼女は首を横に振った。この後に及んでまだ自力で立ち上がろうとする。彼は溜め息を吐き、彼女をお姫様抱っこした。彼女は驚きながらも抵抗しなかった。保健室まで誰かに見られないか気にしたが運良く誰もいなかった。保健室に着いたが先生は居ない。どうしてこんな大事な時に居ないんだと内心怒りながらも奈美のことを全力で心配した。彼女をベットの上に寝かせ様子を見る。

「大丈夫か....?」

彼女は小さく頷き苦しそうな荒い息も少し安定してきた。

「そこの棚の中に....薬があるはずだから....取ってきてくれる?」

そう言って彼女は薬が入っている棚を指差した。彼は頷きその棚を開ける。分かりやすく彼女の名前が書かれてあるシールが薬に付いていた。それを取り鞄から水筒を取り出した。薬と水筒を彼女に渡すと彼女は体を起こし薬を二錠口の中に入れ水筒の飲み物で飲み込んだ。

「ありがとう....」

彼女はそう言って安堵の息を吐いた。そして気まずそうに彼から目を逸らした。二人の間に気まずい空気が漂う。亮太は少し苦笑いをしながら奈美に話しかけた。

「突然苦しそうに蹲ったからびっくりしたよ。俺が偶然近くにいてよかった」

彼女は彼から顔を逸らして何も言わない。彼は俯き少し悲しい気持ちになった。

「俺さ....本当に加藤さんと友達になりたいんだ。俺も、加藤さんみたいに誰とも関わりたくないって思う時期があったんだ」

そう言うと彼女は少し驚いた表情をして彼を見つめた。彼はそれに気付かず俯いたまま話し続ける。

「俺、バスケットボール選手になりたかったんだ。でも事故で左手が上手く動かなくなってできなくなったんだ。それで周りの人はみんな俺に同情してきた。俺はその同情が嫌で誰とも関わりたくないって思ったんだ。でもそれは間違いだって親友に気付かされたよ」

奈美は彼を寂しく見つめた。

「加藤さんに何があったかは分からないけど君の気持ちが全部じゃないけど分かる気がするんだ。それでも....俺と友達になるのが嫌っていうなら....諦める」

俯いたまま彼は彼女の返答を待った。沈黙が彼らを包む。時計の秒針の音が大きく聞こえるくらい静寂だった。

「....私ね、生まれつき体が弱いの」

ふとそう言った彼女を彼は顔を上げて見つめた。

「そのせいで学校に行けなくて友達はみんな私から離れていった。友達を失う悲しみをもう味わうくらいならいっそ作らない方がいいって思って貴方に冷たく接したの。ごめんなさい....」

気まずそうに彼女は顔を逸らした。そして間を開けて彼と面と向かって見つめ合った。

「それでも、私と友達になってくれる....?」

彼を見つめる目は寂しさに包まれていた。彼は咄嗟に彼女の手を握った。それに互いに驚く。彼は彼女に微笑み

「俺が先にお願いしたんだから、加藤さんが答えないと」

と言った。彼女はそれを聞いて彼女を縛る硬い鎖が解けたかのように

「うん、友達になろ」

と自然の笑顔で言った。その瞬間、二人の間にあった壁は崩れ落ちた。

最後まで読んで頂きありがとうございます。

奈美のような誰とも関わりたくないという人が身近にいますか?僕は居ますが、あまり接点もないし今の時期に話しかけるとなると今更な感じなのでどうしようもないですが、そういう人は必ず誰かと打ち解けるはずです。現にさっき言った人も知らない人だけどその人と打ち解けてましたからね。特に同情が嫌いな人は同じ苦しみを味わった同情が一番心に刺さると思います。まあ空論な気もしますが。本当に心の底から誰とも関わりたくないのであればそれはもう仕方ないです。それが本人の生き方です。でも、そんな人もどこかで寂しさを感じているはず。奈美のように。

感想や指摘など頂くと嬉しいです。

続きを楽しみにしてくれると更に嬉しいです。


これらに登場する人物、地域、団体は全てフィクションです。

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