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経済の話

2015年の正月に、色々と矛盾がある日本社会の将来を憂いてみました

 2014年の年の暮れ。僕は少しばかり変わった夢を見ました。それは僕が子共だったり、何の脈絡もなく突然大人になっていたり、今の街並みなのに、どうしてなのか、かつて住んでいたマンションの部屋が出て来たりと、まぁ、夢としてはありがちな支離滅裂で意味不明な内容で、具体的なストーリーもほとんど覚えてはいないのですが(というか、それ以前にストーリーはなかったような気がしていますが)、唯一、目覚めた後もはっきりと覚えている事がありました。

 夢の中では、富士山が噴火していたのです。火山灰が辺りに降り注ぎ、噴火によって飛び散った岩石がマンションのガラス窓を破壊していました。

 どうしてこれを覚えていて、なおかつ出だしに書いたのかというと、僕には富士山の噴火を夢に見る心当たりがあったからです。

 もちろん、これが予知夢だなどと言うつもりはありません。しかし、近年、日本各地で火山活動が活発化しているのは事実なのです。海底火山の噴火によって新たな島(西之島)が誕生し、阿蘇山で噴火が続き、北アルプスや蔵王でも火山活動の活発化が観測され、そして御嶽山が大爆発を起こしもしました。最近では、桜島が爆発の兆候を見せているそうです。東日本大震災との関連を思わず想像してしまいたくなりますね(飽くまで、“想像”ですが)。

 もっとも、僕が夢に見る程、それを不安に思っているのかというと、それも違うのですが。

 ……いえ、不安である点は確かですがね。

 

 2014年の12月に行われた衆議院選挙で自民党の安倍内閣は大勝利を収めました。この結果を受け、多くの知識人や、敵であるはずの野党の政治家の一部までもが、安倍総理の政治的手腕を高く評価しました。ただし、それは戦略的な巧みさを評価したのであって、決して政策によって日本社会に貢献した点を評価した訳ではありません。

 野党の状態が信じられないくらいに弱く、絶対に勝てるというタイミングで、不意打ちのように選挙を行った。その決断力と機動力とを評価したのです。

 そして、安倍政権は選挙で大勝利すると、国民に人気のない政策を強力に推し進め始めました。

 その内の一つは、原子力発電推進政策です。

 つまり、嫌われる政策を行った後で選挙を行うと負ける可能性が大きくなるので、先に選挙を行って勝ち、任期を確保してから、嫌われる政策を実行するという…… まぁ、安倍政権は、悪い言い方をすると、国民心理を巧妙に突いた政治的戦略を執ったと考えられるのです。

 今にして思えば、日銀が量的緩和政策の追加で株価を押し上げたのは、その為の布石であったような気もする…… というのは、僕の邪推でしょうか?

 ただ、経済にそれほど明るくない人の一部が、この株価の上昇を好意的に受け止めたのは事実です。極小規模な標本調査でしかないので申し訳ないのですが、僕の職場にこれをそのまま経済の回復だと勘違いしている人がいました。本当は決して素直に喜べる話ではないのですが。株価が上がったからといって、実体経済が良くなった訳ではないですし、後々、金融経済の混乱を招くかもしれないし。

 

 安倍政権によって着実に進めらていく原子力発電推進関連のニュースを観ながら、僕は漠然と色々な不安を想いました。そして、その一つに、冒頭の夢の話で説明した“火山活動の活発化”があります。

 随分と前に、僕は『原発のメリットデメリット』というエッセイをネットに投稿しました。実を言うと、これ、書いている最中は自信がまったくなかったのですが、いざ投稿してみたら好評で、「よくまとめられていて分かり易い」といったメールを送ってくれる人がいたり、「紹介させてください」と連絡をくれた人がいたりで、お蔭様でそれなりのアクセス数をいただきました。

 ただ、これに関して、少しばかり後悔している点もあるにはあるのです。書いておくべき大きなデメリットを二点ほど書き忘れてしまったのですね(よく考えれば、読み取れない事もないですが)。

