プロローグ
宮司 修。
中学入学時点、身長167cm、体重56kg、座高70cm、視力右目が2.0、左目が1.8。
彼は、かつて親友を見殺しにした、言わば間接的な殺人者である。周りの者がどれだけ君は悪くない、と言っても、彼は自分自身を責め続ける。
彼が親友を見殺しにした時、同じく両親も死んだ。現在は親友の両親の家に引き取られ暮らしている。彼は、自分から壁を作り、人と関わらないようにしていた。いつかその壁は、『演技』となって他人と当たり障りなく接する術になっていた。
これが、宮司 修のすべて。彼を構成する過去。
現在、私立西川中学。宮司 修は、入学式に来ていた。傍らには、死んだ親友の母親、佐知子。
「すいません、ここまで来ていただいて」
「いえ、いいのよ。私こそ、あなたの母親代わりなのだから。遠慮しないで」
修は、親友の家族とも、最近では軋轢も無く表面上はうまく付き合っているように振る舞うことができていた。彼は笑顔を顔に貼り付けて、一生懸命『演技』する。
「それじゃあ、保護者席で見てるからね」
「はい」
そう言って、佐知子は体育館の方へ向かって行った。
昇降口のところに行って、クラスと番号が書かれている張り紙を見る。
一年J組。出席番号34番。
それが彼が一年間を過ごすクラスだ。
ーーせめて、何も起こらず、今までみたいに当たり障りなく、すぎればいいのだけど。
そんな、中学生という新たなスタートを切るにあたって、ふさわしくない気持ちを抱きながら、教室の席に着くのだった。