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13話 カレーライスと告白

見つけて下さってありがとうございます。

本日分を投稿します。

第13話になります。みんなでカレーを頂きます。そして悩むタスクがガブに自身の能力について明かします。

 いよいよカレーが出来上がった。

 

 子供達三人には牛乳で伸ばした優しめの辛さ。

 ガブとサンソン奥さんにはそのまま中辛。

 キーと俺はカレーパウダーで調節有の辛さ。 

 サンソン奥さんが新鮮なレタスを沢山持ってきてくれたのでサラダ付きのカレーライスとなった。奥さん感謝だ。

 

「奥さんすいません、気を遣わせちゃって」


「何言ってるの、昨日に続いて今日もご馳走になるなんて。まーたあんた達ったらもう…」


「へーん、俺たちはガブ姉ちゃんに誘われたんだぞ」


「うん、本当だよ」


「うん!うん!」


 あははとガブがマゼちゃんの頭を撫でてサンソンさんに大丈夫ですよと笑う。いつもごめんねと奥さんが舌を出して笑い和やかな雰囲気だ。

 

 そんななか、キーは臨戦体制でカレーを給仕されるのを待っている。既に俺からぶん取ったカレーパウダー缶を握りしめているが。カレー魔神誕生か…?

 

 カレーの盛り付けは至ってシンプルだ。ライスを大皿の片側に寄せて乗せるとカレーをもう片側にどばーっとかける。後は福神漬けを添えて完成だ。お代わりが来る事を想定して俺の傍には寸胴鍋と飯釜を待機させておく。

 

「行き渡ったかな、辛いからみんな気をつけてくださいね。お水もお代わりありますから」


「「「はーい」」」


「了解している」


「わかりましたよ」


「じゃあ、タスクさん」


「ああ。では、いただきます」


 皆がスプーンを片手にカレーライスとのご対面だ。キー以外は初めてだから反応がドキドキだが。俺は一口食べて標準の辛さを確かめる。うん、程良い辛さだ。しかし今日は少し辛味が欲しい、やはり足すか?

 

「うまい!すげーうまい!」


「辛いって言ってたけど全然大丈夫です、美味しい!」


「あむ、あむ、あむ、おむ…」


 子供達には大好評のようだ。人参もじゃがいももモリモリ食べてるようでなにより。奥さんが子供達をみて驚いている。

 

「あんたたち、いつも野菜を避けるのに…ちゃんと食べてるじゃないか、まったく。うん美味しい、さすがタスクさんだね。これは香ばしくて辛くって美味しいねえ、感心するよ、こんな辛さがあるんだねえ」


「初めてかね?カレーライスというのはこういうものだ、故国では薬膳に近いものだったと記憶しているがな。単に辛いだけでなく食欲や新陳代謝の増進、疲労回復、整腸作用なんて効果もあるぞう!」


「よくご存知で。スパイスの一つ一つが薬効を持ってて夏に食べると夏バテ対策になるなんてのも聞きますからね」


 と、ここまでカレー話に花が咲く中、一人だけ一向に喋ってないやつがいる。ガブはどうした?静かすぎるぞ。

 

「はぐっ、もぐっ、もぐっ!タスクさんお代わり!」

 

「うん、知ってた。はいはい」


 言うまでもなく黙々と食べてたか。次は大盛りだな。俺はさっきの倍の量を盛り付けてガブに返してやる。

 

「むひょーっ!タスクさん、カレーって美味しいね!辛いのが病みつきになるよぅ、お肉もお野菜も香ばしくて…しっかり炒めてたからだよね、これ!ヤバすぎ、とまんない、はぐ、もぐっ…」


「それ炒めたの俺たちだぞ、美味しいに決まってら」


「兄さん…」


 はいはいわかってるよ、君たちにはだいぶん手伝ってもらったからな。しっかりたっぷりと食べてもらいたいものだ。


「ちゃんとガブを意識して沢山作ってあるからみんな遠慮なく食べてくれ、多分50皿分はあるから」

 

「マゼもお代わりー」


「これはいかん!私もお代わりだ!無論大盛りで頼む」


 そこからちょっとしたカレー大食い大会と化してしまった。ガブとキーが結構張り合ったのだ。二人共大盛りを頼んでは平らげていく。そう何皿も重ねられまいと思いきや、二人とも10皿に突入して俺は焦った。やばい、マジでカレーが無くなりそうだ…!

