45 前衛の賞味期限
病院に行くと夜勤の医者がいた。
よりによって若い女性。
悲鳴を上げられたら犯罪者みたいだ。
冷や汗をかきながら、俺は夜勤の医者に足を渡した。
医者「こちらで処分しておけば良いですか?」
ジョージ「はい、お願いします。」
落ち着いた対応、何だか拍子抜けだな。
変に気にし過ぎて、逆に恥ずかしい。
ムラモトの腕もここで処分したんだろうし、こんなもんか。
その後、俺はアパートの荷物を軽く纏めて寝た。
次の日のパトロールは特に何もなかった。
少し荷物を運んで、軽めの訓練をして終わり。
次の日は、弱い宇宙人を一人倒した。
弱いと言っても、マギドワと同じくらいだ。
今の俺らならソロでも勝てるだろうということで、ハスハに任せた。
そして、アパートを解約してマンションへの引っ越しを終えた。
支部での実戦訓練は控えるように言われて、主に本部で召喚訓練。
予想通り、召喚訓練だとハスハに手も足も出ない。
アカネは秘密の特訓と言って相手をしてくれなくなった。
新技を身に付けて、俺と戦おうとしているんだろうけど、ガッカリされるんだろうな。
前衛の賞味期限を感じて、テンションが下がってきている。
このままでは、昔みたいに無気力になってしまう。
割り切って、後衛としての伸び代を考えよう。
そこから、前衛の伸び代も見えてくるかもしれない。
それに、別に後衛でも優秀な後衛なら良いじゃないか。
たまには人に相談してみよう。
後衛タイプと言えば、コトネか。
俺はコトネを飯に誘った。
コトネ「能力の方向性で悩んでるの?」
久々の察するスキル。
相変わらず鋭いなー。
ジョージ「流石だな。うん、いよいよ前衛たちとの戦闘訓練が厳しくなってきてね。」
「後衛のスペシャリストのご意見を承ろうかと。」
コトネ「今回、察したのはハスハさんだよ。きっと相談に行くからよろしくねって。」
ジョージ「ハスハにも心配かけてたのか、情けないな。」
「コトネの能力最近見てないけど、今どんな感じ?」
コトネ「メイン攻撃は遠距離火炎。あと、溜めてからの爆発攻撃。」
「基本的に接近させない戦法ね。」
「ウォーターカッターで接近を阻害して、それでも寄ってきたら電撃。」
「電撃の威力は大したことないけど、痺れてる隙に距離を取る。」
随分色々出来るようになったな。
かなり強そうだ。でも、
ジョージ「それでアカネやハスハに勝てるのか?」
コトネ「勝てないでしょうね。」
「でも、後衛として守られる代わりに、前衛よりも高火力の攻撃が出来る。」
「私の能力は、そういう能力。だから、私はこのスタイルに徹するわ。」
なるほど。
集団戦での役割を持ちつつ、格下相手ならソロ用の戦法もある。
その点、俺はどうだろう。
俺、ブラック、ゴーレムのトリプル攻撃。
これは格下用のソロ戦法なんじゃないか?
俺の能力の強み。
硬度は無いけど強度が高い物質生成と操作による防御。
五感を与えた物質操作と軌跡読みによる状況把握。
我召喚ブラック。
考えてみると、俺は防御の訓練を全くしていない。
だけど、俺の防御には定評がある。
ブラックとゴーレムは不死身の兵士。
俺はもっと防御を鍛えるべきなんじゃないか?
俺の能力の最大の強みは、攻撃ではなく防御。
俺は仲間と自分を鉄壁の防御で守りつつ、ブラックとゴーレムが戦闘。
これが強者と戦うときの俺のスタイル。
俺はハスハ戦で足を犠牲にしてブラックとゴーレムを出した。
手は2つしかないから。
いや、指は10本だ。
防御能力を鍛えていなかったから、防御しながらブラックとゴーレムを出せなかったんだ。
ジョージ「コトネありがとう。やるべきことが見えてきた。」
コトネ「流石ジョージさん、じゃあそろそろ注文して良い?」
ジョージ「あぁごめん。好きなだけ食べて。」
そして、俺は子供のように新戦法についてコトネに語った。
結局は後衛になるんだけど、これなら前衛とも戦える。
アカネにガッカリされない。
コトネと別れたら、早速試してみよう。
俺の盾は、指を痛めない為に5本指で出すようにしていた。
だから、次の行動に移りにくくてイマイチ使いにくかった。
一瞬で持ち手付きの盾を作り、手に持った状態で親指を当てて操作したらどうだろう。
俺本体は防御に徹するなら、その後に地面に固定すれば指を痛める心配もない。
これなら、両手で盾を操作しても指が8本余る。
全力で防御しながらも、ブラックでもゴーレムでもいくらでも出せる。
あとは硬い物質の出し方だ。
ハスハが関節を再現したように、俺も爪を再現出来るはず。
人間の指を再現。
よし、爪がある。
この指を「戻す」と、やはり爪だけ残る。
この爪を変形させること、大きくすることは容易。
初めての硬い物質の操作だ。
これは戻すことが出来ない。
用が済んだら霧散させるしかない。
次は、最初からこの硬い物質だけ出してみよう。
更に、硬い物質をいつものタンパク質で包んだ盾を作る。
次に、これを一瞬で出す練習。
そして、ブラックに攻撃して貰い、防御性能のチェック。
最高密度のゴーレムは2体まで出せる。
ブラックとゴーレム2体に戦わせて、本体は守りに徹する。
これが俺の新スタイルだ。
あとはこれを煮詰めていけば、前衛連中ともまだまだ戦える。




