25話 キーとカツカレー
見つけて下さってありがとうございます。
予定通り本日分を投稿します。
第25話になります。今回はキー視点、ナレーションが第三者視点の語りにしてみました。カレーに辿り着くまでのキーの長い長い苦難の道のりを見てやって下さいまし。
パールベックには公営警察隊組織が存在する。人口一万人のパールベックにおいて日常起こりうる様々な犯罪や魔物被害を取り締まり、街の平和を守るための公的機関である。時には他国からの侵略に対して抗する為の組織でもあり、予備軍隊の位置付けにも当たる。
組織は六つの隊で構成されており、それぞれの隊はその目的や対象が異なっている。
一番隊は予備軍隊。主に帝国の侵略に対抗する為に街が備えた軍隊組織にあたる。主に街の周辺防衛にあたっている。
二番隊は街中の警らにあたる警察隊。現代社会で言うところの警察がこれにあたる。街中の犯罪の抑止や取り締まりにあたっている。
三番隊以降は扱う武具や魔法による専門性に応じて隊を分けている。例えば魔法に特化した隊、銃に特化した隊、犯罪捜査や分析に特化した隊等があり、状況に応じて一番隊と二番隊の支援に当たる。その辺の詳しい説明はまたの機会にするとして。
先に述べた二番隊隊長に就いている人物が今回の主役、キー=レジャイルである。彼女はパールベックから遠く南方の国からの移住者で、剣術に大層優れていた事から警察隊の上位者の目に留まり入隊するよう誘われたのだ。入隊試験では実技を伴う各種試験があったが彼女は受験者トップの成績で見事合格を果たしたそうだ。入隊からはメキメキと頭角を表し、僅か6年で二番隊隊長に就任した。彼女はそんな傑物なのだが…。
「ああ…おはよう…」
いつも執務開始30分前には出勤し隊員たちをハキハキした挨拶で迎えるキーであるが、今朝は何故かぼんやりした挨拶で皆を出迎えていた。おまけになにやらソワソワしており、まるで恋焦がれた少女のように窓の外を見てはため息をつく。かと思えば隊日誌を見てはすぐに顔を上げて惚け、いかんいかんと頭を振ってまた下を向くのだ。彼女の気が散漫なのは傍目から見ても明らかであった。
「今日の隊長、いつに無くおかしくね?」
「仕方ないだろ。何しろ今日はあの日だろう、ほら、例の」
隊長席に近い席の若手隊員たちが頭を寄せてキーの様子について話をする。いつもは服装から朝の挨拶まで厳しくチェックしてくるキーがこんなにも浮ついた感じなのだ、多くの隊員たちはその変容を心配してちらちらと彼女を見つめていた。
「ああ、そうだったな」
「だろ、昼のアレ」
先日自警団食堂へとキーに連れられていった事のある若手の隊員たちは事情を察しているのだ。遠目に見るキーは今もぽやーんと天井を見上げまた惚けた様子で頬杖をついている。
「はああ、ついに今日だ…しかも新作…ああ、早く食べたいものだ…」
そう、今日は金曜日、自警団食堂のメニューがキーの大好きなカレーの日なのだ。さらに彼女を狂喜させるのは以前食べたカレーとは違うカレーらしく、何やら素敵トッピングが備わっていると言う事だ。これまでタスクに無理を言って譲ってもらったカレー缶で色々な料理にカレーパウダーをちょい足しする食べ方でカレー欠乏症を凌いできたキーだったがそれも限界寸前だった。今日ついに本物のカレーに再会できるのだ。
キーはどうしてもカレーを食べたくてたまらなくなり、ある非番の日、様々なスパイスを買ってカレーを自作してみた。しかしどんなに頑張ってもタスクにご馳走されたポークカレーと同じ味が再現できなかった。その経験がキーのカレー欠乏症を加速させてしまっていた。