 一つは、原子力発電で勝負すると、ウラン資源を持っていない日本は、ウラン資源国に対して不利になるという点。例えば中国はウラン資源国です。しかも、その中国と関係の深い北朝鮮には世界有数のウラン資源が埋まっているとも言われています。

 中国は他にも原発に有利な条件を持っています。広大な国土がありますから、核廃棄の処理も日本ほど困らないでしょうし、日本と同じ様に少子高齢化問題が深刻とはいえ、その為の労働力も人権を無視すれば確保し易い(いえ、遠い将来はどうなっているか分からないですがね)。当然、日本に比べればコストも安くなります。

 それに対し、日本は核廃棄の為の土地も労働力もありません。最悪、人権を無視して強制労働か、放置も有り得るのじゃないかとすら僕は考えています。もし、放置されたら、実質国土を失うのと変わりありませんね。

 時折、「中国が原発を推進しているから、日本も負けるな」、と訴えているのではないかと思えるような記事を見かけますが、この不利な点をどう解消するのか、説明されているものを僕は読んだ事がありません。多分、分析すらしていないのじゃないかと、だからそう考えています。これでは、中国へ対抗する為の原発推進という考えに同意はできません。

 もう一つの書き忘れたデメリットは、実は原発は不安定な電源だという事実です。

 いえ、確かに稼働さえできれば安定して電力を供給しますよ。ですが、原発はそもそも稼働できない事態に陥る事が多々あるのです。

 例えば、フランスでは冷却水が不足して危うく大規模な原発停止になりかけました。フランスの場合は周囲の国から電気を買えばいいので危機を乗り越えられましたが、島国の日本ではこうはいきません(因みに、再生可能エネルギーを推進するドイツが、電力不足でフランスから電力を買っているという話がありますが、そもそもヨーロッパ各国で電力を融通し合うのは当たり前に行われている事で、ドイツのみで行われている訳ではないそうです。原発大国のフランスが電力をドイツから買う場合もあるのです。この事例でもそうだったらしいですが)。

 また、韓国でも整備不良などの影響で原発が運転中止に追い込まれ、充分な電力供給ができなくなった事があります。そして日本でも、東日本大震災以前の2003年に、原発を稼働させる事ができなくなる事態に陥りました。

 ただし、恐らく、日本の電力業界のトップの方達は原発が信頼できない電源である事を把握していると思います。だからこそ、韓国では原発の停止によって深刻な電力不足に陥ったのに、日本ではそうはならなかったのでしょう。つまり、以前から、原発が稼働できない事態に備えていた事になります。

 この予想が当たっているとすれば、危機管理に関しては、日本の電力業界の方が韓国よりも優秀だと言えるかもしれません。がしかし、情報の隠ぺいや改竄については悪意を感じると言わざるを得ません。かつては原発がなければ、日本の電力供給は成り立たないかのように吹聴していましたからね。原子力関連の利権の関与を想像しない訳にはいかなくなってきます。

 と、話がかなり長くなってしまいましたが、この話が“火山活動の活発化”に結びついて来きます。

 果たして今の日本の、いつ火山が噴火し地震が発生するか分からない状況下で、原発を推進して良いのでしょうか?

 東日本大震災の時は、事前にほとんどその兆候はありませんでした。極一部の専門家が不安に考えていたくらいです。だから「想定外」という言い訳ができた(納得できない人も多いでしょうが)。ですが、今日本で“火山活動が活発化”している事はニュースを観ていれば素人でも分かるのです。

 だから個人的には、既に日本では原発を推進できない状態になっているのではないかと思うのです。なにしろ、ただでさえ日本には地震に関して安心できる場所などないと言われているところに“火山活動の活発化”が重なっているのですから。何が起こっても不思議ではない(地球史の規模で考えるのなら、人間の歴史で地震が起きていないから大丈夫などとはとても言えない、とよく主張されていますね)。

