20話 タスクさんとデート(ガブ視点)
見つけて下さってありがとうございます。
予定通り本日分を投稿します。
第20話になります。初めてのガブ視点でのお話です。タスクとデート?いえいえ市場リサーチしにでかけます。さてさてどんな収穫がありますやら。
ガブリエラです!
私何故か最近影が薄いよ!シス頑張りすぎっ。
だからってわけじゃないけど今日は私が語ろうかなーって。
よろしくお願いしますっ。
◆◆◆◆◆
今日は私、眼鏡を外しておでかけ。
ちょっとだけお化粧もしてるよ。
勿論私服!
モカ色のタートルネックのチュニックに黒のミニスカート、おんなじ黒のニーハイにブーツ。実はこれしか無いんだよね、私服…。ずーっと自警団の制服で通してきたから。サイズオーバーしてなくてよかった。
ずっと使ってなかったショルダーバッグも引っ張り出して。格好、変じゃ無いよね?
すっごく嬉しーっ!前々から今日のお出かけをすっごく心待ちにしてたんだ!
何故かっていうとね。
なんと!なんと!!
私タスクさんとデートなの!
二人っきり!もちろん二人ともオフ!
どこに連れてってくれるのかな、二人で色とりどりの花咲く庭園を散策とか、素敵なレストランで豪華絢爛なランチとか、美しい夕焼けの綺麗なパールの丘で二人寄り添って…うふ、うふふふふ!!
…なーんて。
そうだったらよかったんだけど。
今日はタスクさんのお願いで街の食堂やお店を巡って食べ歩きでの市場調査をするんだ。私はお店のガイド役。
でもでも二人だけでお店巡りするんだからデートって言ってもいいよね?
「ガブ!今日はよろしく頼む。あれ、眼鏡してないのか」
「へへーオフの日くらい外してもいいでしょ」
ちなみにタスクさんは初めて会った時に来てた背広って服を着てる。インナーがネクタイとシャツじゃなく団で支給してる黒いTシャツになってて同じく団の革靴を履いてる。
フォーマルを着崩した感じでカッコいい!もしかして色々考えてくれたのかなぁ。何だかラフな格好に男らしさを感じてどきっとしちゃう。
そうだ、シスってば送り出す時にニヤニヤしながら「お前ら二人とも明日まで帰ってこなくていいぞ」とか言ってるしもう!二人でディナーとかお酒飲むとか憧れちゃうけどね。お泊まりは…げふんごほん!
「じゃあまずはこの店!」
私は最初にハードパンの美味しいお店を紹介した。私はどんなパンでも好きだけど特に堅めのパンが大好き。ここのパンは胡桃が入ってて歯応えの変化を楽しませてくれる。焼きたての時間に通りかかったらついつい買って食べてるんだ。
「美味い!これはドイツパンか?やっぱりこの国のパンはヨーロッパのパンを想像すれば一番近いのか…」
何だか私が聞いたことのない難しいことを呟くタスクさん。でも美味いと喜んでくれて私もすごく嬉しい!
自分の好きな食べ物を褒めてもらえるのってこんなに嬉しいんだね。私初めて知ったよ。
それがタスクさんに褒めてもらえてもっと嬉しくて。もっと色んなところを教えたくなっちゃうよ。
「どんどん行こう、ガブのおすすめ、楽しみだな」
「うふふ、任せてよ!今度はフルーツ!」
私は得意になってタスクさんを次のお店に案内した。私の好きな店。私の好きな食べ物。みんなみんな、タスクさんに知ってほしい。好きになってほしい。私はそんなことを思いながらパンを齧る彼の横顔をずっと見つめていた。
◆◆◆◆◆
そろそろ11時、お昼前になった。
パン、フルーツ、スイーツ、フィッシュアンドチップスのお店を巡りカフェで小休止中。
「ガブは本当に美味しい店を知ってるな。全部当たりだと思うぞ、どれも美味い」
あんまり褒めちゃだめだよタスクさん、私の鼻が天まで届いちゃうから!そろそろお昼時だし、ちょっとまとまったものを食べたいなあ。
「タスクさん、次何だけど、私お肉食べたくなってきちゃって…どうかな?」
先日の大勝負以来ずっと食べたくなってたものがあるの。串焼きのお肉!バーベキュー!焼き鳥!じゅうじゅう音立ててる焼きたてのやつ、じゅるり。
「おっけーだ、俺も肉が食べたいな。何かおすすめがあるんだろ?」
「ある!あるよタスクさん、ここからすぐ近くにね!いこっか!」
私はタスクさんの腕を引っ張ってく。
むふふー、あのとっておきのお店!今ならまだお昼前だから空いてるはず!
「こんちはおじさん!」
屋台が出てる!やった!
