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19話 ぜんざいと神々の戦い

見つけて下さってありがとうございます。

予定通り本日分を投稿します。

第19話になります。久しぶりに三女神と会うんですがそこへシスが乱入してスクルドとマジバトル!そしてタスクはお疲れ様とおうちのぜんざいをみんなに振る舞います。今回もテキストボリューム8000文字です。総テキストが10万字超えました!

 港湾街から帰った翌々日、新たに団員が一人増えた。来そうだとは思っていたがやっぱりあの人、デューメのおっさんがやってきたんだ。

 

 おっさんは駅馬車に乗って無事にパールベックの街についたまではよかったが、例の方向音痴で道に迷いまくり、街議会前公園のベンチで途方に暮れてる半泣き男なところを役所帰りのガブが発見、無事に保護されて自警団事務所まで連れてこられた。

 

 見習いの子供達三人とおっさんはすぐに仲良くなり、翌朝からは子供たちの朝練をおっさんが面倒見るようになった。

 

 俺の事をおっさんはタスク殿と言い何故か妙に敬ってくる。何やら堅苦しい感じがしてならない。おっさんの方がはるかに年上なんだから呼び捨てにしてくれていいのに。ガブの事も相変わらずお嬢と呼んでいる。

 

「わしの身元を確認せんでいいのか?」


 あまりにあっさりガブに入団を認められて焦るおっさんにこう言われてしまった。そりゃそうだろう、俺の時も心配したもんな。


「一応面接をやっとくか。あんた帝国の偉いさんなんだろう?シス担当頼んでいいか」

 

「………!知っていたのか」


「後から分かったってだけだよ、実の所気にもしてない」


 キャラ一覧に載る程度にはおっさんはかなりの有名人なんだぞ。


「それはそれで何か寂しいのう。まあいい。それもいまや過去の肩書きだ」


 彼は素性を全て明かしもう帝国軍に戻るつもりはないと告げた。元々退職は近かったらしい。


「退職金はもらってこなくていいのか」


「戻れば退職金どころか縛り首だな。何しろわし、大軍を壊滅させて消息を絶っておったわけだしの。仇をとったからって許されるとは思えん」


「殺伐とした職場だなあ」


「弱きは去れ。そういう軍隊だからの」

 

 この街で自警団をやってたらそのうち帝国と戦うかも知れないが構わないのかとシスが突っ込んだ質問をしたらおっさんは…

 

「我が胃袋の声に従ったまで。後悔はない!」


と返答、シスは


「その考え共感して止まん、合格!」


と感動し二人は意気投合、がっしりと握手を交わして本採用となった。本当に食べキャラって奴らは食い物が絡むとどうしようもないようだ。

 

 サンソン兄妹、シス、そしておっさんの加入によって食事時はかなり賑やかになった。ガブと俺も含む7人で囲む食卓は騒々しく和気藹々としている。みんなモリモリ俺の作る飯を食べてくれるので悪い気はしない。おっさんは米が美味いと毎回喜びすっかりみんなと馴染んでいった。また彼らはレベルアップするんだろうなあ…と遠い目をする俺だった。

 

 そんなこんなで充実していく日々のなか、俺は再び三女神と交信を交わす事に漸く成功した。おっさん加入から一週間後の事だ。

 

 

◆◆◆◆◆



 久しぶりに三女神に繋がったと思ったら俺は例のギリシャ建築の四阿の中に呼ばれていた。そして何故かめっちゃ頭を下げてる三女神。なに?何があった?

 

「みんな何で頭下げてるんだ?」


「それは…」

「えっとだな、その、なんだ」

「大失態」


 三女神はトラブルで中々通信が繋がらなかった事を詫びた。


「すみませんでした、通信が全く繋がらずそちらの様子も途切れ途切れで分からずサポートができませんでした」


「おまけに教会の奴らの暴走でお前に迷惑かけちまった。連中にな、お告げであの街に女神の使徒がいる事、使徒の作る糧を食べれば幸せになれると伝えたんだがな…」


「信徒たちにはお告げが中途半端に伝わって使徒を保護しろと勘違い。果ては教会同士で使徒の争奪戦。これをチョンボと言わずなんと言う」

 

 なるほど女神たちがずいぶん俺に気を遣ってくれた結果があの騒ぎになったわけか。俺は3人に感謝し宥めると気になっていた人物について聞いた。

 

「いや確かにあの件は大変だったが実りもあったしな。気にかけてくれてありがとな。そんなに気に病んでくれるな、悪気があったわけじゃなし。それよりもみんな、グノーシスって知ってるか?」