 もちろん、これは僕の個人的見解に過ぎません。

 ただし、これだけは言えます。

 もし、このまま原発再稼働(及びに新設)を行い、地殻変動で大事故が発生したなら、間違いなく安倍政権は、歴史上、最も愚かな決断を下した政権と呼ばれるはずです。

 「東日本大震災福島原発事故の失敗に全く学ばず、日本各地で火山活動が活発化している状態で原発推進を行った、この暴挙の責任を誰が取るのか?」

 とか、そんな事をマスコミに書かれるのじゃないかと思います。何も起きなければ、大丈夫だとは思いますが。

 こう考えると、本当に、結果が全てってところありますよね、世の中って。

 そして、実はもう一点、2014年の年末に原子力関連で不安が明確化した事があります。

 これも“原発が不安定な電源”である事に関連する内容なのですが、以前から、原発は国防上、重大な欠点になるのではないかという指摘がありました。もちろん、問題ないという声も聞くのですが、僕は納得のいく説明を読んだ事がなかったのです。

 国際法で禁止されているから、或いは人道的見地から“原発は狙われない”というのですが、国際法には基本的に拘束力はなく(国際法はあった方がマシだくらいのものです。国を取り締まる警察はいません)、歴史上数々の非道が戦争などで行われて来た事実を鑑みるのなら、人間社会に“人道”を期待するのはいくらなんでも楽観論が過ぎます。

 更に情報関連の攻撃ならば、そもそも国際法にも人道主義にもそれほど反さずに、行えてしまえるのです。

 そして、実際、2014年の年末。韓国の原発に対して、サイバーテロともいえる攻撃が行われました。原子力関連の情報が、外に漏れて公開されてしまったのです(少し調べてみたらその他にも数々の事件があったようです)。

 つまり、原発は充分にテロなどで攻撃の対象になり得るという事です。

 これらをまとめると、経済を考えても、大規模な自然災害を考えても、国防問題を考えても、原子力発電所の稼働には大きなリスクがあると言わざるを得ません。

 これで、原発推進を行っている安倍政権が、自然災害は起こらないと想定していて、他国との衝突も考えていない、というのであればまだ話は通りますが、安倍内閣は自然災害対策として大規模な公共事業を行っていますし、国防強化も推し進めていますから、話が通らないのです。原発推進はこれら政策と矛盾していますし、その理由を安倍政権はまったく説明していないからですね。

 ただ、それでも敢えて、ここで少しだけ安倍政権を擁護したいと思います。

 2012年の衆議院選挙の時は、安倍政権(当時は、まだ政権ではありませんが)は原発政策に関して嘘をつきました。原発を廃止にしていくような事を言っていましたが実際はその真逆です(ただ、それが嘘だという事は、少し政治状況に詳しい人なら分かっていたと思いますが)。

 しかし、安倍政権は2014年の選挙においては、ちゃんと原発をベースロード電源に位置付けると宣言しています。その上で、選挙に大勝利したのですね。

 この点は一応、筋を通していると言えるでしょう。

 ですから、将来的にどんな問題を原子力発電所が起こしたとしても、日本国民が選んだ道なのだから仕方がない、と納得するしかないかもしれないのです。

 ……というのは、嘘ですが。

 原子力政策に関して、今回は安倍政権が大きな嘘をつかなかった点は事実ですが、それでも納得はし切れません。

 何故なら、確かに安倍政権自民党は過半数以上の議席を獲得する大勝利を収めた訳ですが、にも拘らず、全有権者のうちのたった17%の票しか得てはいないからです。これではとても“国民に選ばれた”とは言えないでしょう。

 どういう事かというとですね、非常に簡単に述べるのなら、投票率が過去最低で、組織票を持つ政党がより有利になり、その組織票が強い地域が一票の格差によって恵まれていて、結果として自民党が大勝してしまったのです。

 投票率が低くても選挙は無効にはなりませんし、投票する人が少なければ、組織票の割合が増えるからですね。

 ですから仮に投票率が80%を超えていたとしたら、自民党が過半数以上の議席を確保する事はなかったかもしれないのです。

 これをして、民主主義が壊れているとするのは或いは言い過ぎかもしれませんが(確かに国際的にも投票率は低い方ですが、日本くらいのレベルの国は他にもあります)、大いに問題だとは言えるでしょう。

