16 最終決戦①
レイジ「カンナ、てめえだけは絶対にぶっ殺してやるからな。」
「妹共々、地獄に落ちやがれ!!クズが!」
カンナ「はぁぁ?あたしが何したってのよ。恨みがあるのはゴウタとリュージだけじゃないの?」
レイジ「お前が俺のことを・・・、気持ち悪いって言ったことが全ての始まりなんだよ。」
「それで、当時の彼氏のゴウタが俺に絡んできて・・・。」
カンナ「あんたがあたしのことジロジロ見てるから気持ち悪りーって言ったんだよ。」
レイジ「ジロジロなんて見てねーよ。・・・露出高い服着てるから何度かチラっと見ただけだ。」
カンナ「それが気持ち悪いって言ってんの!」
深い溜息をついてコトネが話に割って入る。
コトネ「レイジさんのその気持ちは解ります。」
「ヤンキーと言われる人たちは、奇抜な服装をしておいて、少し見ただけで異様に絡んできますよね。」
「目立つんだから、少しくらい目が行くのは自然なことだと思うんです。」
「それなのに少し見ただけで、鬼の首を取ったような顔で絡んでくるのは本当に煩わしい。」
「必死に見ないようにするこっちの苦悩を理解して欲しいものです。」
レイジとカンナは静かになる。
彼女もきっと嫌な過去があったのだろう。
コトネ「とは言え、それでカンナさんだけに何かするのなら別に構いません。」
「でも、妹さんやその他無関係な人を巻き込むのは容認出来ませんよ。」
レイジ「お前の言うことは解る。多分、それが正しいんだよな。」
「でもな、もうこの衝動は止められないんだよ!」
レイジは臨戦態勢に入り、大男が向かってくる。
コトネ【レイナさんを庇いながら二人に攻撃しようとすると、其方に殆ど意識を持っていかれます。】
【私の身体の防御が手薄になってしまうので、お二人でガードをお願いします。】
コトネのテレパシーにムラサキとカンナは静かに頷く。
レイジ「カミオは俺の仲間の中でも断トツで最強だ。」
「お前らの方が一人多いからって有利だと思ってんじゃねーぞ!」
カミオは身体に水を纏って強化した身体で攻撃を繰り出す。
この水が霧でつくったものなら、水でも何でも燃やせば霧を消費する。
そう考えて水に炎を当てて解った。
この水は実際の水だ。
カミオの能力は水状の霧を出す能力ではなく、水を操る能力。
それプラス、アカネ並みの身体強化。
水を緻密に操り、鞭の攻撃もブラックジャックも威力が殺されダメージを与えられない。
勿論、コトネの炎も効果が無い。
最悪の相性、此方に有効な攻撃手段が無い。
攻撃の合間に飛んでくる虫も全て避けないといけない。
コトネは度々レイジに攻撃を試みるが、レイナを盾にされて小さな火傷を負わせるのが精々だ。
しかし、レイジを攻撃しないと飛んでくる虫の量がもっと増えるだろう。
だから、放置も出来ない。
考えることが多過ぎてコトネは頭が痛くなる。
状況を処理するのに精一杯で新たな策を練る余裕が無い。
ムラサキもカンナも、カミオの攻撃が何度かヒットしておりダメージが蓄積されている。
コトネは脳の強化を試みる。
既にかなりの霧を消費しているコトネにとって、これは苦肉の策だ。
カミオの水を操る能力は、コトネの能力と同質だ。
カミオの操作下の水の主導権を得るには、多くの霧を消費するが理論上可能だ。
コトネ【私の能力で一瞬だけ水の防御に穴を空けることが出来ます。】
【恐らく二度は無理なので、その隙にムラサキさんの強烈なブラックジャックの一撃をお願いします。】
ムラサキ【OK。】
ムラサキも二度のテレパシーを受けて簡単なテレパシーは使えるようになったようだ。
カンナは聞き専で状況を整えることに専念する。
三人で連携して、ベストなタイミングでカミオの太股にブラックジャックの一撃を当てることが出来た。
カミオの強さは精密な能力操作があってこそ。
痛みで集中力を欠いたカミオはもうリタイヤと判断して良い。
残るはレイジだけ。
「勝った。」
そう考えて三人の気が緩んだ瞬間。
レイナの指から伸びた刃がカンナの腹部を貫き、コトネはレイジの虫の直撃を受けてしまう。
レイジは最初からカミオがやられる瞬間を狙っていたのだ。
レイジはさっきまで、ワザと虫を少しだけゆっくり飛ばしていた。
レイナだと思っていた女性は、幻を纏う能力者だったのだ。
カンナ「あたしが死ぬのは自業自得かもね。きっと調子に乗って無意識に色んな人を傷つけてきたと思う。」
「でも、妹は、レイナは本当に良い子だから、何とか助けてください。お願いします。」
カンナは血を吐きながら、そう懇願する。
もう彼女は助からないだろう。
その場の全員がそう確信する。
レイジ「あんな無能力者いつまでも生かしとく訳ないだろ。」
「とっくに遊び倒して殺しちまったよ。」
レイジはやり遂げた顔でそう宣言する。
カンナは涙を流し、絶望した表情で事切れた。