07 能力開発
カネト「色々出来るようにはなったんだけど。」
そう言ってカネトは、指から球体を幾つか出した。
それらは1分ほど経過した後、霧散した。
その瞬間、カネトには痛みがあるようだ。
俺の「ニョロ」の霧散は最初は離れた瞬間、鍛練したら2秒になった。
初心者がいきなり1分ってどうなんだろう。
俺より維持する力が強い?
痛みの原因は何だろう?
解らないまま多用するのは危険な気がする。
ジョージ「球形じゃなくヒモ状で出して、身体に戻すみたいなのは出来ないかな?」
俺はそう言って指から紐付きの玉を出して転がしてから戻した。
霧散すると痛いなら、霧散させなければ良いという理屈だ。
しかし、カネトが出した物は指に留まらず、身体に密着させても1分後に霧散してしまった。
ジョージ「痛みってのは、人間の身体が危険を伝えるサインだ。」
「仕組みがよく解らないうちは、痛みを伴う能力使用は控えた方が良い。」
ジョージ「そう言えば、アカネの怪力は時間制限とかあるの?」
アカネ「全身全力強化は10分くらい、休み休み使えばもうちょっと長く使えると思う。」
やっぱりそうか。
だとすると、カネトは何をやっても痛みがあるだろう。
それは良くない気がする。
俺の出し入れ自在な「ニョロ」は特異な能力なのかもしれない。
コトネ「体内で命令を与えないで霧を動かすだけなら痛くないと思う。」
「これで鍛錬だけしていれば、そのうち何か解るんじゃないかな。」
カネト「解った、そうする。」
それから3人の能力を見せ合い、夕方頃に解散した。
俺の恋愛経験は一度だけ。
経験豊富な同級生が、気まぐれで「ガリ勉と付き合ってみた」だけ。
高2の終わり頃からトウ大の不合格が解った日までの約一年間。
勉強にも恋愛にも集中できずにどちらも失った一年。
恋愛に関しては他にも男がいたようなので、最初から勝ち筋は無かったのかもしれないが。
そんな俺からしたら、アカネのストレートな告白は嬉しかった。
良く見せようと気張り過ぎて、一人になった瞬間ドッと疲れが出た。
寝てばかりだが、非常に有意義な連休だと思う。
明日は今日得た情報を元に能力開発だ。
リュージの件もあるし、早く有効な攻撃能力を会得しないとジリ貧になるのは目に見えている。
さて、連休最終日。
寝ている間に思いついたのは、ブラックジャックだ。
靴下にゴルフボールを入れて振り回すアレだ。
地味だが、性能は申し分ないはずだ。
身体能力強化や形状変化を併用すれば、リュージ以上の攻撃力が得られるはずだ。
消費する霧は身体能力分だけなので非常にエコだし。
リュージの「鋭利な刃」は結構な量の霧を消費していたと思う。
さて、思いついたは良いが試す場が無い。
考えてみると、今の日本に壊しても良い物はあまりない。
そういえば、俺は飛べるようになったんだっけ。
極めて軽い「ニョロ」に乗って浮いてみた。
霧を噴出して移動は出来るが遅いし燃費も悪い。
垂直移動なら良いが、空を飛ぶ能力としてはかなり微妙だ。
とりあえず、コトネとアカネに事情を説明し、良い場所があったら教えてくれとメールを送る。
返信が来るまでクレイゴーレムを動かしてみよう。
命がけの戦いで得られる経験値は凄い。
クレイゴーレムとは五感をほぼ共有でき、接続も強めだ。
ニョロ盗聴もかなり強くなったが、コトネとアカネと仲良くなった今、犯罪チックな行為は気が乗らない。
クレイゴーレムにブラックジャックを当ててみようか。
クレイゴーレムの強度はかなりのもので、幾らブラックジャックを当ててもダメージはない。
クレイゴーレムを粉砕したら俺の霧はかなり減ってしまうが、これが出来ればブラックジャックの威力はかなりのものになるだろう。
俺は、土日に野球やサッカーの大会で使われるが平日は基本誰もいない公園に向かった。
今日は特に何の大会も無いので予想通り誰もいない。
コトネとアカネにクレイゴーレムをサンドバッグにすることにしたことを伝えると、アカネから自分にも使わせて欲しいと連絡がきた。
コトネに燃やされると霧が減ると思うが、アカネの打撃なら消費ゼロで受けられるだろう。
アカネの頼みを了承して、アカネを待ちつつブラックジャックの練習をする。
そういえば、アカネと二人きりか。
両想いと公言しているし、実際デートみたいなものか。
ヤバい緊張してきた。
アカネ「お待たせー。」
アカネは走ってきたようだ。
ジョージ「走るのにも能力使ってるの?」
アカネ「一応、能力使えば1.5倍速くらいで走れるけど、今日は打撃練習だから普通に走ってきた。」
「10分くらいしか使えないからね。」
ジョージ「じゃあ、アカネが言ったようにゴーレムを動かすから、好きに動かして好きに攻撃してみて。」
アカネ「そっか動かせるんだよね。本当に便利だね、ゴーレム。」