 実は僕は今回の選挙の前から、この問題点を訴えていたのですが、その時、これを解決する為に、最低投票率を定めてそれ以下なら選挙を無効にするべきだと提案してくれた方がいました。

 「なるほど、それなら投票率を高くできそうだ」と僕はそう思いはしたのですが、そこで少し冷静になって「他の投票率の高い国はどんな試みをしているのだろう?」とそう疑問に思ったのです。ま、実績のある試みを参考にするべきだと思ったのですね。それで軽く調べてみたら、なんと投票率の高い国の多くで、選挙投票をほぼ義務化しているようなのです。具体的には棄権した場合は、何かしら罰則を設けているようです。

 これの方が確実に投票率を高くできそうですね。

 ただ、ま、ほぼ確実に国民の反感を買うでしょうから、与党はもちろん、野党すらも提案しそうにない気がしますが。

 もっとも、野党は今の状態では、逆立ちしても与党には勝てそうにないので、一か八かでそんな法律を提案してみるのも有りかもしれません(提案しても通らないでしょうが)。

 と、こんな事を書いていると、或いは「棄権するのは、投票する人に判断を任せるという事だから、投票率が低くても選挙には何の問題もない」なんて反論をする人がいるかもしれません。

 これには確かに一理はあるでしょう。選挙前から与党の圧勝が一般的に予想されていて、その上で投票しなかったのなら、実は棄権した人達は、控えめに与党を応援したのだとも捉えられます。……棄権した人がこれにどう応えるのかは興味がありますが。

 そして、2014年12月の衆議院選挙に限っていうのなら、安倍政権の政策の是非を国民に問う選挙であったとも言われているので、“投票棄権は弱い賛成”(なんか変な表現ですが)と捉えるのなら、「安倍政権の政策」に日本国民はオーケーを出したと解釈する事も可能になるのです。自分で書いていても無理がある気がしてくるくらいの強引な理屈ではありますがね。

 ならば、「安倍政権にその政策をどんどん推し進めてもらいしょう!」となってしまうはずです。ですが、ここでまた矛盾点があるのです。

 もしかしたら(飽くまで、もしかしたら、ですよ)、2014年12月の選挙が低投票率で終わった事により、安倍政権はその政策、特にアベノミクスと呼ばれる経済政策を進め難くになってしまうかもしれない、とも思えるのです。

 何故なら、低投票率で勝利した事により、組織票の価値が上がった、つまりは、組織の発言力が強くなってしまったからです。

 アベノミクスで進んでいないと言われている政策は、「主に規制緩和などにより企業に投資を促す」というものです。安倍政権にやる気が本当にあるのか?と疑われてすらいる。

 ところが、規制によって守られている業界がこれに反発している。そして、まぁ、これは憶測に過ぎませんが、その業界と組織票の票田である組織は一部重なっているのではないかと思えるのです。

 なら、当然、低投票率で勝利した所為で「主に規制緩和などにより企業に投資を促す」事は難しくなるでしょう。アベノミクスに反発している組織の発言力を強くしてしまったのですからね。

 これは大きな矛盾点だと僕は思います。

 アベノミクスの是非を問う選挙で大勝して、かえってアベノミクスが進め難くなってしまった。

 僕は基本的にはアベノミクスには反対しています。ただし、この「主に規制緩和などにより企業に投資を促す」事には賛成しているので、非常に心配しています。大丈夫なのでしょうかね?

 もちろん、僕の予想が間違っている可能性もあるにはあるのですが。

 一部の組織の発言力が増してしまった事は、当然、他の問題点も悪化させる心配があります。

 その典型例が“無駄な公共事業”でしょう。組織票に報いる為、公共事業が増える、或いは維持されればそこに資源が奪われますから、民間企業の成長が阻害されてしまいます。もっとも、それが本当に必要な公共事業で、それにより経済成長が起こるというのなら、大きな問題はありません。ですが、実績を観る限り、経済成長に繋がるような公共事業はほとんど行われていないようです。何百兆円という規模の公共事業がこれまでに行われたにもかかわらず、経済成長に成功しなかった点を観ればこれは明らかでしょう。