私は目的の屋台を見つけると店員のおじさんに話しかけた。
んーいい香り!ここは焼きトンのお店なんだ。
「おんや?見たことのないべっぴんさんやな、らっしゃい!」
「もう、おじさん私だよ私っ」
屋台のおじさんは首を傾げて私を見る。あーんこれじゃエセ常連みたいだよ。仕方ないのでバッグからいつものびんぞこ眼鏡を取り出してかけてみせた。
「お。ノーマルガブだ」
タスクさんてば…。
じゃあ眼鏡なしの私は何ガブなの?
「おおお?!なんやガブちゃんやったんかい!こら驚いたわ」
おじさんまで。そんなに顔変わるかな?変わるか、認識阻害入ってるもんね、この眼鏡。
「あーほんまびっくりしたわ。なんやねんな、今日は彼氏連れてきたんか、ひゅーひゅー」
「もうっ。何も買わずに帰ろうかな」
私は悪戯っぽく笑った。
本当に帰ってやろうかしら。
なんて、私すごくお腹空いたからそれは冗談としてどれを食べようかな?
「ここまで来て殺生やでガブちゃん!サービスするさかい。焼きトンやろ、味なんにする?」
「そうだねぇ、お味噌5本とお塩5本でお願いするよ」
まずはお試し、タスクさんに味わってもらいたいからね。気に入ったら追加すればいいや。
「あんれ意外と少ないねんな、彼氏の前やでやろか?ほな焼くわなあ」
いちいち一言多いっ。
タスクさん呆れてないよね?あ、なんかすごく一所懸命、おじさんの焼いてるとこ見てる。やっぱり研究熱心だなぁ。
「すげ、日本のとほとんど変わらない。こんなこともあるんだな」
「どうしたの?」
私はタスクさんをテーブルに手招きしながら何のことか聞いてみた。
「いや、な、焼きトンって故郷のとおんなじだから驚いてるんだ。焼き台や串の差し方までまるでおんなじなんだ、すげー」
「えっ、そんなことあるんだ?タスクさんの故郷と同じだなんて。ここの親父さん…東方の人じゃないよね。不思議だねぇ」
「ああ…そうだ、不思議だ…」
私はタスクさんの顔を覗き込んだ。
とても懐かしそうに、嬉しそうに、でもちょっとだけ寂しそうに見えた。やっぱり故郷が懐かしいのかな…?私は無意識にタスクさんの背広の裾を掴んでた。
「焼けたで、持ってくわ!」
おじさんが威勢のいい声で出来上がりを伝えてくる。私ははっと手を離しておじさんを迎えに行っちゃった。だってめっちゃ恥ずかしくなって…。
「おお、これはすごいな」
「そーやろ、まあ食ってみい。味噌と塩一本ずつサービスしといたさかいに。うまいでな、後でもっと買うてや」
「さすがおじさんありがとね。はいお勘定」
お代をおじさんに渡すと私も久しぶりの焼きトンを見た。うわあ、すっごい湯気!いい匂いー!でも我慢我慢、まずはタスクさんに食べてもらお。
「どうぞタスクさん、塩味と味噌味だよ。どっちもおすすめ!私はその日の気分で変えちゃうけど塩を食べるのが多いかなぁ」
「じゃあ塩からいくよ。もぐ、さく…お、本当に故郷で食ったのとおんなじ味だ!なっつかしい…!」
二人で焼きトンを食べてるとだんだんお客さんが増えてきた。いつのまにか列が出来ちゃってる。おじさんかなり忙しそう。テンパってない?そういえば…いつも手伝ってる奥さんがいない。どうしたんだろ。
「なあガブ、おじさんを手伝わないか?あれはちょっとまずい。邪魔じゃなきゃ入らせてもらおう」
「うん!おじさんに聞いてみるね」
おじさんにお手伝いを持ちかけたら「ほんまか!マジたのむわー」と即返事。早速お手伝い開始!焼きの手伝いとお客への手渡しをタスクさん、注文取りとお勘定は私がやることに。二人ともエプロンを借りて手伝いし始めたんだけど…。
「こりゃ今日は大入りや、やばいな。当たるでえ」
おじさんが怖い事言ってる。
手伝い始めたのとほぼ同時にお昼ど真ん中、次から次へとお客さんが来たの!ひえっ、めちゃくちゃ並んでる!おじさんの言う通り当たり日ってやつみたい。
「おじさん!味噌10、塩5!はいこちら750ゴールドになります」
「ほい、味噌20焼けたで頼むわ」
「塩5本お待ちの方どうぞお!」
やばいよこれ、いつまで続くの?!
ひーっ!行列20人以上は待ってる!
中には変わった頼み方をしてくる人もいて…
「味噌串2本と塩串3本、味噌串6本、塩串10本別々で」
「取り置きで味噌20本頼む!30分したら取りに来るから!」
「付け合せの紅しょうが多めに入れてくれ!」
うわっ、変化球!待ってくださいね、メモメモ。
忙しくて目が回りそうなのにますます混乱させられてたいへんっ!わーん、注文メモどれがどれかわかんなくなっちゃう!
