トントンとピコと洗濯大作戦
トントンの家の庭では、ピコがそわそわと歩き回っていました。
「この前ケンカしちゃったし……オイラ、なにかしてあげたいなぁ」
ふと目に入ったのは、庭の隅に置かれた――泥で汚れた青いオーバーオール。
昨日、トントンが畑で転んでそのままにしていたものでした。
ピコはくちばしでにやり。
「よしっ! トントンの服をピカピカにしてびっくりさせよう!」
川辺につくと、ピコは得意げに胸を張りました。
「ふふん! キレイにするぞ!」
けれど、桶もタライも知らないピコは、
石の上にオーバーオールを置いて、水をパシャパシャとかけ始めました。
ピコは「こすれこすれ〜♪」と歌いながら、夢中で洗っていました。
けれど、石の上に置いたオーバーオールの端が、少しずつ川のほうへズルズル……。
「ふぅ、けっこう疲れるなぁ」
ピコが羽で汗をぬぐおうとした拍子に、
ドンッと石につまずいて前のめり。
ばしゃーん!!
その勢いで、オーバーオールもピコの体も川の中へ飛び込みました。
「ぎゃあぁっ!? と、トントンの服ぅーー!!!」
ピコの叫びに、川辺で日向ぼっこしていたカエルたちが顔を上げました。
「なんだなんだ?」「洗濯ごっこか?」
「おれたちもまぜてー!」
ピョンッ! ピョンピョンッ!
カエルたちはいっせいに川へ飛び込み、
オーバーオールをコロコロ転がしながら泡だらけにしていきます。
ピコは必死に羽をばたつかせて追いかけますが、
カエルたちは楽しそうに跳ね回るばかり。
「ちょっとぉ! 遊んでるんじゃないんだよぉぉ!」
そのころ、トントンは大きなあくびをしながら庭に出ました。
「いい天気だなぁ……川の水もきっと気持ちいいぞ」
洗濯でもしようかと外へ出たそのとき、
川の方から、ピコの声が聞こえてきました。
「……ピコったら川で遊んでいるのかな?」
トントンはピコの元へ向かいました。
川に近づくにつれて、ピョンピョンとはねるカエルたちの声と、泡のはじける音が混ざります。
「え?」
川へ向かうと、そこには――
泡まみれのピコとカエルたち、
そして川の真ん中を流れていくオーバーオール。
トントンは思わず吹き出しました。
「ピコ……カエルさんたちと水あそび?」
「洗濯してたの!!」
夕方、ふたりはびしょぬれのまま川辺に並んで座り、
風に揺れるオーバーオールを見つめていました。
ピコは小さな声で言いました。
「トントン、ごめんね……でも、今度はちゃんと洗うよ」
トントンは笑って、ピコの頭をなでました。
「ありがとう。でも次はふたりでね」
ふたりは顔を見合わせて、ぷはっと笑いました。
オーバーオールが風に揺れて、まるで笑っているみたいでした。




