36 激戦、その後
ジョージ「お疲れ様でした。大丈夫ですか?」
マイは静かに首を横に振る。
メイは意識が無い。
壮絶な、6時間に及ぶ今日の訓練が終わった。
彼女らにとっては極めてハードな戦闘だったが、俺にとっては久々なイージーな戦闘だった。
ブラックの基本的な動かし方の確認が出来て、意外と良い経験になった。
密かにスプラッター耐性もかなり上がってしまったけど。
俺が今までにした「殺し」はマギドワだけだった。
ソエンキも殺したと言えなくもないが、トドメを刺したのはミズノだし。
それなのに今日一日で24回も殺人経験を重ねてしまった。
正確には誰も死んでないが、複雑な気分だ。
そんな微妙な空気の中、シニカが帰ってきた。
シニカ「凄いねー。平和な国ー。」
「色んな食べ物、動物園、映画に遊園地ー♪」
色々と満喫してきたらしい。
シニカ「おー、マイちゃん頑張ったねー。」
「預言やってみ?前と全然違うの解るから。」
マイ「結局、一度もブラックを倒せませんでしたけど。」
シニカ「当たり前じゃん。戦闘経験ゼロの人がいきなりブラックちゃん倒せる訳ないよー。」
メイ「えー、何それ。」
メイが起きた。
シニカが騒がしいからか。
シニカ「今日は絶対倒せないけど、食らいついて死にまくれ。」
「これでやる気出るー?」
マイ「確かにそうですね。」
「適切な言葉選びだったと思います。」
メイ「むー。」
シニカ「倒すまでやれってのは、三回目からね。」
「次回は多分勝てない、でも次回は勝てるかもしれないから頑張れ。」
ジョージ「それで、ムラモトさんはどうしてます?」
ミワ「支部で訓練してくると言ってました。」
シニカ「様子見に行こうか?」
シニカはそう言ってゲートを出す。
シニカがゲートを出す時間は約1分。
ジョージ「流石シニカ、ゲート出すのも早いんだね。」
シニカ「ダブル・ホールでも1分でゲート出せる人は中々いないよー。」
支部に行くと、ムラモトが倒れていた。
タムラ、ムラサキ、カミオの相手を立て続けにして力尽きたようだ。
タムラ「鬼気迫るって感じでした。」
「今回の戦いで不甲斐なかったからと言って・・・。」
シニカ「そう言えば、タムラちゃんとキムラくん?」
「この二人もブラックチャレンジしたら良いんじゃないー?」
ジョージ「俺は良いけど、やる?」
タムラ「嫌な予感がしますが、何ですか?それ。」
シニカ「非戦闘員向けの特訓だよ。」
タムラ「今回で不甲斐ないと感じたのは私も一緒です。」
「恐いですけど、お願いします。」
シニカ「次回はマイ・メイVSタマコ、タムラVSブラックで言ってみよーか。」
ムラモト「それには俺も参加出来るのか?」
いつの間にかムラモトが目を覚ましていた。
ジョージ「大丈夫ですか?」
ムラモト「ああ、ムラサキに腕も治して貰って全快だ。」
シニカ「今のムラモトくんの腕は霧なの。」
「沢山食べて腕が元通りになるまで召喚はダメだよ。」
「日常生活なら問題ないけど、過度な使用も良くないよー。」
ムラモト「そうなのか。了解した。」
「ジョージ、今回は全然役に立てなくて悪かったな。」
ジョージ「運が悪かっただけで、ムラモトさんの力不足のせいじゃなかったと思いますよ。」
ムラモト「正直そうは思えないが、まぁ、引き摺らずに精進するさ。」
シニカ「あ、そー言えば、第二隊に強い能力者が集まるのは、メイカーのせいもあるかも。」
ムラモト「メイカー?何だそれは?」
俺も初耳だ。
シニカ「メイカーってのは、霧を固めて特殊道具を作るメイクが使える能力者。」
「第二隊の支部にメイカーがいるよ。知らなかったの?」
俺は勿論、隊長のヤマトも全く聞いたことがなかった。
本部に戻ってマイとメイに聞いても全く知らないようだ。
メイクは超絶レア能力で、「軌跡読み」が出来る者を呼び寄せることがあるらしい。
気になるので、俺たちは第二隊に行くことにした。
第二隊は第三隊と同じく病院の地下にある。
レイジの一件で出た大量の怪我人は第三隊の病院には入りきらず、第二隊の病院にも送られた。
第二隊にはカンナの妹のレイナも入院しているので、ムラサキも一緒に行くことになった。
第二隊では、元隊長のミズノが後片付けをしていた。
ミズノに事情を話すが、メイカーについては何も知らないようだ。
シニカ「いる場所は解るから、とりあえず行ってみる?」
シニカについていくと、そこは病院の四階。
レイナのいる病室だ。
シニカ「彼女がメイカーだよ。今何か作ってる。」
メイカーはレイナだった。
そう言えば、レイジの被害者の中にレア能力者がいるとマイが言っていた。
レイナは霧の能力が使えないと聞いていたので、完全に意識の外だった。
レイナはあれからまだ一度も目覚めていない。
だが、注意して見ると何となく不思議な感じがする。




