17 最終決戦②
ムラサキは警察官だった。
子供の頃に自分の命を救ってくれた女性警官に憧れ、自分も市民を守る女性になりたいと思って警察の道を選んだ。
結局、警察官時代はそういう場面に出くわさなかったが、能力を得て「MM」に入り、目標に大きく近づけたと思った。
今回の戦いでも、レイジを倒すことよりカンナやコトネを守ることに重点を置いていた。
それなのに、一瞬の気の緩みで守るべき二人がやられてしまった。
ムラサキは心が折れ、その場に座り込んでしまう。
コトネ「ムラサキさん!」
まだ命令を受けていないコトネはそう叫び、ハッとしたムラサキは虫を防ぐ。
しかし、もう戦う気力がない。
手に力が入らない。
レイジ「コトネ!俺の為に動け。俺の邪魔をするな。」
レイジの命令が入る。
賢いコトネは、もうレイジが不利になることは何一つ出来ないだろう。
レイジ「コトネ!今から虫を飛ばす。ムラサキに回避させるな。」
そう言ってレイジは少し遅い虫を飛ばす。
ムラサキはガードするが、コトネは虫を掴みムラサキの頭に突き付ける。
レイジ「良いぞぉ!コトネェ!」
そう言って、レイジは高笑いをする。
コトネ組、完全敗北。
再びジョージ組
その様子を、ジョージは「ニョロ」で見ていた。
ジョージは階段を急いで登りながら、コトネ達の様子を見ていた。
何となくコトネがいれば大丈夫と思っていた俺は、大きく動揺する。
俺がレイジなら、コトネとムラサキに味方のフリをさせて不意打ちを狙う。
騙されているフリをして、コトネとムラサキを一瞬で気絶させられれば一番良い。
だが、そんなに上手くいくだろうか?
操られたコトネと戦いたくない。
コトネは強い。
戦いになってしまえば、手加減は難しい。
どうしよう、このことをアカネとムラモトに言うべきか?
言ったら特にアカネは動揺してヤバいんじゃないか?
アカネ「ジョージどうしたの?凄い顔してるよ。」
そうだよな、これだけ動揺してたら気付かれて当然だ。
言うしか、ないだろう。
ジョージ「レイジと戦っていたコトネ達が負けた。」
「カンナは死んで、コトネとムラサキさんは操作された。」
言葉にした瞬間、俺は走り続けることが出来なくなり、その場にへたり込んだ。
言葉にして実感が湧いた、というのはある。
でも、それ以上にコトネとの戦いを想像して気分が悪くなってしまった。
「俺がこの手でコトネを殺してしまったら」と考えるだけで吐きそうになった。
こんな状態で騙されているフリなんて出来そうにない。
アカネ「どうしたの?急いで助けに行かないと!!」
解ってる。何れにしても助けに行くしか選択肢はない。
でも、少しでも良い方法を考えないと。
最善手を、最善手・・・、最善手・・・、最善手・・・。
アカネ「急がないと、逃げられちゃうかも。そしたらお姉ちゃんが・・・。」
そう言って、アカネは俺を叩く。
ムラモト「あなたは、コトネさんと殺し合いをする覚悟がありますか?」
アカネ「・・・、・・・。無い・・・です。」
ムラモト「恐らくジョージさんもそうでしょう。ですが、やるしかない。」
「今はその覚悟を得るための葛藤の最中なのでしょう。」
「それと同時に、少しでもコトネさんが助かる確率が高い作戦も考えている。」
アカネ「ジョージは、レイジと対峙したときのことだけ考えて。」
「わたしは戦えないから、ジョージを上まで運ぶ。」
そう言って、アカネは俺を背負う。
アカネ「ムラモトさんは大丈夫?」
ムラモト「私はコトネさんとは初対面ですし、人を殺した経験もありますので。」
アカネはゾクッとしたが、気にせず上を目指す。
ヤマト組
危なげなく勝利を収めた彼らも、再び12階を目指す。
ヤマトは霧の消費が激しく、カネトは生傷が多い。
しかし、雑兵だらけの自分達が一番楽だったと感じるため、少しでも役に立つべく先を急ぐ。
カネトは初めての実戦で、今まで経験したことのない高揚を感じている。
生傷が目に見える速度で治っていく。
コトネ組
レイジは、コトネに自分の能力とジョージ達の能力を説明をさせていた。
レイジ「ジョージとヤマト。コイツらは正面切って戦いたくないな。」
「勝ち目がなさそうなら逃げようかな、コトネはどう思う?」
コトネ「ヤマトは情報が少ないので解りません。」
「しかし、ジョージは私とアカネを使って上手に揺さぶれば、倒すのは難しくないと思います。」
レイジ「やっぱりコトネちゃんは最高だねー。聡明で可愛くて。」
「今まで女も何十人か操作したけど、みんなバカとビッチばっかりで嫌になるよ。」
「他の女共は、男共同様に使い捨てだったけど、お前は特別だ。」
「俺が支配する世界で、俺の隣にいて欲しい。」
レイジ「おいコラ、ムラサキ。お前の意見も聞いてやるよ。」
ムラサキ「まず、逃げるという選択肢は賢明ではないと思います。」
「機動力に大きな差があるので、後ろから刺される公算が大きいです。」
「凡そ五分五分の戦いだと思いますが、それに賭けるしか手はないかと。」
レイジ「ムラサキも悪くねーな。」
「この場を乗り切れたら、楽しみだぜ。」
レイジはそう言って、邪悪に笑う。