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植物の名前

作者: 一兎

 「女の子に植物の名前をつけると丈夫に育つ」と、母の親族は皆、植物の名前をしている。だからといって、私を「弟切」なんて名前にするのはひどい。もっと可愛らしい植物の名前なんていくらでもあるし、花なら「桜」とか「菫」もしくは「向日葵」でも「葵」でも一向に構わないと思うのだが。


 「オトギリ」という響きの悪さも然る事ながら、花言葉は「恨み」。女の名前で読みが四文字というのは珍しく、だいたいの教師は「なんて読むの?」と難しい漢字でもないのに訊いてくる。

 ただ、珍しい名前というのは悪くない。自己紹介をすれば、すぐに名前を覚えてもらえるし、初対面の人と名前を話題に話せる。


 私は私の名前にどれだけ深い意味があるのだろうと、考えたことがある。「弟切草」、「オトギリソウ」。止血などに用いられる薬草で、山地に咲く。秘密を漏らした弟を切り殺したという伝説から名づけられたと言われている。弟を殺す? 本当は私は双子で、出産時に弟が死んでしまったのか。もしくは私は三人姉妹の末っ子ということもあり、もしかして両親は男の子が欲しかったのかもしれない。でも、そんな理由で名前をつけられるなんて私のアイデンティティは否定されたようなもの、もう少しポジティブな解釈を考えなければ。やはり、薬草というのが大きなファクターになっているに違いない。また、弟切草は秋の季語でもあるから、九月生まれの私につけるには悪い選択ではないのかもしれない。「弟を切り殺す」という植物の名前の由来はともかく、黄色い小さな花が可愛らしい薬草。高地に群生して揺れるオトギリソウをイメージして晴れやかな気持ちになった。

―― 何にしろ、私は言い伝えどおり、丈夫な子に育ったではないか。


 食卓に家族五人が揃うのは珍しい。二人の姉とは年が離れていて、二人の姉は私のことを可愛がってくれる。二人とも今は大学に通っていて普段は一人暮らしをしているのだが、二人とも夏季休暇中で、今日は私の誕生日なので、一緒に食事をすることになった。

「オトちゃん、おめでとう! もっとはしゃげ!」

 私はロウソクの火を吹き消した。皆で食べるケーキはおいしい。気分が良くなって、調子よく話せる。

「ねぇ、お母さん、私の名前ってどうやって決めたの?」

 私の口から勢い余って言葉がこぼれた。

「フィーリングよ」

母は笑った。

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