 

「はっ?」

「タスクさん、今なんと?」

「危険!超絶危険!!」


 その様子だとばっちり知ってるみたいだな。上位神っていってたもんな、シスのやつも。そしたら不意に声がかかった、聞き覚えのある声が。


「なるほど夢で使徒と繋がっていたか。これなら直接降臨も不要だし上手いものだ」


「ひ!」

「うえあっ!」

「どうあああっ?!!」


 上位神ご本人が登場しちゃったよ、よくこんな所まで。


「ここ夢の中だよな、なんでシスが居るんだ」


「これは神通信だからねえ、同等以上の神なら通信に乗っかれる。ましてや私は始祖神だよ、出来ないわけがないじゃないか。それで君たちはこんな感じで交信してたのか」


 震え上がる女神たち。そりゃそうだろう、何しろ自分達の生殺与奪を管理する上位神が目の前に現れたんだから。

 

「なんでここにグノーシス様が。ま、さ、か、おしおき?!」


 タウトが顔を真っ青にして問いかける。直接上位神が乗り込んでくるとなるとただことでは無いと思うだろう。

 

「今の私はタスクくんの同僚という立場だ。お前たち女神の上位神として来たわけじゃないから必要以上に心配するな」


「同僚、とは?」


「タスクくんとは自警団の同僚になった。皆今後ともよろしく頼むよ」


 呆気に取られる三女神。特にスクルドの慌てぶりが激しい。


「は?はああっ?!?!なんだそれっ、よりによって地上に降りてるんすか、グノーシス様っ?」


「もう一万年以上前から降りてたよ、君らの監査でね。事故で神力を失って彷徨っていたところをガブとタスクくんに助けられてね。恩返しの為に当分ここの世界に居させてもらうよ」


 シスの言い様にスクルドが切れた。ばんっとテーブルを叩きシスに迫る。


「そんなっ?!あたいの加護は地上であたいが直接タスクの護衛って決めてたのに!これじゃ被っちまうじゃないですか!」


「それはすまないな、私の予備役でくるか?」


「タスクはあたいたちの使徒ですっ、余計な事はしないでもらいたいです」


 専有権を主張するスクルド。なんだかこそばゆいがこの場合正論でもある。とは言えシスもシスで俺とガブに個人的な借りがあるってわけできっと引きはしないだろうな…。


「ちょっ、スク!おやめなさい、グノーシス様の前ですよ!」


「ほう。護衛なら腕っぷしの強さがものを言うのだろう?私もどれくらい力が上がったか確認したかったんだ。よしっ、相手になろうか闘神スクルド?」


「面白いっ!上位神が立ち合いの相手なんて滅多にない。あたいと勝負してください、グノーシス様!」


 あーもう、毎回喧嘩っ早いやつだなスクルドってやつは。さすがにほっとけなくてサルティコに問いかけた。


「止めなくていいのか?」


「ああなったらスクは制止不可。グノーシス様もわざと挑発してる」


「グノーシス様どうかお許しを、あっあっスクもおやめなさいっ」


 タウトが止めるのも聞かずスクルドとシスが四阿の外に出た。外に出るとすぐにシスは何か手を振った。四阿が半透明のバリヤーに覆われる。

 

「さあこれで何をしてもかまわんぞ。私を消すくらいの気持ちでこい、タスクくんの飯でかなり神格が上がっていてな、どれくらいのものか試したくて堪らないんだ」


 ぶわっとシスがプレッシャーを放つ。

 

 スクルドが圧に押され後ずさるも堪えて。


「それならあたいだって上がってらいっ!」

 

 次の瞬間にはスクの赤ビキニアーマーがガシャガシャ変形し深紅の全身鎧に変わる。まるでスーパーロボットみたいな容姿に俺は心躍ってしまった。半月型の大型の盾を構え右手にはビームサーベルみたいな光の剣を携えると猛然とダッシュ!シスへと斬りつけた。

 

「遅い」

 

 シスは光の剣を掌で受け流す。

 追っかけて横殴りにきた盾の上にひょいとステップ、あっというまにスクルドの背後へと回りこむ。

 

「予測通り!」

 

 するとスクルドの首筋辺りが光ってジャカジャカとハリネズミみたいに光の棘が伸びた。あれは兜の後ろの飾り毛なのか?シスが串刺し…!と思ったのも束の間、シスは棘を手刀で全て砕き払う。バキイインッと金属質の音がして棘が落ち消えていく。