元々南方の国からの移住者である彼女は故郷では普段からカレーを食していた。しかし移住後は全くカレーにお目に掛かれずにいた。他のどんな高級で上等な料理であってもキーの心を満たせない。心から渇望してやまない食べ物こそカレーなのだ。懐かしいふるさとのカレーの味の記憶は強く今も胃袋と舌を揺さぶってくる。時折カレーを食べている光景を夢にまで見てしまう。それ程までにカレーは彼女の中で一等大きな存在なのだ。
この間ご馳走してもらったタスクのカレーはドンピシャと言って良いほど故郷の味に似ていた。飢えた心が、胃袋が満たされていく幸せを感じてしまったキー。あまりの嬉しさに食べさせてもらった日は腹がはち切れそうになるまで食し、更には持ち帰りでその晩と翌朝もカレーで過ごしたくらいである。朝に最後のカレーを食べ終えた時、カレーとの別れにほろりと涙したくらい寂しくて堪らなくなったキーであった。
タスクにカレーをご馳走されてから二月ほど経った。
前々から開店に向けて協力していた自警団食堂は紆余曲折を経てついに開店に漕ぎ着けた。キーは知っている、店主に当たるタスクの飯はカレーでなくとも相当に美味い。前回、前々回の豚生姜焼き定食や親子丼もとんでもなく美味かった。しかしキーにとってはその美味い飯もカレーの前には前座に過ぎない。待っていた、キーはずっと待っていたのだ。
すんなり店の開店許可が通るようにキーは議会議員や街役場の元へ通った。彼らから鬱陶しがられようが何度も声かけ、速やかな開店に向けて働きかけを繰り返してきたかいがあるというものだ。公私混同万歳、こんな時こそ警察隊の隊長の権力を使って何が悪い、キーは胃袋の声に従って突き進み、今日このカレーの日にたどり着いたのだ。
「せめて開店前に外の様子だけでも見てまわっておくか」
キーは街の巡回のついでに自警団事務所を覗きに出かけた。街の巡回は二番隊の隊員たちで午前と午後の二回行われる。いつもキーは警察隊事務所のある東から一番遠い西側への巡回を好んで行っている。なるだけ負担の重い巡回コースを進んで引き受けているのだが、最近は食堂が気になってすっかりキーの専用コースにしてしまっていた。
事情を知る若手隊員がキーに声をかける。
「隊長、今日は午後から非番ですね、楽しんできてくださいね」
「ああ!前々からとても楽しみにしているのだ、本当なら今すぐにでも食堂に飛び込んでしまいたい…」
今はちょうど自警団の事務所前だ。食堂の出入り口が見える。
鼻の効くキーは食堂外に仄かに漂う香辛料の匂いを感じ取った。これは間違いなくカレーの香りだろう。キーは頭の先から足の先までカレースパイスの芳香でびりびり身震いさせられそうになる。そんな様子のキーを見て若手隊員は思わず声を上げた。
「ちょ、ちょっと隊長っ、顔やばいですよっ?!」
「だ、大丈夫だ、カレーの匂いのひと嗅ぎくらいで理性が飛ぶなど隊長としてあるまじきことだ、くうう、たまらんな!必ず後でくるからな!」
涎がだらだら目は血走り薄笑い…知らない人が見たら何かキメてるんじゃないかと思われそうな表情のキーは後ろ髪を引かれる思いで自警団前を通り過ぎた。彼女は何度も何度も振り返ってはカレーの香りを深く吸い込んで咀嚼していた…。
そんなこんなで午前の執務、巡回を終えて早退と相なったキー。私服に着替えた彼女は隊の皆から生暖かく見送られて警察隊事務所のエントランスを抜けていく。
ああ非番って素晴らしげ、私は今こそ胃袋の下僕、食欲の権化となろう。キーは店に一番客として突撃しようと考えていたのだ。
さあ軽やかにスキップで向かおうではないか!
