34 タムラの我召喚
タムラはいつも不満だった。
ゲートが重要なのは解る。
だが、仲間がすぐ側で命懸けの戦いをしているのをただ見ているのは苦痛だった。
社交性が低いタムラにとって、ムラモトは気兼ねなく会話が出来る数少ない仲間だった。
そのムラモトの死体の傍で、自分とソエンキに対する怒りが溢れてくる。
何かしなければいけない。
何かしたい。
何ができる?
即戦力になる方法、我召喚くらいか。
試したことはない。
しかし、レベルは十分なハズ。
問題は才能か。
恐る恐る、タムラは我召喚をやってみる。
タムラ「出来た。」
球体に細くて長い手足が生えた不思議な生き物が出てきた。
我召喚、成功。
名前はタマコ。
能力は、炎・氷・風・電気を操る。
ファンタジーの魔法使いって感じの能力だ。
今必要なのは風、か。
タマコは、ブラックより安定した強い風を起こしてソエンキの空気を飛ばす。
これでブラックはフリーになった。
こうなってくるとタムラとタマコも狙われるようになる。
ハルカにも残り2割を使い切って貰おうか。
ヤマト【陣形変更。ハルカに強化された自分が一人で我召喚の相手をする!】
【ミズノ、ジョージ、ブラックで本体を叩け。後衛三人はジョージのクレイゴーレムでガード!】
ナイス、ヤマト。
俺の考えと一緒だ。
強化ヤマトは長くは持たない。
長く見積もっても5分ってとこか。
その間にこっちを決めないといけない。
ミズノの攻撃は拳による通常攻撃、氷を纏う強化攻撃、氷柱を伸ばす中距離攻撃を使い分けている。
ヤマトには劣るが流石隊長、かなり洗練された動きだ。
ソエンキ本体は、我召喚と同じような攻撃しかしていない。
強さも、我召喚と同じような感じか?
ブラックが加勢してからはこちらがかなり優勢だ。
しかし、ソエンキ本体は基本的な防御力がかなり高い。
こちらの攻撃がヒットしても、かすり傷程度だ。
ジョージ【ミズノさん。そこで集中して最大攻撃の準備をお願いします。】
タムラ【タマコも頑張るよー。】
ミズノ【了解。】
俺とブラックが激しく攻撃し、こちらに注目させる。
俺のブラックジャック、ブラックの爪攻撃、タマコの氷と電気。
スタミナを考えず、全力で攻撃を入れる。
そしてバランスを崩したソエンキにブラックの衝撃波。
タマコは全体向けの風を止めて角度調整。
集中力を高めたミズノの氷柱纏いの正拳突きが、ソエンキの心臓を貫く。
先の失敗があるから、今回は誰も気を抜かずに状況を注視する。
本体の方は沈黙。
我召喚の方は暫く猛攻撃をした後、ため息をつき、霧散した。
何とか勝てた、のか。
珍しく俺も傷だらけだ。
今回は流石に少し入院かな。
安堵し、こんなこと考えていると・・・。
シニカ「どーもー。シニカちゃんだよー☆」
戦場のど真ん中から、突然変な女の子が現れた。
日本語を話しているが、日本人ではない。
いや、地球人ではないだろう。
ソエンキの仲間か?
ウソだろ、まだ戦いが終わらないのか。
シニカ「あたしは悪い宇宙人じゃないよ。」
シニカがそう言うと、何もない場所からムラモトが出てきた。
先ほど確実に最後を看取ったはずのムラモトは、片腕は失っているが息をしている。
ちょっと状況が飲み込めない。
だが、この宇宙人と今戦う必要がないことは解った。
今はもう、それだけ解れば良い。
安心した俺、いやタムラ以外の全員がその場に倒れこんだ。
目が覚めると、病院ではなく本部にいた。
隣でミズノとヤマトが寝てる。
ここは本部の仮眠室か。
時計を見ると、3時間ほど寝ていたようだ。
既に心身ともに万全に近い。
ミズノとヤマトの傷も、既に塞がりかけている。
飽和の人間はもう病院で怪我の治療をする必要はないみたいだ。
部屋を出て大部屋に行くと、タムラがいた。
タムラ「もう大丈夫なんですか?」
ジョージ「殆ど完治しています。」
「二人ももう少ししたら目覚めると思います。」
「それで、ムラモトさんって助かったんですか?」
タムラ「ムラモトさんの死は、あのシニカって子がつくった幻術だったみたいです。」
「実際は、あの一撃を受けた直後にシニカさんが助けてくれて、一命を取り留めたみたいです。」
「腕は、ムラサキの召喚治療で戻りましたし、一応、完治する予定です。」
ジョージ「シニカって子はどういう人?なんですかね。」
タムラ「平和に暮らしたい戦争孤児らしいです。」
「メロ大学でジョージさん達を見つけて、出てくるタイミングを見計らっていたみたいです。」
あのときの「一人か二人」ってシニカのことだったのか?
何となくだけど、マギドワやソエンキと比べても「遥か格上」って感じがする。
敵じゃなくて良かったけど、どういう存在なのだろう?
タムラ「そういえば、今シニカさんは管理室でマイさんとお話をしています。」
「ジョージさんが目覚めたら、管理室に来るようにと言ってましたよ。」
早速、宇宙人との初対話か。
楽しみだな。