 

「この程度かね?」


「くそ。入ったと思ったのに」

 

 二人は遠く間合いを取ると今度は光弾の撃ち合いが始まった。シスは右人差し指を奮って優雅に光弾を放つ。スクルドは光の剣で迫る光弾を薙ぎ払い光のウェーブを打ち返す。段々人間っぽい戦い方から化け物じみた戦い方になってきたな。

 

「サルティコ、ここのキッチンできてるんだっけ?よかったら使わせてもらってもいいか」


「了。何をするつもり?」


「あれ当分終わらないだろ、試合が終わって疲れたとこにいいやつを用意するよ」


「神は疲れない」


「気持ち気持ち。じゃあ借りるぞ」


 今回は袋入りのあんこを使ってぜんざいを作ってみよう。こいつは超簡単だ。寸胴鍋にたっぷりのお湯を沸かし、適量のあんこを溶かし込み、砂糖と塩で味を整える。大体あんこ1キロに水2リットルくらい。今回はシスがいるからあんこ3キロプラス6リットルを二つにした。単純にくつくつとトロ火で煮込めばぜんざいはこれで出来上がりだ。

 

「さてとぜんざいができたな。白玉を作ろうか」


 ぜんざいの白玉も結構簡単だ。薄力粉をボウルに食べたい分だけ取り出すと先に作ったぜんざいと水半々と混ぜ合わせ薄い小豆色の白玉の種を作る。生地の固さはスプーンで練ると軽く伸びるくらいの粘りでいい。ダマ残ってよし。


 トロ火でぜんざいを煮込む中に白玉の種をスプーン二つを使って一口大の白玉をすくう、こそぎ落とす、の手順でどんどん落としていく。白玉がぜんざいの上の方に浮かんできたら完成!


 箸休めに伽羅蕗と緑茶でも用意しておくかな。


 さて試合はどうなったんだろう?

 

 戦いは人外魔境の域に達していた。戦況がわからないのでタウトに聞いてみた。

 

「おお?シスがなんだかたくさんいるように見えるがあれはなんだ?」


「恐らくグノーシス様が他次元層に姿を隠して幻影をあそこに複数見せているのでしょう。本体はどの次元にいるのか皆目見当がつきません」


 見た範囲、スクルドを中心にして10人くらいの数のシスが四方八方に立っていたり宙に浮いてたりしていた。あれが全部偽者なのか。


「それってどういう意味?忍法変わり身みたいな感じなんだろうか」


「まさにそうですね。スクには直接攻撃を当てる手段がありません。唯一空間を斬る事が出来る次元斬を使って探り当てるしか…」


 まるでヒントなしのマインスイーパーやらされてるみたいだな、勝ち目あるのだろうか…?


「だからさっきから闇雲に素振りみたいなことしてるのか。剣を振り回してトチ狂ってるのかと思ったぞ」


「このあたりか?違うっ、こっちか!くそっ!」


「早く私を見つけないと包囲網をどんどん狭めていくからね」


 だんだんとシスの幻影がスクルドの周りを包囲していく。きっとあれに触れられたらおしまいなんだろう。


「くそ、くそくそくそ!あっ!これはっ!」


 スクルドが何かを見つけたらしい。開いた空間の裂け目に手を突っ込み、何かを引き摺り出す…引いた鎧の腕に釣られて現れたのはシスらしき自警団の制服の腕だ。

 

「遂に見つけたぞ、グノーシスっ!これで最後だ!」


 ずぼっと引き摺り出されたシス…かと思いきや。それはシスの姿を模したマネキンだった。顔には『ハズレ』と張り紙してある。

 

「は、はずれだとうっ!?」

 

 次の瞬間、マネキンが光って大爆発した…!畳み掛けるようにシスの幻影までスクルドににじり寄り連鎖爆発、あまりの振動に四阿が揺れた。

 

「ばかなっ、ちっくし…………!」


 爆音にかき消されスクルドは怨嗟の声を最後まで上げることが出来なかった。俺は目前で渦巻く爆発に恐怖を感じてしまう。地べたで尺サイズの花火が爆発するとあんな感じなんだろうか、とにかく連鎖爆発が凄まじい。

 

 爆炎が収まると巨大クレーターの中心には黒焦げのスクルドらしき焼死体がうつ伏せで伸びていた。鎧は完全に砕け散っていた。そのすぐそばに突然シスが現れると転がるスクルドを覗き込んだ。