駆け足ポーズをとったキー。
すると…。
目の前に大風呂敷を担ぎ頼りなさげに進む老婦人を見つけた。右にヨタヨタ、左によろよろ、今にも転びそうで危なっかしい。これはいけない、助けねば。キーは老婦人に声をかける。
「ご婦人、大丈夫ですか?」
「あっ、これはすんませんなあ。大事ないさかいに、おっとととと…」
キーはご婦人の大荷物を軽々と背負うとショルダーバッグから警察手帳を取り出してみせた。
「今は私服ですが私は警察隊員でキーと申します。よろしければお送りしましょう」
「おーきんなあ、警察のキーはんやね。ほしたらお願いしようかしら」
ご婦人の話を聞くと西側地区の外周にある娘の家までこの荷物を届けに行きたいとのことだ。キーはエスコートしてご婦人をその家まで送ることにした。
「キーはん、私服ですやろ、非番の日やろに申し訳ないねえ」
「なんの、これも警察の勤め。なんでしたらおんぶもしましょう。足元が大変そうでしたよ」
本当におんぶまでしてご婦人を家まで送ると、お礼にお茶でもと引き止められそうになった。キーは丁重にお断りしてその場を立ち去った。時刻は11時半を過ぎていた。
「一番乗りは出来なくなったが仕方あるまい。これも警察の勤め!むしろ腹が一層空いてよいスパイスとなるだろう。幸い食堂は近い、好都合だ」
気を取り直したキーは汗を拭いショルダーバッグを肩にかけ直した。さあカレーは目の前だ。
しかし。
前方にわんわん泣く女の子を見つけた。4、5歳くらいだろうか、ママ、ママと喚きながら道の真ん中をうろうろしているではないか。キーは唖然とした。道の右を見て左を見てみるが母親らしい人間はいない。
キーは考える。今この子を助けたら確実に昼飯タイムに乗り遅れるだろう。しかし見つけてしまったからには放置するわけにはいかない。ともかく子供を見捨てられないキーは決心する。
「ここでこの迷子を見捨てては警察隊二番隊隊長の名折れ。カレーよ、しばし私を待て!」
キーは迷子を保護することにした。
「お嬢ちゃんどうしたの、お母さんがいないのかな?」
「えっえっ、えっ…お買い物に来てママが居なくなっちゃったの、どこにも居ないの…」
見事なまでにテンプレート通りの迷子である。ここは露店街だ、もしかしたらまだ近くに母親がいて探してるかも知れない。
「わかった、お嬢ちゃん。私は警察隊員なんだ、安心したまえ、すぐにママを見つけてあげるからな」
「ぐすん、うんっ…」
キーは迷子を肩車すると露店街に向けて歩き出した。人混みの中を掻き分けながらキーは女の子を出来るだけ高く上げて周囲を見えるようにしてやる。
「よっと。どうだ、ママはいるかい?」
「ママー!ママー!いないよ…」
「わかった。次行こう、だれかーこの子は迷子なんだ、探してる人はいないか?知らないかー?」
キーは露店街を端から端まで二度往復してみたが、残念ながら母親は見つからなかった。今はちょうど昼飯時だ。何かの料理の香り、堪らなくいい匂いが鼻をくすぐってくる。思い出すのはカレーの芳しくもスパイシーな香り。キーよ負けるな、私にはカレーが待っている。何より子供だって寂しくて腹を空かせているだろう。負けられない!キーはカレーへの思いを支えに奮い立つのだった。
「お嬢ちゃん、ママの行きそうな店とか知らないか?今度はその辺を重点的に回ってみよう」
女の子が言うには野菜の専門店が母親とよく行く店らしい。二店舗程の大きさの広くて大きな露店だ。キーは女の子を伴い店先へと進んでいくと…。
「あ!ママ!」
「何!いたか、ママいたのか?」
「うんっ!」
露店の店先では慌てた顔の女性が店の人と何やら話をしている。子供の声に気づいたのか、彼女はわっと子供に駆け寄り抱きしめた。どうやら母親で間違いはなさそうだ。
「ううっ、本当にありがとうございます!娘を保護してくださってたんですね」
「いやいや私は警察隊員ですから、当然のことをしたまでです」
「お姉ちゃんありがとう」
感謝されて嬉しいのだがキーはもはや気が気ではなかった。今何時何分だろう?食堂は飯が無くなり次第終了する。一応14時が閉店だが早ければ13時には終わってしまう。これまたお礼にお昼でもと誘われたが辞退して再びキーは歩き出す、今度こそカレーに向かって。
すると…
「ケンカだーっ!」
「手がつけられん、警察隊を呼べっ」
聞こえた。
キーには聞こえてしまった。
バカバカ何故聞こえてしまった私の地獄耳!