 しかも、この経済成長に貢献しない“無駄な公共事業”は意図的に行われているのではないかという疑いすらもあります。

 もし仮に公共事業によって産業が成長してしまったとするのなら、もう公共事業は必要なくなります。つまり、政治家や官僚はその利権を失う可能性が出て来ます。だから、利権を確保する為には、経済成長は起こしてはならないのですね。公共事業がなくなれば、その地方の経済は衰退する。公共事業依存。政治家や官僚にとっては、そういった状況を作りだす方が望ましい。

 もちろん、そんな事を未来永劫続けられるはずがありません。先にも述べましたが、それら“無駄な公共事業”は、成長の為の資源を奪う事により、日本経済にダメージを与えていますし、セメントなどの資源の輸入で、国内の資産を海外に流し続けてもいます。つまり、じわりじわりと日本経済を苦しめているのですね。

 そしてより決定的な終わりが、労働力不足です。

 労働力不足に陥れば、そもそも公共事業を行う事すらできなくなります。しかもそれは始まりつつある。公共事業では人手不足が既に起きており、一部、足らない分の労働力を海外に頼るようになっています。当然、外国人労働者達は労働賃金の多くを、海外に流しますから、日本からの資産流出をより加速させます(それが実質的な移民政策になるのなら、GDPを押し上げる効果が期待できますが、そうはならないのじゃないかと思います)。

 当然、それは日本経済を衰退させます。虚しい何の役にも立たない公共事業の代償として、国民は生活水準を下げざるを得ない状況下に追い込まれる可能性が大きいでしょう。

 そして、この問題点は、そのまま原子力発電所の問題点にも重なります。

 原子力発電所のある地方は、原発依存体質になり、そこから抜け出せなくなっていると言われています。そしてだから同じ様に、“労働力不足”という大きな問題点を抱えているのです。先にも軽く触れましたが、今ですら労働力の確保が難しいのに、労働力不足に陥った状況下で、一体、どうやって核廃棄の為の労働力を確保するつもりなのでしょうか?

 因みに「一票の格差」について、単なる人権上の問題だけだと考えている人もいるかもしれませんが、実はこれには機能的な問題もあるのです。これまで述べて来た問題点を、この「一票の格差」は悪化させてしまうのですね。それはある特定の地方の権力を強くする事を意味しているからです。

 断っておきますが、今まで語って来た事は、一般の人達にとっても無関係ではありません。これは一般の人達の富が、ある特定の一部の人達だけを潤す為に無駄に使われている事を意味してもいるからです。

 自分達の生活を良くしたいと思うのなら、文句を言った方が良いと思いますが。

 

 “無駄な公共事業”は、現在、とても強固な利権構造という基盤の上で成立しています。そして、その基盤は日本社会に“余分に資源がある”という時代背景がなければ出来上がらなかったでしょう。

 「余分な資源を何に使うか?」。その使い道の一つとして“無駄な公共事業”があり、そこに資源が流れる体制が出来上がってしまったのです。そして、それは一時的な経済効果を得る手段としては、確かに有効ではあったのです。

 ですが、“資源不足の状況下”になれば“無駄な公共事業”にはその一時的な経済効果すらなくなり、単なる害悪となる。ならば、その資源不足に対応しなければいけないはずですが、恐らくはそれに政官民の“利権構造”は激しく抵抗するでしょう。

 そして、先にも述べましたが、資源は徐々に不足し始めています。特に労働力が不足するだろうことはほぼ避けられません。もちろん、労働力不足は、公共事業だけではなく、その他の様々な事柄にも絡んできます。労働力不足は日本社会全体の問題です。

 本来ならば、だからその為の準備を、つまり資源不足に対応する為の設備投資や、体制作りなどに注力しなければいけないはずですが、安倍政権はほとんどこれをやっていない。「労働力の減少に対応する社会作り」という発想が全くないようなのです。

 アベノミクスが成功すれば、それで経済が回復し、出生率も上がり、労働力不足問題も解消する、という信じられないくらいの楽観論も読んだ事がありますが、これは現実的ではありません。何故なら、そもそも今から出生率が上がったとしても、労働力不足問題は解消しないからです。

