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02 能力の目覚め

便宜上「ニョロ」と名付けた「それ」は、俺の意思で自在に動かせるようだ。

好きな形や色にすることが出来、引っ込めることも出来る。

最初は右手人差し指から出したが、全ての指から出せるようだ。

しかし、指先以外からは出せないみたいだ。

色々と実験してみよう。


・「ニョロ」は硬くしたり柔らかくしたりできる。

・「ニョロ」は身体から離すと霧散する。

・「ニョロ」は指からしか出せないが、指でなくても体の何処かに触れていれば霧散しない。

・「ニョロ」を限界まで立方体で出してみたら、1辺2m、体積8㎥になった。

・それは柔らかく、目一杯硬くしたら縮んで1辺が半分になった。

・それを身体に戻したらまた出せたが、身体から離して霧散させたらもう出せなくなった。


もう出せなくなった・・・。

ヤバいな、能力消失じゃないよな・・・。

時間経過で回復する、MP切れ的なヤツだよな、きっと。

等と考えているともう朝だった。

完徹、何年ぶりだろう。


気が乗らないし、多分意味もないが会社に行こう。

ウチの会社は保険代理店。

保険ってのは、世の中が平常運転だから成り立つお仕事。

これから起きる激動を生き残れはしないだろう。

だからと言って、今日退職願を出す勇気はない。


「夜更かししてゲームか?」とかの嫌味を躱しつつ、そそくさと自分の席に着く。

毎日変わらない仕事は勝手に動く身体に任せて、頭では「ニョロ」のことを色々と考えた。


「ニョロ」の扱いに慣れれば、身の回りの持ち物や服はつくれるようになると思う。

あの宇宙人の持ち物は、この能力で作ったものだったのだろう。


眠気が限界に近づいたころ、昼休みがきた。

コンビニおにぎりを頬張りながら、「ニョロ」の確認。

よし、出せた。

やっぱり時間経過で回復するヤツだ。


俺は車の中で「ニョロ」を出して、透明にして駐車場内で動かしていた。

車が通る場所で透明は良くないな、暫くすると車が通って砕けてしまった。


「痛っ」と思ったが、当然別に痛くはない。

また消費してしまったが仕方ない。


さて、寝るか。

・・・待てよ。

「ニョロ」が轢かれても痛くなかった。

痛くは出来るんだろうか。


つまりは「ニョロ」に神経を繋ぐことは可能なのか。

「視覚」や「聴覚」が繋がったら色々と悪さが出来るな。

・・・ダメだ、もう限界だ、今度こそ寝よう。


午後は早く帰るために仕事に集中。

色々とやりたいことが多いので、明日は有給を取ることにした。

金土日の三連休でどれだけ成長できるか今からワクワクが止まらない。


家に帰って早速何時間か実験してみた。

結論から言うと、「ニョロ」に神経を繋ぐことは可能だ。

しかし、複数の場所のものを同時に見たり聞いたりするのはキツイ。


所詮、目と耳が二つずつの生き物なので、頭がパンクしそうになる。

また、ピントを手動で合わせるのも結構難しい。

訓練と好奇心と欲望のために、目を瞑って耳栓して、透明な「ニョロ」で周囲を探索させることにした。


神経を繋いだ「ニョロ」の動きは非常に鈍い。

「ニョロ」を車に轢かれても切れたりしない形状にすることはできたが、中で神経は切れてしまう。

神経を繋ぎ直すのに時間がかかる。


他人の家に入るのは容易だ。

ただ、神経はかなりデリケートで、何が原因か解らないが何度も切れてしまった。


色んな家に侵入していたら、他の「能力者」を見つけた。

近所の三姉弟がベランダで話をしている。

長女のフワ・コトネが指から火を出しながら喋っている。


長女は確か高偏差値のトウ大学の二年生だったかな。

彼女が次女のアカネ、末っ子のカネトに能力指導をしているようだ。


コトネ「どう?体の中にあるミストの感覚は解った?」

カネト「うん。何となく心臓辺りに不思議な感覚があるのは解った。」


アカネ「わたしは今日一日で結構解ってきたよ。」

「わたしの能力は超パワー。」

そう言ってアカネは、鉄の箸(100均)を指で軽く折ってみせた。


コトネ「それも指先から何か出してそうなるの?」

アカネ「違うよ。ミストを力を出したい場所に集めるの。」

ミストを感じたとき、何だかそうした方が良い気がしたの。」


カネト「・・・ボクにはそういうの無い。才能ないのかな。」

コトネ「どうだろうね。まだそう決めるのは早いと思うよ。」

「それよりアカネ、それ他の人に気付かれないように気を付けてね。」


アカネ「それって何で?父さんと母さんくらいには言っても良いんじゃない?」

コトネ「言うのはいつでもできる。でも、言ったら取り消せない。」

「これがどういう能力か、他の人はどうか、全然解らないうちに知られるのはリスクなの。」

「父さんと母さんに言ったら、病院に行こうとか言い出すかもしれないでしょ?」

「能力に目覚める前の大人は、火を吹く娘と怪力娘と一緒に暮らしたくないと思うよ。」


カネト「よく解らないけど、コト姉ちゃんが言うならそうする。」

アカネ「そうだよね・・・。普通の人からしたらウチら化け物だよね。」


コトネ「今はね。でも、多分、世界中で沢山の人が能力に目覚めてるはず。」

「隠さなきゃいけない時間はそんなに長くないと思うよ。」

「じゃあ今日はそろそろ解散しよっか。」


中々有益な情報が得られた。

体内のミストか。

こういうのを理解するのは能力向上に必要だろう。

秘密の共有が出来るなら、彼女らと接触するのも選択肢か。

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