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01 ミスティ・ホール出現

それなりに真面目に生きてきた。

それなりのスペックで生まれてきたと思う。

それなりの幸せが手に入ると思ってた。


サイトー・ジョージ。

1話目はテレビを見て喋るだけの主人公だ。


30歳独身・中小企業平社員・貯金ゼロ。

受験に失敗して、就職に失敗して、いつの間にかやる気をなくした。

昔は友達は少なくなかったが、いつの間にかいなくなった。

何をすれば良いか解らない休日、時々孤独で狂いそうになる。


もう何でも良いから平凡な日常を壊して欲しい。

そんな風に思いながら日常をただ消費していく。


最近、某国の戦争のニュースが世間を賑わしている。

流石に戦争で平凡が壊れるのは望まない。

ただ、静かに戦争の影響で生活が苦しくなっている。

平凡の範囲内の不幸という、いつものパターン。


そんなある日、新兵器の爆弾が空中で激突したらしい。

大陸が消し飛んでもおかしくない超爆発が起きるはずだった。

しかし、実際には爆発が起きず、その場に不思議な球体が現れただけだった。


その場に現れたブラックホールのような謎の球体。

・直径5メートルほどの漆黒の球形。

・霧状の物質を常時噴出しているが、近くにいても影響はない。

・触れても手や顔を入れても大丈夫だが、全身が入ると出てこれなくなる。

・斬ったり燃やしたりしても影響がない様だ。


これが何なのか今の時点では見当もつかない。

ただ、明らかに今までの常識の外、平凡の外。

好奇心と不安が入り混じる。

静かな平凡が壊れる音がした。


それから連日、「それ」のニュースが続いた。

戦争は休止し、世界中から報道関係、動画配信者等が集まった。

その吸引力のないブラックホールもどきは、いつしか「ミスティ・ホール」と呼ばれるようになった。

不思議ミステリアス神秘的ミスティックホール

ミストを噴出し続けるホールで、「MミスティHホール」だそうだ。


命知らずの好奇心のお陰で、更に「MミスティHホール」について色々解ってきた。

ロープを付けて「MミスティHホール」に入って、異世界を見てきたという強者が現れた。

その後、何人かが同じことを試したが、異世界を見れた人は極々一部だった。

MミスティHホール」の中に留まると急速な劣化が始まるようだ。

ロープは劣化によってすぐに切れてしまうのだ。


異世界見学は興味深いが、一瞬見るだけなのにリスクが大きすぎる。


ウーム。

物凄い不思議なものであることは間違いないが、あまり日常に影響がないかもしれない。

MミスティHホール」に飛び込めば日常は吹っ飛ぶだろうけど、一文無しで言葉も通じない世界に一人で行って何になるのか。

中には一瞬で現地人に殺されることだってあるだろう。

地球人が生きられない環境の可能性も否定出来ない。


殆ど自殺じゃないか、でも現状に絶望したヤツがワンチャン狙って行くならアリか。

地球人より劣った人達の世界で無双できる可能性もある。

逆にこう考えて、宇宙人が地球に来る可能性もあるのか。


そんなことを考えていたら、「MミスティHホール」から誰か出てきた。

人間と同じ姿だけど日本人とも外国人とも何かが違う。

長身細身で妙な目つきの男。

リアル宇宙人。


殆ど人間の容姿だからか、その場の人たちに恐怖はなく好奇心が勝ったようだ。

その場の人たちが大勢集まって、その宇宙人に話しかけたり触ったりしている。

その宇宙人がどういう宇宙人でも、地球の印象は最悪だろう。

これは暴れるんじゃないかと思ったら、案の定ソイツはキレた。


キレた宇宙人がマスコミの一人を殴って首を飛ばした。

その首は数十メートル、いや余裕で百メートル以上飛んでいった。

その細身の宇宙人はゴリラ以上の怪力か。


そこで映像はストップ。

「しばらくお待ちください」ってヤツだ。

普段なら諦めて寝るかって感じだが、今は好奇心が暴走中だ。


パソコンと個人スマホ、会社スマホの三台体制で情報を集める。

その場にいた動画配信者の中には生放送をしている人もいた。

その場で起きたことを少しでも知りたい、と俺は夢中になった。


勿論、その場で起きた全てが解った訳ではない。

しかし、何となく概要が見えた。

その宇宙人は、その場の数人を斬り殺した後、軍隊に撃ち殺された。

一発目の銃弾は見えない壁が防いだという情報もあるが、信憑性は微妙だ。

その宇宙人の死後、全ての所持品が消えて裸の宇宙人だけがその場に残った。


情報を集め終わった頃、何故か俺はこう思った。

これは「MミスティHホール」の影響だ。

同じことが俺にも出来るんじゃないか、と。


何をすれば良いか解らないけど、とりあえず指から何か出ろと念じてみた。

馬鹿馬鹿しいと思いながらも、何故か出来るという確信に近い感覚があった。

暫く頑張っていたら、「ニョロ」と指から何かヒモの様なものが出てきた。


ショボいと思うかもしれないが、これは紛れもない超能力だ。

これで平凡な日常は完全に終わった。

俺はそう確信した。

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