 

「よく頑張ったねスクルド。しかし君が触れる浅い次元にはデコイしかおいてないんだよ。これで終わったかな?」


「まだ終わってない!」


 黒焦げ死体の背中がバカっと割れて腕が生えた!流石にこれには誰もが驚いた。続いてスクルドの全身が現れシスの胸ぐらを掴む。

 

「絶対最後は直接確認にくると思ってたんだよ!おらあっ!」


 スクルドは爆風で吹き飛んだ地面をかき集め、自身の体を覆って隠れていたらしい。更に覆った地面の上に自分の焼死体のレリーフを作り偽装して。あの短時間によく思いついたものだ。

 

 飛び出た勢いのまま、握った拳をシスの胸元に叩きつけた。しかし彼女を倒すには力が弱かったようだ。シスはぐらりとよろめくも倒れず、逆にスクルドはそのまま力尽きて地面に臥した。

 

 それがスクルドの最後の一撃となった。


 カンカンカーーーン!俺はおたまを金属ボウルに当てて終了ゴングにした。はいおわりおわり。

 

「どうだった?シス」


「いやあ驚かされたよ。もう気絶してると思ったのに油断してしまったね。いい運動になった。神格アップ、中々のものだよ。最後の一撃は以前の私ならやられていたかもな。スクルドには可哀想なことをしたか」


「最後の最後に騙し合いで負けてなかったか?」


「ふう、悔しいがその点は認めよう。さすがは闘神スクルドだよ」


 タウトとサルティコが駆け寄りボロボロのスクルドを介抱する。さすが神様、スクルドは見る見る回復していく。スクルドが起きたら彼女たちの健闘を讃えつつ、みんなで食おう。

 

 甘い甘いぜんざいを。

 


◆◆◆◆◆



「かああ、甘い、甘ええええ、甘くって美味いなこれ!疲れが癒されていくぜ…」


 やっぱり神様でも疲れるんじゃん。ズタボロだったスクルドがすっかり回復してぜんざいを啜っている。あんこの甘さが気に入ったのか、汁を啜りながら白玉をがつがつ食べていく。

 

「タスクくんは結局どうするんだ、スクルドの護衛を認めるのか」


 もうお代わり何杯目かわからないシスが俺に問いかける。まあ聞かれずとも俺の気持ちは決まっているのだが。

 

「こっちからお願いするよ。スクの加護もシステム的な加護かと思ってたけど、その点はタウトとサルティコの加護で充分な気がしてたし。まだまだ力の弱い俺は物理的な力を貸してもらわないと…まてよ、スクは団員になるつもりなのか?」


「ずず…ああ!人間として降りてくつもりだった。このまんま行ったらルール違反だしな」


 ジロリとシスを睨むスクルド。シスは何食わぬ顔でぜんざいを飲み干し白玉を口に放り込むと俺にお代わりを求めた。そしてぺろりと舌なめずりすると彼女は口を開いた。

 

「私は元々神のままで監査をしなくてはならんからな、そのルールは適用されない」


 俺はシスから空になった椀を受け取るとお代わりをすくい黙って返した。シスはそれを見てたじろいだ。

 

「うわっ、なんだこの白玉の山は」


「地上に降りた神様先輩としてきちんとスクの面倒を見てくれよって俺のお願い込みのお代わりだ」


 俺はニヤリと笑い、遠慮せず食べろと勧めた。


「やれやれ…仕事が増えた」


「よろしくお願いしますよ、シス先輩!」


 サルティコとタウトもスクルドが漸く落ち着いたと安堵した様子だった。ぜんざいを啜っていたサルティコの頭の上でファンファーレが響いた。レベルアップしたらしい。

 

「それいいな、私もそれにしようかな」


 シスが羨ましそうにサルティコのレベルアップを見た。サルティコが指先でつんつんとファンファーレの辺りをなぞる。

 

「発動の仕込みが難しい。やり方、教えて欲しい?」


「頼む」


 シスとサルティコが話を始めたところでタウトが俺に向き直った。真面目な表情だ。

 

