表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/29

14話 告白タイムとまた一難

見つけて下さってありがとうございます。

少し早めの本日分を投稿します。

第14話になります。いよいよタスクの告白にガブが応えます。

「私…レベル360になってる?」


 俺はガブの言葉を聞いてぐっと拳を握りしめた。彼女がどんな反応を示すのか、少し怖かった。

 

「ガブ?」


「………」


「……やっぱ、びっくりするよな…飯食ったらレベルあがるなんて。すまん、俺も昨夜までこんな事とは知らなく…」


「……ごい」


「え?」


「すごいっ!すごいよタスクさん!」


 がばーっとガブが俺に飛びついてきた。怒ってる様子はない、むしろ興奮して笑ってるように見える。

 

「これってきっとタスクさんのご飯を食べてこうなったんだよね?」


「ああ」


「不思議不思議って思ってたけど、タスクさんってもしかして神様?」


「違うぞ、純粋な日本人かつ単なる一般人だ」


「でもこんなこと出来るなんて神様くらいしかいないよ?」

 

 確かに女神たちとは接触したし加護を貰ってはいるがこのチカラは連中に貰ったものじゃない。このスキルだけはこっちにくる途中、いつの間にか身につけたものだ。もしかして俺の世界の神様がやらかしてるのか、そこは分からない。チートにも程があると俺も思ってはいる、飯食うだけでレベルアップって。

 

「…女神にも変な存在に思われてるようだけど誓って人間だぞ。俺自身、段々自信がなくなってきたけど」


 ガブが俺の顔をペタペタ触る。

 こらこら耳を引っ張るな。

 お願いだから珍獣扱いしないでくれるか。

 

「確かにおかしなとこはなさそうだょ?」

 

「おおい。昨日の夜俺はずっと寝てたろう?あの間女神様に中身だけ呼び出されてたんだ。女神のサルティコ、タウト、スクルドが居たよ。それで俺のこの不思議なチカラについて教わってきた」


「女神様に?すっごい!どんな話をしてたの」


「…あんまり驚かないんだな」


 落ち着いているガブに半ば呆れる。

 もう少し疑ってくれた方が話を聞いてくれてる感があるというものだ。


「んーとね、逆に私はタスクさんには驚かされっぱなしだよ?私が死にかけてたとこに助けに来てくれて、ご飯をお腹いっぱい食べさせてくれて、あっというまにご近所さんたちとも仲良くなったりして、タスクさんって不思議な人だなーって」


「すまん、俺はかなり非常識だったらしい」


「タスクさんは悪い人じゃないって言ったじゃない。私の勘、中々当たるでしょ?」


 俺は照れ臭くて頭をボリボリかいた。

 ガブはむふーっと鼻ピスしながら胸を張って俺を促す。


「さ、お話の続き、教えてよ」


「はーっ。ぶっちゃけるぞ。まず俺のチカラは女神もよくわからないらしい。ただ女神の想像を超えてる代物らしくってな」


「神様でも分からないことがあるんだね」


「それとな、ガブ…お前さ、女神にすごく見込まれてるぞ。お前が将来不自由しないように俺の飯を食わせてやれと言われたんだ」


「ぶふっ!何それ?!何で女神様が?」


「お前に長生きしてほしいそうだ。だからガブを強くしてあげてくれって。俺もな、それに賛同したんだ」


 ガブは戸惑ったような困ったような顔をしてもじもじと身を捩った。両手の人差し指をつんつん合わせてつぶやく。


「……私なんかを強くしたって何の役にも立てないのに」


「いや、そんな事はない。早速街の平和に貢献したじゃないか」


 自己評価の低いガブに貢献度MAXの案件を教えてやる。少なくとも彼女無しではあのボスは倒せなかっただろうからな。


「え、あ、あれ!もしかして昨夜の…?」


「公営警察隊がやられるようなツヨツヨ盗賊団をレベル3の人間が捕まえられるなんて不思議だったろ。あれはな…ガブや街のみんなが強くなってるから出来たことなんだ。盗賊団のカシラってレベル幾つだったと思う?少なくともレベル90は合ったらしいぞ。お前で無きゃ捕まえられなかっただろうな」


「……私の力で街を守れたってこと?」


「ああ。ガブは立派に自警団の役割を果たした。見習いなんかじゃなく今や自警団のエースだな」


 やっと前を向いてガブと話が出来た。

 言いたかったコトがやっと言えて俺は心が軽くなった。流石に独りよがりだよなーと自分に呆れつつ、ガブに話せたことが嬉しかった。


「じゃあ、あの剣士の人に悪いコトしたかな、ずっと私レベル3だよって言ってたし」


「そりゃガブも知らなかったんだから仕方ない。俺の飯の事を説明しとくよ。俺の飯を食っても体に害はないそうだ。効果はレベルが上がる他に、病気や怪我が治る、健康になるってのがあるそうだ。どうも女神は街のみんなにも俺の飯を食わせたいらしくてな」


「キーさんのお話じゃないけど本当に薬膳みたいだね、それもとんでもなく超高級で特大効果の。街のみんなにも食べてほしいのは賛成かな。私みたいに最初は驚くだろうけど、きっとみんな喜ぶと思うよ」


 にーっと笑ってガブが顔を寄せてくる。何だか距離が近い。そしてジョブカードを俺に見せておーっとまた声を上げる。

 