 それに、高齢社会で育児世代への負担が大きくなっている状況下で、出生率が大きく上がるという想定も無理があるでしょう。少しでも育児世代への負担を減らさなければ。

 断っておきますが、これには多くの国民がもっと大きな声を上げなければ駄目です。ただでさえ育児世代の人口が少なく予算を割かれ難い状態なので、関係のないと思える人達の声も必要なのですね。

 確かに短絡的には、育児をしていない人にとっては何の利益にもならない(というか、むしろ負担は重くなるでしょう)ですが、社会全体に貢献すれば、それはやがては自分にも返ってきます。

 だから無駄とは思わず、熱心に訴えるべきです。その責任があるとすら、僕は思っていますが。

 

 僕はアベノミクスは短期的には成功する可能性があっても長期的な成功は有り得ないと考えています(今の無理矢理な“無駄な公共事業”がなくなれば、直ぐにでも景気は後退するのじゃないかとも予想しています)。

 その理由は先ほどまで述べて来た事と同じです。

 つまり、労働力…… 人口が減少していく状況に対応しようとはしていないから(女性の人材活用を促そうとはしていますが、仮に成功したとしても充分ではないでしょう。しかも、自民党内部にでさえ、それに反発している人達がいるようですし)。

 全てが悪いとは言いませんが、アベノミクスの発想の根本は、日本に労働力などの資源が余分にある状況を想定しています(経済成長に結びつかない公共事業に頼っている点からも明らかですが)。その発想では労働力の減少という問題点を乗り越えられません。

 かなり前から僕はこれを訴えていましたが、実はつい最近、僕とほぼ同じ考えを述べている経済記事を読みました。冷静に状況を分析した専門家も、どうやら同じ結論に至っているようです。

 因みに再生可能エネルギーの多くは、維持費が極めて安価なので、労働力不足対策になります。これは物価変動を考慮した場合、再生可能エネルギーの利益はより多くなるという事でもありますが、何故かこの点を指摘する声を僕は聞いた事がない。労働力が余っている今の内にやっておかないと手遅れになるので、急がなければいけなません。

 

 労働力不足が深刻な社会問題になる、と訴えて来ましたが、「人間万事塞翁が馬」ともいいます(人間じゃないけど)。もし仮に、労働不足問題を放置し続けた結果、必要に迫られてロボット産業が日本で育つ…… なんて事がもし起こったら、少しは明るい展望が抱けるかもしれません。

 すいません。

 これは単なる願望です(もっとも、世の中、何が起こるか分かったもんじゃありませんが)。

 

 原発推進政策、経済政策、国防政策。様々な矛盾点と、それに伴う不安が自民党安倍政権にはあります。

 もっとも、そういった矛盾点や不安がない政権などないのかもしれません。だから、他の政権と比較し、安倍政権が特別悪いという事でもないのかもしれません。

 しかし、それでも、日本社会が追い込まれていっている状況である点、そして、自民党安倍政権の体制が強固で、ブレーキをかける役割がなくなっているように思える点を考慮に入れると、このまま安倍政権の政策が行き着いた先で、果たして何が結実してしまうのか、想像すると、僕はとても怖くなってしまうのです。

 日本という国は現在、莫大な借金を抱えています。それでも財政が破綻していないのは、日本国内で借金を賄えているからですが、労働力不足に陥れば、物価が上昇するので貯蓄が減少し、借金を賄うだけの貯蓄がなくなる可能性があります。

 すると、一気に財政破綻に陥るかもしれない。

 そして、安倍政権では、財政規律が崩れ始めています。日銀が大量の国債を買い上げていますが、これは実質的には借金の踏み倒しと変わりありません。だから、安易に借金に頼る体制を作り出しかねない。

 財政に対する感覚が麻痺した政権が、財政破綻の危機に適切に対応できるとは、僕には思えないのです。

 だから、本当に怖い。

 この悪い予感が、当たらない事を祈ります。

いつもよりもエッセイらしくしたつもりです。

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