「タスクさん、一つ伝えておきたい事が。先日重要人物を助けましたね」


「ログ見たのか。ああ、四天王のデューメと関わった。まさか飯を食わせた相手がそんな大物とは思わなかったよ」


 俺はスクルドにお代わりを返すとテーブルに付きタウトの話に耳を傾けた。サルティコ、勝手によそうのはいいけど白玉取りすぎだぞー。シスと張り合ってないか。


「デューメはあなたの料理で力をつけた後、自警団の団長たちと交戦、勝利したのはご存じですか?」


「喧嘩の相手は主人公のやつらだったのか。俺たちと別れてすぐに部下の仇を取ってきたとは聞いてたけどまさかあいつらとは」


「しかもデューメは団長たちの半数以上を戦闘不能に追い込みました。それで彼らのルートが変わってしまいました、少々危険と感じます」


 タウトがそこまで言うからには『推し』の今後に関わるのだろうか。俺は焦った。

 

「団長たちの行動が変わったのか」


「デューメに負けてリタイアした人物が多くいます。タスクさん、キャラ一覧を出してもらえますか」


 俺はドラパラの管理画面を開くと自警団サイドのキャラ一覧を大画面で表示させた。

 

「お借りしますよ?ほらここから何人か、説明が変わっています。恐らくですが彼らを再起不能と見做して団長が追放したのではないかと」


 キャラ一覧をなぞるタウト。

 キャラの説明書きが「○年○月トルーハンにて自警団を追放」と書かれた者が結構な数で表示された。片手では足りない多さだ。

 

「団員が変わっても団長が変わらない限りやる事はそんなに変わらないんじゃないか」


「わかりません。ですが間違いなく団長は本来のルートから外れたルートを歩み始めました。恐らく追放した分の団員補充と回復の為でしょう。この後真っ直ぐ竜の神殿まで向かえばいいのですが」


「最初の街に近い所にまだいるとは思わなかったから驚いてはいた。まさかこの後パールベックに戻ってはこないよな?」


 タウトが俺の管理画面をストーリー進度を示す画面に切り替えた。団長たち残党はトルーハンから船に乗って他国に渡った軌跡が表示されている。俺の記憶だと本来のルートは港湾街から陸路で他国に渡るルートだったはず。確かに主人公の動きがゲームのルートと変わりつつある。

 

「船に乗った以上、戻りはしないでしょう。この船の行き先は隣国の首都です。そこから竜の神殿はかなり近くなりますが、其れでも彼らの行動が読めなくなったのが気がかりです。タスクさんも気をつけてください」


「これってやっぱり俺のせいなんだよな。わかった、ありがとう。そんな状況でスクルドが来てくれるのは心強い」


「おう!あたいに任せとけ、ガブもお前もちゃんと守るからな!」


 スクルドは箸を咥えて腕まくり、得意げに力こぶを見せてくる。

 

「私も居る。タスクくんはガブを守りたいのだろう。私がいれば何の心配もいらない」


 シスも前髪を指でかきあげ赤い瞳で俺を見る。頼りにしてるよ、神様〜ずさんたち。そうだ、スクルドに聞きたい事が。

 

「スクルド、あの赤くてロボみたいなカッコいい鎧は降りてきてからも使えるのか?」


「ん?これのことか。もちろんこれは持っていくつもりだぞ」


 スクルドは立ち上がるとぱっと鎧姿に変身した。かーっ!やっぱかっけーなあ!真っ赤ですげーばえる!

 

「それすげーかっこいいな!また戦ってるとこみせてくれよな」


「おおータスクう、お前わかるやつだな!これな、あたいも気に入ってる鎧装束なんだ!剣なんか、びーってなってすげーんだ!これなーお前の世界のロボットアニメとか参考にしてんだぜ!」


 ガシャガシャ鎧を揺らして鎧のあちこちを説明してくれるスクルド。俺は飯時のガブみたいにウヒョウヒョ言いながらスクルドがしてくれる鎧の説明に食いつくのだった。

 

 タウト、サルティコ、シスが何故か真顔でめっちゃ静かになっていた。君たち、なんでこのかっこよさがわからないんだよぅっ!とガブ的テンパリ状態になったのは言うまでも無い。

最後まで読んで頂いてありがとうございました。

バトルのやりとりを書くのってわくわくして楽しいかったです。ぜんざいの白玉は「玉」と言ってますが丸まってはいません。スプーンでぽとぽとぜんざいの中に落としてますので、つくねやほうとうを想像してもらった方がイメージは近いかもしれません。生地は薄力粉ですが柔らかくて粘りがあって美味しいんですよー。次回からスクルドも加入予定です。最後に出て来ましたがゲーム主人公たちは今後要注意の連中です。


次回は11/18の20時更新の見通しです。

どうぞよろしくお願いいたします。


いつも読了、ご評価、ブックマークをありがとうございます。とても励みになっています。

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