後方10mほどの距離だろうか。ケンカが始まっているらしい。警察隊員としてこれを放置する訳にはいかない。キーは唇を噛み締め血涙を流しながら振り返る。もうほとんどヤケクソ気味なのは言うまでも無く…。
「ふふ、ふ、ふふふふふ…これは私のカレー愛を確かめる試練なのか、いいだろう、受けて立つっ!!!」
カレーよ!今一度待っていてくれ!
いや待っていて下さい!
後生だから!どうか頼みますっ!
祈るような悲壮な願いの中、キーは喧騒の中へと身を投じていった…。
◆◆◆◆◆
時刻は14時ちょうどに差し掛かる頃。
キーは自警団の食堂前に立っていた。
彼女の服装はあちこちが汚れて髪は跳ねて…どこか薄ぼんやりしたみすぼらしい姿だ。
自警団食堂の扉は閉じられていた。
人の出入りはなく静かだ。
何かが書かれた黒板ボードが側に立てかけられている。
キーは固く閉じた目を薄らと開けて掲げられた黒板ボードを見る。顔を背けながらちらり…と。
果たしてそこに書かれていた文字は。
『昼の定食は売り切れました』
「………っ!がはあっ!」
何かに撃たれたかのように真横にキーは吹っ飛び倒れた。
びくんびくん痙攣してのたうっている、丘に上げられたばかりのマグロの如く。
ひとしきり痙攣してからやがてそのまま動かなくなった。
もはや彼女のHPはゼロかもしれない。
あのケンカの声を聞いた後。
キーは騒動の真ん中へと飛び込み、大喧嘩を繰り広げる大男たちを制圧した。普段なら警棒や剣を装備しているのだが非番ゆえに徒手空拳、素手での取っ組み合いになって制圧に時間がかかってしまった。おまけに遅れてやってきた警察隊の面々への引き継ぎも煩雑で中々手が離せない。混乱する現場の交通整理や隊員たちへの指示をやるうち、あっという間に14時に近い時間になってしまったのだ。
もはや絶望的な時刻になっていたが一縷の望みを賭けてキーは食堂に向けて全力疾走した。しかし結果は…。
「何故だ、何故今日に限って事件事故ばかりに出くわすのだ…カレー、私のカレーぇぇ…うぇぇぇぇ…」
半泣きキーは膝を引き寄せ丸くなる。
どんなに黒板を眺めても書いてある文字は変わらない。
『売り切れ』
涙で前が曇る中、不意にその文字がキーの視界から消えた。
「キー?こんなとこでなにしてんの」
キーが見上げるとエプロン姿のタスクが黒板ボードを持って目の前に立っていた。
◆◆◆◆◆
キーは信じられなかった。
タスクに食堂の中へ入るよう促されてテーブルに座った。
待つ事数分。
目の前に夢にまで見たカレーが出てきたのだ!
それもデカ盛りのカレーだ。湯気が、スパイシーな香りが食欲中枢をこっぴどく刺激してくる。なにやら美味そうな揚げ物までトッピングしてあるカレー。夢にまでみたカレー!キーはああ…と飢えた思いで手を伸ばす。
「今日のメニュー、カツカレーだ。上に乗ってるのはトンカツというフライ…揚げ物だ。ルーに浸して食べてもよし、ソースぶっかけてもよし。カレールー自体は以前作ったポークカレーとほぼ変わらないぞ」
「何故カレーがここに…売り切れたのではなかったのか」
キーは涙と涎をだーだー流しながらタスクを見上げた。
彼女は既にスプーンを掴んでいつでも突撃可能な姿勢で止まっている。このまま説明を始めてしまってはお預け過ぎて可哀想すぎると感じたタスクはまずは食べてくれと勧めた。
「ああっ、ありがたくいただこう、カレーライス!」
スプーンにルーを絡めたライスをひと匙。
しばし見つめてからパクりと一口!
