14 ヤマト組 / ジョージ組
ヤマトは主に岩を纏って戦うが、遠距離攻撃が出来ない訳ではない。
攻撃の角度から、攻撃する者を迎撃するのは不可能ではない。
しかし、ヤマトの遠距離攻撃は燃費が悪いので、人数不明の雑兵を倒すのに使っていたら、敵を倒しきる前に霧切れになる可能性が高い。
敵が操作された者でなければ、数人を倒せば逃走する可能性もあるが、今回は期待できない。
勝ち筋は何とか幻術士を見つけ、遠距離攻撃の一撃で倒すことだけだろう。
幻術による攻撃は完全に不可視ではない。
動くものは注意してみれば判別できる。
幻術士は定点で透明になっているだろう。
ヤマトは全ての動きから、幻術士の大凡の居場所を割り出した。
ヤマトは、カネトに幻術士のいる方向に移動するように頼んだ。
幻術士は予想通り移動して止まった。
また見えなくなるが、場所は解った。
ヤマトはそこに向かって左手から出した岩のヤリで攻撃する。
だが、その岩のヤリは見えない壁に防がれる。
幻術士は幻術の他に硬い壁を出す能力も有していたのだ。
しかし、そのまま突進したヤマトの岩を纏った右拳が幻術士を攻撃する。
ヒョウドウ「何・・・故・・・?」
ヤマト「自分は遠距離攻撃は不得手と心得ている。」
「だから、一撃で倒せる自信がないから突進したまでだ。」
次の瞬間、幻術が解けて10人の雑兵が姿を現す。
十対二だが、敵の10人は入り口付近にいた連中と同レベルの雑兵。
時間はかかるが、もう二人の勝ちは揺るがないだろう。
ジョージ・アカネ・ムラモト組
ムラモト「そういえば、足の怪我がかなり酷かったと聞いているのですが、平気そうですね。」
ジョージ「霧の循環のお陰かな?完治した訳じゃないけど、殆ど気にならない。」
アカネ「カネトのヤツか、わたしもやってみよう。」
小柄な男「緊張感のない連中ですねぇ。」
大柄な男「舐めてるんでしょうか?」
小柄な女「・・・。」
ヤマトたちとは別の階の宴会場で俺たちは敵と対峙する。
大柄な男は深呼吸をして、何かモヤの様なものを纏い突進してきた。
アカネと同タイプか?
同じことを考えたアカネが攻撃を受けようと構える。
俺たちは敵陣でトラップを受けてここにいる。
正々堂々と敵の攻撃を受けてやる筋合いはないのではないか。
そう思って俺はアカネと大柄な男との間に、「ニョロ」を走らせる。
しかし、それを察知したのか大柄な男は急加速する。
コイツはアカネより格上だ。
そう感じて急いでアカネの目前にゴーレムを出そうとする。
大柄な男「棘纏い。」
大柄な男はアカネの目前でハリネズミの様に棘を纏った。
中途半端なゴーレムが幾らかの盾にはなったが、強烈なタックルと棘でアカネは大きなダメージを負う。
俺はアカネを回復させようとするが、肉体の欠損ではない負傷には大きな効果はないようだ。
同タイプに完敗したアカネは悔しくて泣きそうになっている。
俺は別にアカネが最強だなんて思ってはいない。
しかし、ここまでアカネの完全上位互換みたいな敵と遭遇するのは想定していなかった。
あの攻撃は最初からクレイゴーレムで受けて、クレイゴーレムとアカネの二対一で対処するのが正解だった。
小柄な男「フドウの突進を一人で受け止めようだなんて、あの娘バカなんじゃないの?」
「君たち程度、このままフドウ一人で十分だね。」
俺は8割の霧のクレイゴーレムでフドウの攻撃を受ける。
コイツが突破されたら俺はガス欠になる。
必死でヒモの再接続を切らさないように神経を尖らせる。
ブラックジャック攻撃を何度か入れているが、大きなダメージはないようだ。
ムラモト「僕のこと忘れてないですか?」
そうだ。もう一人仲間がいたんだっけ。
ジョージ「すいません。アカネがやられて頭に血が上ってました。」
「ムラモトさんの能力はヤリでしたっけ?」
ムラモト「正確には"刺突"を飛ばす能力です。」
「拳銃を撃つような能力ですね。」
ジョージ「じゃあ、それでアイツに攻撃をお願いします。」
ムラモト「いえ、攻撃するのは彼方の方が良いと思います。」
ムラモトはそう言って、小柄な男女の方を指差す。
何で?
・・・そうか。
あのやたら強いフドウは、三人分の能力で強化されているんじゃないか?
幾らフドウが強くても、一対三の舐めプをする意味はない。
多分、男の方が棘の鎧をつくっている。
鎧を渡した後で、特にすることが無いから余裕でお喋りをしているのだろう。
そして、フドウと女が二人掛かりでフドウを強化している。
遠隔強化は集中力を要するから無口なのだろう。
男の方を倒しても、鎧が解除されるかは解らない。
確実に弱体化させるためには、女の方を狙うべきだ。
ジョージ「そうですね。女性の方を狙ってください。」
ムラモト「冷静になったようですね。良かったです。」