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巨人と猫  作者: sai
3/12

出会いました(ブライト視点)

出会いましたと内容が重複しています。

注意してください。

出会いました(ブライト視点)



その日俺はギルドの依頼をこなし現在拠点にしている街に戻ろうと森を歩いているところだった。


晴れた空は青く少し暑めの温度はいつも通り。

そう全ていつも通りの筈だった。

街へ向かい始めて1時間ほど歩いただろうか、突然その声は聞こえてきた。


「あのーー!そこのひとーー!私に気付いてくださーい!おーい!」


は?

俺以外誰もいない森に魔法で拡声された声が響く。

どこから聞こえるのだろうか、多分俺に呼びかけている声の主を探して辺りを見渡す。


「上ですう・えー!!顔を上げてーー!」


その声に顔を上げると、空に豆粒のような人影が見えた。

はぁ!?え!?

何故あんなところに人が!?


「危ないので逃げてくださーい!」


頭で考えるよりもまず体が動いた。

はっきりと表情までわかる程に近づいてきた人に両手を伸ばし走る。と同時に失速の言霊を紡ぎ落ちてくる勢いを弱める。


「逃げて!」


逃げるなんてできない。

あと50m、30m、10m

予想以上に落ちてくるスピードが早く、間に合わない。


「くっ」


その時、落ちてくる人は近くにあった太めの木を通り過ぎる瞬間に掴むとそのまま一回転して綺麗に地面へと着地した。

両手を上にあげてぴたっと止まる。


それはまるで猫が飛び降りるようにしなやかで無駄のない綺麗な動きだった。

思わず目を奪われその人物を見つめる。


フードの付いた黒い厚手の長袖に、膝丈の青いズボンから伸びる細い足は程よい筋肉が付いて、全体的に細く華奢だが弱い印象は与えない。

ハニーブラウンの短い髪がサラリと風に吹かれて動き、目にかかる前髪に細められた目は二重で少しつり上がっている。

顔は綺麗に整っており誰もが美少年(・・・)と思うだろう。


少年と目が合い我に返る。

とりあえず何か話そうと声をかける。


「おい、おまえ、おい!…大丈夫か」

「うひゃ!」


しかし呼びかけても反応のない少年に心配して顔を覗き込む。

変な声をあげて驚く少年の頭をぐりぐりと強めに撫でるとじたばたと暴れるその可愛いさに顔がにやける。


「やーめーてー!」


手を話すと少しフラフラしている少年にさすがに少しやり過ぎたかと焦る。

目を合わせようとしゃがむとできるだけ優しく問いかける。


「お前の名前は?」

「安藤光です」

「アンドウヒカル?」


聞いたことのない発音の名前に問い返す。


「安藤が姓で名が光です」

「ヒカルか、俺の名前はブライト・マハスール」

「ブライトさんですね」

「呼び捨てで構わない」


他人行儀な呼び方に違和感を覚えて訂正する。


「わかりました、ブライト」

「敬語もいらない」

「わかり…わかった」


言いにくそうに眉間にシワを寄せながら言い直すヒカルに思わず頭を撫でてしまう。

小動物のような可愛さがある。


「あの、ブライト…手を」

「ん?」

「手を退けてほしい…この年にもなって頭を撫で続けられるのは恥ずかしい…」


手触りの良い髪を撫で続けていたことに気恥ずかしくなって急いで手を離す。

あの触り心地癖になりそうだ…。


「すまない、つい。16歳にもなって頭は撫でられないか」


なぜかむっとヒカルの機嫌が悪くなった気がする。


「ごめん、今なんて言った?」

「すまない、つい?」

「その次」

「16歳にもなって」


言った瞬間ヒカルの目が見開かれる。


「そんなに子供に見える?」


16歳ぐらいだと思っていたのだが違うのだろううか?


「あぁ、…違うのか?」

「私は21歳だよ」


その言葉を聞いた瞬間時間が止まった。


「…21!?」


嘘だろ、まさかその顔で成人してるのか、童顔にも程があるだろ。

遠い目をしてぼーとしているヒカルに失礼なことをしたと謝る。


「その…すまない」

「大丈夫特に気にしてないし、私童顔だから」

「そうか」


気にしてないと言いながらも拗ねているヒカルに内心苦笑いする。


「ところで、ブライトは何歳なの?」


話を変えてきたヒカルに乗っかり、少し期待しながら逆に質問してみた。


「…何歳に見える?」

「30歳ぐらい?」


少し考えてから答えられた年にがっくりと肩を落とす。

そのまま俯いて地面にのの字を書く。


「どうせ、俺は老け顔だ…」

「え、もしかしてもっと若い?」

「あぁ、25歳だ」

「あー…」


この顔は昔から老けて見られてきた。

ヒカルの30歳はまだいい方で、以前40歳と言われたことがある。

しばらく立ち直ることができなかった。

ヒカルが何も言えずに気まずそうにキョロキョロする。

その様子に俺は苦笑いすると立ち上がりヒカルの頭を慰めるように撫でる。


「ごめん」

「別にいい、お互い様だ」


傾いてきた太陽が目に入り話しを聞く前にまずは街に戻ろうとヒカルを促す。


「じきに暗くなる、野宿は嫌だろう街に向かうぞ」

「ちなみに、街まではどのくらい?」

「そんなにかからない」

「あ、そうなんだ」

「急いで歩けば、大体3時間ぐらいだな」


軽く言った俺にヒカルはじとっと目を座らせた。


「…」

「どうした?」


何かおかしなことを言っただろうかと思い問いかけるがヒカルは首を振る。


「ううんなんでもない、行こうか」


そして歩き出した俺の半歩後ろを軽やかに歩き出した。





ありがとうございました。


ではでは

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