何人捌いたかわからないくらい、延々お客さんを相手して落ち着いたのはお昼の1時を回った頃だったよ…く、くたびれたあ…!
「いやあ、二人ともおーきんや!まじで助かったわ」
おじさんが冷たい飲み物を買ってきてくれた。みんなで飲みながらテーブル休憩。私はおじさんに奥さんのことを聞いてみた。
「聞こうとして忘れてたよ、今日は奥さんが居ないけどどうしたの?」
「臨月でなあ、休ませとんねん。明日には親類から応援が来るねんけど今日には間に合わんでな。あんたらにはえらい助けてもうたわ」
そうだったんだ、前見た時はお腹大きくなかったけどあの頃から赤ちゃんがお腹にいたのかな?それにしてもこのとんでもない売れ方だと一人じゃむりだよねぇ。タスクさんちょっとグロッキー?くたーってしてる。
「彼氏はんもすまなんだな。これよかったら食べてってえな。ほなわい、裏で休憩してるわなあ」
おじさんは気を遣ってくれて私たちに焼きトンたくさん置いてってくれたよ。すっごい量、食べよ食べよ、ね、タスクさん。
「ガブー」
「うん?」
「ありがとな、いろんな店教えてくれて。すげー勉強になったよ」
テーブルで伸びたまんまのタスクさん。お礼なんかいいのに。ほらほらいいこいいこ。私はタスクさんの頭を撫でて労った。
「焼きトン食べよう、せっかくの焼き立てが冷めちゃうよ?」
「おう」
それにしてもすごいお客さんだった…あんなの一人や二人で回すのってたいへんだろうな…それも毎日でしょ。それに注文をカスタマイズしてくるお客さんには面食らっちゃった、あれやられると混乱しちゃう。きっと常連さんなんだろうなあ。
「いろんな注文をしてくるお客さんっているんだね…びっくりしちゃったよ」
「それな。今ここでそれを経験出来て良かったと思ってる。昼のラッシュ時にそんな細かい注文を一つずつ聞いてたら一人や二人で食堂なんか回せないって気づいたよ」
タスクさんは難しそうな顔で焼きトンを頬張る。屋台の向こうでおじさんが長椅子に横になってるのが見えて…あんなの真似をするのはきっついだろうなあ。
「どうする?食堂の人員をもっと増やす?」
「逆だな。俺は最低二人、最終的には俺とガブだけで回せる店にしたい」
え?!
ええええ?タスクさんと私だけ?!
それって、それって!二人だけのお店…!
「わた、わたしとタスクさんだけ…」
「出来るとするなら、例えば一品の決まった料理だけを出して変更もカスタマイズもさせない方式。それか客に全部やらせるバイキング方式だな」
「私おかみさんでタスクさんが旦那さん…」
「一番現実的なのは定食一本で飯や汁のおかわりを客の自由にさせるハイブリッド方式か…おーいガブ、聞いてる?」
「聞いてるっ!すんごい聞いてる!」
私はタスクさんに身を乗り出して応える。
こんないいお話しなんでもっと早くしなかったのかってくらい素敵で素晴らしいっ!ああタスクさんと私のお店っ!
「な、ならよかった。ガブはどう思う?」
「大賛成だようっ!私みたいにお代わりたくさんする人の相手とかたいへんだもんね。ご飯のお釜とかお汁の鍋置いといて勝手に取ってもらうのだって全然アリだよ!」
「め、めっちゃ聞いててくれたようで何よりだ。よし、食堂のイメージがだいぶん固まってきたぞ。それに無理はしない。例えば隔日でやろう、月水金て感じで」
さっきのお昼の見てて私も感じたよ。
人数に合った切り盛りの仕方をしないと続けられないもんね。何しろ自警団やりながらだし。
焼きトンを食べ終わって私たちはお店を離れた。
タスクさんが何だか嬉しそう。
食堂の事をほとんど任せきりだったことを私ちょっぴり反省。
私ももっとお話しに入るようにしよう、くふふふ、二人でお店やるって話ぜーったい忘れないんだからね!
私はタスクさんの腕にぎゅっとしがみついた。
「んっ、なんだガブ」
「ううん、まだ美味しい店あるから午後も案内するね!」
「頼むよ、まだまだ勉強する事は多そうだ」
いつか…二人だけの店かぁ。
楽しみがまた一つ増えちゃった、ふふ。
後でシスに自慢してやろっと!
最後まで読んで頂いてありがとうございました。
実は今回三回書き直しとストーリー見直ししてましてかなりの難産でした。ラブコメっぽい展開を予定してたんですがこんなに書けないとはorz
スクルドも出したかったのに…ガブという子を掴みきれてないのだろうか、悩ましい、うーん。
次回は11/22の20時更新の見通しです。
どうぞよろしくお願いいたします。
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