38 軌跡読み
朝早くに街のスーパーに行き、「霧の軌跡」を試してみた。
目を瞑って周囲の様子を探ってみると、スーパー全体の様子が大雑把だか把握できた。
物陰に人が何人いるか。
店の形やそこにある商品はどんなか。
野菜等は何となく何か解るが、大体のものは形しか解らない。
人に着目すると、能力が使える人か使えない人か、機嫌が良いか悪いか等が解る。
大体2割くらいの人が何かしら能力を使った経験があることがあるようだ。
しかし、全員定点だ。
知らなきゃ循環させようとは思わないのだろう。
意識を集中すれば、会話内容も解る。
む、今入ってきた人は飽和だ。
あちらも俺の存在に気付いたようだ。
仲間の誰かかと思ったが、知らない人だ。
軽く会釈をして、何事もなくすれ違う。
恐らく宇宙人だ。
だが、特に敵意を感じない。
悪い宇宙人ではないと思われるが、遥か格上で察知出来ないという可能性もある。
とりあえず、放置が無難か。
店内をぐるぐるしていると、店員が不審に感じていることに気付いた。
気付くと30分もただ店内をふらついている。
万引き犯か何かと思われたのかもしれない。
俺はそそくさと買う予定の物を買って店を出る。
俺が軌跡を読めるのは、半径1kmくらいか。
それ以上離れた場所はノイズが混ざって読みにくい。
マイやシニカはこれで数百kmという範囲を読んで「預言」をするのか。
俺には無理だろうな。
だが、戦闘で考えれば半径1km読めれば十分だろう。
そろそろ10時、デパートにも行ってみようか。
と思ったら、2km先に強い悪意を感じる。
強い悪意は範囲外でも解るのだろうか。
宇宙人の襲撃か何かかと思ったが、途中でそれはないと気付く。
能力者3人が銀行強盗をしようとしているようだ。
定点2人、循環1人。
日本人のヤンキーだな。
能力を悪用して金稼ぎがしたいのか。
能力を使って金を稼ぐ方法は無数にあると思うが、よりによって強盗か。
コイツら頭が悪いな。
俺がその場に着くと、打ち合わせが終わり、丁度銀行に入るところだった。
ジョージ「止めとけ、バーカ。」
俺はリーダー格と思われる循環のヤンキーを挑発してみた。
「喧嘩売ってんのか!」的なことを言われて、俺は路地裏に連れていかれる。
やろうとしてること看破してる時点で、格上だと思わんのかね。
路地裏に着くなり、俺は一発殴られる。
霧で強化すれば、一般人なら即死の可能性大だ。
その辺の分別はあるらしく、素で殴られた。
人間の筋力だけのパンチ程度、飽和の俺は強化せずともノーダメージだ。
リーダー格「やっぱお前も能力者かよ。」
普通に殴られてやったが、流石に気付いたようだ。
ジョージ「そうですね。こんな能力があるのに、銀行強盗という選択は阿呆過ぎませんか?」
ヤンキーB「どうします?コイツ強そーですよ。」
ヤンキーC(リーダーの彼女?)「コイツムカつく。ジュンくんやっちゃいなよ。」
リーダー格・ジュン「面白れー。一発殴ってみろよ。」
どうしようかな。
下手に攻撃したら殺してしまう。
仕方ない。
俺はブラックを召喚し、ジュンを掴んで上空に運んでぐるぐる回ってみた。
落ちないように、痛いように、軽く爪を立てて。
ジョージ「お前ら何なの?」
「はい、自己紹介よろしく。」
ヤンキーB「ウサミ・シンイチです。メロ大3年です。」
ヤンキーC「ウサミ・ミドリ、メロ大2年、シンイチの妹です。」
「で、彼がサイトー・ジュン。メロ大4年で暴走族・鷹丸の総長です。」
またメロ大か。
ジョージ「そっか、んでお前らの中で一番頭が良いのは?」
ミドリ「あたしだと思う、思います。」
ジョージ「じゃあ、あんたが質問に答えて。」
「旧校舎の騒動知ってる?」
ミドリ「学校は隠してますけど、何かヤバい戦いがあったんだろうなってのは能力者の間では有名です。」
ジョージ「お前らの仲間の能力者って多いの?」
ミドリ「ジュンみたいな強い能力者は3人だけ。」
「あたしらみたいなチョット使えるくらいのが10人くらい。」
ふぅん。
じゃあそろそろジュンを解放するか。
ジュンは既に気を失っていた。
俺は後で詳しく話を聞くと言って、ミドリと連絡先を交換して別れた。
能力で犯罪を犯したら潰すぞと脅しをかけて。
13人の能力者グループ。
こういうのが、今後チラホラ出てくるんだよな。
そろそろ秘密にするの限界なんじゃないか?
その辺の話もしなきゃなーと思いながら、昼食を食べて本部に向かう。
本部に行くと、マイとメイは不在だった。
極秘の世界会議に出席しているらしい。
いよいよ能力のことを公開する日が近いのだろうか。
キムラとタムラに今日あったことを話し、ブラックで虐めて支部に戻る。
支部に戻ると誰もいない。
スマホを見ると、アカネとコトネから「カネトが目覚めた」と連絡が入っていた。
急いで病室に向かうと、アカネコトネと両親、あとヤマトがいた。




