第一章「甘酸っぱい二人の時間」
【前回のあらすじ】
奈美を地元の祭りに招待した亮太。彼女に告白し結ばれた二人は口付けを交わした。
昨日の告白を思い出す。唇に残った微かな感触。顔が赤くなっていくのを亮太は気付いていた。誰もいないのに、彼は恥ずかしそうに顔を腕で隠した。
「くそ....嬉しすぎる」
そう呟き、亮太はベットに寝転がった。うつ伏せいなり、ベットに顔を沈める。気がつくと、時計の針はもう八時前を指していた。亮太は急いで支度をして学校へ向かった。夏が残した暖かさが消え、吐いた息が白くなるほど冬の寒さが広がっていた。冷たくなった街を綺麗な朝焼けが染める。その朝焼けを、亮太は眺めた。そっと微笑み前を向き歩き出した。
「亮太〜」
緩い口調で彼の名前を呼ぶ。振り返ると、そこには香と徹がいた。
「おはよう〜」
眠たそうに香は挨拶をする。徹も手を上げて挨拶をした。
「よう、亮太。加藤さんとはどうなった?」
それを聞かれ、亮太は少し顔を赤くして彼らから目を逸らす。
「昨日、告白して付き合うことになった....」
沈黙が生まれる。羞恥心を感じながら亮太は彼らを見た。二人とも大袈裟に驚いていた。そんな彼らを軽く睨みつける。
「な、なんだよ....」
二人は共声を揃えて
「末長くお幸せに」
と亮太をからかった。
「うるせっ....ほっとけ」
顔を真っ赤にし照れ隠しに拗ね、早歩きして彼らより先を歩いた。香と徹は笑って亮太の隣に並んだ。
「ねえ徹、今度一緒に遊ぼうよ」
「ああ、いいぜ」
その会話を聞いて亮太は少し疑問を抱いた。
「香から徹を誘うなんて珍しいな」
「だって私達付き合ってるもん」
「....え?」
亮太もさっきの二人のように固まる。その反応を見て二人は笑った。
「急すぎないか....?」
「別にそんなことないよ」
「ああ、俺は出会った頃からずっと好きだったからな」
「えぇ....?」
突然のことで頭が混乱する。頭を抱えて困惑する彼を見て二人はまた笑った。教室に着くと徹は隣の教室へ行った。扉を開けると、いつもの席に奈美がいた。亮太はすぐに彼女に挨拶した。
「加藤さんおはよう」
「おはよう、佐々木くん」
二人は幸せな表情を浮かべて微笑んだ。すると後ろから香が
「二人共付き合ってるのにまだ苗字で呼んでるの?」
と言ってきた。
「そうだけど....」
「名前で呼びなさいよ。ほらほら」
亮太の背中を叩いてそう言う。亮太は顔を赤くして彼女の名前を呼ぼうとする。
「な....奈美....さん」
奈美も顔を赤くして照れた。
「ほら、加藤さんも」
「え....私も?」
「当たり前じゃん。ほら、早く」
奈美は亮太から目を逸らして名前を呼ぼうとする。どんどん顔が赤くなっていき、亮太までも恥ずかしくなって顔が赤くなった。
「りょ....うた....くん....」
途切れながらも彼の名前を呼んだ。
「まあ最初はこんな感じだよね。徐々に慣れていこうね」
亮太と奈美は互いに目を合わせそしてすぐに逸らした。恥ずかしすぎて目を合わせられない。
「じゃあ私は徹のとこに行ってくる」
「ああ、じゃあな....」
香は笑顔で二人に手を振り教室を出て行った。気不味い雰囲気が二人を包む。
「お、俺席に戻る」
半分片言で言いながら亮太は自分の机に荷物を置き、席に座った。恥ずかしさに耐えきれずそのまま机に蹲って顔を隠した。真っ赤になった顔を誰にも見られたくない。奈美も、亮太の方は向かず顔の前で手を合わせ顔を赤くしていた。
放課後、亮太は奈美の家にお邪魔した。春香はまだ二人が付き合っているということを知らないが、彼らの言動で大体察しがついているだろう。奈美と亮太は部屋に行き、椅子には座らず壁にもたれかかって少し冷たい床に座った。隣り合わせで徐々に距離を縮めていく。どちらからと言わず、お互いにそっと手を握り合った。
「ねえ....佐々木くん....」
