第七章
ここまでのあらすじ
入学式の日に同じクラスになったハーフの美少女、大沢アレナ一目ぼれして、思わず「可愛いと思いました!」と自己紹介の際に叫んでしまった桐原。
その帰りに、友達と三人でマックにいると、偶然にも大沢アレナと出会ってしまった。
アレナと一緒にいるのは、同じクラスで近くの席に座っている黒髪ストレートの大人びた表情の島ヶ崎連、赤いめがねがチャームポイントの三木彩花だった。
桐原は、一緒にいた多胡、山本の策略で、一緒に話す事になったばかりか、隣の席に座る事に。さて・・・・・・・・・・・・・・
「おおっ! なんか合コンみたいじゃん♪ 高校入ったらやってみたかった事ナンバーワンだよな!」
席に着くと、山本叫んだ。
島ヶ崎連、三木彩花、大沢アレナ三人は、山本の言葉に、笑いながら「やだ〜っ」と叫んだ。
多胡もくすくすと笑っている。
桐原はと言えば、笑うどころではなかった。
(何話せばいいんだろう……隣の席なんだから何か話すべきだよな…? あ、でもまず誤るのが先かな……)
その様子を見た多胡がすかさず、アレナに言った。
「そういえばアレナさん、桐原の事どう思う? 」
(おいっ!!!!)
桐原はものすごい勢いで顔をあげ、多胡をにらみつけるが、多胡は全く動じない。
島ヶ崎、三木の二人は、多胡の言葉の意味がよく分からず、アレナの隣に座っている桐原の顔を覗き込む。
そして…
「ああ〜っ! 君、あの人でしょ!? あの自己紹介のときに大声で叫んだ!!」
桐原の真正面に座っている島ヶ崎が、桐原を見ながら叫ぶ。
「ホントだ〜♪ アレナちゃんに突然告っちゃった人ですね〜〜♪」
アレナの逆隣に座っている三木も、桐原の事を興味津々で見つめている。
桐原は、自分のおかれた立場に動揺しながら、ただびくびくしていた。
「どうなの? アレナ?」
「アレナ〜?♪ 告白にはちゃんと答えてあげるのが道理ですよ〜♪ 」
桐原は、ゆっくりと隣のアレナの顔を見る。
すると全く同時に、アレナは、少しうつむいて恥ずかしそうな顔で桐原のほうを見た。
(わっ! 目が合っちゃった!)
二人はお互いに目を背ける。
「ヒューヒュー〜〜! お二人さん熱いね〜〜」
山本が、冷やかしの声を上げる。
(ったく、空気が読めてるんだか読めてないんだか!)
桐原は、心の中で山本に怒りをぶつける。
その時、
「あの、あたし…………」
アレナが口を開いた。
皆の注目がいっせいにアレナに集まる。
「あっ…あの…いや…なんでも……」
その視線を浴びて、アレナは再び口を閉じてしまう。
「なになに〜♪?」
三木が赤いメガネを指であげながらアレナのほうに顔を寄せる。
「あっ、あのさっ……!」
桐原は、叫んだ。
視線が一気に桐原に集まる。
「いや……えっと…だから、俺はその……たまたま言っちゃっただけで……山本に言われて…………だから…告白っていうか……ただ考えてた事で……ぱっと出ちゃったって言うか…」
文章にならない言葉が次々に出てくる。
すべて真実なのだが、聞いているほうにしてみれば何のことか分からないのだろう。
周りの人は首をかしげている。
(多胡だけは声を殺してくすくす笑っていたが)
「あたしはっ!……その……いいなって思った……かも……」
アレナは小さな声で言った。
桐原は驚いてアレナの顔を見る。
すると、アレナは、赤かった顔をさらに赤くした。
「あれ〜??もしかしてもしかして〜〜〜〜」
島ヶ崎のいじわるそうな声に、アレナはさらに赤くなった。
(これ以上赤くなりようもないのに……)
「桐原君! 来てっ!」
我慢できなくなったアレナは、何を思ったか立ち上がって桐原の袖をつかんで出口に向かって走り出した。
「えっ! お、おい!!」
その勢いで立ち上がってしまった桐原は、逆らうすべもなく、鞄すらおいてアレナと出口まで勢いよく走り出した。
「ちょっと、アレナ〜♪!?」
制止する声も振り切って、アレナと桐原は店の外に出て行ってしまったのである。
残された4人は、しばらくの間、ただ呆然とするしかなかった。