第二十一話 契約・魔道士・侍女
「ぅ”」
私は痛みで目を覚ました。
「痛むのか?」
そうやって聞くのはゼンだった。
視界には気を失う前に見た者ばかり。
「・・べつに」
私はそういって上半身を起き上がらせる。
そして・・背中にあったはずの傷を触る。
・・・・。
ちょっと腫れてるけど傷は完全にふさがっていた。
「完治してるはずだが・・大丈夫か?」
アシュラが問う。
「大丈夫。
それより・・あれからーーー」
「あれからお前の治療に専念した。
あれからそんなにたってはいない。
お前は催眠にかかりにくいんだな。」
アシュラが静かに言った。
「・・魔道士だから、当然でしょ。
じゃあ、契約をはじめようか」
私はそう言って立ち上がった。
「お、おいっ!!
ルミーっ!!
後にしてくれ、体力も魔力も回復して無いだろ!?」
ゼンが私を抑えようとした。
でも、無駄。
スーーッ
私は指で魔円を描く。
「ハッ!!」
気を吹き飛ばし、ゼンとアシュラをその円に封じ込める。
「「なっーー!?」」
ゼンもアシュラも身動きの取れない状況に陥った。
「じゃあ、蛛陰たち、契約やろうね?」
相手に有無を言わせない私の言葉。
「・・・」
相手は渋々頷いてくれた。
「・・あれ?
私の魔道具が・・。
意識の無いうちに取り上げたね?ゼン」
私はゼンたちのほうを向いていった。
「---!!」
ガンガンッ”
結界をたたく音がする。
ゼンたちに私の声は聞こえるが、ゼンたちの声は聞こえない。
そういう仕組みにしてある。
「・・ちょっとまってね」
私はそう言って、魔道具を探し始めた。
探し始めてまもなくそれは見つかった。
「・・隠すの下手だね、アシュラ」
私は呟いた。
取り上げたのはゼンだと分かったが
おいた場所を見るとアシュラの仕業のようだと思った。
私は魔道具を身に着ける。
耳にピアス、腰のベルトには宝玉。
腕にはブレスレット、そして手袋。
全てを用意して、そのあと、蛛陰たちと向かい合い、
契約をし始める。
「----」
私は呪文を唱え、手のひらに魔力を集める。
そして、魔力はクリスタルに変化した。
クリスタルは全部で四つ。
ヒュンッ
四つのクリスタルを私は浮かばせた。
「蛛陰、雲雀、蔦蛇、白夜、我と契約を交わす。
汝等の名を、クリスタルに今、刻まん。
契約の証、今ここに在る」
私はゆっくりと契約の呪文を唱え、クリスタルに名を刻んだ。
ヴァンヴァン”
名を刻むと同時にクリスタルは色を変えた。
蛛陰は紫、雲雀は紅、蔦蛇は深緑、白夜は白銀。
そして、クリスタルは契約の下、本人に渡された。
「これで契約は完了。
あとは仲間探しでもどうぞ。
・・じゃあ、ルピナちゃんと久遠君のことで
いろいろと決めようか」
私は言って、ゼンたちの魔円を解いた。
「とりあえず、使う部屋に案内するよ。ついてきて。
・・私の部屋の向かいがいいかな・・」
最後は独り言のように呟いた。
そして部屋を出る。
そして案内。
長い廊下を突き進み、私の私室の向かいの部屋まで来た。
その部屋は今は空きとなっている。
「ここでいいかな?