「........なに?」
「....高嶺さんが言ってたように、名前で呼べるようになりたいよね....」
「そうだね....」
「だかたさ....練習しようよ」
「........うん」
二人は見つめ合った。体が触れるくらい近い距離で、吐息が聞こえる距離で、心臓の鼓動が聞こえる距離まで、彼らは顔を近付けた。
「....奈美」
「....亮太」
互いに呼び合った名前は深く耳に響いた。冷えた指を絡めて強く握り締める。そして目を閉じて唇を重ねた。互いの体温が甘く溶け合う。
「亮太....」
何度もキスをする。唇が離れる度に彼女は亮太の名前を呼ぶ。手を離し腕を組んで抱き締め、甘い味が唇に広がり、奈美は彼に体を委ねた。自然の流れで亮太は奈美をゆっくりと押し倒す。そしてもう一度キスをして、彼女と見つめ合った。
「....いいの?」
控えめにそう訊くと奈美はゆっくりと頷いた。亮太は少し戸惑いながらも彼女の胸にそっと手を差し伸べる。手が近付くに連れ互いの息が荒くなる。そしてそっと彼女の胸に触った。彼女は小さく息を吐く。暗い部屋で微かに見える彼女の赤い顔が亮太を興奮させた。そしてそっと彼女にキスをする。彼女は腕を回して彼を抱き締める。奈美の甘い香りが亮太を陶酔させる。次第に何も考えられなくなり、彼は無我夢中に彼女と唇を重ねた。彼女の服のボタンをゆっくり外していく。奈美の綺麗な素肌が露わになる。
「ちょっと....休ませて....」
呼吸が乱れた彼女は亮太の口を手で抑えて深呼吸をした。そしてボタンを外す亮太の手を握って止めた。
「お母さんは大丈夫なの?」
唐突にそう質問した亮太に、奈美は可笑しく笑った。
「今更だね」
「ご、ごめん」
「別にいいよ。お母さんは私の部屋に来ることなんて掃除のときくらいだから....大丈夫だよ」
「本当に?」
「本当よ」
そう言うと奈美は優しく微笑んだ。そして亮太にキスをする。再び抱き締め合い、互いに体を委ねた。すると突然、扉がノックされた。二人は慌てて体を起こす。
「奈美、入るよー」
その声を聞いた瞬間、二人は驚きのあまり固まった。そして奈美は亮太から離れ咄嗟に
「お母さんちょっと待って!」
と叫んだ。乱れた服を直そうとした瞬間、扉が開かれた。真っ暗な部屋に光が射し込む。
「何で電気つけてないの?」
そう言って春香は部屋の電気をつけた。その瞬間、服が乱れた奈美の姿が目に映った。
「え....何してたの?」
春香は苦笑いしながらそう問いかける。奈美は恥ずかしさのあまりその場で蹲り、耳まで真っ赤になった顔を隠した。亮太は慌てた様子で事情を説明する。
「すみません、ちょっと魔が差したっていうかなんていうか....」
春香は腕を組んで二人にこう言った。
「まあ思春期だから、そういうことしちゃうのもわかるけどさ。まだ早いと思うよ。私と蓮くんだっていっぱい我慢したんだから。今は良くても、後々大変なんだよ?」
二人は声を揃えて謝った。
「まあ、二人が付き合ってるのはわかってたけど....まさかここまで進んでたとは....」
春香は部屋を出て扉を閉めた。その最中に
「せめてもうちょっと時間が経ってからにしたら?」
と言い残して去っていった。部屋には先程の甘酸っぱい雰囲気はなく、気不味い空気だけが漂っていた。
「タイミング悪すぎだよ....」
そう小さく呟いた奈美に、亮太は小さく笑った。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
ついに書いちゃいましたよ。行為には至っていませんが愛撫はしているので軽くアウトですね(笑)まあ思春期の学生なら仕方のないことなのです。僕も思春期真っ只中の高校生なのはシークレットです。
感想や指摘など頂くと嬉しいです。
続きを楽しみにしてくれると更に嬉しいです。
これらに登場する人物、地域、団体は全てフィクションです。