「こんな高いレベル初めてみたよぅ、三桁ってまず居ないんじゃないかな?」


「だろうな。多分あの盗賊ボスでも100に行くか行かないかくらいらしいからな。ちなみにな、女神たちもレベルアップしたよ、俺の飯を食わせたら」


「えっ?!何を作ったの?」


「ホットケーキ」


「何その料理、聞いた事ないょ……」


 ガブの声のトーンが一段下がった気がした。


「パンケーキの別バージョンみたいなもんだ。そーいや食ったサルティコのやつがピコーンって音立てながらレベル上がって面白かったな」


「………ぶぅ」


「な、なんだ?!急にむくれて」


 急に黙るガブに驚く。ほっぺたが膨らんでる。

 初めてガブが怒った顔を見た気がする。

 

「言い方。女神様がまるで仲良しの友達みたいに。それと私が食べた事ない料理を食べさせてるでしょ!」


「何でそれで怒るんだよ、わかったわかった、後でちゃんと作るから」


「今日のおやつに作ってね、約束!」


「またレベルが上がるぞ?」


「もうどんなにレベルが上がったって驚かないし。私これからどんどん強くなってやるんだから。だってタスクさんのご飯を食べないなんて選択肢、もう私にはないんだよ?人の胃袋掴んでおいてもー!」


 びしっと指を鼻先に捩じ込まれる。痛い痛い。

 途端にガブがにまあっと笑う。

 

「それでホットケーキってどんなのー?」


「パンケーキとそんなに変わらないよ、これから作るやつはフルーツとか生クリームトッピングしてやるからさ。そうだ、これも見せておかないとな…」


 ガブには俺のドラパラの管理画面とショップも見せておいた。目を輝かせてガブはそれを見た。自分が登場するゲームの画面を眺めるキャラクターなんて、何とも不思議な光景だよなー。

 

「このお買い物のとこにさっきキーさんが持ってたカレーの缶があるよ?」


「ああ、これで買ったんだ。カレー粉もここで買ってる。ショップと画面は女神から貰った加護だ、タウトとサルティコのやつからな。あいつら趣味丸出しだからな…」


「へー加護……その言い方ー。やっぱり女神様となんだか仲良さそう…」


「意外とフレンドリーだったぞ?俺も最初は丁寧に話ししてたんだけどいつも通りでいいって言われて。そういえばスクルドに肩組まれて振り回されてな、あんま激しくて首がネジ切れるかと思った。あいつ力強いのな」


「……ホットケーキ、大盛りで山盛りじゃなきゃユルサナイ、あっ、このお菓子みたいなの付けてくれなきゃヤダ」


「なっ、なんでまた怒るー?!あーもうショップを勝手にポチするなって」


 俺が思っていたよりもあっけなく、そして和やかに?告白タイムは終わった。俺が思っていたよりもガブは遥かに強い女の子らしい。俺が完全に押されてる。

 

 その後三時のおやつでガブにフルーツとクリームてんこ盛りのホットケーキをご馳走したのは言うまでもない。ホイップクリームにカスタードまで付けて、ガブ指定のフルーツ缶やチョコレートペンまで買ってモリモリデコレートな山盛りのホットケーキタワーが完成した。何枚焼いた?100枚近く焼いた気がするぞ。ガブは当然のように全てを完食した。

 

「おやつをあんなに食べておいて夜もきちんと食べるのな…」


「甘いものはベツバラですぅ」


 何か意味が違う、後先が絶対違う。

 

 夜は晩飯を食べながら二人で今後について作戦会議を開いた。ちなみに飯はカニチャーハンと卵スープだ。カニとは言ってるがカニカマだ。

 

 ご近所さんたちに食堂を開く開かないの話をする時にご飯の効果について説明しておこうか?とガブは提案してくれたが、そもそも食堂開くには何をしていいかも分からないし、準備とか手続きとかを調べてからでも遅くないだろう、という話しになった。食堂か…ゴーストレストラン形式なら俺でもやれるかも知れないな。





 わずか一日で色んなことをガブと話ができた。

 自身が抱えたモヤモヤを全て彼女は受け入れてくれた。

 また少し彼女が近くなった気がした。

 でも、これだけは彼女に言えなかった。


 お前は俺の推しだって。

 絶対あんな理不尽な死に方はさせない、護りたいって。


 画面に向かってならいくらでも言えた推しへの言葉が生身の本人を目の前にしたら途端に言えなくなる摩訶不思議。恥ずかしがってるのか俺は。最後までそれを伝えることはなかった。





 そんな俺の思いをよそに事態は動いた。

 

 翌朝、それも早朝の事だ。

 

 自警団事務所の食堂に突然三女神の教会関係者が押しかけてきたんだ。パールベック地区の司祭様とシスターや牧師数名を引き連れた集団が三組。丁寧な物腰のおかげで威圧感は無いのだが、こんな連中が食堂に立つと場違い感が凄い。各々の正装デザインには信奉する女神のカラーが垣間見え、聖職者の雰囲気がバリバリ伝わってくる。

 

 まだ身支度もそこそこにボサついた頭で朝飯を作っていた俺は飛び上がらんばかりに驚いた。

 

 やってきた彼らはこう言った。

 

「おお我らが崇拝せし女神様…その御使徒様、我らが一堂、お迎えに参りました」


「………は?」


 俺は暫し考える。

 

 ポク、ポク、ポク、チーン。

 

 閃いた。


 使徒なんて言葉知ってるなんてあいつらしかいない。


 女神様、君ら何をやらかした??


 俺は天を仰いだ…。

最後まで読んで頂いてありがとうございました。

次回は11/1の20時更新の見通しです。

教会からの来客…女神さんたちは何をしでかしたのか。

次回もよろしくお願いいたします。


いつもご評価、ブックマークをありがとうございます。

とても励みになっています。

初めての方はよろしければブックマークして引き続き見守って頂けたら幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