あと、この隣も空いてるから。
じゃあ、入ってみようか」
私は言って私室の向かいの部屋に入る。
みんなも入った。
中は普通。
質素でなければ豪華でもない。
白い壁に白いカーテン。
ベットにテーブルに椅子に。
まぁ、ちゃんと家具はそろってる普通の部屋。
「あ、そうそう、この部屋は隣の部屋とも扉でつながってるから。
右隣は私の自室。私室は主に執務時に使うから。
・・・今はゼンがもしかして使ってる?」
「あぁ。使ってる。」
ゼンはきっぱり頷いた。
どうやら私に戻したくないみたい。
「んー、どうしようか、
ルピナも久遠も近い方がいいし・・。
・・こうしよう、私の自室の両隣に二人の部屋を用意するってのは?」
「いいんじゃないか」
ゼンがいう。
「貴方が傍にいるなら、久遠も安心ね」
蔦蛇は微笑む。
「僕も賛成。」
雲雀は頷く。
「じゃあ、決定。
とりあえず、自室の左隣が久遠君の部屋で
自室の右隣がルピナちゃんの部屋ね」
私は言った。
そのあとーー案内、移動、・・いろいろあってその辺は解決した。
そして、アシュラたちは仲間探しのたびに出ることになった。
「仲間探し終えたらきてね、
条件はそろえるから」
「あぁ」
私の言葉にみんなは頷く。
ルピナや久遠は傍にいる。
「ルピナいい子でイテヨ」
「・・うんっ」
「久遠、私は遠くにいても心は一緒だからね?」
「・・・」
蔦蛇の言葉に久遠はこくんと黙って頷いた。
二人は別れを告げた。
そして・・神魔たちは仲間探しのたびへ行ってしまった。
「・・じゃあ、部屋に戻ろうね。」
私は久遠とルピナを促して部屋に戻った。
そして二人を自室に招いた。
「久遠君、ルピナちゃん、
これから二人のお世話をしてもらう
侍女を紹介するね。
不安がらなくていいから、ね?」
私はそう言って二人の肩に触れる。
「・・うんっ」
「」
ルピナは私の手に安心したのか頷く。・・が、
一方、久遠はびくっと体をこわばらせた。
「久遠君、大丈夫。
私がいるから、ね?」
そう、優しく言い聞かせる。
「・・・」
久遠は私を見て・・黙って頷いた。
「入ってきて」
私は言った。
「「失礼します」」
そう声をハモらせて二人の侍女は入ってきた。
「私はロコンと申します。
久遠君のお世話をさせていただきます。」
「私はトパーズと申します。
ルピナちゃんのお世話をさせていただきます。」
侍女たちはそう言って二人と優しく手を握った。
敬語もやめさせようかなーーと不意にそう思った。
「ロコン、トパーズ、
敬語は・・二人に対する敬語はやめてあげてね?」
「「はい、わかりました。」」
二人は微笑み、頷いた。
そして二人は侍女とともに部屋に戻った。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~久遠の様子
久遠はベットで虚ろな眼をして窓から景色を見ていた。
「食事ができましたよー久遠君」
やっぱり少しは敬語を使うロコン。
「・・・」
久遠はそれでも窓から離れない。
ロコンをみようともしない。
これは困ったとロコンは思う。
「久遠君・・?」
ロコンは戸惑い気味に聞く。
「・・いらない」
久遠はテーブルに並べられた料理を見て言った。
・・初めて言葉を発したのはこれが初めてだった。
「ですが・・しっかり食事を取らないと・・」
ロコンは戸惑う。
「・・・・」
久遠は何も言わない。
そんな情景が数日続いた。
食べた形跡が見られない。
ついにロコンは私に言った。
「久遠君・・なかなか食べてくれないんです。
どうしたらーー」
おろおろするロコン。
「・・わかった。
私が行くよ。そうすれば少しは変わるかもしれないし」
私はそう言ってロコンには下がらせた。
コンコン
とノックしてから入る私。
そして私は久遠の部屋に入った。
「久遠君、・・・。
大丈夫?」
私は久遠に近づき、久遠の顔を覗き込む。
久遠は虚ろな眼をして窓を見ていたが私を見た。
私は久遠の額に手を当てた。
・・ちょっと微熱だった。
無理も無い。
ろくに食べず、寝てもいないのだから。
私は一つ飴をとりだした。
「これ、食べて。
美味しいから。」
そういって、久遠の口元にそっと持っていった。
「・・・」
食べようとしない久遠。
私は片腕を久遠の背中にまわして抱き寄せた。
「ぇーー!?」
久遠は驚く。
はじめてみた。
久遠の驚く顔を。
「ほらーー、食べて・・」
私は久遠に優しく言った。
「」
すると久遠は口をあけた。
そして、コロンっと飴玉が久遠の口の中に入っていった。
途中ですみません。
次回も頑張りますのでお見逃し無く!!