 

「うーむ、私はここまでだ。持ち帰り出来るなら頼む」


 キーが10皿でギブアップした。

 ガブは13皿で打ち止めにしたようだ。ぎりぎり鍋は持ち帰り分を残すのみとなった。

 

「ぷひー、ごちそうさま!カレー美味しかったよっ!」

 

「ガブ、もしかして少し控えたか?」


「なんでわかるの?」


「なんとなくだ。今のガブは余裕ありそうだぞ」


 ぽちっと中指で軽くガブの鼻先を弾く。

 昨日一昨日の食べ方を見てるからな、割と遠慮してる方に見えたんだ。

 

「あはは、それでもお腹は八分目だよ。それにキーさんの持ち帰りまで食べちゃったら悪いし」


「すまないな、気を遣ってもらうとは。ふふ、悪いがガブリエラは後で旦那様にまた沢山作ってもらってくれ」


「旦那様って?」


「なんだ、君のことじゃないか。皆から聞いているぞ」


 げふおっと咳き込み真っ赤になるガブ。

 ぴっとキーに指を刺される俺。

 

 あ、そういえばそういう設定で通してるんだったな。


「あは、あはははは!タスクさんたらやだなもう。キーさん気にせず持って帰って下さいね。もちろん、サンソンさんも」


「そうだ、いつ食堂は開店するんだ?ここの食堂で商売するんだろう、カレーを出してくれるなら私は常連になる自信があるぞう!」


「はっ?」


「先日お裾分けの催物をしたのだろう?余りに美味いと評判で話が広がってるぞ、西の自警団の食堂で飯屋が開店するんじゃないかと。確かに君の飯は美味かった。私は本気で期待しているぞ」


「そ、そんな話が…」


 俺は引きつった笑みを浮かべながら持ち帰り用の小鍋にカレーを移し替える作業に取り掛かるのだった。





 その後、キーにカレーパウダー缶をねだられたり、サンソン奥さんにやっぱりレシピを聞かれたりと慌ただしかった昼ご飯が終わった。サンソン親子とキーが去り、静かな食堂で俺とガブは茶を啜っていた。

 

「ふー、やっと一息いれられる。割と忙しかったな、ガブもお疲れさん」


「ありがとタスクさん。私食べてばっかりで何にもしてないよー。それより私がみんなを誘って次々忙しくなってごめんなさい」


「ふふ、飯を作るのは好きだから気にするな。しかし…食堂やるなんて誰が言い出したんだよ、待ってくれよー」


 俺はテーブルに突っ伏し頭を抱えて思わずこぼしてしまう。食堂を開くだと?よりによって女神たちの思惑通りにコトが運んでいるぞ。


「私はいいお話だと思うんだけどなあ。……ねえタスクさん、一つ聞いてもいい?」


 ガブが珍しく真剣な表情で俺を見た。どうしたのかさっきまでお腹いっぱい、もう寝そう、みたいな顔してたくせに。


「どうした急に」


「勘違いだったらごめんね、タスクさん、もしかして、もしかしたら…みんなにご飯をご馳走するの、何か抵抗あるんじゃないかって」


「!……何でそう思う」


「勘。というか…私がマルコたちをご飯に誘った時、タスクさん何だか困ってる感じに見えたの。昨日まではそんなこと無かったのに、今朝はなんかそう感じたから…」


 顔に出てたか…ポーカーフェイスやってるつもりで俺は全然ダメだ、ばっちり迷いを見透かされるとはなあ…。俺は茶を呷りガブに向き直った。

 

「…ガブはさ、飯食うの好きだよな」


「へっ?!う、うん、大好きだよ、美味しいご飯なら尚更」

 

「もし…もしもだぞ、飯食ってレベルが上がったらどうする?」


「ほえ、高級アイテムの話をしてる?」


 高級…ああそうか、レアアイテムにそんなのがあったな。きっと女神たちが言ってた食べてレベルの上がる『ソーマ』の事だろう。

 

「いや、普段食う飯でだぞ。例えばさっきのカレーとか」


「うーん、そうだねぇ…もしそうならすっごく嬉しいかなぁ。それにとってもありがたいよ」


「嬉しくてありがたい?」


「うん!レベルって何故かどんな職業でも魔物や人と戦ったり試合しなきゃ上がんないんだよね。職人さんなんか技能は上達出来てもレベルが上がらないから自警団や軍隊で修行してくるくらいだもん。レベルが上がると色んなスキルが身につくからみんな必死だよ?それがご飯を食べるだけでレベルアップなんて神様の祝福を貰うみたいな夢の話だよ」


「………………ガブ、自分のジョブカードさ、ちょっとレベルを見てくれるか」


 俺はガブをまっすぐ見ていられなくなって俯きながらガブにレベルの確認を頼んだ。ジョブカードはリアルタイムに自分のステやレベルを確認できるアイテムだ。

 

「私の?私レベル3だよ、それがどうかしたの?ほら…ん、あれ…ん?んんんん?んーっ?」


 ガブが自身のジョブカードを凝視した。

 二度見、三度見、目まで擦って確かめる。


「……」


「タスクさん、これって」


 ガブの顔が驚愕の色に染まる。


「………」


「見間違い…じゃない。私…レベル360になってる?!」


最後まで読んで頂いてありがとうございました。

次回は10/30の20時更新の見通しです。

レベルのとんでもないアップにガブはどう感じたのか、次回もお話が続きます。

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