本当の俺と人形姫
本来の俺は、日本人だったんだ。
ゲームをしていて死んだらゲームのアバターになって、この世界にいたんだ。
アバターは
イチゴミルクみたいな色のロングヘアをツインテールにした魔法メインの人形遣い。
可愛いクマちゃんとかを使役して攻撃に使っていた。
ヒラフラふりふりなミニスカワンピースとか、ムリ!
オレはすぐさま、インベントリにある【旅人の服】に着替えた。
ベージュのチュニックに茶色のズボンにボロいマント、布のカバン。
ツインテールを外し一つに括り、フードをかぶる。
MAPは有効で、街の名前とかは同じだったから近くの街まで向かう。
インベントリにはゲームのアイテムがほぼそのまま入っていた。
体力回復用の携帯食は味の薄いカロリーバー。
ポーションはHPは栄養ドリンク。MPはグレープフルーツフレイバーな栄養ドリンクだった。
モンスターと出会した。
息遣い、叫び声、血。たしかにリアルでグロくてちょっと吐き気した。
人形遣いで良かった。
レベルカンストしたから次は剣士とか武闘派の男にしようかと考えてたんだよな。
自分で戦うのは、今のオレじゃ無理だ。
人形遣いは用意した人形を操り闘う
サモナーとかと違うのは逐一行動を指示しなきゃならない所。
適性があり慣れれば使い勝手は良いんだけどな。
ピンク色のリボンをつけたテディベアが血まみれなの中々に酷い絵面だ。
殺したモンスターはインベントリに回収できたから溜めて行く。
街ー街はまだかぁー
たしかそろそろ街がある筈、ん?馬車ぽい音が!道に出た!
街に着いたらハンター協会に行ってハンター登録。えらく簡単だな、おい!
倒して来たモンスターを買い取ってもらい現金収入…え!ランク上がるの?やりぃ!
見た目は極上に可愛い女の子だからフードやらで隠してたんだが、強すぎて有名になり、伯爵に目をつけられ、悪徳貴族な伯爵に手出されそうになり、応戦したらなんかあるダンジョンをクリアしなかったらギルドからも追放とか言われて、流石に不慣れな世界で現金収入の宛がなくなるのは辛いからダンジョンに挑んだ。
ダンジョンの名は【暗黒世界】オレの感覚で言うと【ブラックボックス】だな。なんも分からない!ってこと。
いやぁ、出てくる魔物が全部高レベルのハイ種族ばっか!一番のザコがハイオーガよ?ギルドの定義でいうB級。
一人一人がかなり強くて、回復役もいて、連携がめちゃくちゃ取れるパーティで戦うのが定石の相手。
あの街にはB級も数人しか居なかったから入ったパーティは須く全滅したんだろうなぁ。
オレはさっさと人形達を召喚した。
首にリボンをつけたミルクティー色のクマ(物理特化のティ)
首にネクタイをつけたチョコ色のクマ(タンクのショコラ)
耳にリボンをつけたピンクのウサギ(魔法特化なローズ)
尻尾にリボンをつけた水色のネコ(俊敏回避盾のアクア)
右耳にピアスをつけた黒ネコ(闇魔法、デバフ特化のノワール)
ヘッドドレスをつけた白い垂れ耳ウサギ(光魔法、回復役のリリー)
多分、一体がSランクいくと思う強さを誇る我が軍団。
だってこいつらのパーツにはオリハルコンとかの稀少金属やドラゴン系の素材をめっちゃ使ってるから。
かなり頑張って素材集めて作り上げた人形たちは、危なげなくサクサク進む。
リリーがパーティにバリアかバフをかけ、ショコラが攻撃を受け、ノワールがデバフか拘束。ティが殴り、アクアが斬りつけまくり、カウントを終えたローズが魔法を打っ放す。
オレは全体を見ながら簡単な指示をだす。
