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異世界転移

自分はとあるノベルゲームに感銘を受け、こんな作品を自分でもかいてみたいなと思い、たどり着いたのがこの作品です。いろいろ拙いところや自分でも感じる理想の作品とのギャップはありますが、それでも始めたからには最後まで一人でも多くの方に読んでいただけ、また楽しんでいただける作品にしたいと思います。

それではどうか最後までよろしくお願い致します。

懐かしい夢を見ている。まだ自分が両親の子供だった頃の夢。

 自分の理想とするその人が、高い背丈を丸めて自分に語りかける。

 「よくやったな。だが油断するんじゃないぞ?」

 いま思えば厳格そうな彼が自分の前では笑顔を見せていた。自分はほめられるのが嬉しくてただひたすらに剣を振るのに夢中になった。

 家には道場があった。たくさんの弟子もいた。父はその中で誰よりも厳しく誰よりも熱心に、そしてだれよりも強かった。そんな父に憧れた。

 「僕がここを継ぐ」

 というと、

 「バカを言うんじゃない。まだまだ誰にも譲らんぞ」

 と父は語っていたが、その口元は笑っていた。だから、彼のまだまだが終わってしまう前に強くなろうと思った。道場に雨天などない。それゆえに繰る日も繰る日も剣を振った。強いて言うなら自分の流した汗こそが道場の雨に等しいだろう。

 自分には妹がいた。自分と違ってからだの弱い妹が。自分の前ではいつもうつむいていた。はじめは大して気にしてもいなかったが、どうやら自分の前だけらしい。それがなんだか気にくわなかった。

 「僕のことが嫌いなの?」

 ただ疑問を口にした。彼女は何も答えない。ついカッとなり手を出した。それでも彼女は答えない。なんだか意思のない人形のようだと思った。だから謝りもしなかった。その日なぜだかご飯が美味しくなかった。だから手をあげるのをやめた。

 それから日にちはたっていった。自分もだんだん強くなる。父にも何度も誉められた。けどどうしてだろうか。父は笑わなくなっていた。自分はどんどん大きくなった。それでもなんだか父との距離は離れていった。ついには誉められなくなった。何でだろうか。自分は前より強くなった。

 道場にはルールがあった。一年ごとに弟子の中で一番強いものと師範の父との試合を行うこと。もちろん自分が選ばれた。父に誉められたくて全力でやった。勝てば認めてもらえる。以前誓った決意を、道場は自分が継ぐと言う言葉を真実にするため、一心不乱に剣を振った。そして、手の痛みで正気に戻ったとき、目の前に父が倒れていた。

 それから自分は本館には入れなくなった。自分に恐怖を抱いた父が、化物を生んでしまったと罵る母が、俺に与えたのは本館から隔離され、もうだれも使わない道場だった。こんな形で受け継ぐなんて思いもしなかった。

 「きっと嘘なんだ。また父がやって来て俺に剣を教えてくれる。」

 そう口にしてなんとか耐えた。一日過ぎた。道場にはだれもやってこない。二日目が過ぎた。そろそろ来てもいいはずだ。また一日過ぎた。どうして父は来なかった?一ヶ月が過ぎた。もう目の前が真っ暗だ。なんだか目も開けられない。

 「兄さん…」

 なんだか耳もおかしくなった。誰かの声が聞こえてる。だれも来ないはずの道場なのにだれかの温もりを感じてる。

 「兄さん、起きて?」

 その誰かの顔が見てみたくて無理やり目をこじ開ける。

 「こんなものしかできなくて。」

 その時見えた照れた顔は心に深く刻まれた。

 彼女はすこしばかり不出来なご飯をもって現れた。味付けも形も不出来なその料理はいままで食べたなによりも美味しかった。

 彼女はそれから毎日来てくれた。ご飯を届けて去っていく。去り際に残す、

 「またね」

が聞きたくて、毎日なんとか生きていた。少しずつ彼女の料理も進歩した。それでもあの日にはかなわなかった。

 剣も毎日振っていた。やはり自分にはこれしかない。他には何もわからなかったから。毎日愚直にふり続けた。

 今日も彼女がやって来た。珍しく道場に座り込む。なんだか話があるらしい。

 「今日、お父さんが退院するの…」

 そう彼女は告げた。驚きのあまり声がでなかった。父は自分との試合で骨を折ったらしい。その事実を聞き、もしかしたら自分のとこに来たくても来れなかったんじゃないか?と淡い期待を抱いた。だから、夜まで待った。



異常な空間がそこにはあった。

久しぶりに足を踏み入れた家の本館。“誰のものか忘れてしまった”女性の悲鳴をきいた。悲鳴の出所へと全速力でかけていく。それが母親のものであると気がついたのはそれの血にまみれた妹を目にしてからだった。

