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第五章

「私の名前は………大沢アレナです。母親がイギリス人で、ハーフです。よろしくお願いします! 」


そういって、その美少女は、ぺこんと頭を下げた。


「ピュー!ピュー!」


「可愛い!!!」


教室中から歓声が上がる。


「可愛いぜ〜! アレナちゃ〜ん!! 」


山本が隣で大声で叫んだ。


(おい、やめろよ!)


桐原は小さな声で山本に注意した。


多胡はくすくす笑っている。


「ほらほら、静かにせんか」


先生が注意して、教室の騒動はやっと納まった。


大沢アレナは、少し恥ずかしそうにもう一度頭を下げて座った。




その後も、淡々とクラスメートの自己紹介は続いていたが、桐原の頭の中には、ずっと大沢アレナのことしかなかった。


(山本は好みの女の子が出てくるたびに叫んで、先生に注意されていたが………)




(大沢アレナさんか〜……。ハーフなのか…。道理で可愛いはずだよな〜。その辺に出てくるグラビアアイドルなんかよりよっぽど………。目がくりくりしてるし……なんかもうすべてが別世界って感じで………ん?)


そんなことを考えていた桐原だったが、不意に教室中の目線が桐原に注がれているのが分かった。


山本がこっちを向いてしきりに何かの合図を送っている。


(なんなんだ?)


桐原は不思議に思いつつも先生のほうを向くと、


「おい!大丈夫か、桐原? お前の番だぞ!」


先生の言葉を聞いて、桐原はあわてて立ち上がった。


言う事を全く考えていなかった桐原は少しパニクっている。


「お……俺の名前は桐原優斗です。……えっと………」


その様子を見て、あたりの女子たちがくすくすと笑っていた。


(思った事!思った事を言えばいいんだよ!)


隣からの山本のアドバイス。


(そうだな、よし。思った事だ)


そう思った桐原は、


「大沢アレナさんが可愛いと思いました!」






「はははははは!!!! 絶対今日のでお前は人気者だな!!!はっはっはっはっはっ!!!」


自己紹介が終わり、学校初日が終わったところの放課後。


さっそく仲のよくなった桐原、多胡、山本の三人は、駅までの帰り道にあるマクドナルドにい

いた。


山本が、先ほどの自己紹介のことあを思い出して、笑っている。


多胡もにこっとして、


「そうだよ。それじゃ自己紹介にならないよね」


と、つっこみをいれる。


(なにかがずれている気するのだが………)


テンションの高い二人とは裏腹に、桐原は落ち込んでいた。


「はあ………」


いったい何度目になるか分からないため息をつく。


「俺絶対あの大沢って人に嫌われた」


桐原は、蚊の鳴くような声で言った。


「そうかな?」


多胡が言う。


「ああいう勇気ある行動をかっこいいって捉える人もいるんじゃないかな?」


多胡の言葉に桐原は多少反応したようで、


「そうかな?」


と多少元気に多胡のほうを見た。


多胡はにこっと笑って、


「アレナちゃんがそういう人かどうかは分からないけどね」


といった。


桐原は、また落ち込みモードである。


すると……


「おい、なんだお前アレナちゃんって……」


名前で呼んだのがよほど気になるらしく、山本が多胡にくって掛かる。


「ああ。だって本人からそう呼んでくれって」


多胡が平然と言うと、桐原と山本は一気に多胡に質問を浴びせかける。


「おい!なんっ!!? ってかいつの間に!!?」


「おまえ知り合いだったのか!? 大沢さんと!?」


「まさか狙ってたり!!?」


「いやいや……ギャクナン!!!?」


質問の連射攻撃に多少たじろぎながら、


「ううん。たださっきたまたま廊下ですれ違ってさ、僕が話しかけて、メアド教えて下さいって言ったら教えてくれたから。その時にそう呼んでって」


多胡がしれっと言った。


「ああ〜!!うそ〜!!!………なんでメアドまで……。よし!俺も明日声かけるぞ!!」


山本は張り切っている。


桐原はますます落ち込んでいた。


(マジかよ……あの足踏んだときにやっぱ声かければ……)


「ああ、そういえば……。桐原君のことも言ってたよ?」


多胡の言葉に、桐原は、ものすごい勢いで多胡のほうを見た。


「なんて!? なんて!?」


「えっとね………」


と言おうとしたそのときだった。


「いらっしゃいませ!」


と店員の声が聞こえた。


店に入ってきたのは、爽山高校の制服に身を包んだ女子三人。



そして、そのなかには大沢アレナの姿があった。

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