第四章
生徒たちがどやどやと席に着区と、先生は辺りをざっと見回してから言った。
「え〜このたびこのクラスの担任となりました、加賀 雅文です、ヨロシクな。まあ、入学式のときも校長先生がおっしゃられていたが、この学校に入学した以上は、しっかりと、爽山の生徒らしくしてだな、きちんとした服装や・・・・・・・・・・・」
先程入学式のときに聞いた内容をほぼそのまま2回も聞かされて、生徒たちはうんざりしながら、隣とひそひそ話をしていた。
「ったくな〜………校長はいざ知らず担任までこうなのかよ…………。たるいな〜……」
隣に座っている山本も、飽き飽きしたらしい、小声で話しかけてきた。
山本に言われるまでもなく、桐原もあきれた顔をして先生のほうを向いていた。
「ふふっ。なんか楽しいよね」
といったのは多胡。
やはりこいつの頭の中だけは読めないのである。
「ところでさ、桐原君、キミの隣の人はどうしたのかな?」
なるほど。確かに桐原の隣の席には誰もいない。
最初の登校日で、空席があるのは桐原の隣ただひとつである。
「おお、そういえばいねえな〜。確か底女の子だったはずだけど……確か名前が……桜川由紀だったかな?」
山本が、その空席を見ながら言った。
ズキッ
桐原の心の中で何かがうずいた。
(そうだよ…その名前どっかで聞いたんだよな……)
「どうしたの?桐原君?」
多胡が声をかけてくる。
「いや、何でも……」
「もしかしてその女の子と知り合い?」
多胡がにこっと笑っていった。
「おいまじかよ!? なあ由紀ちゃん可愛い!!?」
あってもいないのに、山本はすでに下の名前で呼んでいた。
それにしても一回座席表を見ただけでその場所を覚えているのはやはり天才だからなのか、それともただ単に近くにいる女子をチェックしただけなのかは不明なところである。
「………と、言う事だ。それでは今年一年間ヨロシクな」
やっと長い先生の挨拶も終わり、クラス中の視線が再び先生のもとに集まった。
「それじゃあ……今から一人一人自己紹介してもらうか」
先生の提案に、クラス中が一挙にざわついた。
「おいおい!自己紹介だってよ!お前の言っていた例の美少女の名前いきなりゲットじゃん!しかも趣味とかまで分かっちまうかも!!もしかしたらもしかしたら…スリーサイズ…なんて……」
山本は一人で暴走している。
(やっぱただのバカなのか?)
と、桐原はため息をつきながら思いつつも、心の奥底では、ひそかにそのような事も期待しつつ、(もちろんスリーサイズではない!!)、教室の左の列の一番前に座っている彼女を見た。
多胡はそんな二人を見てくすくすと笑っていた。
「じゃあ……教室の一番左の前から」
と先生が言った。
すると、その美少女は、隣の友達ときゃっきゃと騒ぎながら立ち上がる。
クラス中の視線が彼女に向けられる。
山本はもちろん、桐原も考え込むのをやめ、そちらをじっと見つめていた。
「じゃあ、どうぞ」
先生の合図にその美少女はうなずくと、ゆっくりと切り出した。
「えっと、私の名前は…………