 何が起きているのかわからなかった。真っ赤に染まった部屋が自分の理性を、思考力を溶かしていったのだ。

絶望に染まる彼女の目線を追った。刀をもった男が、恐れゆえに生を諦めた男の姿がそこにはあった。

唯一の家族に刀が向けられた瞬間身体の中でなにかが切れた音がした。



最初は兄が羨ましかった。父に微笑まれること、みんなに必要とされていること、なにより才能をもって生まれたことがなによりも羨ましく恨めしかった。

 私は何も持っていなかった。それどころか、いろいろなものがかけていた。満足に運動することも叶わなかった。父も母も自分に期待などしていない。それがとても悔しかった。私だって好きでこうなった訳じゃない。心の中でいつもそう叫んでいた。だから、彼が父や母に見限られたとき、心が少しスッとした。

 「これで少しは私のことも見てくれる。」

そう信じ続けて何日か待った。私の世界は何も変わらない。誰にも必要とされない。こんな自分に生きる価値なんてあるの?

 何度か自殺も試みた。それでも臆病な私は死ぬことさえできなかった。そんな私に期待なんてされるわけがない。そう思い、あきらめた。 

兄は何をしているだろうか?何故かそんな疑問が湧いた。見限られたもの同士なぜだか放っておけなくなった。あれだけ嫌いだった兄の様子を見に行くと、そこには私の知らない兄がいた。私よりも脆く、私よりも孤独だった。気がつくと慣れない料理を始めていた。やっとの思いで完成したのは見るからに不格好な料理だった。それでも一生懸命頑張った。勇気を振り絞り兄にそれを届ける。

 「兄さん…」

初めて兄を呼んでみる。兄はなかなか起きてくれない。

 「兄さん、起きて?」

2度目で兄はようやく目を開けた。

 「こんなものしかできなく…」

なんて言われるのか怖くなり、少し予防線を張った。

 兄は無言で食べ始める。いつまずいと言われるかいつ怒られるか不安で一杯だった。それでも兄は無言で食べ続ける。そして、兄は食べ終わったあと、照れ臭そうに

 「ありがとう」

とはっきりと感謝の気持ちを伝えてくれた。

 それから毎日料理に取り組む。初めて人に感謝された。それだけで理由としては十分だった。

 「またね」

というとさみしさと満足感の入り雑じった笑顔を見せる兄。そんな生活が大好きだった。私はなにももって生まれなかったから。もって生まれた兄に必要とされるのは嬉しかった。

 自分の価値はそこにしか見いだすことはできなかった。

 兄を兄たらしめているのは私で逆もまたしかり。そんな関係性だと思っていた。だから、父が母に手をかけ、その血を被ったとき、ただ残念だなぁと思った。価値を持っていた自分が喪失し、兄のあの笑顔をもう見ることができないのが残念で仕方がなかった。

 しかし彼は間に合った。来てくれた。

兄のしなやかな動きで私の死の運命が美しく散った。

「あぁ、綺麗…」

そう自然と口からこぼれでた。



血にまみれた手の痛みで我に帰る。目の前には自分達を助けに来たであろう警察がいる。

しかし、目の前にある胎児のようにぐにゃりと曲がった首が自分の身を案じた人間の顔を歪ませるのにそう時間はかからなかった。

自分と妹は保護された。お笑い草だ。彼らの目から恐怖ばかりが伝わってくる。

 暴れられるのをおそれたのだろう。自分があてがわれたのはまるで牢屋みたいだった。

 「なにが保護だ。」

そう看守を睨み付ける。すると看守はこう告げた。

 「おまえは時期に処理される。当たり前だろう?異常者はこの世にいちゃいけない。」

自分に恐怖を抱きながらも牢屋の外と内、圧倒的な優位を前に看守は勝ち誇ったようにそう叫ぶ。死は怖くなかった。辛うじて繋がっていた感情がすでに断線していたのだ。自分のことなのに他人事のように感じられる。ただ一人の人間が死ぬだけ。そこに何か感情のはいる余地などなかった。


「可哀想だなぁ」

その男は突然現れた。

異様な雰囲気をまとった男は魔法使いのような格好をしていた。

「なにがだ?それとこんな時期に仮装か?」

精一杯の強がりだった。この男は自分以上に異常だとわかる。それでも弱味を見せることはしなかった。それが死に直結すると悟っていたからだ。

「面白いねぇ、君。僕は雑用だよ。出張中のね。」

綺麗なその声は、脳を直接揺らしてくるような気がした。

「それと面白い話があるんだが、ききたいかい?」

男は奇妙なまでに口角をつり上げ奇怪な話を始めた。

 彼があけた出口から一目散に駆け出した。

目的地なんてわからない。ただ音がする方へとかけていく。

彼から聞いた話が嘘であればいいなと思いながらも心が真実だと感じていた。

彼の独特の雰囲気がおとぎ話に現実味を帯びさせる。

そしてその部屋を見つけるや否や、光を放つ魔方陣へ。その中心にいる男を突き飛ばし、

`異世界召喚`を試みた。

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