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閃光対雷

二人の距離はおよそ300m。明確な攻撃手段を持つアルに対し、徒手空拳で軽やかに近づいてくる少女。


「私はシエル。シエル・オルテンセ。」


「いいのか?魔術名を教えちまって」


「私もあなたを知っているのだもの。それだと不公平でしょ?アルテミス・アストラペー。それに関係ないわ。私の魔術がわかったとしても貴女は反応できないもの。」


「ほぅ。大きく出たな。それじゃあ雷よりも速いびっくり人間様の戦い見せてもらおうか。」


アルは弾を込めないままライフルを構えるとそれを皮切りに二人の詠唱が始まった。


「「連想せよ!幻想せよ!!」」


「我が槍は天を裂き地を穿つ。神の写し身たる汝を以て怨敵をこの身諸とも消し去ろう。」


「主に描かれし我が未来地図、力を以て塗り替えて見せよう。命の灯は短くそして強くただ最後まで輝き続けたまえ。」


武器の有無を、攻撃のレンジの不利を一瞬で無に帰す閃光は正面から襲い来る電撃によってねじ曲げられる。


「よくかわしたな。褒めてやるよクソチビ。」


「こちらこそ、良く見えたわね。誉めてあげるわ。それに大人に向かってチビとは失礼よ。クソガキ。」


300m先から文字通り一瞬で跳んできたシエルに対し必殺のタイミングでカウンターを放ったアル。どちらも不発には終わったが有利なのは圧倒的にシエルだった。

先程とは二人の距離がまったく違った。300mでギリギリ反応できたあの速度にたった数十mでどう対応すればいいというのだろう。


「気がついたらあの世にいるかもしれないけれど、もし可能ならばせめて綺麗に舞ってちょうだいね。」


更に勢いを増し、アルの首元を掻き切らんとする一撃は本来人に反応できる様な速度ではなかった。しかし、あろうことかアルは体を捻らせて致命傷を避けていた。

顔を強張らせていたのは左腕を裂き血で手を濡らしていたシエルだった。


「今のは間違いなく人間の反応速度を越えて見せたはず!何をしたの!」


「これでも俺は勉強家でな、お前の国の本を読んだことを思い出した。電気で体が反応しているだなんてにわかには信じられなかったが、試しに流してみたら勝手に反応してくれたよ。」


自らに電撃を浴びせ、服を所々焼ききりながらも辛うじて立ちあがりアルはそう答えた。


「何てことを。神経が焼ききれかねないのに、体に無理矢理電気を流して動かしたというのね…。」


「死ぬか、神経が焼ききれるかなら間違いなく後者の方がましだ。死んだら主の何言われるか。」


「馬鹿げているわ…それでも私の有利は変わらない!私に切り裂かれるのが先か神経が焼ききれるのが先か!それだけだわ!」


シエルは動揺し僅かにモーションに無駄があった。彼女の動きはまったく見えないが真っ直ぐ跳んでくるのは間違いない。隙をついてシエルとアルの間に潜り込み剣を構えた。彼女を以てすれば即座に気がつくだろう。だがしかし高速ゆえ真っ直ぐにしか進めなかった。シエルは予想通りに横にずれ剣を回避する。その確かな隙をアルが見逃すはずがなかった。

肩を貫通する電撃の弾丸。必殺の一撃はシエルの神憑りな感により致命傷を避けてはいたが、戦闘不能は間違いないだろう。目に見えない速度のものと真っ向から対峙したからか疲れが押し寄せ腰を付き息を大きく吐いた。すると動けるはずのないシエルの方から確かに動いている気配を感じ即座に振り向いた。そこには肩に穴などなく立ちあがりこちらに攻めてきそうな彼女の姿があった。もう二度と同じ手は通用しない。それ以前に傷を即座に治してしまう化物相手には何をしても無駄だと思った。しかし、アルは横で服の汚れを払いながらこう呟いた。


「終わりだ。あいつはもうまともに動けやしない。」


そう告げるとシエルは屋根から力なく落ちてくる。


「人の体にも電気を流して私の電気信号を邪魔するなんて。全く、知識はひけらかすもんじゃないわね。」


地にひれ伏したシエルは意識を失うまえにそう呟いた。



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