キーはぶわっと涙が溢れた。
「辛い!でも美味い!もぐっ、はぐっ!」
「キー用に少し辛めにしておいたぞ」
スプーンが止まらない。角切り野菜が程よく柔らかくカレールーと相まって口の中で蕩けていく。辛味を感じるたびに食欲は煽られライスをかきこんでいく。カレールーに絡めたライスの上にトンカツを乗せて頬張る…カレーの辛味の中にサクサクの肉厚カツの旨みが来る。合う、この組み合わせは合う!キーの手は最後まで止まることなく瞬く間に皿を空にしてしまうのだった。
「美味い!美味かった…!お、お代わりはあるか…?」
「もちろんだとも。取り置きしておいて正解だったな」
タスクはキーに水の入ったコップをだしながら皿を引っ込める。キーはお腹を満たして漸く状況を確認する余裕が生まれたようだった。
「なんだって、取り置き?」
「ああ、なんかキーはあっちこっちで活躍してたらしいな。色んなことに首を突っ込んでたみたいだってな。人助けとかケンカの鎮圧とか」
「え?何故それを」
タスクは笑って二杯目のカレーをよそうとキーに差し出した。
これはおまけだとカレーに上にトンカツを三枚分もトッピングしてくれた。そして彼は種明かしのように語り出した。
最近キーに食堂へ連れられて来ていた若手隊員がキーのために取り置きをお願いしにきたと言う。なんでも早退したはずのキーがケンカ鎮圧のドタバタに介入している事に気づき、どう見てもキーの仕事ぶりでは食堂の開店時間に間に合わないと考えて慌ててすっ飛んできたらしい。
キーは後で礼を言わねばと笑って頭を掻いた。
「それにお婆さんの荷物運びもしてたんだろ?たまたま俺たちがキーが来ないなって話してたら飯食べてたお婆さんがそれってキーと言う名前の警察の人かって聞かれてさ。それだーってなって。キーは非番でも仕事熱心だよなー」
「そうか、あの老婦人も。ふふっ、助けたつもりが助けられたな。あの人もここに食べにきてたんだな」
お代わりのカレーにかぶりつくキー。
そのうちキッチンに引っ込んでいたガブやシスたちも顔を出す。キーを認めたガブが気遣う言葉をかける。
「あっ!キーさんっ、ほんと来ないのかと心配してましたよ」
「すまなかったなガブ。私も大概焦ったさ。取り置きしてくれてありがとう、今美味しく頂いているぞ」
ハートマークを撒き散らしキーはカレー皿に再び突撃する。目が結構いい感じに惚けている。やはりかなりの時間のお預けを食らって更に絶望を味わった後遺症は重いらしい。
「今日も大好評で早々に売り切れちゃったんですけど、タスクさんが多めに取り置きしてくれたんですよ、たっぷりと食べてくださいねっ」
「そういえばお前たちは昼飯を食べたのか?」
「はいっ、賄いでタスクさん特製のカレー丼を」
キラーンとキーが目を光らせた。
ハッとなったタスクがしーっ!しーっ!とガブにジェスチャーを送るももはや手遅れだった。
「なに…カレー…どん…なんだ、それは…?」
きょとんとタスクを見ながらガブは遠慮なくカレー丼の説明を垂れ流す。タスクはあちゃーと天を仰いだ。ゆらりとカレー魔人はタスクの方を向いた…その目は獰猛な野獣の目だ。
「シスが辛いの苦手だからタスクさんがカレーをリメイクしてくれて。あまり辛くないカレー風味のダシの効いた丼なんですけどね、これが美味しくって!小さく切ったお揚げさんと鶏肉が合って美味しいんです」
「美味いカレーが他にも存在すると言うのか?!」
「ほえ、キーさん?」
すかさず逃げるコマンドを選択し逃走開始したタスクの襟をあっさりと捕まえるキー。カツカレーによって彼女の素早さがかなりアップしたようだ。哀れタスクはカレーモンスターに回り込まれてしまった!
「タスクっ頼む!そのカレー丼とやらを私にも食べさせてくれまいかっ!」
今日のこの日、カレーに次ぐキーの大好物がまた一つ生まれたのは言うまでもなかった。
最後まで読んで頂いてありがとうございました。
食堂回はいったん落ち着けようかと思ってます。
今週は私用が多すぎて、次回更新は日を少し開けようかなーと。
次回はちょうど一週間後の12/19の20時更新にさせて下さいませ。
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