終わる世界とまた来る明日
少女ASIDE
私は彼のことが好きだ。
彼の優しさもぬくもりも私の頭をなでる手のひらも私を呼ぶ少し高めの声も全部全部好きで。
たとえば彼がすでにあの娘のものでもそれ彼でも私は彼のことが好き、で。
「おぉー今日も本読んでんのかー。目ぇ疲れねぇ?俺、本読むと頭痛くなんだけど。」
「それはあんただけでしょ。一緒にしないで。」
「冷たてぇなぁ。もっと優しくしてくれよ。俺、傷つくんだけど。」
そういうとひどく楽しげに彼は笑った。ドキリと胸がはねる。あわてて目をそらして活字に目をむけた。
「彼女さんは迎えに行かなくていいの?待ってるんじゃない。」
ギリギリと胸がきしむのを無理やり押さえつけて言葉を発する。
自分で言った方が痛くないから。彼の口から彼女の名前を聞きたくないから。
「あいつは委員会で遅くなるんだと。だからこうして待ってるってわけ。」
照れたように彼ははにかむ。いたい、イタイ、痛い。胸が痛い。苦しい。助けて。
ざわざわと響く喧騒の中、彼の声は砂漠の砂に水をかけるようにずぷずぷと私に浸透する。
「お前も彼氏作れよ。そしたら寂しく本読まなくてすむんだぞー。」
痛い、痛い、痛い、痛い、痛い。
笑わなくちゃ。笑ってこんな痛みなんて隠せばいい。笑って誤魔化さないと。笑わないと私はっ。
「おいどうした?」
ぎゅっと誰かに後ろから誰かに抱きしめられた。びっくりして息を呑む。
「実は彼女、僕と付き合ってるんだ。」
「はぁ!?」
驚きたいのはこちらだ。抱きついてきた方を見る。彼とは違う自然な黒髪。
優しい光とどこか熱を孕んだような瞳。ぎゅうと抱きついてきた腕に力が入る。
「まぁ、そういうことだから。」
抱きついてきた手が離れて私の手をとる。半ば引きずられるように彼についていく。
唖然とした彼の顔。
そんな顔でも私にむけられているということに歓喜する私はどこか歪んでいるんだろうか。
続きは少年B視点です。