表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/8

2 筏競争

1話1000字程度、全7話。

R3/10/23 5:00〜11:00に予約投稿です。


※この物語はフィクションであり、作中の土地、人、食べ物や動植物は総て架空の存在です。


※筏の歌は、課題曲の主旋律に乗せて歌えるようになっています(イントロ→歌詞を乗せるところ→インストにて最後まで)

曲は、後書きより下にあるバナー上部の「企画概要」をクリックすると飛べるページにリンクがあります。


※作品全体も課題曲のイメージを追っています







 筏は湾曲した川を巧みに下ってゆく。筏の上ではいなせな若衆が威勢よく呼び交わす。若者たちは、前を打ち合わせて荒縄で腰を結んだ袖なしの上着を素肌に羽織り、汗を煌めかす。よく見れば女性や子供も混ざっている。筏の立てる川音と乗り手の掛け合いとが一体となり、アルレッキーナたちの心は浮き立つ。



 秋空は

 流れに戯れ踊るよ


 天高く

 飛沫も(きらめ)き歌うよ


 勇ましく

 筏は流れを下るよ


 水草も

 魚と揺れるよ踊るよ



 筏が3艘くらい並んで通れる川幅で、筏同士が競っている。全部で10チームくらいはあるだろうか。アルレッキーナたちが流れに沿って岸辺の道をしばらく下ると、沿岸に見物客も見えてきた。曲線をいかに有利に通るかが技量の見せ所らしく、巧みな竿捌きや素早い進路変更に歓声が上がる。



 吹き抜ける

 風さえも


 草を分け

 地を駆け抜けて


 岩を打ち

 走り去り


 水面(みなも)にも

 逆巻き踊るよ楽しく



 きついカーブを抜けると、川幅を生かして直線を狙う。乗り手の眉がきりりと上がり、目つきも一際真剣になる。

 丸太を運ぶときには材木の町バーキムまで下るのだが、今日はどう見ても競技である。筏下りのお祭りだ。ゴールと思しき場所には、臨時の船着場が作ってあった。


 船着場にはカラフルな布で飾りつけられたゲートも建つ。土手の上に並ぶのは、この地方の特産品だ。端材を利用した小さな木彫りの動物や、木の皮を貼り付けたトレイ、木でできたアクセサリー類が見栄え良く並んでいる。



 草原に自生するオイルシードグラスという植物の油は、加熱するとさわやかな草原の香りがする。その油で焼いた川魚は、そのままで充分に美味しい。だが、刻んだナッツや薬草と共に焼くと、噛むたびに芳しく、またカリカリと砕ける音も楽しめる。小さく切った塩漬けのレモンを添えるのも人気だ。


 川沿いをそのまま行けば河口も近いバーキムに着く。街道へと続く別れ道を内陸に進めば、羊の煮込みで有名な肉の町ラグシへと導かれる。アルレッキーナたち3人が目指している町だ。ラグシに行くなら、今一行がいる場所からだと一泊は野宿をしなくてはならない。

 目の前に見えているお祭りで腹ごしらえをするのも良い考えだ。


「寄って行かない?」


 アルレッキーナの提案に、リッターとサッジも賛成した。


「いいね」

「急ぐ旅でもないし?」


 そうと決まれば足取りも軽い。魚を焼くオイルシードグラス油の香りが漂ってきた。お祭り屋台はすぐそこだ。


「川魚のナッツ焼きが食べたいな」

「バーキムの名物だそうだな」

「それは外せないよねぇ」


 アルレッキーナたちを追い越して、競技の筏が川面を滑ってゆく。人里にも近いこの辺りでは、流れも次第に緩やかになる。所々に大岩が見えている以外にこれといった障害物もない。屋台より少し下流には中州島があって、バーキム周辺に住む人たちの遠足スポットになっていた。祭りの間、そちらにも屋台が並ぶ。


「あっちにも渡ってみない?」


 サッジは祭りを楽しむ気まんまんだ。


「そうだな。食事だけというのも味気ない」

「うん。全部見よう!」


 話しているうちに、一等の筏がゴールする。人々の歓声が澄み渡る秋空に響く。ゴールの先に筏を進めて陸に上がった優勝チームは、ひとまず飲み物を受け取って汗を拭いていた。



お読みいただきありがとうございます

続きもよろしくお願いします

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『仙道企画その2』←詳細↓検索画面
仙道企画その2
バナー製作みこと。様
― 新着の感想 ―
[良い点] 見事に飯テロに引っかかりました。 なんか食べちゃお…… 曲とあった良い歌詞ですね。 曲を聴きながら読ませていただきました。
[良い点] 美味しそう! 川魚のナッツ焼き  食レポが 腹減ります。 芳ばしい ⬆ 上品 川魚の白身がふっくらと焼き上がり、湯気が纏う芳香が、川の流れの様に潔く食欲を誘う。 [一言] 筏レース 迫…
[良い点] 『魚を焼くオイルシードグラス油の香り』 うーん! この時間に読むのはまずいですな! 腹がへりました!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