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03 高校生をストーキング

意識を集中してみるとミストの感覚はすぐ掴めた。

既に能力を使っているからだろう。

これは「M(ミスティ)H(ホール)」から出ていた(ミスト)なのだろう。


心臓付近に大きな塊があって、そこから一部を取り出して体内で動かすことが出来る。

体外にそのまま出すと霧散する。

「命令」を与えて指先から出すことで「ニョロ」になるようだ。


指先以外でも「命令」は出来るが精度はガタ落ちする。

身体の何処かにミストを集めて留めると、力が強くなるようだ。


これがアカネの能力の仕組みだろう。

普段よりかなり力が増したのは確かだが、アカネが折った鉄の箸は折れる気がしない。


あの宇宙人が「怪力」と「ニョロ」を使っていたことは間違いない。

つまり、1人1能力といったたぐいのものではないということ。


多分、俺は怪力の才能はあまりない。

火を出しても、上手く扱えずに火傷するだろう。

しかし、彼女らは俺ほど自在に「ニョロ」を操れないだろう。

個々に得意な能力と苦手な能力がある感じか。


さて、では三姉弟との出会い方を考えようか。

最初に接触するのは誰が良いか。


コトネが一番無難だと思う。

お互いに意図をすぐ理解し合えるからだ。

ただ、主導権を握られる可能性が高い。


カネトは無い。

発言力のないヤツを懐柔しても意味がないからだ。


アカネに恩を売る形で遭遇するのがベストか。

能力に目覚めたばかりの高校生、何か迂闊なことをしてくれるだろう。


明日は朝からアカネの観察で忙しくなる、十分に睡眠を取るべきだ。

1時間だけ能力開発をして、「ニョロ」でつくった服を着て寝よう。


今日は「ニョロ」で空を飛んでみた。

正確には透明な「ニョロ」の上に乗っているだけだが。

確実に昨日の立方体以上体積を出せている。

着実にレベルアップしているようだ。


次の日の朝。

「ニョロ」の服はおおよそ残っている。

ただ、細部に劣化が見られる。

熟睡中は接触していても僅かに霧散が起きるのは仕様か。

それとも俺のレベル不足故か。


「ニョロ」の服を普段着にして、アカネの家の近くのコンビニで彼女の登校を待つ。

家の中の会話や着替えに興味はあるが、コトネの能力がよく解らないので、これ以上家に侵入するのは危険な気がした。

そもそも、この状態がほぼ変質者、いや変質者である。


既に色んな人の家に「ニョロ」を侵入させている時点で、完全に犯罪者であることに今更気付く。

コトネみたいな未知の能力者もいるし、不法侵入は止めよう。いや、控えめにしよう。


家を出たアカネを「ニョロ」を使って尾行する。

昨日学年を確認すれば良かった。


待てよ、高校の中で能力者がアカネだけってことはないだろう。

高校に侵入すれば、「ニョロ」に気付くヤツが現れる可能性がある。

ただ、普通の高校生を装いつつ、俺に気付かれずに「ニョロ」を辿って俺の場所まで到達するのは難しいだろう。

「誰かが何かの能力を使ってる」くらいなら別に良いだろう。


適度に警戒しつつ「ニョロ」は高校に侵入する。

途中で気付いたが、ミストを脳に集めると情報処理能力が上がるようだ。

これを用いれば、感覚器官が増やせる。


とりあえず、アカネの姿と声が聞こえるように「ニョロ」を配置。

そして、校内の「ニョロ」も違和感に気付けるように神経を分散して配置した。


フワ・アカネ

メロ高校2年1組

陸上部で種目は短距離走

身長158cm、体重44kg(自称)

明るくて活発な子。

天然系で成績は並。

得意教科は社会、苦手強化は理科。

恋愛には興味がないようだ。

部活も勉強もそこそこでフワッと生きている感じ。


これじゃ完全にストーカーだ、今バレたら汚物扱いされる・・・。

などと思っていたら、何か変なヤツが学校に侵入してきた。


ソイツは私服だからか、高校生よりは大人っぽく見える。

派手なシャツ着たガラの悪そうなヤツだ。

教師が一人、ソイツに話しかけた。

するとソイツは何かを飛ばして、その教師の胴体を真っ二つに切断した。


コイツも能力が使えるのか。

ミストを鋭利な刃にして飛ばしているのだろう。

殺傷能力が半端ないな。

殺人鬼か?宇宙人じゃないよな。


こんな輩にアカネが殺されるかもしれないと考えると面白くない。

直接会ったことも話したこともない赤の他人なのに、妙な気分だ。


俺の能力は非常に便利だと思うが、戦う能力じゃない。

こんなバトルタイプに立ち向かっても、一方的に殺されるだけだ。

アカネと関係ない所で対処されることを願いつつ、観察を続ける。


しかし、よりによってソイツは、アカネのいる三階に上がっていった。

目撃者は全て瞬殺しているからか、まだ騒ぎになっていない。

ソイツは、ボソボソと「ミカ、ミカ」と喋っている。


アカネの隣の席で仲良くしてた子の名前がミカだったような、まさかな。

何故だろう、酷く動揺している。

気付いたら俺は高校の校門の傍まで来ていた。


アカネのいる教室に入り、授業中の教師を斬り殺し「ミカー!!」と叫んだ。

生徒たちは逃げようとするが、出口のドアが開かないようだ。

鋭利な刃の他にも能力があるのか。


ソイツがミカを掴もうとしたら、アカネがソイツに殴りかかった。

「怪力」で当たれば倒せたかもしれないが、避けられた。

ミカを静かにさせるためか、アカネは殺されず腕だけ斬られた。

形容し難いアカネの悲鳴が学校中に響き渡る。


俺は全ての「ニョロ」を回収し、極めて軽い「ニョロ」の上に乗って飛んだ。

必死に考えて、一つの作戦を思いついた。

やったことのないことを幾つもしないと成立しない作戦。


俺は空いた窓から教室に飛び込んだ。

生まれて初めての命がけの戦いが始まる。

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