第六話 脱出
私は目を覚ました。
上半身を起こし、部屋を見渡す。
誰もいない・・
そのことに安堵し、部屋を出た。
すると、廊下からたくさんの気配を感じた。
・・監視役?
そう思えて仕方がなかった。
私は手に魔力をこめれるか試した。
ホワン
魔力は手に集中した。
よし、回復してる。これなら・・・
私は部屋に戻り、文を書き終えると呪文を唱えた。
ヒュッ
私が移動したのは城の真上。
私は風をコントロールしてマジナシア王国に向かった。
今は夜。
夜は静かで町の明かり一つない。
深夜ぐらいだろうと私は決め付けた。
町外れに飛び降りてそこから徒歩で城に向かった。
気配がした。
明らかに私を狙う人たち。
私は立ち止まった。
追い払うための呪文も詠唱完了していた。
だから早く来いという合図である。
私を狙った奴はその誘いにまんまと引っかかり私の思惑通りに動く。
私は魔法を解き放った。
「風よ、汝らを戒めろ!」
呼びかけに風は応じ、私を狙った奴は拘束される。
「朝までそうしてればいい」
私は冷たく言い放つとすたすたと城に歩いて向かった。
そして夜明けと共に自分の城へ帰ってきた。
城の門まで行き、
「ゼン、ゼン、来たよ。門開けて」
と、言う。
すると、ガラガラガラ と音を立てて門は開く。
私は門から城の中へ入る。
そうするとゼンが出迎えた。
「よく、抜け出せてきたな?」
ゼンが問いかけるように言う。
「夜中に抜けてきたからね。
早速だけど、いろいろ用意させてもらってもいい??」
「ふぁわわぁ。朝早く起こしたことを謝ればな?」
私のお願いにゼンは大げさにあくびをして言う
「それはごめんね。こっちも大変だったんだから、仕方ないし。」
私がそう言うと
「はいはいわかったよ」
と、軽く受け流し、私を抱き上げた。
「なっなに!?いきなりっ!?」
私は戸惑う。
「ルミー、自覚しろよ、お前、顔色悪いぞ。」
ゼンはあきれたように言う。
「あはは、変な薬飲まされたせいだよ、きっと・・・」
私は うとうとしてきて抵抗するのをやめた。
ゼンは私を抱き上げたまま城を歩き、
「何を準備して欲しいんだ?寝る前に答えろよ?」
「んー・・魔力粉・・ふたふくろ・・・銀の腕輪・・ふたぁつ、浄化の杖、
・・それと・・破邪の剣・・それだけ・・・」
「やけに注文多いな。」
心底嫌な顔をするゼン。
「んー、それも承知でお願い・・あとぉ・・・昼になったら起こして・・」
私はそれだけ、言うとまた眠りに着いた。
「ったく、注文の多い、姫君だな」
ゼンは嫌そうな物言いで呟くがどことなくうれしさも混ざっていた。