人形のレベルが低い内は「ティ!ローズが魔法を撃つまで敵を殴って!合図きたら避けろ」とか「ローズ!フレアの魔法詠唱!完了したら右手上げて合図!」とか指示を出さないといけないから大変だった。
そんなこんなで進んだ先のダンジョンボスはショゴスだった。
いやぁ、苦戦したねえ!殴り効かないし、魔法も光しか効かないし、リリー頼みでチマチマ削って丸2日くらいかかった。ショゴスのやつ[テケリリ]て鳴いてウネウネするだけで攻撃してこないから見張りつけて仮眠も取れた。最後、親指サイズになったらクリア報酬が出てダンジョンコアが現れた。ダンジョンコアを壊せばダンジョンは消えるんだけど、ショゴスは我関せずにウネウネ。
なんとなく「じゃあな」て別れを告げてからダンジョンコアを叩き割った。
ショゴスはちっちゃい触手をバイバイするみたいに振って闇にのまれた。
転移して入口に戻るとダンジョンの入り口に荘厳な扉が現れてゆっくりと閉まり消えていく。ダンジョンの消滅である。視線をダンジョンと反対に向ければ管理の為のギルド職員と、オレが出てくるか野次馬根性で待ってた奇特な奴らが、魂抜けたような顔を並べてた。
オレはニヤリと笑い
「ダンジョン、クリアしたぜ?」とカッコつけた。
「あんな、愛らしい嬢ちゃんが、【暗黒世界】踏破しやがったなんて!」
と騒ぎ立てられ、まず、疑われてギルド証の討伐記録を衆人環視の元お披露目した。
その時に人形達もご紹介。
謎世界を消した【滅國】と【人形遣いの姫】の名がつけられて【滅國の人形姫】に落ち着いた。
王様にも謁見した。
せっかくだからアバター用に作ってた無駄な程豪奢なドレスとアクセサリーを付けて、カーテシーての?モーションあったから披露したら、周りからスゴイ褒め称えられた。
マジもんの姫様涙目だった。なんかゴメン。
王様になんでダンジョンに挑んだか聞かれたからバカ伯爵の話しをしたら、伯爵が真っ青な顔して足元に平伏して泣きながら「バカな事をした、申し訳無かった」と謝罪してきた。
王様が消すか?みたいに聞いてきたけど、めんどくさそうだから「顧みれたのならキチンと反省して、これからは真面目に生きて贖罪をしろ」とだけ言っておいた。
「ただ、偶に見に行く。バカやらかしてたら首にする。」と釘は刺した。
血判押した誓約書(善き人、良き領主として領地を統治していくみたいな事)を渡してきたから、王様に「保証人な」って渡しといた。
そんな感じで黒カードになって、旅を始めた。人形達からの経験値でオレ自身も強くなってたから基本ソロだ。
夜だけ一体見張りに出してる。
デカイぬいぐるみに抱きついて眠る美少女の図は、三人称なら愛でられただろうなぁ。
あれから10年か。
そう、この地に降り立ってすでに10年。
この体は歳をとらない。
伸びろと魔力を巡らせれば髪や爪は伸び、肌も再生されるけど、背は伸びない。
胸の膨らみはあれどただの塊。
出すための穴はあれど営みの穴なんてものはない。だから、求められても困るのだ。
この体はまさしく『人形』なんだから。
分かっていても、他人に拒絶や罵倒されたら傷つく。
だから、親しい人は作らないできた。
でも、『心』はあるから。
『魂』なのか『記憶』なのかはわからないけど『オレ』はいるから。
寂しくて辛くて擦り切れてた心が、ヴォルフを見た時、動いた。
『こいつ』は『オレ』を見てくれるって感じた。
ようやく、一人から解放された。
だから、今のオレの弱点はヴォルフ。
コイツに何かあったら【滅國】の名に恥じない破滅を齎してしまうだろう。
「主!戻った!」
依頼を終えて走って帰ってきたんだろう息を弾まてそう告げるヴォルフに「おかえり」と返して料理を並べた。




