表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/8

7•音は流れてきらめく明日へ

1話1000字程度、全7話。

R3/10/23 5:00〜11:00に予約投稿です。


※この物語はフィクションであり、作中の土地、人、食べ物や動植物は総て架空の存在です。


※この部分の歌には特定のメロディはありません


※ 「今からファンアート2021」でぴったりの挿絵を見つけました。以下あとがきに載せました。


 月影清かに注ぐ()

 あの山超えて谷超えて

 木の葉は囁き小川は誘う

 遥かな時を人知れず

 横たわりたる銀の竜


 乙女は急ぐ泉へと

 母の命を救うため

 千歳(ちとせ)を生きる銀竜の

 鱗を滑り溢れる月を

 集めて光る不思議の泉



 ひらりひらりくるくると

 仄かに白く浮かびたる

 乙女の裸足の麗しさ




 コーラスに入り、歌い手たちが唱和した。子供が可愛い声を張り上げる。老夫婦が掠れた声を添える。調子外れなおじさんも、少し遅れるおばさんも、みんなみんな加わった。




 ひらりひらりくるくると

 仄かに白く浮かびたる

 乙女の裸足の麗しさ




 踊り手の鈴が銀の音を鳴らす。溢れる月の光のようだ。楽師の袖や裾を飾る鮮やかな色のふさが陽気に揺れる。




 ひらりひらりくるくると

 仄かに白く浮かびたる

 乙女の裸足の麗しさ




 3回目のコーラスで、サッジが少し調子を変えて合図を送ると、アルレッキーナのリードで楽師たちだけが歌の旋律を繰り返す。

 コーラス部分まで器楽だけで終えて、いよいよ乙女と竜が出会う。突然ぱっと総ての音が止む瞬間だ。




 乙女は辿る月の道

 苔生す岩を通り過ぎ

 走る水さえ追い越せば

 遥かな時を人知れず

 伏したる竜の岩殿へ


 乙女よ乙女月を背に

 母の命を救うため

 訪ね来たるは不思議の泉

 佇む姿たおやかに

 竜と人との縁結び



 ひらりひらりくるくると

 仄かに白く浮かびたる

 乙女の裸足の麗しさ



 ひらりひらりくるくると

 仄かに白く浮かびたる

 乙女の裸足の麗しさ



 ひらりひらりくるくると

 仄かに白く浮かびたる

 乙女の裸足の麗しさ




 はるか昔の山奥で生まれた幸せな恋の歌に乗って、祭りの夜がふけてゆく。やがて、魔法のランタンを舳先に掲げた小舟が人々を対岸へと運び始める。いつしか屋台は片付けられて、それぞれの町や村へと帰ってゆく。


 アルレッキーナたちは渡し船に乗らなかった。渡し守の家は対岸にある。明日の朝こちらにきてもらう約束をして、3人は何もない広場に小さな焚き火をおこした。


 広場では篝火も消えて、組まれた薪も囲いもすっかり取り払われている。秋の夜はしんと冷え込む。野宿に慣れた3人は毛布を被り、サッジの歌う風除けの魔法で火を守り、わずかばかりの暖を取る。


 ふと、リッターが星空を見上げてゆったりとした歌を口ずさむ。旅の剣士リッターが遥かに思う故郷の歌だ。アルレッキーナとサッジは黙って焚き火を見つめている。

 赤々と火を映し、どの顔も少し疲れて見えた。それでもまだ寝るには惜しい。遠い旅路に想いを馳せる3人の旅人たちは、ただ静かに揺れる火を囲んでいるのであった。


これにて完結です。

最後までお読みいただきありがとうございます。

12:00に予約されているのは、純粋なあとがきです。

お話はここでおしまい。



挿絵(By みてみん)

ひとつまみ 様作

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『仙道企画その2』←詳細↓検索画面
仙道企画その2
バナー製作みこと。様
― 新着の感想 ―
[良い点] 読み終わって、一曲聞いた時の感覚が パァーっと、そしたら、挿絵。 祭の余韻と哀愁  そして明日から 嗚呼 ( ・∀・)イイ!!
[良い点] 星空に焚き火に音楽……。 最高の贅沢ですね。 キャンプしたくなりました。 そして……もう、夜風でピタリ賞なのではないでしょうか! [一言] 妄想企画では大変お世話になりました。
[良い点] 食べて飲んで、踊って歌って。 とても楽しそうで、人生を謳歌してる感がすごいですね! おまけに恋の歌! たまらんですね! よかったです! [一言] 仙道さん企画2からきました!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